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2026.09.01労働法の基本

グループホームの夜勤と宿直、労務では何が違うのか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

グループホームの夜間体制は「夜勤」と「宿直」で労務管理が大きく変わります。夜勤は深夜帯(22時〜5時)の介護・見守りを行う労働時間で、深夜割増(25%以上)と、時間外なら36協定が必要です。宿直は軽度の断続的業務で、所轄労働基準監督署の許可があれば労働時間規制の適用除外(労働基準法第41条第3号)。ただし呼び名ではなく実態で判断され、介護・見守りなら夜勤として扱われます。

結論(先に要点):グループホームの夜間体制は、「夜勤」と「宿直」で労務管理がまったく違います。夜勤は、深夜帯(午後10時〜午前5時)に通常の介護・見守り・支援を行う労働時間で、深夜割増(25%以上)と、時間外労働なら36協定と時間外割増が必要です。宿直は、本来の業務をせず巡回・電話対応など軽度の断続的業務だけを行う勤務で、所轄労働基準監督署の許可を受ければ労働時間・休憩・休日の規制が適用除外になります(労働基準法第41条第3号)。ただし、呼び名が「宿直」でも、実態が介護・見守りなら「夜勤」として扱われます。この記事では、夜勤と宿直の違いを、実際の勤務表でどう考えるかという実務目線で整理します。

「夜勤と宿直、何が違うんですか」「うちは宿直にしているから大丈夫ですよね」——障害福祉の事業所、とくにグループホーム(共同生活援助)の経営者・管理者から、よく受ける質問です。このページは、障害者グループホームを運営する事業者、これから開設する事業者に向けて、夜勤と宿直の労務上の違い、労働時間の考え方、勤怠記録の残し方を整理します。個別の労使トラブルへの判断はこの記事の範囲外です。

夜勤と宿直は、労務管理のどこが違うのか?

まず、夜勤と宿直は「夜に働く」という見た目は同じでも、法律上の位置づけが違います。

観点夜勤宿直(許可を受けた場合)
業務の実態通常の介護・見守り・支援巡回・電話対応・非常時待機など軽度の断続的業務
労働時間労働時間に該当する労働時間・休憩・休日の規制が適用除外
深夜割増22時〜5時は25%以上原則不要(労働時間でないため)
36協定時間外・休日労働なら必要原則不要(時間外労働でないため)
許可・届出不要(労働時間として扱う)所轄労働基準監督署長の許可が必要
賃金深夜・時間外の割増を支払う宿直手当(金額は労使で定める)

宿直が労働時間規制の適用除外になる根拠は、労働基準法第41条第3号です。使用者が所轄労働基準監督署長の許可を受けた「断続的労働」について、労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されないと定めています。ただし、これは**「軽度の断続的な業務だけを、睡眠時間を確保できる形で行う」ことが前提**です。詳しくは後述します。

宿直と呼んでいても、実態が夜勤ならどうなるのか?

結論からいうと、呼び名ではなく、実態で判断されます。勤務の名称を「宿直」にしていても、実際に行っているのが利用者のトイレ介助・体位交換・コール対応・定時巡回などの介護・見守りであれば、それは「断続的業務」ではなく通常の業務です。この場合、所轄労働基準監督署の宿日直許可は原則受けられず、その時間は労働時間として扱われます。

たとえば、利用者5人のグループホームで、夜間(夕方から翌朝まで)に職員1人が住居に常駐し、利用者のコールに応じて介助に入り、2時間おきに巡視をする体制を考えます。この体制を「宿直」と呼んでいても、実態は「介護・見守り」なので、夜勤として労働時間・割増賃金・36協定の対象になります。反対に、夜間は利用者がほぼ就寝しており、非常時の連絡対応と数回の巡視だけを委ねる体制であれば、宿日直許可の対象になり得ます。どちらになるかは、個々の事業所の実態に即した個別判断です。

労働時間に該当する時間・しない時間は、どこで分かれるのか?

労働時間とは、使用者の指揮命令下にある時間です。介助や巡視など実際に作業している時間はもちろん、次のような時間も労働時間に該当し得ます。

  • 呼び出しに備えて待機している時間(手待時間):いつでも就労できる状態で待機している時間は、実際に作業していなくても労働時間とされます。
  • 仮眠中でも、呼び出しに対応する義務がある時間:仮眠時間中でも、コール対応や緊急時の対応を義務付けられていれば、使用者の指揮命令下にあるとして労働時間と判断される場合があります。

判例でも、仮眠時間中や休憩時間中であっても宿直室に待機することを義務付けられていた場合、その時間は労働時間に該当するとされています。「休憩」「仮眠」という名前を付けても、実態として自由に使える時間でなければ労働時間です。

休憩・仮眠・待機は、勤務表でどう考えるのか?

