外国人技能実習生や特定技能外国人に寄宿舎を用意するとき、寄宿舎規則の届出は必要ですか?

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
会社が用意する寮が労働基準法の「事業附属寄宿舎」に当たるときは、寄宿舎規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります(労働基準法第95条)。届出には、寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を証明する書面を添えます。技能実習生・特定技能外国人の寮は、寝室面積などの住環境基準(技能実習は1人4.5平方メートル以上、特定技能は1人7.5平方メートル以上)も重なるため、労基法の寄宿舎規則と受入れ側の住環境基準の両方を満たします。寮費を給与から差し引くには賃金控除の労使協定が要ります。寄宿舎規則の作成・届出と労務管理は社会保険労務士、在留資格の申請取次は行政書士、物件の選定・賃貸借は不動産会社(いずれも独立した事業体・別々にご契約)に分けて整理します。
結論(先に要点):会社が用意する寮が労働基準法の「事業附属寄宿舎」に当たるときは、寄宿舎規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります(労働基準法第95条)。届出には、寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を証明する書面を添えます。技能実習生・特定技能外国人の寮は、住環境の別基準(寝室面積など)も重なるため、労基法の寄宿舎規則と受入れ側の住環境基準の両方を満たす必要があります。寮費を給与から差し引くには賃金控除の労使協定が要ります。寄宿舎規則の作成・届出と労務管理の整備は社会保険労務士、在留資格の申請取次は行政書士、物件の選定・賃貸借は不動産会社(いずれも独立した事業体・別々にご契約)に分けて整理します。
「技能実習生のために借りた社宅は、労基署に何か届けるのか」「寮費を給料から引いてよいのか」——外国人材を受け入れる会社からいただく相談です。このページは、技能実習生・特定技能外国人のために社宅や寮(寄宿舎)を用意する受入れ企業の労務担当に向けて、労働基準法上の届出義務と住環境の基準がどこで重なるかを整理します。個別の物件が寄宿舎に当たるかどうかの最終判断や、在留資格の申請そのものは、この記事の範囲外です。
会社が用意する寮は、どんなときに労基法の「寄宿舎」になりますか?
労働基準法は、事業に附属する寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者に、いくつかの義務を課しています(第94条〜第96条の2)。ここでいう「事業附属寄宿舎」に当たるかは、名前ではなく実態で判断されます。行政解釈では、①事業との関連(その事業の労働者が寄宿していること)、②相当人数の労働者が共同生活を営んでいること、③独立または区画された施設であること、といった要素から見ます。
- 技能実習生・特定技能外国人を複数人で同じ部屋・同じ建物に住まわせ、受入れ企業が管理している寮は、事業附属寄宿舎に当たることが多い形態です
- 一方、労働者が自分で選んだ賃貸物件に個別に住み、共同生活の実態も使用者の管理もない場合は、寄宿舎に当たらないと整理されることがあります
- 判断は施設ごとの実態によるため、微妙な場合は個別に確かめる必要があります
寄宿舎に当たると、使用者は寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならず、寮長など自治に必要な役員の選任に干渉してはなりません(第94条)。外国人を寄宿させる場合も同じで、外国人材の受け入れ全体の流れは外国人雇用は誰に頼むかでも整理しています。
寄宿舎規則には何を定め、いつ誰に届け出ますか?
