メインコンテンツにスキップ
2026.09.07業種別の労務管理

従業員が病気で休んだとき、傷病手当金はいくら・いつまで出るか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

従業員が業務外の病気やけがで働けず給与が出ないとき、健康保険から傷病手当金が支給されます(健康保険法第99条)。連続する3日間(待期)を置いた4日目から支給され、1日あたりの額は原則として支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×3分の2です。支給される期間は、令和4年(2022年)1月1日施行の改正で、支給を始めた日から通算して1年6か月に変わりました(同条第4項)。労災(業務上・通勤災害)に当たる場合は健康保険ではなく労災保険からの給付です。支給の要件、待期と金額、通算化された支給期間、有給・退職・労災・障害年金との調整、そして会社(事業主)がやるべき証明と手続を整理します。

結論(先に要点):従業員が業務外の病気やけがで働けず給与が出ないとき、健康保険から傷病手当金が支給されます(健康保険法第99条)。連続する3日間(待期)を置いた4日目から支給され、1日あたりの額は、原則として支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2です。支給される期間は、令和4年(2022年)1月1日施行の改正で、支給を始めた日から通算して1年6か月に変わりました(同条第4項)。労災(業務上・通勤災害)に当たる場合は健康保険ではなく労災保険からの給付になります。この記事では、支給の要件、待期と金額、通算化された支給期間、有給・退職・労災・障害年金との調整、そして会社(事業主)がやるべき証明と手続を整理します。

従業員がケガや私傷病で長く休むことになったとき、会社の担当者が最初に押さえたいのが、健康保険の傷病手当金です。このページは、中小企業の人事・総務のご担当者と経営者に向けて、金額と期間、会社の役割を、社会保険労務士の労務管理の視点で整理します。労災か健康保険かの切り分けや不支給になったときの対応など、判断を伴う場面は労働基準監督署や資格者への確認が前提になります。

傷病手当金はどんなときに支給されるか(4つの要件)?

協会けんぽ(全国健康保険協会)は、次の4つをすべて満たすときに支給するとしています(健康保険法第99条・2026年9月参照)。

要件内容
①業務外の事由業務外の病気やけがの療養のためであること(業務上・通勤災害は労災保険の対象)
②労務不能その療養のため仕事に就くことができないこと
③4日以上連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
④給与の支払いがない休んだ期間について給与の支払いがないこと(あっても手当金より少なければ差額を支給)

ポイントは**「業務外」**という点です。仕事が原因のケガ・病気(業務災害)や通勤中のケガ(通勤災害)は労災保険からの給付になり、健康保険の傷病手当金は出ません。業務が原因かどうか(業務起因性)の判断は労働基準監督署が行うため、迷う場合は労基署や社会保険労務士に確認してください。療養は必ずしも入院を要さず、自宅療養でも支給の対象になり得ます。長期に休むときの休職・復職の労務対応はメンタル不調による休職・復職の進め方もあわせてご覧ください。

待期3日はどう数え、金額はどう計算するか?

まず「待期」の3日を数え、その後の4日目から支給が始まります。

項目内容
待期連続する3日間。この3日には有給休暇・公休(土日祝など)も含めて数えられる
支給開始待期が完成した後の4日目から
1日あたりの額支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30 × 3分の2
12か月に満たない場合「その期間の各月の標準報酬月額を平均した額」と「協会けんぽが定める額」のいずれか少ない額で計算

待期は「連続3日」が必要です。1日休んで出勤、また休む、という飛び石では待期が完成しません。待期の3日間には、土日などの公休や有給休暇も含めて数えます。

金額は、支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2が1日あたりの額です。加入期間が12か月に満たない場合は、①その期間の標準報酬月額の平均、②協会けんぽが定める額(支給開始日が2025年4月1日以降は32万円。額は改定される。2026年9月参照)のいずれか少ない額を使います。標準報酬月額の決まり方や見直しは算定基礎届と月額変更届は何が違うかで整理しています。

支給期間は最長いつまでか(令和4年の通算化)?

支給される期間は、令和4年(2022年)1月1日施行の改正で変わりました。

時期支給期間の数え方
改正後(現行)支給を始めた日から通算して1年6か月(健康保険法第99条第4項)
改正前支給を始めた日から起算して1年6か月(暦の上での連続した期間)

改正前は、支給開始から暦の上で1年6か月が過ぎると、途中で復職して支給が止まった期間があっても、そこで打ち切りでした。改正後は、実際に支給を受けた日を通算して1年6か月に達するまで受けられます。途中で就労して支給されなかった期間は、その日数分だけ支給可能な期間が先に延びる形になります(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律・令和3年法律第66号による改正。2026年9月参照)。

この通算化は、支給を始めた日が令和2年(2020年)7月2日以降の傷病手当金に適用されます。ただし、いったん労務可能となり出勤したのちに同一の傷病で再び労務不能となった場合の取扱いなど、細かな判断は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)の確認が必要です。

有給・退職・労災・障害年金とはどう調整されるか?