勤務表を組むときは、次の3つを分けて考えます。

  1. 休憩:労働時間の途中に、労働者が自由に使える時間として与えるもの。労働時間から除外できるのは、この「自由に使える休憩」だけです。
  2. 仮眠:仮眠の時間も、呼び出し対応の義務がなく「自由に休める」ことが確保されていなければ、休憩として扱えません。呼び出しに応じる前提の仮眠は労働時間(手待時間)です。
  3. 待機:呼び出しに備えて待機する時間は、原則として労働時間です。

したがって、勤務表に「休憩2時間」と書いていても、実際にはその間に何度もコール対応をしているのであれば、休憩とは認められず、労働時間として深夜割増の対象になります。勤務表の数字と実態を一致させることが前提です。

宿日直許可との関係は?

宿日直勤務として労働時間規制の適用除外を受けるには、所轄労働基準監督署長の許可が必要です。許可の対象は、労働基準法施行規則第23条に基づく「断続的な宿直又は日直」で、おおむね次のような要件が前提になります。

  • 本来の業務を処理しないこと(巡回・文書や電話の収受・非常事態に備えた待機など)
  • 常態としてほとんど労働する必要がないこと
  • 宿直であれば、夜間に十分な睡眠時間を確保できること

許可は、申請書の記載だけで機械的に出るものではありません。業務の実態を踏まえて、所轄労働基準監督署が個別に判断します。グループホームで介護・見守りを常態的に行う夜間勤務は、この要件を満たしにくく、宿日直許可の対象にならないのが通常です。安易に「宿直だから労働時間の管理は不要」と決めつけないでください。また、許可を受けていたとしても、実際に介護など実労働をした時間は労働時間として賃金を支払う必要があります

36協定と変形労働時間制との関係は?

夜勤を含む体制では、36協定と変形労働時間制の両方を整理しておく必要があります。

  • 36協定:時間外労働・休日労働をさせるには、労使で協定を結び、所轄労働基準監督署長に届け出ます(労働基準法第36条)。夜勤で法定の労働時間(1日8時間・1週40時間)を超える時間外労働が生じるなら、36協定の締結・届出が前提です。上限時間などは残業の上限は36協定で決まるをご覧ください。
  • 変形労働時間制:夜勤を含むシフト勤務は、1か月単位や1年単位の変形労働時間制で運用すると、特定の日・週の労働時間が長くても、所定労働時間の総枠で収めることができます。ただし、深夜(22時〜5時)の割増は変形労働時間制でも必要です。

いずれも、就業規則や賃金規程との整合が必要です。就業規則の義務は就業規則は何人から義務かをご覧ください。

深夜割増は、どうなるのか?

午後10時から午前5時までの深夜に労働させた場合、通常の労働時間の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払う義務があります(労働基準法第37条第3項)。時間外労働が深夜に及ぶ場合は、時間外割増(25%以上)と深夜割増(25%以上)が重なり50%以上、法定休日労働が深夜に及ぶ場合は60%以上になります。

夜勤は深夜帯を含むため、深夜割増は実務上必ず意識する論点です。給与計算では、通常の時給と割増率を分けて計算する必要があります。給与計算の考え方は給与計算を社会保険労務士に頼むと、いくらかかるのかをご覧ください。

勤怠記録は、どう残すべきか?

夜勤・宿直のいずれでも、始業・終業時刻を客観的な方法(タイムカード・打刻・勤怠システムなど)で記録することが前提です。あわせて、次の記録を残すことで「実態は夜勤」と言われた際の反証になります。

  • 巡視の時刻と回数、コール対応の時刻と内容
  • 仮眠・休憩の実際の取得状況
  • 誰が、どの時間帯に、どの業務をしたか(シフト表と実績の突合)

勤務表(予定)と実績の記録が食い違っていると、労基署の調査や未払い割増賃金の請求で不利になります。「予定」ではなく「実態」を記録に残すことが大切です。

開設前に、経営者が確認すべきこと

グループホームを開設する前、または夜間体制を見直す前に、次の点を確認してください。

  1. 人員配置基準と報酬上の区分(夜間支援等体制加算で「夜勤職員を配置する場合」と「宿直職員を配置する場合」があること)
  2. 宿日直許可の要否と取得可能性(実態が介護・見守りなら夜勤として扱うこと)
  3. 36協定・変形労働時間制・就業規則の整備状況
  4. 勤怠の記録方法と、シフト表と実績の突合の仕組み

なお、障害福祉サービスの指定申請や報酬上の加算に伴う官公署への書類は行政書士の業務、物件の確保・賃貸借は不動産(宅地建物取引業)の業務です。労務(就業規則・36協定・給与計算)は社会保険労務士の業務です。四葉ではそれぞれが独立した事業体として、別々にご契約いただく形です。

誰に、何を頼むのか?

