賞与(ボーナス)の社会保険料はどう決まるか——標準賞与額の上限と賞与支払届・不支給報告書

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
賞与の社会保険料は、税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に保険料率を掛け、会社と従業員で折半します。上限は健康保険が年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計573万円、厚生年金保険が1か月150万円で、期間の取り方が別です。賞与支払届は支給日から5日以内に日本年金機構へ、賞与支払予定月に不支給なら賞与不支給報告書を提出します。個別の金額・該当性は加入先と年度の最新情報でご確認ください。
結論(先に要点):賞与の社会保険料は、税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に保険料率を掛け、会社と従業員で折半します。上限は健康保険が年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計573万円、厚生年金保険が1か月150万円で、基準が別です。賞与支払届は支給日から5日以内に日本年金機構へ提出します。この記事は制度の一般的な案内です。
この記事は、賞与(ボーナス)を支給する中小企業の経営者・人事担当に向けて、賞与にかかる健康保険・厚生年金の保険料がどう決まるか、標準賞与額の上限、賞与支払届と賞与不支給報告書の提出を整理します。毎月の標準報酬月額の決め方(算定基礎届・随時改定)は算定基礎届と随時改定は何が違うのか——標準報酬月額の決まり方に分けてまとめています。本記事は制度の案内にとどまり、個別の金額や該当性は個々の事情で分かれます。
賞与の社会保険料は何を基準に計算するのか?
賞与の社会保険料は、月給(標準報酬月額)とは別に、賞与ごとに計算します。基準になるのは「標準賞与額」で、実際に支払われた賞与額(税引前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額です。これに健康保険・厚生年金保険などの保険料率を掛け、会社と従業員が半分ずつ負担(労使折半)します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算のもと | 標準賞与額=税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた額 |
| 計算式 | 標準賞与額 × 保険料率(健康保険・厚生年金保険等)=保険料 |
| 負担 | 会社と従業員で折半 |
| 対象となる賞与 | 年3回以下の支給のもの(名称を問わない。年4回以上は標準報酬月額の対象) |
| 厚生年金保険料率 | 18.3%(労使折半。2017年9月以降固定) |
| 健康保険料率 | 加入先(協会けんぽの都道府県別・健康保険組合)により異なる |
ポイントは、賞与として扱われるのが「年3回以下」の支給に限られることです。年4回以上支給されるものは、賞与ではなく標準報酬月額(月給)の計算に取り込まれます。また、結婚祝金など労働の対償とみなされないものは、そもそも社会保険料の対象外です。40歳以上65歳未満の人は介護保険料も、2026年(令和8年)4月分の賞与からは子ども・子育て支援金も加わるため、料率は加入先と年度の最新情報でご確認ください(厚生労働省・日本年金機構の案内、2026年10月参照)。
標準賞与額に上限はあるのか(健保と厚年で違う)?
上限はありますが、健康保険と厚生年金保険で「期間の取り方」が違います。ここを取り違えると保険料を計算し間違えます。
| 区分 | 上限 | 期間の取り方 |
|---|---|---|
| 健康保険(介護保険・子育て支援金も同じ考え方) | 573万円 | 年度(毎年4月1日〜翌年3月31日)の累計 |
| 厚生年金保険 | 150万円 | 1か月(支給月ごと) |
健康保険は「年度の累計」で573万円が上限です。たとえば同じ年度にすでに500万円の賞与を支給した人に、さらに300万円を支給すると、累計800万円のうち上限までの73万円分だけが健康保険料の対象になります。厚生年金保険は「1か月ごと」で150万円が上限で、同じ月に2回以上支給したときは合算した額に上限を当てはめます。
同一の事業所で被保険者期間が続いている場合、年度累計が573万円を超えても事業主側で特別な届出は要りません(システム上で調整されます)。ただし、同一年度に複数の事業所で被保険者だった人などで累計が573万円を超えたときは、本人の申し出に基づき「健康保険 標準賞与額累計申出書」を事業主が提出します(日本年金機構の案内、2026年10月参照)。
賞与支払届はいつまでに出すのか?
賞与を支給したら、「被保険者賞与支払届」を支給日から5日以内に日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出します。70歳以上被用者に賞与を支給したときも同じ届出で届け出ます。
| 届出 | 期限・内容 |
|---|---|
| 被保険者賞与支払届 | 賞与の支給日から5日以内。支給額等を届け出る |
| 提出先 | 日本年金機構(事務センター・年金事務所)。健康保険組合加入なら組合にも |
| 総括表 | 令和3年(2021年)4月1日以降、被保険者賞与支払届総括表の提出は不要 |
この届出をもとに標準賞与額が決まり、保険料額が確定します。従業員から控除するのは賞与の支払時、会社が納付するのは原則として翌月末です。届出が遅れると保険料の確定・納付が後ろにずれるため、支給のつど期限内に出すのが実務の基本です。健康保険組合に加入している会社は、年金機構と組合の両方への届出が必要になります。
賞与を支給しなかった月は何か届出が要るのか?
