就労継続支援A型・B型の人員基準を満たす雇用形態と労務管理
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
就労継続支援A型・B型の人員基準は「職員を何人置くか」ではなく「常勤換算で利用者に対して足りているか」で判定します。職業指導員と生活支援員は常勤換算で利用者数÷10以上、それぞれ1人以上・うち1人以上常勤、サービス管理責任者は利用者60人以下で1人以上が基本です(平成18年厚生労働省令第171号 第186条・第199条)。いちばんの違いは雇用契約で、A型は利用者と雇用契約を結ぶため、その利用者は最低賃金(最低賃金法第4条・減額特例は第7条)・社会保険・労働時間の対象になる労働者として扱います。B型は雇用契約を結ばず工賃を支払います。常勤換算の設計、兼務の考え方、A型利用者の労働者性、指定申請との分担を整理します。
結論(先に要点):就労継続支援A型・B型の人員基準は、「職員を何人置くか」ではなく「常勤換算で利用者に対して足りているか」で判定します。だから非常勤・パートの所定労働時間の設計と勤務実績の記録が、そのまま指定の維持につながります。職業指導員と生活支援員は、常勤換算で利用者の数を10で除した数以上、それぞれ1人以上・うち1人以上は常勤、サービス管理責任者は利用者60人以下で1人以上が基本です。
いちばんの違いは雇用契約です。A型は利用者と雇用契約を結ぶため、その利用者は最低賃金・社会保険・労働時間の対象になる労働者として扱います。B型は雇用契約を結ばず工賃を支払います。指定申請そのものは行政書士、報酬(国保連請求)の制度設計は行政書士や事業者、法人の会計・税務は税理士の領域です。当事務所がお引き受けするのは労務・社会保険の支援で、個別の判断は面談のうえ資格者が行います。
A型とB型で、職員の人員基準と雇用の考え方はどう違いますか?
人員基準の骨組み(職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者・管理者)はA型とB型で共通していますが、利用者の位置づけが違います。A型は事業所と利用者が雇用契約を結び、B型は雇用契約を結びません。指定基準はA型が平成18年厚生労働省令第171号の第186条以下、B型が第199条以下に定められています。
| 論点 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 利用者との関係 | 雇用契約を締結する(基準第190条) | 雇用契約は結ばず工賃を支払う |
| 職業指導員・生活支援員 | 常勤換算で利用者数÷10以上。それぞれ1人以上、うち1人以上常勤(第186条) | 常勤換算で利用者数÷10以上。同様(第199条) |
| サービス管理責任者 | 利用者60人以下で1人以上、60人を超えて40又はその端数ごとに1人追加。うち1人以上常勤 | A型と同じ考え方 |
| 管理者 | 事業所ごとに1人。支障がなければ兼務可 | 同左 |
| 利用者に払うもの | 賃金(最低賃金法の対象) | 工賃 |
A型で雇用契約を結んだ利用者は、労働基準法など労働関連法規の適用を受ける労働者に当たります。ここが、職員の労務管理に加えて「利用者=労働者」の労務管理も同時に発生するというA型固有の負担につながります。報酬上、より手厚い配置(利用者7.5人に対し職員1人など)を選ぶ区分もありますが、それは指定基準の最低ラインとは別の報酬の話です。指定を満たすかどうかの最低ラインは「10で除した数以上」です。
常勤換算数は、非常勤やパートをどう数えて満たしますか?
配置数は「常勤換算方法」で数えます。常勤換算とは、従業者の勤務延べ時間数を、その事業所で常勤の職員が勤務すべき時間数で割って、常勤何人分かに換算する方法です。つまり、パートを何人雇っているかではなく、勤務時間の合計が常勤何人分になるかで基準の充足が決まります。
| 設計のポイント | 労務側で決めること |
|---|---|
| 常勤の所定労働時間 | 就業規則で「常勤の職員が勤務すべき時間数」を明確にする |
| 非常勤・パートの所定労働時間 | 雇用契約書に所定労働時間・所定労働日数を明示する(労働基準法第15条第1項・同法施行規則第5条) |
| 常勤換算の計算 | 各人の勤務延べ時間数 ÷ 常勤が勤務すべき時間数 |
| 記録 | 勤務予定表と勤務実績(タイムカード等)を両方残す |
労働条件の明示は労働基準法第15条第1項の義務で、明示すべき事項は同法施行規則第5条に定められています。書面(本人が希望した場合の電子交付を含む)で明示すべき事項があるため、口頭のやりとりだけで済ませないでください。労働時間の管理が甘いと、常勤換算の数字が基準を割り、指定基準を満たさない状態になりかねません。勤務実績の記録は、労務管理であると同時に指定を維持するための書類でもあります。短時間で雇うときの社会保険の考え方は短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかに整理しています。
サービス管理責任者や職業指導員の兼務は、どこまで認められますか?