事業附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、次の事項について寄宿舎規則を作成し、行政官庁(所轄の労働基準監督署長)に届け出なければなりません(労働基準法第95条第1項)。変更したときも同じく届け出ます。
| 寄宿舎規則で定める事項(労基法第95条第1項) | 過半数代表者の同意 |
|---|---|
| ①起床、就寝、外出及び外泊に関する事項 | 必要 |
| ②行事に関する事項 | 必要 |
| ③食事に関する事項 | 必要 |
| ④安全及び衛生に関する事項 | 必要 |
| ⑤建設物及び設備の管理に関する事項 | 規定なし |
①から④については、寄宿する労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならず、届出の際にはその同意を証明する書面を添付します(第95条第2項・第3項)。使用者も寄宿労働者も、定めた寄宿舎規則を守る義務があります(第95条第4項)。外国人を寄宿させる場合は、内容が理解できる言語での説明や掲示を用意しておくと、後日のトラブルを避けやすくなります。
このほか、常時10人以上の労働者を就業させる事業などの附属寄宿舎を設置・移転・変更しようとするときは、安全衛生の基準に従った計画を、工事着手の14日前までに行政官庁へ届け出る義務があります(第96条の2第1項)。新たに寮を建てたり大きく改修したりする場合は、この計画届の要否も早めに確認します。
技能実習・特定技能の住環境基準と労基法はどう重なりますか?
外国人材の寮では、労働基準法の寄宿舎の基準に加えて、受入れ制度ごとの住環境基準が重なります。技能実習制度と特定技能制度は、それぞれ寝室の広さの目安を運用要領で示しています。労基法の基準と別に定められているため、両方を満たす必要があります。
| 根拠 | 寝室・居室の広さの目安 |
|---|---|
| 事業附属寄宿舎規程(労基法第96条の委任省令) | 第二種寄宿舎の寝室は1人あたり2.5平方メートル以上・一室50人以下(第39条) |
| 技能実習制度の運用要領 | 寝室は床の間・押入を除き1人あたり4.5平方メートル以上 |
| 特定技能制度(1号特定技能外国人支援)の運用要領 | 居室(寝室)は1人あたり7.5平方メートル以上(従前から住む部屋への継続入居など経過措置あり) |
技能実習・特定技能の広さの目安は、労基法の最低基準より広い数値です。したがって、外国人材の寮は制度側の住環境基準に合わせて選ぶことになります。これらの運用要領の数値は改定され得るため、最新版を出入国在留管理庁・各制度の公式資料で確認します(本記事は2026年9月23日時点で参照)。物件そのものの選定や賃貸借契約は不動産会社(独立した事業体・別々にご契約)が担い、在留資格の申請取次は行政書士(同)が担います。
家賃・寮費を給与から控除するとき、何を守りますか?
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければなりません(労働基準法第24条第1項)。寮費や社宅費を給与から差し引くには、この全額払いの例外として、事業場の過半数代表者との間で賃金控除に関する労使協定を結んでおく必要があります。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
- 控除できるのは、原則として実費相当の範囲です。相場より安く住まわせるなど利益の供与を伴う部分は、現物給与として社会保険料の算定や課税の対象になり得ます
- 社宅・寮の供与が現物給与に当たるかどうか、どこまでが控除できる費用かは、社宅は現物給与かで整理しています
- 技能実習・特定技能では、実費を超える寮費の徴収が受入れ側の基準で問題視されることがあり、賃金控除の適正さと制度側の基準の両面を確認します
安全・衛生・避難の基準で、事業者は何を整えますか?
使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康・風紀・生命の保持に必要な措置を講じなければなりません(労働基準法第96条第1項)。その具体的な基準は厚生労働省令(事業附属寄宿舎規程)に定められています。
- 避難経路・消火設備・採光や換気など、居住の安全衛生に関わる設備を整えます
- 建物や設備の防火・避難については、消防法・建築基準法の基準も別に関わるため、消防署や建築士(独立した事業体・別々にご契約)に確認します
- 寝室の広さ・収納・採暖などは、前掲の住環境基準と合わせて満たします
法令や省令の設備基準は、労務・安全衛生・建築・消防にまたがります。どの基準がどの物件に当たるかは、施設の実態に応じて確認する必要があります。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、寄宿舎規則の作成と労働基準監督署への届出、過半数代表者の同意手続の整備、賃金控除に関する労使協定の作成、寮費・社宅費の取扱いの整理をお受けします。物件の選定・賃貸借は不動産会社、在留資格の申請取次や受入れ計画は行政書士、消防・建築の基準確認は消防署・建築士が担い、いずれも当事務所とは独立した事業体として、別々にご契約いただきます。当事務所は労務管理と届出の面を担当します。ご相談は無料です。 費用は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。
