メインコンテンツにスキップ
2026.09.01手続と期限

会社をたたむとき、社会保険と労働保険はどうするか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

会社をたたむときは、社会保険の適用事業所全喪届、雇用保険の適用事業所廃止届、労働保険の確定保険料申告書の3つが必要です。被保険者の資格喪失届は別に人数分出します。「労働保険 保険関係消滅届」という届出は存在しません。届出の名称・提出先・期限を一覧にしました。

結論(先に要点):会社をたたむときは、社会保険の適用事業所全喪届雇用保険の適用事業所廃止届労働保険の確定保険料申告書の3つが必要です。被保険者の資格喪失届は、これとは別に人数分出します。登記より先に、こちらの期限が来ます。

会社をつくるときの手続を書いた記事はたくさんありますが、たたむときの手続はあまり見かけません。廃業を扱う場面が少ないためだと思いますが、期限は開業のときより短いものが混じっていて、しかも登記が終わるのを待っていると間に合いません

会社をたたむと、どの届出が必要になるのか?

大きく3つの系統に分かれます。提出先も期限もそれぞれ違います。

何をどこへいつまでに根拠
健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届事務センターまたは管轄の年金事務所事実があった日から5日以内健康保険法施行規則第20条第1項/厚生年金保険法施行規則第13条の2第1項
雇用保険 適用事業所廃止届事業所の所在地を管轄するハローワーク廃止の日の翌日から起算して10日以内雇用保険法施行規則第141条第1項
労働保険 確定保険料申告書所轄労働基準監督署、所轄都道府県労働局、日本銀行のいずれか保険関係が消滅した日から50日以内労働保険の保険料の徴収等に関する法律第19条第1項

ここで1つ、よく誤解されている点があります。「労働保険 保険関係消滅届」という届出は存在しません。

労働保険の保険関係は、事業が廃止または終了したときに、その翌日に法律上当然に消滅します(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第5条)。届け出て消してもらうものではないため、消滅届という様式がそもそもありません。実務では、確定保険料申告書の**「事業廃止等年月日」欄**に廃止の日を書くことで、廃止の事実を伝えることになります。

なお「保険関係消滅申請書」(様式第27号)は存在しますが、これは雇用保険暫定任意適用事業に限った制度で、労働者の4分の3以上の同意と認可が必要なものです(徴収法附則第4条)。強制適用の事業には使いません。名前が似ているので、検索して行き当たった場合はご注意ください。

順番と期限は、どうなっているのか?

「保険関係が消滅した日」は廃止日の翌日なので、50日の起算もそこからです。厚生労働省の手引も「事業を廃止した日の翌日から起算して50日以内」と表示しています。

実際に動かす順番は、次のようになります。

  1. 従業員の退職日を確定する(ここが起点になります)
  2. 従業員の資格喪失届を出す(社会保険・雇用保険。下記参照)
  3. 確定保険料申告書を作る。概算で納めた額が確定額を上回るときは、労働保険料還付請求書(様式第8号)を同時に出します
  4. 全喪届を出す。このとき、**確定保険料申告書の写し(事業廃止等年月日の記載があるもの)**が事実を示す書類として求められます
  5. 雇用保険適用事業所廃止届を出す

3と4の順序に注意してください。 全喪届の添付書類として確定保険料申告書の写しが求められるため、労働保険を先に片づけないと社会保険が終わりません。ここを逆にすると往復が発生します。

「事業は続いているが従業員が0人になった」場合も、雇用保険の廃止届の対象です。 厚生労働省の手引は、被保険者がいなくなり雇用の見込みもないとき、事業を休止して再開の見込みがないときも廃止届を出すとしています。法人格が残っているかどうかとは別の話です。

従業員の分は、何を出すのか?

