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2026.08.16障害福祉の許認可(行政書士の実務から)

生活介護(障害福祉)の指定を受けるとき、物件は何を満たすのか──面積・設備・用途変更・消防と分離受任

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

生活介護は障害者総合支援法第5条第7項の障害福祉サービスで、開業には都道府県知事等からの指定(同法第36条)が必要です。人員・設備基準(平成18年厚生労働省令第171号)、用途変更確認申請が要る規模(建築基準法第87条・床面積200㎡超)、消防の区分、指定申請と事前協議の順序を整理し、用途変更・設計は建築士、消防は消防署、労務は社会保険労務士、登記は司法書士、税務は税理士へ分離受任で振る分担を示しました。

結論(先に要点):生活介護は、障害者総合支援法第5条第7項に定める障害福祉サービスで、事業を始めるには都道府県知事(指定都市・中核市では市長)から指定障害福祉サービス事業者の指定(同法第36条)を受けます。人員・設備・運営の基準は同法第43条にもとづき、国の基準である平成18年厚生労働省令第171号と各自治体の条例で具体的に定められます。物件は面積・設備・避難がそろって初めて指定の対象になるため、申請書づくりと同時に、物件の確保、人員の採用、建築・消防の確認を並行して進めます。本記事は、指定申請の流れと物件が満たすべき点を整理し、どの部分を誰に頼むかを示すためのものです。指定の可否や基準への適合は指定権者の審査によるものであり、当事務所が指定を保証するものではありません。

生活介護の指定基準は、どの法令で決まるのか?

生活介護は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法。平成17年法律第123号)第5条第7項に定めるサービスです。常時介護を要する障害者につき、主として昼間、障害者支援施設その他の施設で、入浴・排せつ・食事等の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の便宜を供与するものと定義されています。

事業を行うには、同法第36条にもとづく指定障害福祉サービス事業者の指定が必要です。指定の人員・設備・運営の基準は同法第43条にもとづき、国の基準である平成18年厚生労働省令第171号(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)を踏まえて、都道府県・指定都市・中核市の条例で定められます。確認すべき法令は「法律→省令→自治体の条例」の三層になります。

区分根拠
サービスの定義障害者総合支援法第5条第7項
事業者の指定障害者総合支援法第36条
人員・設備・運営基準の委任障害者総合支援法第43条
国の基準平成18年厚生労働省令第171号
具体的な基準都道府県・指定都市・中核市の条例

利用者が支援を受けるには障害支援区分の認定が前提で、生活介護の対象は原則として区分3以上(施設入所を伴う場合は区分4以上)とされ、年齢が50歳以上の場合は基準が緩和されます。区分の範囲は厚生労働省令で定められているため、個別の該当は認定と自治体の運用で確認します。

生活介護の人員基準は、何人必要になるのか?

人員基準は平成18年厚生労働省令第171号に定められ、自治体の条例で具体化されています。基本的な配置は次のとおりです。

職種配置の考え方
医師利用者の健康管理・療養上の指導に必要な数(嘱託医でよい)
看護職員・理学療法士又は作業療法士・生活支援員この3職種の総数を平均障害支援区分に応じて配置する。看護職員1人以上、生活支援員1人以上、うち1人以上は常勤
サービス管理責任者利用者60人以下で1人以上。61人以上は40人(端数を含む)ごとに1人追加
管理者原則として専従の常勤1人(支障がなければ兼務できる場合がある)

看護職員・理学療法士又は作業療法士・生活支援員の総数は、平均障害支援区分に応じて次のように下限が変わります。

平均障害支援区分総数の下限
4未満利用者の数を6で除した数以上
4以上5未満利用者の数を5で除した数以上
5以上利用者の数を3で除した数以上

生活介護の指定は原則として利用定員20人以上が必要です(多機能型など類型によって考え方が変わります)。人員基準を満たす雇用契約・労働時間の設計・就業規則・社会保険の適用は社会保険労務士の領域で、当社とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。

物件の面積・設備で欠格になるのは、どこか?

