育児・介護休業法2025年改正で何が変わった?会社が整える就業規則・個別周知・意向確認
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
育児・介護休業法は令和6年法律第42号(2024年5月31日公布)で改正され、2025年4月1日と10月1日に段階施行されています。会社に求められるのは就業規則の変更だけでなく、妊娠・出産申出時や子が3歳になる前、介護の申出時や40歳前後など場面ごとの個別周知・意向確認・意向聴取・配慮・情報提供・雇用環境整備です。とくに3歳〜小学校就学前の子を養育する社員向けに、5つの柔軟な働き方措置から2つ以上を選んで導入することが2025年10月から義務になっています。
結論(先に要点):育児・介護休業法は令和6年法律第42号(2024年5月31日公布)によって改正され、2025年4月1日と2025年10月1日の2段階で施行されています(2026年8月現在はいずれも施行済み)。会社に求められるのは、就業規則などの規程を直すことだけではありません。妊娠・出産の申出があった時や子が3歳になる前、介護に直面した時や40歳前後など、場面ごとに「個別周知」「意向確認」「意向聴取」「聴取した意向への配慮」「情報提供」「雇用環境整備」を使い分ける運用までが対象です。とくに2025年10月からは、3歳から小学校就学前の子を養育する社員向けに、5つの柔軟な働き方措置のうち2つ以上を選んで導入することが義務になりました。この記事では、改正内容を施行時期で分けて整理し、それぞれの概念の違いと、会社が場面ごとに何をすべきかを順に説明します。
この記事は、育児・介護と仕事の両立を必要とする従業員を1人でも抱える、または今後抱える可能性がある中小企業の経営者・人事労務担当者を想定しています。「就業規則を直せば終わり」ではなく、日常の運用まで含めて整えることが、今回の改正のポイントです。
育児・介護休業法は、2025年に何が変わったのか?
改正は2025年4月1日施行分と2025年10月1日施行分に分かれます。まず全体像を、育児と介護に分けて整理します。
2025年4月1日施行(育児)
- 子の看護休暇の名称を「子の看護等休暇」に変更
- 対象となる子の範囲を小学校3年生修了まで拡大
- 取得事由に感染症に伴う学級閉鎖、入園・入学式、卒園式を追加
- 継続雇用6か月未満の労働者を労使協定で除外できる仕組みの廃止
- 所定外労働の制限(残業免除)の対象を小学校就学前まで拡大
- 3歳未満の子を養育する労働者へのテレワーク等を選択できる措置(努力義務)
- 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク等を追加
- 育児休業取得状況の公表義務を常時雇用する労働者数300人超へ拡大
2025年4月1日施行(介護)
- 介護離職防止のための雇用環境整備
- 介護に直面した旨の申出時の個別周知・意向確認
- 介護に直面する前の40歳等での早期情報提供
- 介護休暇の勤続6か月未満の労使協定による除外の廃止
- 要介護状態の対象家族を介護する労働者へのテレワーク等を選択できる措置(努力義務)
2025年10月1日施行
- 3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者への柔軟な働き方措置(5つから2つ以上選択)
- 柔軟な働き方措置の個別周知・利用意向確認
- 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
育児については「子の年齢に応じた制度」、介護については「介護に直面する前から備える仕組み」が、それぞれ拡充されました。以下、概念の違いと、実際に会社で起きる場面の順に説明します。
個別周知・意向確認・意向聴取は、何が違うのか?
改正で登場する用語は似ていますが、中身は異なります。混同しないよう、まず次の6つを区別します。
- 個別周知:対象の労働者に、制度の内容や申出先などを個別に知らせること
- 意向確認:対象の労働者に、制度を利用する意向があるかを確認すること
- 意向聴取:仕事と育児の両立について、勤務時間帯・勤務地・両立支援制度等の利用期間・業務量・労働条件などの意向を個別に聴くこと
- 聴取した意向への配慮:意向聴取の結果を踏まえて、会社が対応を検討すること
- 情報提供:介護に直面する前の早い段階(40歳等)で、制度や申出先・給付などの情報を提供すること
- 雇用環境整備:介護休業等の制度を利用しやすい職場環境を整えること
意向聴取は「仕事と育児」の制度です。介護については、介護に直面した旨の申出時に「制度の個別周知」と「介護休業・介護両立支援制度等の利用意向確認」を行います。
育児・介護の個別周知・意向確認、および育児の意向聴取の方法は、面談(オンライン面談可)、書面交付、FAX、電子メール等のいずれかで行います。FAX・電子メール等は、労働者が希望した場合に限られます。育児・介護の個別周知・意向確認は、取得・利用を控えさせるような形で行ってはいけません。
なお、「聴取した意向への配慮」は、本人が希望する勤務条件を必ずそのまま実現する義務ではありません。聴取した意向を踏まえて会社が対応を検討し、意向に沿う対応が困難な場合には、理由を説明するなど丁寧な対応が重要です。
就業規則・労使協定は、何を直すのか?