兼務の可否は、常勤換算の数字を崩さないことと、それぞれの職務に必要な時間を確保できることが前提になります。管理者は、管理業務に支障がなければ他の職務との兼務が認められる場面がありますが、職業指導員・生活支援員として数える時間と管理者の時間を二重に数えることはできません。
| 兼務の型 | 考え方 |
|---|---|
| 管理者とサービス管理責任者 | 支障がなければ兼務が認められる場面があるが、常勤換算の重複計上はできない |
| 職業指導員と生活支援員 | それぞれ1人以上の配置が別に必要。1人が両方の枠を同時に埋めることはできない |
| 常勤の重複 | 同じ勤務時間を複数の職種でカウントしない |
具体的にどの兼務が認められるかは、自治体の運用や当該事業所の勤務体制によって判断が分かれます。この記事では一般的な考え方までにとどめ、個別の兼務の可否は結論を出しません。勤務形態と労働時間・賃金の関係を考える手がかりとして、障害者グループホームの例ですが障害者グループホームの夜勤と宿直は、労働時間の扱いが違うもあわせてご覧ください。就業規則の作成義務そのものは就業規則は何人から義務か。義務でないものは何かに整理しています。
A型の利用者は労働者として、最低賃金や社会保険をどう扱いますか?
A型は利用者と雇用契約を結ぶため、その利用者は労働者として最低賃金法の対象になります。最低賃金額以上の賃金を支払う義務があり(最低賃金法第4条)、障害により著しく労働能力が低いなどの事情がある場合は、都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金を一定の率で減額できる特例があります(最低賃金法第7条)。許可なく最低賃金を下回る賃金にすることはできません。
| 論点 | A型(雇用契約あり) | B型(雇用契約なし) |
|---|---|---|
| 支払うもの | 賃金(最低賃金法第4条の対象) | 工賃 |
| 最低賃金の減額 | 都道府県労働局長の許可が要る(同法第7条) | 賃金ではないため最低賃金法の枠組みではない |
| 社会保険 | 労働者として、要件を満たせば健康保険・厚生年金保険・雇用保険の対象 | 雇用関係がなく、利用者は労働保険・社会保険の被保険者ではない |
| 労働時間・休憩 | 労働基準法の対象 | 労働基準法の労働者ではない |
A型の利用者が健康保険・厚生年金保険に入るかどうかは、職員と同じ判断の軸(4分の3基準や短時間労働者の適用拡大)で見ます。雇用保険は週20時間が分かれ目です。減額特例の許可を受ける・受けないで賃金設計が変わるため、就業規則・賃金規程と雇用契約書を、実際の勤務時間と整合させておくことが要点です。ただし、個別の利用者について減額特例の許可が下りるか、どの率になるかは、この記事では結論を出しません。
人員配置の労務と指定申請は、誰にどこを頼めばよいですか?
開業と運営の準備は、担当する事業体が分かれます。
| 論点 | 担当 |
|---|---|
| 職員・A型利用者の雇用契約、就業規則・賃金規程、常勤換算を意識した勤務体制、社会保険・労働保険の手続 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 指定申請・変更届など自治体への手続、報酬(国保連請求)の制度設計 | 行政書士・事業者 |
| 事業所となる物件の選定・賃貸借 | 不動産 |
| 法人の会計・税務 | 税理士 |
| 事業所の登記 | 司法書士 |
指定申請は行政書士の業務で、四葉行政書士事務所は当事務所とは独立した事業体です。物件は四葉不動産株式会社が、これも別の事業体として承ります。必要な場合は、お客様に別々にご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
当事務所がお引き受けするのは、人員基準を満たす労務の設計と、その維持です。
- 常勤・非常勤の所定労働時間を踏まえた雇用契約書の作成(A型の利用者との雇用契約を含む)
- 常勤換算を意識した勤務体制・シフトの設計と、勤務実績の記録の整備
- 就業規則・賃金規程の整備
- 職員・A型利用者の社会保険・雇用保険の加入判定と手続
- 労働時間・休憩・時間外労働の管理の設計
次のものは、当事務所では扱いません。
- 指定申請・変更届などの自治体手続、報酬(国保連請求)の制度設計 → 四葉行政書士事務所が別の事業体として承ります
- 事業所となる物件の選定・賃貸借 → 四葉不動産株式会社が別の事業体として承ります
- 法人の会計・税務 → 税理士へおつなぎします
- 事業所の登記 → 司法書士へおつなぎします
四葉不動産株式会社、四葉行政書士事務所、四葉社会保険労務士事務所は、それぞれ独立した事業体として業務を受任します。他の専門家をご紹介する場合も、お客様に直接ご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。
ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容とご相談の流れもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. A型とB型で、職員の人員基準は違いますか?