すること誰の業務か
就業規則・36協定・変形労働時間制の整備、勤怠管理の設計、割増賃金の計算社会保険労務士(当事務所)
障害福祉サービスの指定申請、報酬上の加算の届出など官公署へ提出する書類の作成行政書士(四葉行政書士事務所・別事業体)
物件の確保・賃貸借不動産(宅地建物取引業者)
未払い割増賃金の請求、紛争、労働審判・訴訟弁護士

夜勤・宿直の労務整理は社会保険労務士の業務です。当事務所は、実態に合った勤務時間・割増賃金の設計と、勤怠記録の仕組みづくりまでを担います。指定申請など行政書士の業務、物件など不動産の業務は、それぞれ別の事業体が別々にご契約いただく形です。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、夜勤・宿直の実態整理、就業規則・36協定・変形労働時間制の整備、勤怠管理の設計、割増賃金の計算をお受けします。障害福祉事業所の人員基準と労務の整理は障害福祉事業所の人員基準と労務に、介護・障害福祉の労務管理の全体は介護・障害福祉の労務管理にまとめています。ご相談は無料です。 費用は報酬額表をご覧ください。

障害福祉サービスの指定申請は、四葉行政書士事務所(独立した事業体・別々にご契約)が承ります。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. グループホームの夜間勤務は、宿直にすれば労働時間の管理をしなくてよいですか?
A. 呼び名を宿直に変えても、実態が利用者の介護・見守りであれば労働時間として扱われます。宿日直許可を受けられるのは、巡回・電話対応など軽度の断続的業務で、睡眠時間を確保できる場合に限られます。まず実態を整理し、個別に判断する必要があります。

Q. 宿直の許可を受けていれば、深夜割増は不要ですか?
A. 許可を受けた宿直は労働時間規制の適用除外のため、原則として深夜割増の対象になりません。ただし、許可を受けていても、実際に介護などの実労働をした時間は労働時間として賃金(深夜割増を含む)を支払う必要があります。

Q. 夜勤の仮眠時間は、休憩として労働時間から外せますか?
A. 仮眠時間中でもコール対応や緊急時の対応を義務付けている場合は、自由に休める時間ではないため、休憩として扱えず労働時間(手待時間)になります。仮眠を休憩として外すには、その間の対応義務をなくし、実質的に自由に休める状態を確保する必要があります。

Q. 夜勤を含むシフトは、変形労働時間制にすれば深夜割増が不要になりますか?
A. なりません。変形労働時間制は、所定労働時間を期間の総枠で調整する仕組みであり、深夜(22時〜5時)の割増賃金は変形労働時間制でも支払う必要があります(労働基準法第37条第3項)。

この記事の根拠

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条(法定労働時間)、第36条(36協定)、第37条(割増賃金・深夜25%以上)、第41条第3号(監視又は断続的労働の適用除外)
  • 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第23条(断続的な宿直又は日直の許可)
  • 宿日直勤務の許可は、軽度の断続的業務(本来の業務を処理しない・巡回・文書電話の収受・非常時待機)で、常態としてほとんど労働する必要がないことが前提。業務の実態に応じ所轄労働基準監督署が個別に判断します
  • 労働時間の該当性は「使用者の指揮命令下にある時間」。仮眠・待機中でも呼び出し対応義務があれば労働時間(手待時間)とする行政解釈・裁判例による一般論です
  • 障害福祉サービス(共同生活援助)の人員配置と夜間支援等体制加算は、厚生労働省の報酬告示・通知および指定権者(自治体)の運用によります。加算の単位数・区分・人員配置は年度ごとに改定されるため、最新の告示・通知をご確認ください
  • 深夜割増率、時間外割増率、宿日直許可の考え方は、厚生労働省・都道府県労働局の公表資料により確認しています(2026年8月時点)

この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。就業規則・36協定・変形労働時間制の整備、勤怠管理の設計、割増賃金の計算は社会保険労務士の業務です。障害福祉サービスの指定申請や報酬上の加算に伴う官公署への書類は行政書士の業務、物件の確保・賃貸借は不動産(宅地建物取引業)の業務です。未払い割増賃金の請求や紛争は弁護士の業務です。四葉社会保険労務士事務所と四葉行政書士事務所は独立した事業体で、それぞれ別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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