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2026.09.13労働法の基本

就労継続支援A型の利用者は「労働者」か──雇用契約・最低賃金・減額特例

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

就労継続支援A型(雇用型)の利用者は、事業所と雇用契約を結ぶため、原則として労働基準法第9条の「労働者」に当たります。したがって最低賃金法・労働基準法・労働保険が適用され、事業場所在地の地域別最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。障害により労働能力が著しく低いなどの事情がある場合は、最低賃金法第7条の減額の特例許可を都道府県労働局長から受ければ、その労働者について減額した最低賃金を適用できます。賃金は原則として生産活動に係る事業の収入から支払い、訓練等給付費を賃金に充てることは想定されていません。障害福祉サービス事業者の指定申請は行政書士、物件は宅地建物取引業者、労働者性の法的判断は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。

結論(先に要点):就労継続支援A型(雇用型)の利用者は、事業所と雇用契約を結ぶため、原則として労働基準法第9条の「労働者」に当たります。したがって最低賃金法・労働基準法・労働保険が適用され、地域別最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。

ただし、障害により労働能力が著しく低いなどの事情がある場合は、最低賃金法第7条の「最低賃金の減額の特例許可」を都道府県労働局長から受ければ、その労働者について減額した最低賃金を適用できます。許可なく最低賃金を下回る賃金にはできません。この記事は、就労継続支援A型事業所の開設・運営を担う事業者に向けて、利用者の労働者性、最低賃金の適用と減額特例、賃金と生産活動収入の関係を、社会保険労務士の観点から整理します。

就労継続支援A型の利用者は、労働者にあたるのか?

就労継続支援は、通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、就労の機会や生産活動の機会を提供し、知識・能力の向上に必要な訓練等を行うサービスです(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律〔障害者総合支援法〕第5条。2025年〔令和7年〕10月1日の就労選択支援の新設に伴い項番号が繰り下がっているため、正確な項番号はe-Gov法令検索で確認してください)。このうち**A型は「雇用型」**で、事業所が利用者と雇用契約を結びます。B型は雇用契約を結ばない「非雇用型」です。

雇用契約を結ぶA型の利用者は、賃金を得て事業所の指揮監督のもとで働く以上、原則として**労働基準法第9条にいう「労働者」**に当たります。労働者に当たれば、労働基準法・最低賃金法・労働者災害補償保険法・雇用保険法などの労働関係法令がそのまま適用されます。B型の利用者は雇用契約がなく、支払われるのは賃金ではなく「工賃」です。

区分契約支払われるもの労働者性(原則)
就労継続支援A型(雇用型)雇用契約あり賃金労働者に当たる
就労継続支援B型(非雇用型)雇用契約なし工賃労働者に当たらない

A型・B型の人員配置や指定基準の労務については就労継続支援A型・B型の人員配置基準と労務を、雇用か外注かを分ける「労働者性」の考え方そのものは外注と雇用の境目は、契約書では決まらないをご覧ください。なお、契約書の題名がどうであれ、実態が雇用なら労働者として扱われる点は共通です。

A型で雇用契約を結ぶと、最低賃金はどう適用されるのか?

A型の利用者は労働者ですから、その事業場の所在地の地域別最低賃金が適用されます。時間額で定められた最低賃金以上の賃金を支払わなければならず、最低賃金を下回る定めは、その部分が無効となり最低賃金額まで引き上げられます(最低賃金法)。

  • 障害があること自体は、当然には最低賃金を下回る理由になりません。 減額するには、後述の減額の特例許可が必要です。
  • 最低賃金は毎年見直され、多くの地域で10月に改定されます。改定額の考え方は最低賃金は2026年10月にいくら上がるかをご覧ください。
  • 労働時間・休憩・割増賃金・年次有給休暇などの労働基準法のルールも、他の労働者と同じに適用されます。

賃金の支払は労働基準法上の使用者の義務です。利用者が労働者に当たるかの微妙な事案や、賃金・解雇をめぐる紛争の法的判断は弁護士の業務であり、当事務所は行いません。

最低賃金の減額の特例許可は、どんなときに使えるのか?

最低賃金法第7条は、使用者が都道府県労働局長の許可(申請は所轄の労働基準監督署長を経由)を受けたときに限り、次の労働者について減額した最低賃金を適用できると定めています。A型で関係するのは主に第1号です。

対象となる労働者
第1号精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
第2号試の使用期間中の者
第3号認定職業訓練を受ける者のうち厚生労働省令で定めるもの
第4号軽易な業務に従事する者・断続的労働に従事する者
  • 許可を受けて初めて減額できます。 許可がないまま最低賃金を下回れば最低賃金法違反です。
  • 減額率は、対象労働者の労働能力に応じて算定します。障害があることを理由に一律に減額するものではなく、比較対象となる労働者との能力の差から個別に決めます。
  • 許可申請の書類作成・提出代行は社会保険労務士の業務です。減額率の算定や許可後の運用について、当事務所でご相談いただけます。

減額特例を使うかどうかは、賃金設計と生産活動の収支の両面から検討します。安易に減額に頼るのではなく、生産活動そのものの見直しとあわせて考えるのが本筋です。

訓練等給付と賃金・生産活動収入は、どう整理するのか?

