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2026.09.01誰に頼むか

社員を辞めてもらうとき、社労士と弁護士のどちらに頼むのか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

当事務所は「よほどのことがない限り、解雇はおすすめしません」とお伝えしています。それでもやむを得ず解雇を選ぶ場面はあり、一般論では片付かないケースが現場では起きます。解雇の判断の枠組み、残る手続、そして「どこまで社労士・どこから弁護士」かを整理します。

結論(先に要点):当事務所は、ご相談者に「よほどのことがない限り、解雇はおすすめしません」とお伝えしています。解雇は、あとから「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を争われやすい選択だからです。それでも、やむを得ず解雇を選ばざるを得ない場合はあります。一般論では片付けられないケースが、現場では実際に起きるからです。この記事は、解雇を考える前と決めたあとに押さえること、そして「どこまで社労士、どこから弁護士」かを整理します。個別の「この解雇は有効か」の判断は、この記事の範囲外です。

「社員を辞めてもらいたい」というご相談は、たいてい一つの答えに落ちません。退職勧奨と解雇の違い、解雇の種類、手続の期限、そして法的なリスク——切り分けるべき論点が複数あります。このページは、解雇を検討している中小企業の経営者・総務担当の方に向けて、判断の枠組みと残る手続、誰に何を頼むかを整理します。

なぜ「解雇はおすすめしない」のか?

解雇は、その理由の客観性と相当性があとから振り返って争われる選択です。労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。

解雇が無効と判断されると、雇用関係は続いていたことになります。すると、その間の賃金を遡って支払うなど、会社側の負担は思いのほか大きくなります。「とりあえず辞めてもらえば終わり」ではなく、一度無効になると取り返しがつきにくい。だから当事務所は「よほどのことがない限り、解雇はおすすめしません」と申し上げているのです。

それでも解雇を選ぶとき、何が分かれ目になるのか?

まず、解雇には種類があります。

類型どんな解雇か押さえる枠組み
普通解雇懲戒ではなく、契約を終了させる通常の解雇客観的に合理的な理由+社会通念上相当(労働契約法第16条)
整理解雇経営上の理由による人員整理人員整理の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続の相当性(裁判例で重視される一般論)
懲戒解雇就業規則の懲戒事由に基づく解雇懲戒事由への該当性と相当性。予告手当の免除には「解雇予告除外認定」が必要(労働基準法第20条第3項)

共通するのは、いずれも**「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が問われる点です。ここまでが、解雇を考えるときに押さえておくべき判断の枠組み**です。個別の事案への当てはめ(このケースが有効か無効か)は、資格者・弁護士が行うべき領域です。

「一般論では片付かない」とは、どんなケースか?

現場では、教科書的な整理だけでは収まらないケースが起きます。代表的な論点を挙げます。

  • 能力不足・勤務態度——「使えない」というだけでは客観的合理性が足りないとされることがあります。指導や改善の機会を与えたか、評価や記録が裏付けになるかが論点になります。
  • 私傷病・休職の長期化——復職の見込み、休職期間満了の扱い、療養中の解雇制限(労働基準法第19条)との関係など、複数の論点が重なります。
  • 有期契約・試用期間——期間途中の解雇は「やむを得ない事由」が要件です(労働契約法第17条)。試用期間中も、留保解約権の行使として一定の広い判断の余地はありますが、無限定ではありません。
  • 高齢者・育児や介護と重なる場面——解雇制限や不利益取扱いの観点が加わり、単純な「人員整理」では済まないことがあります。

このように、「一般的には○」「一般論では△」だけでは整理しきれないケースが実際にあります。だからこそ、事実を丁寧に並べ、論点を分け、必要なら弁護士の判断に載せる工程が要ります。

解雇を決めたら、どんな手続きが残るのか?

