フリーランス(特定受託事業者)も労災に入れるか——2024年11月拡大後の特別加入の要件と手続

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
フリーランス(特定受託事業者)も、2024年11月1日から業種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました。労災保険は本来は労働者が対象ですが、労働者を使用しないで業務委託を受けて働く人の災害も、特別加入制度(労働者災害補償保険法第33条〜第37条)で補償の対象にできます。この日に新設されたのが第2種特別加入(一人親方等・同法第35条)の「特定受託事業者が行う事業(特定フリーランス事業)」です。加入は特別加入団体を通じて本人が申請し、給付基礎日額(3,500円〜25,000円の範囲)を選んで都道府県労働局長が決定します。これとは別に、同じ2024年11月1日施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注側に取引条件の明示などを義務づける制度です。特別加入の対象・手続・保険料、新法との違い、発注企業の向き合い方、誰に何を頼むかを整理します。
結論(先に要点):フリーランス(特定受託事業者)も、2024年11月1日から業種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました。労災保険は本来、労働者を対象とする制度ですが、労働者を使用しないで業務委託を受けて働く人の災害も、特別加入制度(労働者災害補償保険法第33条〜第37条)で補償の対象にできます。この日に新設されたのが第2種特別加入(一人親方等・同法第35条)の「特定受託事業者が行う事業(特定フリーランス事業)」で、従来は建設・運送など一部の業種に限られていた一人親方等の特別加入が、フリーランス全般に広がりました。加入は特別加入団体を通じて本人が申請し、給付基礎日額(3,500円〜25,000円の範囲)を選んで都道府県労働局長が決定します。これとは別に、同じ2024年11月1日施行のフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・令和5年法律第25号)は、発注側に取引条件の明示などを義務づける制度で、労災の特別加入とは目的が異なります。この記事では、特定受託事業者の労災特別加入の対象・手続・保険料、フリーランス新法との違い、発注企業の向き合い方、そして誰に何を頼むかを、社会保険労務士の視点で整理します。業務委託契約の設計は行政書士または弁護士、報酬や契約をめぐる紛争は弁護士へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形で振ります。
業務委託で働くフリーランスは、仕事中にケガをしても、労働者ではないため原則として労災保険の給付を受けられませんでした。2024年11月1日の改正は、この穴をふさぐものです。このページは、フリーランス本人と、フリーランスへ発注する企業の双方に向けて、特別加入制度の要点を社会保険労務士の視点で示します。
フリーランス(特定受託事業者)は、2024年11月1日からどこまで労災に入れるのか?
労災保険は、本来は労働者を対象とする制度です。労働者を使用しないで働くフリーランスは、その事業の性質などから労働者に準じて保護するのがふさわしい場合に、本人の申請により任意で加入できる特別加入制度(労働者災害補償保険法第33条〜第37条、第4章の2)の対象になります。
2024年11月1日、第2種特別加入(一人親方等・同法第35条)に「特定受託事業者が行う事業(特定フリーランス事業)」が新設されました。これにより、業種を問わず、特定受託事業者が業務委託を受けて行う事業について特別加入できるようになりました。従来、一人親方等の特別加入は建設業・運送業・漁業など列挙された業種に限られており、それ以外のフリーランス(IT・デザイン・通訳・講師・営業代行など)は対象外でしたが、この拡大で広く加入の道が開かれました。
ここでいう「特定受託事業者」とは、フリーランス新法の定義に沿い、業務委託を受ける事業者であって従業員を使用しないもの(個人、または代表者1人のみの法人)を指します。消費者から同種の仕事を受けて行う場合(いわゆるBtoC)の災害も、補償の対象に含まれます。
特別加入の対象・手続・保険料(給付基礎日額)はどうなっているのか?