A. 職員の人員基準の骨組み(職業指導員・生活支援員を常勤換算で利用者数÷10以上、それぞれ1人以上・うち1人以上常勤、サービス管理責任者を利用者60人以下で1人以上)はA型・B型で共通の考え方です。違うのは利用者の位置づけで、A型は利用者と雇用契約を結び(基準第190条)、B型は結びません。職員側の基準は同じでも、A型は利用者=労働者の労務管理が別に加わります。
Q. パート職員だけで人員基準は満たせますか?
A. 常勤換算の数字を満たせば、非常勤・パートの組み合わせで基準を満たすこと自体は可能です。ただし職業指導員・生活支援員はそれぞれ1人以上、うち1人以上を常勤とすることが求められます。常勤を置かずにパートだけで回そうとすると、この常勤要件で基準を満たせません。就業規則で「常勤が勤務すべき時間数」を明確にしておくことが、常勤換算の計算の前提です。
Q. A型の利用者にも最低賃金を払う必要がありますか?
A. A型は利用者と雇用契約を結ぶため、その利用者は労働者に当たり、最低賃金額以上の賃金を支払う義務があります(最低賃金法第4条)。障害により著しく労働能力が低いなどの事情がある場合は、都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金を一定率で減額できる特例があります(同法第7条)。許可なく最低賃金を下回ることはできません。個別に許可が下りるか・どの率かは、この記事では結論を出しません。
Q. 職員が10人未満でも就業規則は要りますか?
A. 労働基準法第89条の作成・届出義務は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で生じます。10人未満ならこの義務そのものはありません。ただし常勤換算の前提となる「常勤が勤務すべき時間数」や、A型利用者を含む賃金の考え方を規程として整えることは、人数にかかわらず実務上必要になる場面が多くあります。義務としての就業規則と、運営のために整える規程は目的が別だと考えてください。
この記事の根拠
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第186条 ── 就労継続支援A型の従業者(職業指導員・生活支援員は常勤換算で利用者数を10で除した数以上、それぞれ1人以上・うち1人以上常勤/サービス管理責任者は利用者60人以下で1人以上、60人を超えて40又はその端数ごとに1人追加)(2026年8月27日に厚生労働省の解釈通知・自治体の手引きで確認)
- 同基準省令 第190条 ── 就労継続支援A型の事業者は、利用者と雇用契約を締結しなければならないこと(雇用契約を締結した利用者は労働基準法等労働関連法規の適用を受ける労働者に当たる。解釈通知 平成18年12月6日障発第1206001号)
- 同基準省令 第199条 ── 就労継続支援B型の従業者(A型と同様の考え方で職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者を配置。B型は雇用契約を結ばず工賃を支払う)
- 最低賃金法(昭和34年法律第137号)第4条 ── 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない
- 同法 第7条 ── 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者等について、使用者が都道府県労働局長の許可を受けたときは、最低賃金を一定の率で減額して適用できる(減額の特例)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項・同法施行規則第5条 ── 労働条件の明示(明示すべき事項と書面等による明示)
- 同法 第89条 ── 常時10人以上の労働者を使用する使用者の就業規則の作成・届出義務
- 短時間労働者の社会保険 ── 4分の3基準(1週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上で加入)、および特定適用事業所における週20時間以上・月額8.8万円以上・2か月超見込み・非学生の要件(厚生年金保険法・健康保険法。2026年8月27日に確認)
- 就労継続支援の報酬上、より手厚い人員配置(利用者7.5人に対し職員1人など)を評価する区分があるが、これは報酬告示の区分であって指定基準の最低ラインとは別である。個別の事業所・年度ごとの報酬区分の選択は本記事では扱っていません(未検証)
- 兼務の可否・常勤換算の細かな算定方法(小数点以下の端数処理など)は、自治体ごとの運用・手引きによる部分があり、個別の判断は本記事では扱っていません(未検証)
- 基準省令の所管・条番号は改正で変わり得ます。指定申請の直前には、当該自治体の最新の手引きと省令本文で確認してください(未検証)
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、常勤・非常勤の所定労働時間を踏まえた雇用契約書の作成(A型の利用者との雇用契約を含む)、常勤換算を意識した勤務体制の設計と勤務実績の記録の整備、就業規則・賃金規程の整備、職員・A型利用者の社会保険・雇用保険の加入判定と手続、労働時間・休憩・時間外労働の管理の設計についてご相談いただけます。指定申請・変更届などの自治体手続と報酬(国保連請求)の制度設計は四葉行政書士事務所が別の事業体として、事業所となる物件の選定・賃貸借は四葉不動産株式会社が別の事業体として承り、それぞれ別々にご契約いただきます。法人の会計・税務は税理士へ、登記は司法書士へおつなぎします。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「人」のことから、整理しませんか。
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