設備基準(平成18年厚生労働省令第171号)では、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室その他運営上必要な設備が求められます。物件で不足しやすいのは次の点です。

設備主な求められ方
訓練・作業室訓練・作業に支障がない広さ。必要な機械器具等を備える。1人当たりの面積を条例で定める自治体があり、3.3㎡以上とする例がある
相談室間仕切り等でプライバシーに配慮できること
洗面所・便所利用者の特性に応じた数・仕様
多目的室支援の提供に支障がない場合、相談室と兼ねられる自治体もある

車いすでの移動やトイレ・出入口の幅、段差の解消といったバリアフリーは、建築基準法や各自治体の福祉のまちづくり条例にも関わります。設備は「あるかないか」だけでなく「広さ・仕様・動線が基準に適合しているか」まで見られるため、内見の段階で図面と現況を照らして確認することが、後戻りを減らす近道です。面積や設備が基準に届かない物件は、指定の対象になりません。

用途変更の確認申請が要るのは、どの規模からか?

事務所や店舗などの既存建物を生活介護の事業所にする場合、建築基準法上の用途変更にあたることがあります。障害福祉サービス事業所は、建築基準法施行令第19条にいう「児童福祉施設等」として扱われ、同法の特殊建築物に位置づけられます。

特殊建築物への用途変更で、その用途に供する部分の床面積が200㎡を超えるときは、建築基準法第87条第1項により、同法第6条第1項第一号を準用して建築主事又は指定確認検査機関への確認申請が必要です。この床面積の基準は、従来の100㎡超から200㎡超へ引き上げられ、2019年(令和元年)6月25日に施行されました。ただし200㎡以下でも、建築基準法・消防法の実体的な基準(防火・避難・採光など)は適用されるため、「確認申請が不要であること」と「基準に適合していること」は別問題です。

用途変更にあたるか、確認申請が要るかは、図面と現況にもとづく建築の専門的判断です。設計・確認申請は建築士(設計者)に、既存不適格や検査済証の有無の確認とあわせて依頼します。当社は物件情報と用途地域・面積の一次確認までを担い、建築確認の判断は行いません。

消防設備で追加コストが出るのは、どこか?

生活介護の事業所は、消防法施行令別表第一の(6)項(社会福祉施設等)に区分されます。同じ(6)項でも、自力避難が困難な者を主として入所させる施設の(6)項ロと、通所を中心とするその他の(6)項ハとで、必要な消防用設備が変わります。通所の生活介護は(6)項ハに区分されるのが一般的ですが、利用者の状態や施設形態によって用途判定は異なります。

消火器・自動火災報知設備・誘導灯・スプリンクラー設備などの要否は、用途区分・延べ面積・階数・収容人員で決まります。既存建物では、この追加設置が費用と工期の見込み違いになりやすい部分です。防火対象物の用途判定や消防同意は消防署の判断によるため、物件を決める前に管轄の消防署へ相談します。当社・当事務所は消防設備の要否を判断しません。

指定申請の書類と事前協議は、どんな順序で進むのか?

一般的な流れは次のとおりです。順番が前後すると差し戻しになりやすいため、事前協議を早めに始めます。

  1. 事業計画・資金計画を固め、法人を設立する(定款の事業目的に障害福祉サービスを加える)
  2. 物件を選び、設備基準・建築基準法・消防法への適合を確認する
  3. 指定権者と事前協議を行う
  4. サービス管理責任者・生活支援員・看護職員等を確保する
  5. 申請書と添付書類を作成し、締切までに提出する
  6. 書類審査・必要に応じて現地確認
  7. 指定(多くの自治体で毎月1日付)

指定は毎月1日付で行う自治体が多く、申請書の提出期限は指定希望日の前月または前々月に設定されているのが一般的です。締切は指定権者ごとに異なり、年度替わりは前倒しになることもあるため、必ず当該自治体の公式ページで確認します。代表的な必要書類は次のとおりです。

  • 指定申請書、指定に係る記載事項(付表)
  • 法人の登記事項証明書、定款
  • 事業所の平面図、写真、賃貸借契約書等
  • 運営規程、重要事項説明書
  • 従業者の勤務体制・勤務形態一覧表、資格証・実務経験の証明、サービス管理責任者研修等の修了証
  • 管理者・サービス管理責任者の経歴書
  • 収支予算書、利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要、各種誓約書 等

四葉行政書士事務所では、行政書士業務の範囲で、指定申請書・付表・添付書類の作成、事前協議の資料整理、運営規程等の文案づくりを支援します。基準への最終的な適合判断や指定の可否は指定権者の審査によります。

物件・建築・労務・登記・税務は、それぞれ誰に頼むのか?