傷病手当金は、他の給付や報酬と重なる部分について調整されます。

相手調整の内容
給与(報酬)報酬を受けられる間は支給されない。報酬が手当金より少なければ差額を支給(健康保険法第108条第1項)
障害厚生年金・障害手当金同一の傷病で受けられるときは調整(原則、年金額が優先し差額調整。健康保険法第108条)
老齢退職年金給付資格喪失後の継続給付を受ける人が老齢退職年金を受けられるときは調整(同条)
出産手当金同一期間は出産手当金が優先し、差額を調整(同条)
労災の休業(補償)給付業務上・通勤災害は労災の対象で、同一の事由では傷病手当金は支給されない

退職後も、資格喪失日の前日まで継続して1年以上被保険者だった人が、資格喪失の際に傷病手当金を受けている(または受けられる状態にある)ときは、退職後も継続して受けられます(資格喪失後の継続給付・健康保険法第104条)。ただし退職後に老齢退職年金を受けられる場合などは調整があります。労災か健康保険かの切り分けは業務起因性の判断を伴うため、労災の手続とあわせて私傷病報告と労災の手続もご確認ください。障害が残る場合の障害年金の請求は社会保険労務士がお手伝いします。

会社(事業主)がやるべき証明と手続は何か?

傷病手当金は本人(被保険者)の請求ですが、会社が担う部分があります。

すること内容
事業主の証明申請書のうち、勤務状況・給与の支払い状況について事業主が証明する欄を記入する
賃金台帳・出勤簿の整理待期の成立や給与不支給を確認できるよう、勤怠と賃金の記録を整える
社会保険料の取扱い休職中も原則として健康保険・厚生年金保険の被保険者資格は続く。保険料の本人負担分の徴収方法を決めておく
案内本人へ請求のタイミング・添付書類(療養担当者=医師の意見欄など)を案内する

会社としては、事業主証明を正確に書くことと、休職中の社会保険料の本人負担分をどう徴収するか(給与天引きができないため、振込など)を先に決めておくことがつまずきにくいポイントです。当事務所は、事業主証明の整理、休職・復職に伴う社会保険の手続、就業規則の休職規定の整備をお手伝いします。ご相談は無料です。 料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。

不支給とされたときの対応や、私傷病を理由とする休職・解雇の可否など法的判断を伴う場面は、弁護士へご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 待期の3日間に有給休暇や土日を入れて数えてよいですか?
A. はい。待期は「連続する3日間」で、その3日には有給休暇や公休(土日祝など)も含めて数えられます。ただし連続していることが必要で、1日休んで出勤し、また休むといった飛び石では待期が完成しません。

Q. 支給期間が通算1年6か月になったとは、どういう意味ですか?
A. 令和4年1月1日施行の改正で、支給を始めた日から実際に支給を受けた日を通算して1年6か月に達するまで受けられる形になりました。途中で復職して支給されなかった期間があっても、その日数分だけ支給可能な期間が先に延びます。改正前は暦の上での1年6か月で打ち切りでした(支給開始日が令和2年7月2日以降のものに適用。2026年9月参照)。

Q. 給与を一部でも払うと傷病手当金は出ませんか?
A. 報酬を受けられる間は原則として支給されませんが、支払われる報酬が傷病手当金の額より少ないときは、その差額が支給されます(健康保険法第108条第1項)。全額支給されるか差額かは、支払う給与の額によって変わります。

Q. 退職したら傷病手当金は打ち切りですか?
A. 必ずしも打ち切りではありません。資格喪失日の前日まで継続して1年以上被保険者だった人が、退職の際に傷病手当金を受けている(または受けられる状態にある)ときは、退職後も継続して受けられます(健康保険法第104条)。ただし老齢退職年金を受けられる場合などは調整があります。

この記事の根拠

  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第99条(傷病手当金=療養のため労務に服することができないとき、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から支給/1日あたりの額は支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2/第4項=支給を始めた日から通算して1年6月間)/e-Gov法令検索により条文を確認(2026年9月参照)
  • 健康保険法第108条(報酬・障害厚生年金・障害手当金・老齢退職年金給付・出産手当金との調整)、第104条(資格喪失後の継続給付=資格喪失日の前日まで引き続き1年以上被保険者であった者)/e-Gov法令検索により確認(2026年9月参照)
  • 支給期間の通算化は、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第66号)による健康保険法第99条の改正で、施行日は令和4年(2022年)1月1日。支給を始めた日が令和2年(2020年)7月2日以降のものに適用/厚生労働省のQ&A(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律による健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&A)および全国健康保険協会の案内により確認(2026年9月参照)
  • 支給要件(4つ)、待期3日の数え方、加入期間が12か月に満たない場合の額(協会けんぽが定める額。支給開始日が2025年4月1日以降は32万円。額は改定される)は全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」の案内により確認(2026年9月参照)
  • 業務上・通勤災害は労働者災害補償保険法による休業(補償)給付の対象で、健康保険の傷病手当金は支給されない(業務起因性の認定は労働基準監督署)

この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。傷病手当金の申請サポート、事業主証明の整理、休職・復職に伴う社会保険の手続、障害年金の請求は社会保険労務士の業務です。労災か健康保険かの切り分けは業務起因性の判断を伴うため労働基準監督署への確認が前提で、不支給時の対応や私傷病を理由とする休職・解雇の可否など法的判断は弁護士の業務、税務の申告は税理士の業務です。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

「人」のことから、整理しませんか。

四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。

LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。

東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00