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2026.09.01誰に頼むか

AIがつくった就業規則は、届け出られるか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

届け出られます。就業規則に様式の指定はなく、誰が作ったかも問われません。問題は中身と手続のほうです。意見書の添付(労働基準法第90条)と周知(第106条)が必要で、実態と合わない規程は争いのときに機能しません。AI原案の直しどころと頼み方まで整理します。

結論(先に要点):届け出られます。就業規則に様式の指定はなく、誰が作ったかも問われません。問題は中身と手続のほうです。過半数代表者等の意見を聴いた書面の添付(労働基準法第90条)と周知(第106条)が必要で、実態と合っていない規程は、争いになったときに機能しません

AIに就業規則の原案を作らせてみた——という会社が増えています。このページは、その原案を前にして「これをそのまま出していいのか」と迷っている経営者・総務担当の方に向けたものです。何人から作成義務があるかは就業規則は何人から義務か。義務でないものは何かで扱いました。本記事が扱うのは、AIがつくった原案の扱いです。

AIがつくった原案でも、届け出は受理されるのか?

されます。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則を作成し、行政官庁に届け出ることを義務づけていますが、作成者の資格については何も定めていません。社内で作っても、AIの原案を土台にしても、条文上の扱いは同じです。

第89条が定めているのは、書く中身のほうです。始業・終業時刻、休憩・休日・休暇(第1号)、賃金の決定・計算・支払の方法、締切り・支払時期、昇給(第2号)、退職に関する事項(解雇の事由を含む。第3号)は、必ず記載しなければならない事項です。退職手当・賞与・安全衛生・表彰制裁などは、定めをする場合には記載する事項として並んでいます。AIの原案をチェックする最初の物差しは、この号の並びです。

受理されることと、使えることは同じか?

同じではありません。届出の前後に、条文上の手続が2つあります。

手続根拠中身
意見聴取と意見書の添付労働基準法第90条過半数労働組合(なければ労働者の過半数代表者)の意見を聴き、その意見を記した書面を届出に添付する
周知労働基準法第106条各作業場の見やすい場所への掲示・備え付け、書面の交付、その他厚生労働省令で定める方法で労働者に周知する

意見聴取は「同意を得る」ことまでは求められていませんが、聴かずに届け出ることはできません。そして周知されていない就業規則は、労働者を拘束する根拠として機能しない——ここは裁判例の積み重ねがある領域で、個別の事案の効力は事情によって判断が分かれます。「受理された」は「有効に機能する」の保証ではない、という一点を押さえてください。

実態と合っていない規程は、何が起きるのか?

AIの原案でよく見かけるのは、文章としては整っているのに、その会社の実態と接続していない規程です。

  • 労働時間制度が実態と違う——原案は1日8時間・週40時間の原則形なのに、実際はシフト制や変形労働時間制で回っている
  • 手当・固定残業代の定めが実際の給与明細と食い違う——規程と支給実態がずれると、割増賃金の計算根拠から崩れます
  • 改正が反映されていない——AIの答えが条文の番号や施行日でずれる構造はAIに労務を聞いてから、社労士に相談してよいかに書いたとおりで、就業規則の原案でも同じことが起きます
  • その会社に無い制度の規定が紛れ込む——使っていない制度の条文が残っていると、そこが労使の主張のずれの入口になります

就業規則は、争いになったときに会社側が拠って立つ文書です。実態と合っていない規程は、いざというときに会社を守りません。かたちの上で届け出が済んでいることと、規程が働くことは、別の問題です。

原案があるとき、社会保険労務士に何を頼むのか?

「ゼロから作ってもらう」のではなく、原案を持ち込んで確認を頼む——この入口で構いません。むしろ、たたき台があるほうが論点は速く見えます。頼む中身は次の3つです。

頼むこと中身
実態との突き合わせ労働時間制度・賃金・手当・休暇の定めを、実際の働き方と給与明細に照らして確認する。ここが作業の本体です
記載事項と最新法令の確認第89条の必要記載事項が揃っているか、改正が反映されているか
手続の設計過半数代表者の選出、意見聴取、届出、周知までの段取り

原案の確認から、変更・作成の代行、届出までの料金は報酬額表の「就業規則」の欄で公開しています。ご相談は無料です。 AIの原案は、そのままお持ちください。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、就業規則の作成・変更と届出、その前提になる労務の実態の聴き取り、労働社会保険の手続をお受けします。AIの原案を活かす形での確認・手直しにも対応します。よくある質問はFAQにまとめています。

誰に相談するか

税務(年末調整を含む)は税理士、登記は司法書士、すでに紛争になっている事案は弁護士の業務です。在留資格の申請・補助金・会社設立の書類は四葉行政書士事務所(当事務所とは別の事業体で、別々にご契約いただきます)がお受けします。いずれも紹介料の授受はありません。

よくある質問

Q. AIで作った就業規則を、そのまま労働基準監督署に出せますか?
A. 形式の上では出せます。様式の指定はなく、作成者の資格も問われません。ただし過半数代表者等の意見を聴いた書面の添付(労働基準法第90条)が必要で、労働者への周知(第106条)も義務です。受理されることは、規程が有効に機能することの保証ではありません。

Q. 従業員が10人未満でも、届け出は必要ですか?
A. 作成・届出の義務は「常時10人以上」の事業場にかかります(労働基準法第89条)。10人未満に義務はありませんが、労働条件の根拠を明確にするために作る意味はあります。詳しくは就業規則は何人から義務か。義務でないものは何かをご覧ください。

Q. AIの原案では、どこを直すことが多いのですか?
A. 一般的な傾向として、労働時間制度や手当の定めが実態と合っていない箇所、法改正が反映されていない箇所、その会社にない制度の規定が残っている箇所です。文章の出来ばえより、実態との突き合わせに時間がかかります。

Q. 原案を持ち込めば、費用は安くなりますか?
A. 内容によります。作業の本体は実態の聴き取りと突き合わせのため、原案の有無で費用が大きく変わらない場合もあります。いずれの場合も、着手前に報酬額表に沿ってお見積りを提示します。ご相談は無料です。

この記事の根拠

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条(作成及び届出の義務・記載事項)、第90条(作成の手続=意見聴取・意見書の添付)、第106条(周知義務) ―― 2026年8月14日にe-Gov法令検索で現行条文を確認

本記事は一般的な情報提供です。実態と合っているかの評価や、個別の規程の効力に関する判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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