出生後休業支援給付の「手取り10割」相当は、どう計算するのか
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
出生後休業支援給付は、子の出生直後に両親がそろって育児休業を取ると、育児休業給付(原則67%)に13%を上乗せする雇用保険の給付です(雇用保険法第61条の10、2025年4月1日施行)。上乗せ後は80%ですが、給付が非課税で育休中は社会保険料も免除されるため、休業前の手取りと比べると実質10割相当になります。28日の数え方・両親14日以上の要件・育児休業給付との重なりを整理します。
結論(先に要点):出生後休業支援給付は、子の出生直後に両親がそろって育児休業を取ったとき、育児休業給付(原則67%)に13%を上乗せする雇用保険の給付です(雇用保険法第61条の10、2025年4月1日施行)。上乗せ後の給付は賃金の80%になりますが、育児休業給付も出生後休業支援給付も非課税で、育休中は社会保険料も免除されるため、休業前の「手取り」と比べると実質10割相当になります。もらえる条件は、本人と配偶者がともに、子の出生後(母は産後休業後)の一定期間内に14日以上の育児休業を取ることです。ひとり親や、配偶者が育児休業の対象とならない働き方をしている場合などは、本人の取得だけで支給されます。上乗せの対象になるのは通算28日分が限度です。この記事では、給付の中身・手取り10割相当になる仕組み・28日の数え方・育児休業給付との重なりを順に整理します。
この記事は、男性育休を進めたい、または進める必要が出てきた中小企業の労務担当者・経営者を想定しています。「両親がそろって取ると手取りが実質減らない」という点が、社員に育休を勧めるうえでの説明材料になります。制度の中身を正確に押さえておくことが実務のポイントです。
出生後休業支援給付はどんな給付なのか?
出生後休業支援給付は、2025年4月1日に創設された雇用保険の給付です(雇用保険法第61条の10)。共働き・共育てを進める目的で、子の出生直後に両親がそろって育児休業を取った場合に、育児休業給付や出生時育児休業給付金(いわゆる産後パパ育休の給付)に上乗せして支給されます。
上乗せ率は、休業開始時賃金日額の13%です。育児休業給付・出生時育児休業給付金は原則として休業開始時賃金日額の67%なので、13%が上乗せされると合計80%になります。
| 給付 | 率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金・出生時育児休業給付金 | 原則67% | 雇用保険法第61条の7・第61条の8 |
| 出生後休業支援給付 | 13%(上乗せ) | 雇用保険法第61条の10 |
| 合計 | 80% | — |
受け取るのは本人であって会社ではありません。会社に支給される雇用関係助成金とは別の、本人向けの給付です。育児・介護休業法そのものの改正内容は育児・介護休業法2025年改正で何が変わった?会社が整える就業規則・個別周知・意向確認で整理しています。
手取り10割相当になる条件は何か?
「80%なのに、なぜ手取り10割相当なのか」は、税と社会保険料の扱いで説明できます。ポイントは2つです。
- 育児休業給付・出生後休業支援給付は非課税である(所得税・住民税がかからない)
- 育児休業期間中は、本人負担・会社負担とも社会保険料が免除される
働いているときの賃金は、額面から所得税・社会保険料などが引かれて手取りになります。手取りは、多くの場合で額面の8割前後です。一方、育休中の給付は額面80%がそのまま入り、そこから税も社会保険料も引かれません。そのため、休業前の手取りと、育休中の給付(額面80%)を比べると、実質的に手取り10割相当になる、という説明になります。
| 比較 | 内訳 |
|---|---|
| 働いているとき | 額面100% − 税・社会保険料 = 手取りは概ね8割前後 |
| 出生後休業支援給付の対象期間 | 額面80%の給付(非課税・社会保険料免除)= 差し引きがない |
あくまで「相当」であって、額面どおり10割が振り込まれるわけではありません。個々人の税率・社会保険料率によって割合は前後します。断定的な金額の説明ではなく、目安として社員に伝えるのが安全です。
対象28日の数え方と両親の要件は?
上乗せの対象になるのは、通算して28日分(4週間分)が限度です。両親がそろって育児休業を取ることが基本の条件で、次のように整理できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本人・配偶者の要件 | 両親ともに、子の出生後(母は産後休業後)の一定期間内に14日以上の育児休業を取得すること |
| 配偶者要件の例外 | ひとり親である、配偶者が育児休業の対象とならない働き方(自営業など)である、といった場合は、本人の取得だけで支給される |
| 支給の限度 | 本人の育児休業について、通算28日分を限度に13%を上乗せ |
「一定期間」の数え方は、父と母で起点が違います。配偶者が出産した父の場合は子の出生日から、本人が出産した母の場合は産後休業を終えた日の翌日から、それぞれ8週間の期間内で数えます。配偶者要件が不要となる具体的なケースは細かく定められているため、自社の社員が該当するかは、厚生労働省・ハローワークの最新のリーフレットで確認してください。男性育休をどう就業規則に落とし込むかは育児・介護休業法2025年改正で何が変わった?会社が整える就業規則・個別周知・意向確認でも触れています。
育児休業給付とどう重なって計算するのか?