あらかじめ賞与支払予定月を登録している事業所で、その月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与支払届」の代わりに「賞与不支給報告書」を提出します。令和3年(2021年)4月1日以降、従来の総括表に代えてこの報告書の提出をお願いする扱いに変わりました。
- 提出するもの:登録した賞与支払予定月に賞与を支給しなかったとき=賞与不支給報告書
- 提出しないとどうなるか:登録された賞与支払予定月の翌月までに届出がない事業主には、翌々月に催告状が送付されます
- 支払予定月の変更:賞与の支払予定月そのものを変えたいときは、別途「健康保険・厚生年金保険 賞与支払予定月変更届」で変更します
ご自身のケースについて相談したい方へ
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「賞与を出さなかったのだから何もしなくてよい」と考えがちですが、支払予定月を登録している以上は不支給の報告が要ります。催告状を受け取らないためにも、支給しなかった月は賞与不支給報告書を出しておくのが安全です(日本年金機構の案内、2026年10月参照)。
賞与の所得税(源泉)は誰に相談するのか?
賞与にかかる作業は、担い手が分かれます。社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料計算と賞与支払届・賞与不支給報告書の提出は社会保険労務士がご支援できる領域ですが、賞与の所得税(源泉徴収)や年末調整は税理士の領域です。
| 論点 | 誰が担うか |
|---|---|
| 賞与の社会保険料の計算、賞与支払届・賞与不支給報告書の作成・提出 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 賞与の所得税(源泉徴収税額の計算)・年末調整・税務申告 | 税理士(独立した事業体として別々にご契約) |
| 標準賞与額・保険料額の最終的な確定 | 日本年金機構・健康保険組合(会社が確認) |
賞与の源泉所得税は、前月の給与や扶養人数をもとにした算出率で計算する仕組みで、社会保険料とは別の計算です。四葉社会保険労務士事務所では社会保険料の計算と届出をご支援しますが、所得税・年末調整は税理士へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形でおつなぎします(紹介料はいただきません)。会社側では、保険料率や扶養の状況に変更がないか、支給額が正しく反映されているかをご確認いただきます。この記事は制度の枠組みの案内にとどまり、個別の金額や処理の可否を判断するものではありません。
よくある質問
Q. 賞与の社会保険料はどうやって計算しますか?
A. 税引前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、健康保険・厚生年金保険などの保険料率を掛け、会社と従業員で折半します。厚生年金保険料率は18.3%(労使折半)、健康保険料率は加入先により異なります。対象になるのは年3回以下の賞与で、年4回以上支給されるものは標準報酬月額(月給)の計算に含まれます。
Q. 標準賞与額に上限はありますか?
A. あります。健康保険は年度(4月1日〜翌年3月31日)の累計で573万円、厚生年金保険は1か月(支給月ごと)で150万円が上限です。健保は年度累計、厚年は月ごとと期間の取り方が違う点に注意が必要です。同じ月に2回以上支給したときは合算して上限を当てはめます。
Q. 賞与支払届はいつまでに出しますか?
A. 賞与の支給日から5日以内に、被保険者賞与支払届を日本年金機構へ提出します。70歳以上被用者に支給したときも同じ届出です。令和3年4月1日以降、被保険者賞与支払届総括表の提出は不要になりました。健康保険組合に加入している会社は組合への届出も必要です。
Q. 賞与を支給しなかった月は何か届出が要りますか?
A. 賞与支払予定月を登録している事業所で、その月に賞与を支給しなかったときは「賞与不支給報告書」を提出します。登録した予定月の翌月までに届出がないと、翌々月に催告状が送られます。支払予定月そのものを変えるときは賞与支払予定月変更届で変更します。
この記事の根拠
- 標準賞与額の定義:実際に支払われた賞与額(税引前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額(日本年金機構「従業員に賞与を支給したときの手続き」、2026年10月参照)
- 上限:健康保険は年度(毎年4月1日〜翌年3月31日)の累計573万円、厚生年金保険は1か月150万円。同一月に2回以上支給の場合は合算額に上限を適用(健康保険法・厚生年金保険法の標準賞与額の定め。日本年金機構の案内、2026年10月参照。金額・取扱いは最新情報で確認)
- 対象となる賞与:年3回以下の支給のもの(年4回以上は標準報酬月額の対象、労働の対償とみなされないものは対象外)(日本年金機構の案内、2026年10月参照)
- 賞与支払届の提出期限:賞与の支給日から5日以内。被保険者賞与支払届総括表は令和3年(2021年)4月1日以降不要(日本年金機構の案内、2026年10月参照)
- 賞与不支給報告書:登録した賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合に提出。翌月までに届出がない事業主には翌々月に催告状(日本年金機構の案内、2026年10月参照)
- 厚生年金保険料率:18.3%(労使折半。2017年9月以降固定)。健康保険料率は加入先により異なる。40歳以上65歳未満は介護保険料、2026年4月分の賞与からは子ども・子育て支援金が加わる(厚生労働省・日本年金機構の案内、2026年10月参照)
- 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条
この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、賞与の社会保険料の計算、賞与支払届・賞与不支給報告書の作成・提出についてご相談いただけます。賞与の所得税(源泉徴収)・年末調整は税理士へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形でおつなぎします(紹介料はいただきません)。費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。賞与の保険料額・上限の当てはめ・届出の要否といった個別の判断は、支給額や加入先、年度によって分かれます。制度の適用や個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・日本年金機構・e-Gov等)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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