特別加入は、本人が直接ではなく、労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて申し込みます。手続と費用の要点は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入できる人 | 労働者を使用しないで業務委託を受けて事業を行う特定受託事業者(特定フリーランス事業) |
| 申込みの窓口 | 特定フリーランス事業の特別加入団体(本人が団体を通じて都道府県労働局へ) |
| 給付基礎日額 | 3,500円〜25,000円の範囲の段階から申請し、都道府県労働局長が決定(給付額・保険料算定の基礎) |
| 保険料 | 給付基礎日額 × 365(保険料算定基礎額)× 特定フリーランス事業の保険料率 |
| 補償の範囲 | 業務災害・複数業務要因災害・通勤災害。療養・休業・障害・遺族等の給付 |
給付基礎日額は、休業補償などの給付額のもとになると同時に、保険料の計算基礎にもなります。高く設定すれば給付も保険料も大きくなります。加入後は、特別加入団体を通じて保険料を納めます。具体的な金額や該当性は、特別加入団体と最新の案内でご確認ください。労働者を使う中小事業主の第1種特別加入(同法第34条)とは、窓口も要件も別です(その違いは社長の労災特別加入、建設業の一人親方の例は建設業の社会保険と一人親方の労災特別加入で扱っています)。
フリーランス新法が課す発注側の義務とは、何がどう違うのか?
同じ2024年11月1日に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・令和5年法律第25号)は、労災の特別加入とはまったく別の制度です。特別加入が「フリーランス本人が任意で入る労災の仕組み」であるのに対し、新法は「フリーランスへ発注する側に取引の適正化を義務づける法律」です。
発注側(特定業務委託事業者等)に課される主な義務は次のとおりです。
| 発注側の義務 | 概要 | 対象 |
|---|---|---|
| 取引条件の明示 | 業務内容・報酬額・支払期日等を書面等で明示(第3条) | すべての業務委託 |
| 報酬支払期日 | 原則、給付を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内に支払う(第4条) | すべての業務委託 |
| 禁止行為 | 受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき等の7類型を禁止(第5条) | 1か月以上の業務委託 |
| 募集情報の的確表示 | 広告等での募集情報を的確に表示(第12条) | 募集を行う場合 |
| 育児介護等への配慮・ハラスメント対策 | 申出への配慮(第13条)、相談体制の整備(第14条) | 第13条は6か月以上 |
| 中途解除の予告 | 原則30日前までに予告(第16条) | 6か月以上の業務委託 |
新法は取引の適正化を目的とするもので、発注者にフリーランスを労災へ加入させる義務を課すものではありません。発注側の義務の詳しい整理はフリーランス新法と発注企業の確認事項にまとめています。
発注する企業の側は、特別加入とどう向き合えばよいのか?
特別加入は、あくまでフリーランス本人が任意で加入する制度です。発注企業に加入させる義務はなく、企業が本人に代わって加入手続をすることもできません。もっとも、業務委託契約の実態が「指揮監督を受け、時間・場所に拘束される」など労働者性が強いものであれば、契約の名称が業務委託でも労働者として扱われ、労災・社会保険の対象になります。発注にあたっては、まず実態が業務委託か雇用かを見極めることが出発点です。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
そのうえで、発注企業はフリーランス新法の取引条件の明示や報酬支払期日などの義務を正しく果たす必要があります。特別加入は本人の任意加入である点を踏まえ、契約書で安全・災害時の役割分担を明確にしておくと、後のトラブルを避けやすくなります。労働者性の最終的な判断は、実態に即して資格者が行います。
誰に何を頼むのか(特別加入の手続・契約面・紛争の分担)?
役割を分けて整理します。労災保険の特別加入についての制度の説明、労働保険・社会保険の整理、就業実態と労働者性の点検は、社会保険労務士の業務です。当事務所がお受けするのはここです。ただし、特別加入そのものの申請は、本人が特別加入団体を通じて行います。
フリーランスとの業務委託契約書の作成や、新法が求める取引条件の明示の設計は、行政書士または弁護士の業務です。報酬の不払いや契約の打ち切りをめぐる紛争は、弁護士の業務です。いずれも、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形でご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、フリーランスへ発注する企業について、業務委託か雇用かの労働者性の点検、労働保険・社会保険の整理、従業員を雇う場合の労働条件の明示や就業規則の整備をお受けします。フリーランス本人の方には、特別加入制度の仕組みと、特別加入団体を通じた手続の流れをご説明します。ご相談は無料です。 内容に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。
業務委託契約書の作成や新法の取引条件明示の設計は行政書士または弁護士、報酬・契約をめぐる紛争は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. フリーランスはいつから、どの業種でも労災に入れるようになったのですか?