人数分、別に出します。期限は事業所の届出とは違います。

何をいつまでに根拠
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届事実があった日から5日以内健康保険法施行規則第29条第1項/厚生年金保険法施行規則第22条第1項
雇用保険 被保険者資格喪失届事実のあった日の翌日から起算して10日以内雇用保険法施行規則第7条第1項

雇用保険の資格喪失届には、原則として離職証明書(様式第5号)を添えます。本人が離職票の交付を希望しない場合は省略できますが、離職日に59歳以上の被保険者については省略できません(同条第3項)。廃業に伴う退職では60歳前後の方が含まれることが多く、ここは実際によく問題になります。

離職理由をどう書くかも、本人の失業給付に直接影響します。会社都合か自己都合か、事業所の廃止に伴うものか。事実と違う記載をしないことが第一ですが、事実の書き方で本人の受給の条件が変わるため、退職日を決める段階から確認しておくほうが安全です。

登記や税務とは、どう分かれるのか?

分かれます。 会社をたたむ手続は、少なくとも3つの系統が並行して動きます。

系統中身誰の業務か
労働・社会保険全喪届、廃止届、確定保険料、資格喪失届社会保険労務士
登記解散の登記、清算人の登記、清算結了の登記司法書士
税務異動届出書、清算事業年度の申告、最後の確定申告税理士

当事務所が扱うのは1行目だけです。 登記は司法書士、税務は税理士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉行政書士事務所とはそれぞれ別の事業体ですので、あわせてご依頼になる場合も別々にご契約いただきます。

タイミングの関係だけ、先に押さえておいてください。解散の登記が終わってから労働・社会保険の手続を始めると、5日や10日の期限をすでに過ぎていることがあります。 従業員の退職日が決まった時点で、労働・社会保険の側は動き出せます。登記の完了を待つ必要はありません。

会社をつくるときの届出と期限は会社をつくったら、いつまでに何を出すのかにまとめています。入口と出口で、必要な書類がきれいに対応しているわけではない点も、あわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 従業員が全員辞めたあと、社長1人だけ残ります。全喪届は出しますか?
A. 法人であって代表者に報酬が支払われている限り、社会保険の適用事業所であり続けるため、その時点では全喪の届出には至りません。一方、雇用保険は被保険者がいなくなるため、雇用の見込みがなければ適用事業所廃止届の対象になります。社会保険と雇用保険で結論が分かれるのがこの場面です。

Q. 休業するだけで、いずれ再開するつもりです。それでも届出は必要ですか?
A. 再開の見込みがあるかどうかで扱いが変わります。厚生労働省の手引は、事業を休止して再開の見込みがないときを廃止届の対象としています。見込みがある場合の扱いは、休業の期間や被保険者の状況によりますので、個別にご確認いただくところになります。

Q. 複数の法人を整理します。まとめて出せますか?
A. 届出は事業所(労働保険番号・事業所整理記号)ごとです。まとめて1通で出すことはできません。ただし廃止の日を揃えると、確定保険料の計算期間や資格喪失日が揃うため、実務としては楽になります。日程の組み方から一緒に検討したほうが早い場面です。費用は報酬額表をご覧ください。

Q. 概算で納めた労働保険料が多すぎました。戻ってきますか?
A. 確定保険料が概算保険料を下回る場合、差額は充当または還付の対象になります。還付を受けるには、労働保険料還付請求書(様式第8号)を確定保険料申告書と同時に提出します。あとから請求すると手間が増えるので、確定申告書を作る段階で計算しておいてください。

この記事の根拠

  • 健康保険法施行規則(大正15年内務省令第36号)第20条第1項(全喪届)、第29条第1項(資格喪失届)
  • 厚生年金保険法施行規則(昭和29年厚生省令第37号)第13条の2第1項(全喪届)、第22条第1項(資格喪失届)
  • 雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)第141条第1項(適用事業所廃止届)、第7条第1項・第3項(資格喪失届・離職証明書)
  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)第5条(保険関係の消滅)、第19条第1項(確定保険料)、附則第4条(暫定任意適用事業の保険関係消滅申請)
  • 厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き【第1編】適用事業所編【令和7年8月版】」(提出期日、被保険者0人・休止の場合の取扱い)
  • 日本年金機構「適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き」(提出時期・提出先・添付書類)
  • 条文はいずれも2026年8月13日時点でe-Gov法令検索により確認した現行条文です

この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。 労働・社会保険の届出と確定保険料の計算、離職理由の整理は社会保険労務士の業務です。解散・清算の登記は司法書士、清算事業年度の申告など税務は税理士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

「人」のことから、整理しませんか。

四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。

LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。

東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00