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2026.09.01労働法の基本

2028年4月から50人未満の事業場もストレスチェック義務化──小規模事業場が準備すること

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

ストレスチェックは労働安全衛生法第66条の10に基づく検査で、現在は常時50人以上の事業場が義務、50人未満は努力義務です。令和7年法律第33号により、50人未満の事業場にも実施義務が2028年4月1日から拡大します(施行期日=令和8年政令第195号)。実施は1年以内ごとに1回で、2028年4月に1回行えば終わりではありません。「50人」は会社単位ではなく事業場単位で判定し、50人に数える人と受検対象者は同じではありません。厚生労働省の小規模事業場向けマニュアル(2026年2月25日公表)を踏まえ、義務化の範囲と準備の10ステップを整理します。

結論(先に要点):ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10に基づき、現在は常時50人以上の事業場が義務、50人未満の事業場は努力義務です。労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号、2025年5月14日公布)により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が2028年4月1日から拡大します(施行期日は令和8年政令第195号、2026年6月10日公布)。ストレスチェックは対象事業場で毎年1回実施するもので、2028年4月に1回実施すれば終わりではありません。この「50人」は会社単位ではなく事業場単位で判定し、「50人に数える人」と「ストレスチェックの受検対象者」は必ずしも同じではありません。厚生労働省は小規模事業場向けの実施マニュアル(2026年2月25日公表)を出しており、会社は施行までに「対象者・人数の確認 → 実施方法・実施者の決定 → 結果通知・記録管理 → 高ストレス者への面接指導のルート」を順に整える必要があります。この記事では、義務化の範囲と、小規模事業場が準備すべき手順を整理します。

この記事は、労働者数50人未満の事業場(事業場単位で判定)の経営者・人事労務担当者を想定しています。「2028年4月から何が変わるのか」「うちの事業場は対象になるのか」「いま何を準備すればよいのか」に答えることが目的です。

ストレスチェックは、2028年4月から何が変わるのか?

ストレスチェックは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査で、対象事業場で毎年1回実施します(法令上は「1年以内ごとに1回、定期に」。労働安全衛生規則第52条の9)。現行制度では、常時50人以上の労働者を使用する事業場に実施義務があり、50人未満の事業場は「努力義務」とされてきました。

令和7年改正労働安全衛生法により、これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務が拡大されます。施行日は2028年4月1日です(施行期日は令和8年政令第195号で定められました)。2028年4月に1回実施すれば終了というものではなく、毎年の実施が対象になります。

ただし、これは「全事業場・全労働者が一律に義務化」という意味ではありません。事業場としての実施義務が拡大する一方で、個々の受検対象となる労働者には別の要件があります(後述)。また、実施結果の労働基準監督署への報告義務など、50人以上と50人未満で扱いが異なる点もあります。

項目常時50人以上の事業場50人未満の事業場(2028年4月1日以降)
ストレスチェックの実施義務義務(それまでは努力義務)
実施の頻度毎年1回(1年以内ごとに1回、定期に)毎年1回(1年以内ごとに1回、定期に)
要件を満たす労働者から申出があった場合の医師による面接指導義務義務
集団ごとの集計・分析、職場環境改善努力義務努力義務
実施結果の労働基準監督署への報告義務対象外

「50人」は、事業場単位でどう数えるのか?受検対象者とは違うのか?

「50人」の判定は、原則として会社単位ではなく事業場単位です。本社が30人、営業所が25人という場合も、単純に会社全体で合算して「50人以上」と判定するものではありません。

事業場は、主として場所的な単位で判断します。ただし、所在地が違えば必ず別の事業場になるわけでもありません。場所的に分散していても、出張所・支所等で規模が著しく小さく、組織的関連・事務能力等から一の事業場という程度の独立性がないものについては、直近上位の機構と一括して一の事業場として取り扱われる場合があります(労働安全衛生法の施行について=昭和47年9月18日発基第91号)。自社の拠点がどちらに当たるかは、実態に照らして確認します。

また、この人数判定は、単純に正社員だけを数えるものではありません。週1回勤務のパート・アルバイト等でも、継続して雇用され、常態として使用している労働者であれば人数判定に含まれ得ます

一方、法定のストレスチェック対象者は、原則として次の双方を満たす労働者です。

  • 期間の定めのない労働契約により使用される者であること(契約期間が1年以上である者、契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、1年以上引き続き使用されている者を含む)
  • 1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること

つまり、「50人に数える人」と「ストレスチェックの受検対象者」は同じではありません。4分の3未満の短時間労働者であっても、契約期間の要件を満たし、1週間の労働時間数が通常の労働者の1週間の所定労働時間数のおおむね2分の1以上である場合は、ストレスチェックを実施することが望ましいとされています。

ストレスチェックは、誰が・どんな手順で実施するのか?

