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2026.09.01社会保険

外国人社員の海外の家族、健康保険の扶養に入れられる?

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

外国人社員が母国に残してきた家族を健康保険の扶養に入れられるかは、2020年(令和2年)4月から加わった「国内居住要件」が分かれ目です。原則として日本国内に住所(住民票)がある家族でないと被扶養者になれませんが、留学中の子など「海外特例要件」に当たる家族は海外にいても入れる場合があります。就労のために海外にいる家族は原則対象外です。認定するのは会社ではなく保険者。在留資格の手続は行政書士の業務で、社会保険(社会保険労務士)とは担当が分かれます。

結論(先に要点):外国人社員が母国に残してきた家族を健康保険の扶養に入れられるかは、2020年(令和2年)4月から加わった「国内居住要件」が分かれ目です。原則として日本国内に住所(住民票)がある家族でないと被扶養者になれません。ただし、留学中の子など「海外特例要件」に当たる家族は、海外にいても扶養に入れる場合があります。就労のために海外にいる家族は原則として対象外です。認定するのは会社ではなく保険者です。

「ベトナムから来た社員が、母国の妻子を健康保険の扶養に入れたいと言っている。海外に住んでいても入れるのか」——外国人材の採用が増えるなかで、こうした相談が増えています。この記事は、外国人材を雇用する事業主・人事担当の方に向けて、健康保険の被扶養者の「国内居住要件」と海外特例、そして入社時に確認すべきことを整理します。

健康保険の扶養に「国内居住要件」ができたのは、いつから?

2020年(令和2年)4月1日からです。この日に施行された改正で、健康保険の被扶養者の要件に「日本国内に住所を有すること(国内居住要件)」が加わりました。それまでは海外に住む家族でも生計維持などの要件を満たせば扶養に入れましたが、改正後は原則として日本国内に住民票がある家族でないと被扶養者になれません。

ここでいう「住所」は、**住民基本台帳に住民登録があるか(住民票があるか)**で判断されます。日本国内に住民票がある人は、原則として国内居住要件を満たします。

つまり、外国人社員の家族についても、その家族が日本に来て住民登録をしていれば、他の要件(生計維持など)を満たすことで被扶養者になれます。逆に、家族が母国に住んだままの場合は、次に述べる「海外特例要件」に当たらない限り、原則として扶養に入れません。

海外にいる家族でも、扶養に入れる例外はあるのか?

あります。国内居住要件には**「海外特例要件」**が定められており、次のいずれかに当たる家族は、海外にいても被扶養者と認められる場合があります。

海外特例要件(いずれかに該当)具体例
外国において留学をする学生海外の学校に留学している子
外国に赴任する被保険者に同行する者海外赴任する社員に同行する配偶者・子
観光・保養・ボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者一時的な渡航中の家族
被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者海外赴任中に生まれた子など
渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者上記に準じて生活の基礎が日本にあると認められる家族

重要なのは、**「就労以外の目的」**という点です。海外で働くために現地にいる家族は、原則として海外特例要件に当たりません。 また、外国人社員が母国に残してきた妻子が、これまで日本に住んだことがなく母国で生活している場合、上記の類型に当てはまらないことが多く、そのままでは扶養に入れないのが一般的です。

「家族が海外にいるが扶養に入れたい」という相談では、まず**その家族が海外特例要件のどれに当たるのか(当たらないのか)**を、実態に照らして確認することが出発点になります。判断に迷うケースは少なくありません。

外国人社員の入社時、扶養の手続で何を確認する?

外国人社員を採用したとき、扶養に関して確認・準備することを整理します。

確認事項ポイント
家族の居住地日本に住民票があるか、海外か。海外なら海外特例要件に当たるか
続柄・生計維持被保険者との身分関係(続柄)と、主として生計を維持されているか
収入被扶養者となる家族の収入が認定基準内か(見込み年収の確認)
添付書類続柄・生計維持を確認できる書類。外国語の書類は日本語の翻訳文を添える
海外特例の書類該当する場合、査証・学生証・海外赴任辞令・居住証明書の写しや「被扶養者現況申立書」など

外国人社員の場合、続柄や生計維持を証明する書類が外国語であることが多く、その場合は日本語の翻訳文の添付が求められます。書類の準備に時間がかかるため、入社時に早めに確認しておくと手続がスムーズです。

なお、収入の考え方(130万円などの認定基準)や、一時的に収入が増えたときの取扱いは、日本人の家族と同じ枠組みで判断されます。詳しくは130万円の壁、一時的な収入増は事業主証明で乗り切れるかをご覧ください。外国人雇用の入社手続全体は外国人を雇うとき、どの窓口に何を届け出るのかにまとめています。

被扶養者認定を最終的に判断するのは、**会社ではなく保険者(協会けんぽ・健康保険組合)**です。会社は書類をそろえて届け出るところまでで、認定の可否は保険者が決めます。健康保険組合によっては独自の運用や追加書類を求める場合があります。

なお、これは日本国内で働く外国人社員の海外にいる家族を扶養に入れられるかという論点です。逆に、日本人社員が海外へ駐在するときの社会保険(社会保障協定・二重加入の防止)は別の話で、海外赴任で社会保険はどうなるか──社会保障協定と二重加入にまとめています。対象者も論点も逆なので、混同しないようご注意ください。

在留資格の手続は、誰に頼めばいいのか?