解雇が有効かどうかとは別に、手続きが残ります。ここは逃げられません。

手続内容根拠・期限
解雇予告30日前までに予告。予告しない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)労働基準法第20条
解雇制限の確認業務上災害の療養休業中+その後30日、産前産後休業中+その後30日は解雇不可労働基準法第19条
退職証明書労働者が請求した場合、遅滞なく交付(解雇の場合の理由を含む)労働基準法第22条
賃金の清算未払い賃金等は請求から7日以内に支払い労働基準法第23条
雇用保険の資格喪失届離職日の翌日から10日以内にハローワークへ雇用保険法
健康保険・厚生年金の資格喪失届事実があった日から5日以内健康保険法・厚生年金保険法

懲戒解雇で解雇予告手当の支払いを省くには、労働基準監督署長の**「解雇予告除外認定」**を受ける必要があります(労働基準法第20条第3項)。認定がなければ、予告又は手当が必要です。

誰に、何を頼むのか?

すること誰の業務か
解雇の進め方の棚卸し、事実・経緯の整理、解雇予告・退職証明書・離職票・社会保険資格喪失等の手続社会保険労務士(当事務所)
就業規則の懲戒事由・服務規律の整備社会保険労務士(当事務所)
「この解雇が有効か」の法的判断、交渉、労働審判・訴訟への対応弁護士
退職金・源泉徴収票の税務の扱い税理士

解雇の「当てはめ」は弁護士の業務です。当事務所は、事実と論点を整理し、手続を整えるところまでを担い、有効性の判断が必要な場面では弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。懲戒解雇の前提となる就業規則の整備は、就業規則は何人から義務かもあわせてご覧ください。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、解雇を**「検討している段階」**からご一緒します。「辞めてもらう」以外に取り得る選択肢(配置転換、雇用形態の見直し、退職勧奨・合意退職の整理)も含めて棚卸しをし、そのうえで解雇に進む場合の手続き——解雇予告、退職証明書、離職票、社会保険の資格喪失、就業規則との整合——をお受けします。ご相談は無料です。 料金は報酬額表に掲載しています。

なお、「この解雇が有効か」の法的判断は行いません。その判断が必要な場面では、弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 解雇を考えています。まずどこに相談すればよいですか?
A. まずは社会保険労務士に「何が問題で、何を実現したいか」を整理していただくのが現実的です。解雇以外の選択肢も含めて棚卸しをし、リスクが高い場合は弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。解雇の有効性そのものの判断は弁護士の業務です。

Q. 「30日前に予告すれば解雇できる」のですか?
A. いいえ。解雇予告(労働基準法第20条)は手続上の要件で、解雇の有効性(労働契約法第16条)とは別の話です。予告を守っていても、客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性がなければ、解雇は無効になり得ます。

Q. 懲戒解雇なら解雇予告手当は不要ですか?
A. 必ずしも不要ではありません。予告手当の支払いを省くには、労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」(労働基準法第20条第3項)を受ける必要があります。認定がなければ、予告又は手当が必要です。

Q. 試用期間中なら解雇しやすいですか?
A. 試用期間中の解雇は、留保解約権の行使として一定の広い判断の余地が認められることがありますが、無限定ではありません。個別の当てはめは弁護士の判断になります。

この記事の根拠

  • 労働契約法(平成19年法律第128号)第16条、第17条
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第19条、第20条第1項・第3項、第22条、第23条
  • 雇用保険法に基づく資格喪失届(離職日の翌日から10日以内)、健康保険法・厚生年金保険法に基づく資格喪失届(事実があった日から5日以内)
  • 整理解雇の考慮要素は、法文ではなく裁判例で示される一般的な整理です(特定の事件名の引用は控えます)
  • 条文は厚生労働省・都道府県労働局の公表資料により確認しています(2026年8月15日時点)

この記事は、誰に相談するか・どう判断するかまでは決めていません。解雇をめぐる事実整理・手続(解雇予告、退職証明書、離職票、社会保険資格喪失)・就業規則の整備は社会保険労務士の業務です。「この解雇が有効か」の法的判断、交渉、労働審判・訴訟への対応は弁護士の業務です。退職金・源泉徴収の税務は税理士の業務です。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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