指定申請は複数の専門分野が交わります。担当は次のように分かれます。

  • 指定申請書・付表・添付書類の作成、事前協議の支援 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 事業用物件の選定・賃貸借・重要事項説明、用途地域・面積の一次確認 → 四葉不動産株式会社
  • 用途変更の確認申請・設計、既存不適格や検査済証の確認 → 建築士(設計者)
  • 消防用設備の要否判定・消防同意 → 消防署
  • 人員基準に対応した雇用契約・就業規則・労働時間管理・社会保険の適用 → 社会保険労務士
  • 法人設立・変更登記 → 司法書士
  • 法人の会計・税務・税額計算 → 税理士
  • 権利義務・紛争にわたる個別の法的判断 → 弁護士

四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体です。当社は指定申請の支援のみを独立した事業体として担い、物件・建築・消防・労務・登記・税務は、それぞれの資格者・窓口と別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。障害福祉サービスの許認可の全体像は障害福祉サービスの許認可、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。関連する類型の指定申請は放課後等デイサービス・児童発達支援の指定申請の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 生活介護の事業所は、どんな物件でも開けますか?
A. 面積・設備・避難のほか、既存建物では用途変更の確認申請や消防用設備の追加が必要になることがあります。用途変更の判断は建築士(設計者)、消防用設備の要否は消防署に確認します。物件は不動産、建築確認は建築士と、それぞれ別事業体として別々にご契約いただきます。

Q. 用途変更の確認申請は必ず必要ですか?
A. 特殊建築物への用途変更で、その用途に供する部分の床面積が200㎡を超えるときは、建築基準法第87条第1項により確認申請が必要です。200㎡以下で確認申請が不要でも、防火・避難・採光などの実体的な基準は適用されます。要否の判断は図面と現況にもとづく建築士の専門的判断です。

Q. 人員は開所前にすべてそろえる必要がありますか?
A. サービス管理責任者や常勤要件など、指定の要件に直結する人員は申請時点で確保状況を示す必要があります。採用や労働条件の設計、社会保険の適用は社会保険労務士の領域で、当社とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。

Q. 定員は何人からですか?
A. 生活介護の指定は原則として利用定員20人以上が必要です。多機能型など類型によって考え方が変わるため、個別の定員は当該自治体の条例と手引きで確認します。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)第5条第7項・第36条・第43条(参照日 2026-08-24)
  • e-Gov法令検索・厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号。公布 平成18年9月29日)(参照日 2026-08-24)
  • e-Gov法令検索「建築基準法」(昭和25年法律第201号)第6条第1項第一号・第87条・別表第一、建築基準法施行令第19条(参照日 2026-08-24)
  • 国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)の施行について」(用途変更に伴う確認申請が必要となる規模を100㎡超から200㎡超に見直し。令和元年6月25日施行)(参照日 2026-08-24)
  • e-Gov法令検索「消防法施行令」別表第一((6)項)(参照日 2026-08-24)
  • 各自治体(都道府県・指定都市・中核市)の指定障害福祉サービス事業者の指定申請の手引き・条例(参照日 2026-08-24)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の指定の可否、人員・設備・運営基準への適合、用途変更確認申請や消防用設備の要否、申請日程を保証するものではありません。指定の最終的な審査は指定権者(都道府県・指定都市・中核市)が行います。用途変更の確認申請の要否・設計は建築士(設計者)、消防用設備の要否と消防同意は消防署、事業所ごとの締切・様式・必要書類は当該自治体の公式ページで確認してください。事業用物件の選定・賃貸借・重要事項説明は四葉不動産株式会社、人員基準に対応した雇用契約・労働時間管理・社会保険の適用は社会保険労務士、法人の設立・変更登記は司法書士、会計・税務は税理士、権利義務・紛争にわたる個別の法的判断は弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

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