改正への対応は、就業規則・労使協定などの「規程」の確認から始まります。ただし、就業規則の差し替えだけでは終わりません。制度を実際に使える運用(申出先の明確化、対象者の把握、上司への研修など)まで含めて整える必要があります。
主な確認点は次のとおりです。
- 子の看護等休暇:名称変更、対象となる子の範囲(小学校3年生修了まで)、取得事由の追加、勤続6か月未満の労使協定による除外の廃止
- 所定外労働の制限(残業免除):対象が「3歳未満」から「小学校就学前」へ拡大
- 短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置:テレワーク等が選択肢に加わったこと
- 柔軟な働き方措置(3歳〜小学校就学前):会社が選んだ2つ以上の措置と、内容・申出先・利用条件
- 介護休暇:対象家族の範囲、勤続6か月未満の労使協定による除外の廃止
就業規則の作成・変更義務そのものについては、就業規則は何人から義務か。義務でないものは何かをご覧ください。
妊娠・出産の申出があったら、何をするのか?
社員から妊娠・出産の申出があった時は、次のことを個別に行います。これは2022年4月から既に義務となっているもので、2025年改正で新設されたものではありません。
- 育児休業・出生時育児休業に関する制度、申出先、育児休業給付等、社会保険料の取扱いを個別に周知する
- 育児休業・出生時育児休業の取得意向を確認する
これとは別に、2025年10月からは、仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取と、聴取した意向への配慮が義務化されました。具体的には、勤務時間帯・勤務地・両立支援制度等の利用期間・業務量・労働条件などの意向を個別に聴き、聴取した意向を踏まえて対応を検討します。意向に沿う対応が困難な場合には、理由を説明するなど丁寧な対応が重要です。
子が3歳になる前は、何を確認するのか?
子が3歳になる前の適切な時期には、次の2種類を区別して対応します。
- A:柔軟な働き方措置についての個別周知+利用意向確認
- B:仕事と育児の両立についての個別意向聴取+配慮(勤務時間帯・勤務地・両立支援制度等の利用期間・業務量・労働条件等)
Aでは、会社が選択した柔軟な働き方措置(後述)の内容・利用条件・申出先を個別に周知し、利用の意向を確認します。Bでは、仕事と育児の両立についての意向を個別に聴き、聴取した意向を踏まえて対応を検討します。
これらの個別周知・利用意向確認、および仕事と育児の個別意向聴取は、子が3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳11か月に達する日の翌々日から2歳11か月に達する日の翌日まで)に実施します。子が3歳を迎えると利用できる制度が「3歳未満向け」から「3歳〜小学校就学前向け」に切り替わるため、このタイミングを逃さないことが実務上のポイントです。
3歳から小学校就学前の柔軟な働き方措置とは?
2025年10月1日から、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者を対象に、次の5つの措置のうち2つ以上を会社が選んで整備することが義務になりました。対象労働者は、会社が整備した措置の中から1つを選んで利用できます。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| ① 始業時刻等の変更 | フレックスタイム制、時差出勤など |
| ② テレワーク等 | 1か月10日以上 |
| ③ 保育施設の設置運営等 | 保育施設の設置・運営など |
| ④ 養育両立支援休暇 | 年10日以上 |
| ⑤ 短時間勤務制度 | 所定労働時間を短縮する制度 |
会社が措置を選択する際には、過半数労働組合(過半数労働組合がない場合は過半数代表者)から意見を聴く機会を設ける必要があります。どの2つを選ぶかは、業務の実態や対象者の人数などに応じて決めます。制度を導入したら、その内容を就業規則等に定め、対象社員に周知し、申出先を明確にします。
なお、日々雇用される労働者は対象外です。また、労使協定により、継続雇用1年未満の労働者や、週の所定労働日数が2日以下の労働者を対象外にできる場合があります。
3歳未満の子を養育する労働者へのテレワーク等を選択できる措置は、2025年4月から努力義務です。これは3歳〜小学校就学前の柔軟な働き方措置(義務)とは別の制度です。混同しないよう注意してください。
介護離職防止の雇用環境整備とは?
介護離職を防ぐため、2025年4月から、事業主は介護休業・介護両立支援制度を利用しやすい雇用環境を整備することが義務化されました。具体的には、次の4つのうち1つ以上を行います(複数実施が望ましい)。
- 介護休業・介護両立支援制度に関する研修
- 相談窓口の設置
- 制度の利用事例の収集・提供
- 制度の利用促進に関する方針の周知
これは、個別の周知・意向確認とは別の、職場全体の環境整備の話です。対象社員が1人もいない場合でも、制度を利用しやすい環境を整えておくことが求められます。
介護に直面した申出があったら、何をするのか?
社員から介護に直面した旨の申出があった時は、介護休業・介護両立支援制度等の制度の個別周知と、介護休業・介護両立支援制度等の利用意向確認を行います。具体的には、制度の内容と申出先を周知し、制度を利用する意向を確認します。方法は、面談(オンライン可)、書面交付、FAX、電子メール等(FAX・電子メールは本人が希望した場合)です。取得や利用を控えさせるような形で行ってはいけません。
介護に直面する前の40歳等では、何をするのか?