出生後休業支援給付は、単独で出る給付ではありません。育児休業給付金または出生時育児休業給付金の対象になっている休業に「上乗せ」する形で計算します。土台の給付があって、その上に13%が乗る、という順序です。
計算のイメージは次のとおりです。
- 土台:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(育児休業給付金・出生時育児休業給付金)
- 上乗せ:休業開始時賃金日額 × 支給日数(通算28日まで) × 13%(出生後休業支援給付)
- 合計:同じ休業日数について、実質80%が支給される
申請は、土台となる育児休業給付の申請とあわせて、原則として事業主がハローワークへ行います。会社は、育児休業の取得日数と、配偶者の育児休業取得の状況を把握しておく必要があります。時短で働きながら受ける育児時短就業給付とは、対象時期も計算も別です。時短給付については育児時短就業給付は、いつ・いくら・誰がもらえるのかで整理しています。給与計算と申請の事務をどう回すかは給与計算を社会保険労務士に頼むと、いくらかかるのかもあわせてご覧ください。
会社は、結局何をすればいいのか?
社員から出生直後の育休の相談があったら、次の順序で進めると漏れが出ません。
- 本人と配偶者が、それぞれ一定期間内に14日以上の育児休業を取るかを確認する(ひとり親等の例外に当たるかも確認)
- 育児休業給付・出生時育児休業給付金の受給資格を確認する
- 出生後休業支援給付の上乗せ(通算28日まで)の対象になるかを確認する
- 育児休業給付の申請とあわせて、事業主がハローワークへ支給申請を出す
- 社会保険料の免除手続き(育児休業等取得者申出書)を年金事務所へ出す
四葉社会保険労務士事務所では、出生後休業支援給付の要件確認・申請、育児休業の就業規則・社内運用の整備、社会保険料免除の手続きについてご相談いただけます。ご相談は無料で、費用は報酬額表にまとめています。手続の流れはご利用の流れをご覧ください。育休をめぐって個別の労働紛争が生じた場合の代理・交渉は弁護士、税務判断は税理士の領域です。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。
よくある質問
Q. 出生後休業支援給付は、父親だけが対象ですか?
A. いいえ。父・母のどちらも対象になり得ます。基本は両親がともに一定期間内に14日以上の育児休業を取ることが条件で、母の場合は産後休業を終えた日の翌日から数えます。ひとり親や、配偶者が育児休業の対象とならない働き方をしている場合などは、本人の取得だけで支給されます。
Q. なぜ80%の給付で「手取り10割相当」と言えるのですか?
A. 育児休業給付・出生後休業支援給付は非課税で、育休中は社会保険料も免除されるためです。働いているときの手取りは額面の8割前後になりますが、給付は額面80%がそのまま入るので、休業前の手取りと比べると実質10割相当になる、という説明です。あくまで目安で、個々人の税率・保険料率で前後します。
Q. 上乗せは何日分まで受けられますか?
A. 通算28日分(4週間分)が限度です。この28日について、休業開始時賃金日額の13%が育児休業給付に上乗せされます。育児休業そのものの期間や育児休業給付の日数とは別に、上乗せ対象が28日で区切られる点に注意してください。
Q. 育児時短就業給付とは何が違うのですか?
A. 対象になる時期と目的が違います。出生後休業支援給付は子の出生直後に「休業」した場合の給付で、育児時短就業給付は2歳未満の子を養育するために「時短で働く」場合の給付です。計算も申請も別々に行います。個別のあてはめは、最新の一次情報と本人の状況に照らして資格者が確認します。
この記事の根拠
- 雇用保険法第61条の10(出生後休業支援給付金)。2025年4月1日施行(令和6年雇用保険法改正)。条番号は e-Gov 法令検索(雇用保険法・昭和49年法律第116号)の目次構造で確認(2026年8月24日参照)。第三章の二第三節「出生後休業支援給付」=第61条の10・第61条の11
- 育児休業給付金・出生時育児休業給付金の給付率(原則67%):雇用保険法第61条の7・第61条の8
- 支給要件(両親ともに、子の出生後=母は産後休業後の一定期間内に14日以上の育児休業を取得。配偶者が就労していない等の場合は本人の取得のみで可)、上乗せ13%、通算28日を限度:厚生労働省「育児休業等給付について」・都道府県労働局/ハローワークの出生後休業支援給付案内(2026年8月24日参照)
- 育児休業給付・出生後休業支援給付が非課税であること、育児休業期間中の社会保険料が免除されること(手取り10割相当の根拠):厚生労働省・日本年金機構の案内(2026年8月24日参照)
- 配偶者要件が不要となる具体的なケースは施行規則・リーフレットで定められており、該当性は最新資料で確認する
- 育児・介護休業法の改正全体像は別記事育児・介護休業法2025年改正で何が変わった?会社が整える就業規則・個別周知・意向確認で扱う
この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、出生後休業支援給付の要件確認・申請、育児休業の社内運用の整備、社会保険料免除の手続きについてご相談いただけます。育休をめぐる個別の労働紛争の代理・交渉は弁護士、税務判断は税理士の領域です。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。制度の適用や個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・ハローワーク・日本年金機構など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「人」のことから、整理しませんか。
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