よくある質問
Q. 技能実習生を2人だけ寮に住まわせる場合も、寄宿舎規則の届出は要りますか?
A. 人数の多い少ないだけでは決まりません。事業附属寄宿舎に当たるかは、事業との関連・共同生活の実態・施設の状況などから実態で判断されます。当たる場合は、労働基準法第95条により寄宿舎規則を作成し、過半数代表者の同意書面を添えて所轄の労働基準監督署長へ届け出ます。個別の施設が寄宿舎に当たるかどうかは、実態を確認して判断します。
Q. 労基法の寝室の広さと、技能実習の広さの基準は、どちらを守ればよいですか?
A. 両方です。事業附属寄宿舎規程の面積は最低限の基準で、技能実習(1人4.5平方メートル以上)や特定技能(1人7.5平方メートル以上)の運用要領はそれより広い目安を示しています。外国人材の寮は、制度側の広い基準に合わせて用意することになります。運用要領の数値は改定され得るため、最新版を確認します。
Q. 寮費を毎月の給料から天引きしても問題ありませんか?
A. 賃金は全額払いが原則です(労働基準法第24条)。寮費を給与から差し引くには、事業場の過半数代表者との賃金控除に関する労使協定が必要です。控除できるのは原則として実費相当の範囲で、それを超えて安く住まわせる部分は現物給与として社会保険料の算定や課税に関わることがあります。
Q. 寄宿舎規則の届出は、社会保険労務士に頼めますか?
A. 寄宿舎規則の作成や労働基準監督署への届出、過半数代表者の同意手続、賃金控除の労使協定の整備は社会保険労務士の業務です。一方、在留資格の申請取次は行政書士、物件の賃貸借は不動産会社が担い、いずれも独立した事業体として別々にご契約いただきます。
この記事の根拠
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第94条=事業附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由・自治への不干渉/第95条第1項=寄宿舎規則の作成・届出義務(起床就寝外出外泊・行事・食事・安全衛生・建設物設備管理の5事項)/同第2項・第3項=①〜④は寄宿労働者の過半数代表者の同意と同意証明書面の添付/同第4項=使用者・寄宿者双方の遵守義務
- 労働基準法第96条第1項=寄宿舎の換気・採光・照明・避難・定員収容・就寝措置その他健康・風紀・生命の保持に必要な措置/同第2項=基準は厚生労働省令に委任/第96条の2第1項=常時10人以上等の附属寄宿舎の設置・移転・変更は工事着手14日前までに計画届
- 事業附属寄宿舎規程(昭和22年10月31日労働省令第7号)=第96条の委任省令。寝室・採光・避難などの設備基準(第二種寄宿舎の寝室は1人あたり2.5平方メートル以上・一室50人以下=第39条)
- 労働基準法第24条第1項=賃金の通貨払・直接払・全額払の原則。寮費・社宅費の給与控除には賃金控除に関する労使協定が必要
- 技能実習制度の運用要領(寝室は床の間・押入を除き1人あたり4.5平方メートル以上)、特定技能制度・1号特定技能外国人支援に関する運用要領(居室は1人あたり7.5平方メートル以上・継続入居等の経過措置)。数値は改定され得るため出入国在留管理庁の最新資料を確認(2026年9月23日参照)
- 条文は e-Gov 法令検索により確認しています(2026年9月時点)
この記事は、個別の物件が寄宿舎に当たるかどうかまでは断定していません。寄宿舎規則の作成・届出、賃金控除の労使協定の整備、労務管理は社会保険労務士の業務です。在留資格の申請取次は行政書士、物件の選定・賃貸借は不動産会社(いずれも当事務所とは独立した事業体・別々にご契約)の業務です。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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