育成就労計画の「待遇」欄に、何を書くのか
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
育成就労計画認定の申請には、待遇を書面で説明する様式が4つあります。宿泊施設と徴収費用を書かせる様式があるということは、住居費をいくら徴収しているかが確認の対象になるということです。社会保険の現物給与との接続、賃金控除の協定まで、労務として作っておく中身を整理します。
結論(先に要点):育成就労計画認定の申請には、待遇を書面で説明する様式が4つあります(雇用契約書・雇用条件書、待遇に関する重要事項説明書、報酬・宿泊施設・徴収費用の説明書×2)。宿泊施設と徴収費用を書かせる様式があるということは、住居費をいくら徴収しているかが確認の対象になるということです。ここは社会保険の現物給与(健康保険法第46条)と直結します。
このページは、育成就労計画認定の申請を予定している会社の経営者・総務担当の方に向けたものです。申請書類そのものの作成は行政書士(四葉行政書士事務所・別事業体)の業務のため、本記事は様式が求める中身を、労務としてどう作っておくかだけを書きます。
なぜ待遇を、何枚も書かされるのか?
申請様式の一覧(OTIT・2026年8月14日確認)から、待遇に関する書面を抜き出すとこうなります。
| 様式 | 内容 |
|---|---|
| 参考様式第1-2号 | 雇用契約書及び雇用条件書 |
| 参考様式第1-13号 | 育成就労の期間中の待遇に関する重要事項説明書 |
| 参考様式第1-15号 | 報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書 |
| 参考様式第1-39号 | 同上+移動及び転居費用等 |
同じ「待遇」を、契約・説明・費用の内訳と、角度を変えて何度も書かせる構造です。理由は制度の性格にあります。本人の意向による転籍が認められる制度では、入口で示した待遇と実際の待遇のずれが、そのまま転籍の理由になり得ます。書面は「審査のための紙」ではなく、あとで本人と行政の両方から照合される基準線だと考えてください。
住居費は、いくらまで徴収してよいのか?
本記事では金額の基準を示しません。 徴収費用の水準は、育成就労制度運用要領(2026年8月5日に改正されたばかりです)と、分野によっては分野別の定めで確認する領域です。金額の当否そのものは、申請の審査側=入口の領域に属します。
労務の側で押さえるべき原則は2つです。第一に、実際に徴収する額と、様式に書く額と、給与明細の控除額を一致させること。三つがずれている状態が、いちばん典型的な指摘の入口です。第二に、徴収の根拠を賃金控除の協定と規程に落としておくこと。住居費を給与から天引きするなら、労使協定(労働基準法第24条の賃金全額払いの例外)と就業規則・社宅規程の整合が前提になります。
徴収した住居費は、社会保険にどう跳ね返るのか?
ここが見落とされる接続点です。会社が住まいを用意して家賃を負担する場合、その利益は現物給与として報酬に算入され得ます(健康保険法第46条=価額はその地方の時価によって厚生労働大臣が定める)。本人からいくら徴収しているかによって、報酬に算入される額が変わり、標準報酬月額——つまり保険料——が変わります。
仕組みの詳細は社宅を貸すと、社会保険料が上がることがあるに書きました。1点だけ再掲します——令和8年10月1日から、住宅の現物給与の算定単位が「畳1畳あたり」から「床面積1㎡あたり」に変わります(日本年金機構・2026年8月14日参照)。育成就労の受け入れ準備と時期が重なるため、住居費の設計は新しい算定単位を前提に組んでください。
いつ、誰と決めるのか?
申請の前です。様式に書いた内容があとから動くと、説明書面の作り直しと本人への再説明が要ります。分担はこうなります。
| 決めること | 誰と |
|---|---|
| 物件の確保・法人契約・家賃の相場 | 宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社。当事務所とは別の事業体で、別々にご契約いただきます) |
| 徴収額の設計・現物給与の算入・賃金控除協定・社宅規程 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 所得税の側の給与課税 | 税理士 |
| 申請書類(様式)の作成・提出 | 行政書士(四葉行政書士事務所・別事業体) |
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、待遇の書面の中身——雇用契約書式、住居費の徴収設計と現物給与の算入、賃金控除の労使協定、社宅規程——をお受けします。ご相談は無料です。 料金は報酬額表(社宅規程 作成を含む)に掲載しています。いま動くべきことの全体は育成就労、いま何をしておくのかをご覧ください。
誰に相談するか
申請書類の作成・提出と徴収基準の適合の確認は四葉行政書士事務所(当事務所とは別の事業体で、別々にご契約いただきます)。物件と法人契約は四葉不動産株式会社(同)。給与課税は税理士、紛争性のある事案は弁護士の業務です。いずれも紹介料の授受はありません。
よくある質問
Q. 住居費はいくらに設定すればいいですか?
A. 本記事では金額を示しません。徴収水準は運用要領(2026年8月5日改正)と分野別の定めで確認する領域です。労務の側で確実にすべきは、実際の徴収額・様式の記載・給与明細の控除の三つを一致させること、そして徴収の根拠を労使協定と規程に落とすことです。
Q. 寮費を給与から天引きしています。問題ありませんか?
A. 賃金からの控除には、賃金全額払いの原則(労働基準法第24条)の例外として労使協定が必要です。協定・就業規則・社宅規程・実際の控除額が揃っているかをまず確認してください。書面の整備は当事務所でお受けします。
Q. 現物給与の算入は、育成就労でも同じですか?
A. 同じです。社会保険の現物給与の仕組み(健康保険法第46条・厚生労働大臣が定める価額)は在留資格で変わりません。本人負担額と告示価額の差額が報酬に算入される取扱いで、令和8年10月1日からは住宅の算定単位が畳から㎡に変わります。詳細は社宅の記事をご覧ください。
Q. 様式は自分で書けますか?
A. 様式そのものはOTITのサイトで公開されています。ただし申請書類として整えて提出する部分は行政書士の業務(四葉行政書士事務所・別事業体)で、書く前提になる待遇・徴収・規程の設計が当事務所の担当です。中身を先に固めてから様式に落とす順序をお勧めします。
この記事の根拠
- 外国人技能実習機構「育成就労計画認定施行日前申請」(令和8年8月5日更新・2026年8月14日確認)――参考様式第1-2号・第1-13号・第1-15号・第1-39号の名称と存在
- 健康保険法(大正11年法律第70号)第46条(現物給与の価額) ―― 2026年8月14日にe-Gov法令検索で現行条文を確認
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第24条(賃金の支払・控除の労使協定) ―― 同日にe-Gov法令検索で現行条文を確認
- 日本年金機構「全国現物給与価額一覧表」(2026年3月19日更新・2026年8月14日参照)――令和8年10月1日からの住宅の算定単位の変更
- 徴収費用の水準は育成就労制度運用要領(2026年8月5日改正)・分野別の定めによります。金額は本記事に記載していません。必ず最新の運用要領でご確認ください
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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