ストレスチェックの実施者は、医師または保健師です。これに加えて、所定の研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師も実施者になることができます(労働安全衛生規則第52条の10)。実施者は必ずしも産業医である必要はありません。「産業医でなければ実施できない」わけではありません。

厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルを踏まえると、ストレスチェックの流れは大きく次の5段階に整理できます。

  1. 実施準備(対象者・人数の確認、実施方法の検討)
  2. 体制整備(事業場内の担当者、実施者、実施事務従事者の決定)
  3. ストレスチェックの実施(義務)
  4. 医師による面接指導・事後措置(要件を満たす労働者から申出があった場合は義務)
  5. 集団分析・職場環境改善(努力義務)

小規模事業場では、プライバシー保護の観点から、原則として外部機関への委託が推奨されています。ただし、外部委託したからといって事業者としての実施責任がなくなるわけではありません。事業場内の担当者・外部の実施者・実施事務従事者などの役割分担をあらかじめ決めておく必要があります。

結果の通知とプライバシー保護は、どう行うのか?

ストレスチェックの個人結果は、実施者から労働者本人に直接通知します。本人の同意なしに、個人結果を事業者へ提供してはいけません。

本人の同意がある場合は、事業者が結果の記録を作成して5年間保存します(労働安全衛生規則第52条の13第2項)。同意がない場合は、事業者は個人結果を受け取れないため、実施者又は実施事務従事者が適切に保存します。同意がない場合について、法令上一律に「事業者が5年間保存する義務」があるわけではありません。いずれの場合も、事業者は保存場所・セキュリティなど適切な管理体制を整える必要があります。本人への同意の強要はしてはいけません。

なお、面接指導を申し出た場合については、あらかじめその取扱いを本人へ周知した上で、結果の提供に同意したものとして扱える場合があります(ストレスチェック指針)。

労働者には法律上の受検義務はありません。事業者に課されているのは「ストレスチェックを実施する義務」です。また、次のことを理由とする不利益取扱いは禁止されています。

  • 受検しないこと
  • 会社への結果提供に同意しないこと
  • 面接指導を申し出ること
  • 面接指導を申し出ないこと

高ストレス者と判定されたら、会社は何をするのか?

高ストレス者と判定されたことが、自動的に医師の面接指導につながるわけではありません。流れは次のとおりです。

  1. 実施者が面接指導の必要性を判断する
  2. 本人へ面接指導を案内する
  3. 本人が面接指導を申し出る
  4. 事業者が医師による面接指導を実施する
  5. 医師から必要な措置についての意見を聴く
  6. 必要に応じて就業上の措置を検討する

時間の目安は次のとおりです。法令上はいずれも「遅滞なく」と定められており、「おおむね1か月以内」は厚生労働省のマニュアル等が示す実務上の目安です。

場面実務上の目安法令上の定め
本人が面接指導を申し出る結果の通知後おおむね1か月以内通知を受けた後、遅滞なく(規則第52条の16第1項)
事業者が医師による面接指導を実施する申出後おおむね1か月以内申出があったときは、遅滞なく(規則第52条の16第2項)
事業者が医師から意見を聴く面接指導後おおむね1か月以内面接指導が行われた後、遅滞なく(規則第52条の19)

面接指導や医学的判断は医師が行います。事業者は、面接指導の申出を理由とする不利益取扱いをしてはいけません。

50人未満の小規模事業場では、高ストレス者等への医師による面接指導について、地域産業保健センターを利用できる場合があります。現行の厚生労働省の案内では、この面接指導は無料です。ただし、地域産業保健センターがストレスチェックそのものを実施するわけではありません。面接指導の受け皿としての利用が中心です。

集団分析・職場環境改善は、義務か努力義務か?

ストレスチェック制度のうち、義務と努力義務は次のように分かれます。

  • ストレスチェックの実施 → 義務
  • 一定の要件を満たす者から申出があった場合の医師による面接指導 → 義務
  • 集団ごとの集計・分析、職場環境改善 → 努力義務(労働安全衛生規則第52条の14)

また、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第112号、2026年6月30日公布)により、2027年4月1日から、集団分析を行う場合は特定の個人を識別することができない方法で実施することが省令上明文化されます(同規則第52条の14第1項の改正。施行通達=基発0630第2号)。従来の解釈を明文化したものですが、50人未満の小規模事業場では人数が少ない分、特にプライバシーへの配慮が必要です。

50人未満でも、労働基準監督署への報告は必要か?

2028年4月から50人未満の事業場にもストレスチェックの実施義務は拡大します。ただし、実施結果の労働基準監督署への報告義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業者に限られます(労働安全衛生規則第52条の21)。50人未満の事業場に報告義務まで拡大されたわけではありません。この点を混同しないようにしてください。

50人未満の事業場が、いま準備すべきことは何か?