A. 2024年11月1日からです。この日、第2種特別加入(一人親方等・労働者災害補償保険法第35条)に「特定受託事業者が行う事業(特定フリーランス事業)」が新設され、業種を問わず、労働者を使用しないで業務委託を受けて働くフリーランスが特別加入できるようになりました。従来は建設・運送などの一部業種に限られていましたが、IT・デザイン・通訳・講師・営業代行など広く対象になりました。消費者から同種の仕事を受けて行う場合の災害も補償されます。
Q. 特別加入の手続はどこで、保険料はどう決まりますか?
A. 本人が、都道府県労働局長の承認を受けた特定フリーランス事業の特別加入団体を通じて申し込みます。給付基礎日額を3,500円〜25,000円の範囲の段階から選んで申請し、都道府県労働局長が決定します。保険料は「給付基礎日額×365(保険料算定基礎額)×特定フリーランス事業の保険料率」で計算し、特別加入団体を通じて納めます。具体的な金額や該当性は、特別加入団体と最新の案内でご確認ください。
Q. フリーランス新法と労災の特別加入は同じものですか?
A. いいえ、別の制度です。労災の特別加入は、フリーランス本人が任意で入る労災保険の仕組みです。フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律・令和5年法律第25号・2024年11月1日施行)は、フリーランスへ発注する側に取引条件の明示(第3条)や報酬支払期日(第4条)などを義務づける法律で、発注者にフリーランスを労災へ加入させる義務を課すものではありません。施行日が同じなだけで、目的が異なります。
Q. 発注する会社は、フリーランスを労災に入れる義務がありますか?
A. ありません。特別加入は本人が任意で入る制度で、発注企業が加入させる義務も、本人に代わって手続をすることもありません。ただし、業務委託という名称でも、指揮監督を受け時間・場所に拘束されるなど実態が雇用であれば、労働者として労災・社会保険の対象になります。発注にあたっては、まず実態が業務委託か雇用かを見極めることが出発点です。労働者性の最終判断は実態に即して資格者が行います。
この記事の根拠
- 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第4章の2「特別加入」第33条〜第37条。第33条は特別加入できる者を列挙し、第34条が中小事業主等(第1種)、第35条が一人親方等(第2種)の特別加入を定める。給付基礎日額は申請に基づき都道府県労働局長が定める(e-Gov法令検索で2026年10月26日に条文確認)
- 労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)。2024年11月1日施行の改正により、第2種特別加入の対象に「特定受託事業者が行う事業(特定フリーランス事業)」が追加された。業種を問わず、労働者を使用しないで業務委託を受けて行う事業が対象(2026年10月26日参照)
- 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法・令和5年法律第25号、2024年11月1日施行)。第2条(特定受託事業者=業務委託を受ける事業者で従業員を使用しないもの)、第3条(取引条件の明示)、第4条(報酬の支払期日=給付受領日から60日以内)、第5条(1か月以上の委託での禁止行為)、第12条(募集情報の的確表示)、第13条・第14条(育児介護等への配慮・ハラスメント対策)、第16条(6か月以上の委託での中途解除の予告)(e-Gov法令検索で2026年10月26日に確認)
- 厚生労働省「特別加入制度のしおり(特定フリーランス事業)」等の特別加入に関する案内。特定フリーランス事業は2024年11月1日に新設され、全業種のフリーランスを対象とし、消費者から受託する同種の事業の災害も補償対象であること、申込みは特別加入団体を通じて行うこと(2026年10月26日参照)
- 給付基礎日額の選択範囲(3,500円〜25,000円)は特別加入制度の一般的な範囲による。具体的な特定フリーランス事業の保険料率・段階は、特別加入団体および厚生労働省の最新の案内で確認が必要(2026年10月26日参照)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。労災保険の特別加入についての制度の説明、労働保険・社会保険の整理、労働者性の点検は社会保険労務士の業務です。特別加入の申請そのものは本人が特別加入団体を通じて行います。業務委託契約書の作成や新法の取引条件明示の設計は行政書士または弁護士、報酬・契約をめぐる紛争は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、最新の一次資料(厚生労働省、e-Gov等)を踏まえ、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「働き方」から、整理しませんか。
四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00