外国人材の採用では、社会保険・労働保険の手続(社会保険労務士の業務)とは別に、在留資格(ビザ)の手続が発生します。在留資格認定証明書の交付申請、在留期間の更新、在留資格の変更などの出入国在留管理庁への申請取次は、行政書士の業務です。

四葉には社会保険労務士事務所(四葉社会保険労務士事務所)と行政書士事務所(四葉行政書士事務所)がありますが、両者は独立した事業体であり、それぞれ別々にご契約いただきます。 一方の契約が他方の契約を兼ねることはありません。社会保険・扶養の手続は社会保険労務士、在留資格の手続は行政書士と、担当が分かれる点をあらかじめご理解ください。

外国人雇用で、社会保険・労働・在留資格のどこを誰に相談すればよいか迷ったときは、まず外国人を雇うとき、相談の窓口はどう分かれるのかをご覧ください。

よくある質問

Q. 外国人社員が母国に残した妻子を、健康保険の扶養に入れられますか?
A. 原則として、その家族が日本国内に住民票を持っていることが必要です(国内居住要件)。母国で生活している家族は、留学・海外赴任への同行など「海外特例要件」に当たらない限り、原則として扶養に入れません。最終的な認定は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)が判断します。

Q. 海外に留学している子は、扶養に入れますか?
A. 「外国において留学をする学生」は海外特例要件に当たり、海外にいても被扶養者と認められる場合があります。学生証や在学証明などで留学の事実を確認できる書類が必要です。ただし就労を目的として海外にいる家族は、原則として対象外です。

Q. 添付書類が外国語のときはどうすればよいですか?
A. 続柄や生計維持を証明する書類が外国語の場合は、日本語の翻訳文を添えて届け出るのが一般的です。翻訳の準備に時間がかかることがあるため、入社時に早めに確認しておくことをおすすめします。

Q. 社会保険の手続と、在留資格(ビザ)の手続は同じところに頼めますか?
A. 担当が分かれます。社会保険・扶養の手続は社会保険労務士、在留資格の手続は行政書士の業務です。四葉社会保険労務士事務所と四葉行政書士事務所は独立した事業体で、別々にご契約いただきます。

この記事の根拠

  • 健康保険法第3条第7項(被扶養者の定義・国内居住要件)。2020年(令和2年)4月1日施行の改正(医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律・令和元年法律第9号)により、被扶養者の要件に「日本国内に住所を有すること」が加わりました。「住所」は住民基本台帳への住民登録の有無で判断されます(e-Gov法令検索、健康保険法・大正11年法律第70号、2026年8月26日参照)
  • 海外特例要件。国内居住要件の例外として、(1) 外国において留学をする学生、(2) 外国に赴任する被保険者に同行する者、(3) 観光・保養・ボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者、(4) 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者、(5) 渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者、が定められています。該当する場合は被扶養者(異動)届に「被扶養者現況申立書」や身分関係・生計維持関係を確認できる書類の添付が必要です(日本年金機構「従業員の家族が海外居住の場合の手続き」/厚生労働省「被扶養者の国内居住要件等について」令和元年11月13日保保発1113第1号、2026年8月26日参照)
  • 続柄・生計維持を証明する書類が外国語の場合は、日本語の翻訳文の添付が求められるのが一般的です。具体的な様式・添付書類は各保険者の案内でご確認ください(協会けんぽ・各健康保険組合の被扶養者(異動)届の案内、2026年8月26日参照)
  • 被扶養者認定を最終的に判断するのは、被保険者が加入する保険者(協会けんぽ・健康保険組合)です。健康保険組合によっては独自の運用・添付書類がある場合があります
  • 在留資格(ビザ)に関する出入国在留管理庁への申請取次は行政書士の業務であり、社会保険・扶養の手続(社会保険労務士の業務)とは担当が分かれます

この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。社会保険・被扶養者認定の手続は社会保険労務士の業務、在留資格の手続は行政書士の業務です。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別の被扶養者認定の可否は保険者が判断します。制度の適用や個別の手続は、最新の一次情報(厚生労働省・日本年金機構・各保険者など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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