施行までの準備は、次の10ステップで進めます。

  1. 自事業場の労働者数を事業場単位で確認する
  2. 法定の受検対象者を洗い出す
  3. 社内の担当者を決める
  4. 外部委託か自社実施かを決める
  5. 実施者・実施事務従事者を決める
  6. プライバシー・記録管理のルールを整える
  7. ストレスチェックを実施する(毎年1回)
  8. 高ストレス者の面接指導の申出ルートを整える
  9. 地域産業保健センター等の利用方法を確認する
  10. 集団分析・職場環境改善(努力義務)も検討する

なお、産業医の選任義務まで50人未満の事業場へ一律に拡大されるわけではありません。ストレスチェックの実施者と、産業医の選任とは別の制度です。

四葉社会保険労務士事務所では、ストレスチェック制度導入に伴う労務面の体制整理、社内規程・ルール、対象者管理や社内運用についてご相談いただけます。ストレスチェックの実施者となるのは資格要件を満たす医師等、高ストレス者の面接指導・医学的判断は医師の領域です。ご相談は無料で、費用は報酬額表にまとめています。手続の流れはご利用の流れをご覧ください。個別の紛争は弁護士、税務は税理士の領域です。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。

よくある質問

Q. 50人未満の事業場も、2028年4月からストレスチェックは義務ですか?
A. はい。これまで努力義務だった労働者数50人未満の事業場にも、2028年4月1日からストレスチェックの実施義務が拡大します。対象事業場では毎年1回(1年以内ごとに1回、定期に)実施し、2028年4月に1回実施すれば終わりではありません。ただし、個々の受検対象者には別の要件があります。

Q. 「50人」は、会社全体で数えるのですか?
A. いいえ。原則として会社単位ではなく事業場単位で判定します。本社と営業所を単純に会社全体で合算して「50人以上」と判定するものではありません。事業場は主として場所的な単位で判断しますが、出張所・支所等で規模が著しく小さく独立性がないものは、直近上位の機構と一括して一の事業場として取り扱われる場合があります。

Q. 50人に数える人と、受検対象者は同じですか?
A. 同じではありません。人数判定には、継続雇用され常態として使用しているパート等も含まれ得ますが、法定の受検対象者は原則として「期間の定めのない労働契約(1年以上の使用予定・使用実績等を含む)」と「1週間の労働時間数が同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上」の双方を満たす人です。

Q. 産業医がいなくても、ストレスチェックは実施できますか?
A. 実施できます。実施者は医師・保健師のほか、所定研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師です。必ずしも産業医である必要はありません。産業医の選任義務が50人未満の事業場へ一律に拡大されるわけでもありません。

Q. 社員は必ず受検しなければならないのですか?
A. 労働者に法律上の受検義務はありません。義務は事業者がストレスチェックを実施することです。受検しないこと等を理由とする不利益取扱いは禁止されています。

Q. 会社は、ストレスチェックの個人結果を見られるのですか?
A. 個人結果は実施者から労働者本人に直接通知します。本人の同意なしに事業者へ提供してはいけません。同意がある場合に事業者が記録を作成して5年間保存し、同意がない場合は実施者又は実施事務従事者が保存します。

Q. 高ストレスと判定されたら、必ず面接指導を受けますか?
A. 高ストレス判定が自動的に面接指導につながるわけではありません。実施者が必要性を判断して本人へ案内し、本人が申し出た場合に、事業者が医師による面接指導を実施します。申出は結果通知後おおむね1か月以内、面接指導は申出後おおむね1か月以内、医師からの意見聴取は面接指導後おおむね1か月以内が実務上の目安です。

Q. 50人未満でも、労働基準監督署へ報告するのですか?
A. 実施結果の労働基準監督署への報告義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業者に限られます(労働安全衛生規則第52条の21)。50人未満の事業場に報告義務まで拡大されたわけではありません。

この記事の根拠

  • 労働安全衛生法 第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
  • 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号、2025年5月14日公布)— 50人未満の事業場への実施義務の拡大
  • 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第195号、2026年6月10日公布)— 50人未満への義務拡大は2028年(令和10年)4月1日施行
  • 労働安全衛生規則 第52条の9(1年以内ごとに1回、定期に)/第52条の10(実施者)/第52条の13第2項(同意・記録の5年間保存)/第52条の14(集団ごとの集計・分析=努力義務)/第52条の16第1項・第2項(面接指導の申出・実施)/第52条の19(医師からの意見聴取)/第52条の21(報告=常時50人以上)
  • 労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第112号、2026年6月30日公布、2027年4月1日施行)— 集団分析を特定の個人を識別することができない方法で行うことの明文化(第52条の14第1項)。施行通達=基発0630第2号(令和8年6月30日)
  • 労働安全衛生法の施行について(昭和47年9月18日発基第91号)— 事業場の単位の考え方
  • 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月。2026年2月25日公表)
  • 厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(心理的な負担の程度を把握するための検査等指針公示第1号)、「ストレスチェック制度Q&A」
  • 公的資料は2026年8月19日に確認

この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、ストレスチェック制度導入に伴う労務面の体制整理、社内規程・ルール、対象者管理や社内運用についてご相談いただけます。ストレスチェック実施者は資格要件を満たす医師等、高ストレス者の面接指導・医学的判断は医師、個別の紛争は弁護士、税務は税理士の領域です。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。制度の適用や個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・都道府県労働局など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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