介護に直面する前の早い段階として、次のいずれかの時期に、介護休業・介護両立支援制度や申出先、介護休業給付金などについて情報提供することが義務付けられています。
- ① 労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度
- ② 労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間
この情報提供の方法は、面談、書面交付、FAX、電子メール等です。これは、介護に直面した申出時の個別周知・意向確認とは別の、早期の情報提供です。
会社は、結局何をすればいいのか?
改正対応は「ニュースを追う → 一次資料で確認する → 規程と運用を整える → 個別対応を回す」の流れで進めます。具体的には次の5ステップから始めてください。
- 2025年4月・10月の改正事項を確認する
- 規程・労使協定・社内様式を見直す
- 5つの柔軟な働き方措置から2つ以上を選択し整備する
- 年齢・申出等から対象者を把握できる運用を作る
- 個別周知・意向確認・意向聴取・配慮を記録して運用する
四葉社会保険労務士事務所では、育児・介護休業法に基づく労務管理、就業規則・社内運用の整備、届出等についてご相談いただけます。ご相談は無料で、費用は報酬額表にまとめています。手続の流れはご利用の流れをご覧ください。紛争性のある個別交渉・訴訟等は弁護士、税務判断は税理士の領域です。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。
よくある質問
Q. 就業規則を直せば、改正対応は終わりますか?
A. いいえ。就業規則・労使協定の見直しに加えて、個別周知・意向確認・意向聴取・配慮や40歳等での情報提供など、日常の運用まで行う必要があります。
Q. 5つの柔軟な働き方措置は、会社が自由に2つ選べるのですか?
A. 5つの措置から2つ以上を会社が選択します。ただし、措置を選択する際には、過半数労働組合等から意見を聴く機会を設ける必要があります。どの措置を選ぶかは業務の実態や対象者に応じて判断します。個別の選択判断は、制度内容と自社の実態を確認のうえ、資格者にご相談ください。
Q. 3歳未満の子へのテレワーク等は義務ですか?
A. 3歳未満の子を養育する労働者へのテレワーク等を選択できる措置は努力義務です。3歳〜小学校就学前の柔軟な働き方措置(5つから2つ以上選択する義務)とは別です。混同しないよう注意してください。
Q. 個別周知・意向確認と意向聴取は同じですか?
A. 異なります。個別周知は制度内容や申出先を知らせること、意向確認は制度利用の意向を確認することです。意向聴取は、仕事と育児の両立について勤務時間帯・勤務地・両立支援制度等の利用期間・業務量・労働条件等の意向を個別に聴き、配慮につなげるものです。介護は、介護に直面した旨の申出時に個別周知と利用意向確認を行うもので、育児の意向聴取とは制度が異なります。
Q. 介護の40歳情報提供は、いつ行うのですか?
A. 労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度、または40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間のいずれかの時期に、介護休業・介護両立支援制度等や申出先、介護休業給付金などの情報提供を行います。
この記事の根拠
- 育児・介護休業法等の一部を改正する法律(令和6年法律第42号、2024年5月31日公布)。施行は2025年4月1日と2025年10月1日
- 育児・介護休業法 第16条の2(子の看護等休暇)/第16条の8(所定外労働の制限)/第21条第1項(妊娠・出産等申出時の個別周知・意向確認)/第21条第2項・第3項(仕事と育児の意向聴取・配慮)/第21条第4項(介護申出時の個別周知・意向確認)/第21条第5項(40歳等の情報提供)/第22条(雇用環境整備)/第22条の2(300人超の公表義務)/第23条(3歳未満の短時間勤務等)/第23条の3(3歳〜就学前の柔軟な働き方措置)
- 2025年4月1日施行(育児):子の看護等休暇への名称変更・対象子の範囲拡大(小学校3年生修了まで)・取得事由追加・6か月未満除外廃止/所定外労働の制限の対象拡大(小学校就学前まで)/3歳未満のテレワーク等(努力義務)/短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加/育児休業取得状況の公表義務拡大(300人超)
- 2025年4月1日施行(介護):雇用環境整備(研修/相談窓口/利用事例の収集・提供/利用促進方針の周知から1つ以上)/介護申出時の個別周知・意向確認/40歳等の早期情報提供/介護休暇の勤続6か月未満除外廃止/介護テレワーク等(努力義務)
- 2025年10月1日施行:3歳〜小学校就学前の柔軟な働き方措置(5つから2つ以上選択)/柔軟な働き方措置の個別周知・利用意向確認/仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮
- 柔軟な働き方措置の選択時の過半数労働組合等からの意見聴取
- 厚生労働省「育児・介護休業法」パンフレット、育児関係・介護関係の法改正のポイント、柔軟な働き方を実現するための措置、育児・介護休業等に関する規則の規定例・参考様式
- e-Gov現行法令(法令条項は公開前に現行条文と突合)
この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、育児・介護休業法に基づく労務管理、就業規則・社内運用の整備、届出等についてご相談いただけます。紛争性のある個別交渉・訴訟等は弁護士、税務判断は税理士の領域です。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。制度の適用や個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・都道府県労働局など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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