A型は、障害者総合支援法の**自立支援給付のうち「訓練等給付」**の対象サービスです(同法第6条)。事業所には、利用者へのサービス提供に対して訓練等給付費(自立支援給付)が支払われます。

ここで重要なのは、利用者に支払う賃金の原資と、訓練等給付費は別に考えるという運営上の取扱いです。運営基準では、A型の賃金は原則として生産活動に係る事業の収入から支払うこととされ、指定を受けた事業として得る訓練等給付費を賃金に充てることは想定されていません(詳細な条項は厚生労働省令〔運営基準〕で定められており、最新の条文で確認してください)。

  • 生産活動の収支が賃金の支払に足りるかは、事業計画の要です。収支が悪化すると賃金の支払や事業の継続に直結します。
  • 賃金(労務の対価)と、訓練としての支援(給付の対象)は、性格が異なります。会計と労務管理の両面で切り分けて記録しておくことが、後の説明を楽にします。
  • 賃金台帳・出勤簿・労働条件通知書など、労働者として当然に必要な書類は、A型でも他の事業所と同じにそろえます。

ご自身のケースについて相談したい方へ

社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。

給与計算や賃金設計を四葉社会保険労務士事務所に依頼する場合の費用は、報酬額表にまとめています。

指定申請・物件・労働者性の判断は、誰に頼むのか?

A型事業所を立ち上げるときは、担当する資格が工程ごとに分かれます。それぞれ別の契約になります。

やること主な担当
労働・社会保険の適用、賃金設計、最低賃金の減額特例許可の申請、就業規則・雇用契約の整備社会保険労務士(当事務所)
障害福祉サービス事業者の指定申請(都道府県・市町村)行政書士
事業所となる物件の確保・賃貸借宅地建物取引業者
利用者の労働者性をめぐる法的判断・賃金や解雇の紛争弁護士
給与課税・消費税・法人税などの税務税理士

指定申請は四葉行政書士事務所へおつなぎすることもできますが、四葉行政書士事務所は当事務所とは独立した事業体で、社会保険労務士業務と行政書士業務は別々にご契約いただきます(一括受任はしません)。当事務所は紹介料を受け取りません。労務の入口の整理から、四葉社会保険労務士事務所にご相談いただけます。

よくある質問

Q. 就労継続支援A型の利用者に、最低賃金は適用されますか?
A. 適用されます。A型は雇用契約を結ぶ「雇用型」で、利用者は原則として労働基準法第9条の労働者に当たり、事業場所在地の地域別最低賃金以上の賃金を支払う義務があります。障害があることだけを理由に最低賃金を下回ることはできず、下回るには最低賃金法第7条の減額の特例許可が必要です。

Q. 障害があれば、当然に最低賃金より低い賃金にできますか?
A. できません。減額するには、都道府県労働局長(申請は所轄労働基準監督署長を経由)の許可が要ります。減額率は障害を理由に一律に決めるのではなく、対象者の労働能力に応じて個別に算定します。許可なく最低賃金を下回れば最低賃金法違反となります。

Q. B型の工賃にも最低賃金は適用されますか?
A. B型は雇用契約を結ばない非雇用型で、支払われるのは賃金ではなく工賃です。利用者は原則として労働者に当たらないため、最低賃金法は適用されません。ただし、契約の名目がB型でも、実態が雇用であれば労働者として扱われる可能性があり、個別の判断は慎重に行う必要があります。

Q. 利用者に支払う賃金は、訓練等給付から出してよいですか?
A. A型の賃金は原則として生産活動に係る事業の収入から支払うこととされており、指定を受けた事業として得る訓練等給付費を賃金に充てることは想定されていません。生産活動の収支が賃金支払の原資になるため、事業計画の段階で収支を見込んでおくことが重要です。詳細な取扱いは運営基準(厚生労働省令)でご確認ください。

この記事の根拠

  • 労働者の定義:労働基準法第9条(職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者)。同法は昭和22年法律第49号
  • 就労継続支援の定義:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第5条。「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与すること」。A型(雇用型)は雇用契約を結ぶ類型。2025年(令和7年)10月1日の就労選択支援の新設(令和4年法律第104号)に伴い第5条の項番号が繰り下がっているため、正確な項番号はe-Gov法令検索で確認(2026-09参照)
  • 訓練等給付:障害者総合支援法第6条(自立支援給付の一つ)
  • 最低賃金の適用・効力:最低賃金法(昭和34年法律第137号)。最低賃金額以上の賃金を支払う義務、下回る定めの無効
  • 最低賃金の減額の特例許可:最低賃金法第7条。都道府県労働局長の許可(申請は所轄労働基準監督署長を経由)により、①精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、②試の使用期間中の者、③認定職業訓練を受ける者のうち厚生労働省令で定めるもの、④軽易な業務に従事する者・断続的労働に従事する者、について減額した最低賃金を適用できる(厚生労働省・都道府県労働局「最低賃金の減額の特例許可申請」2026-09参照)
  • A型の賃金の原資:指定障害福祉サービス事業等の人員・設備及び運営に関する基準(厚生労働省令)において、A型の賃金は生産活動に係る事業の収入から支払うこととされている。具体的な条項番号は最新の省令で確認(2026-09参照)
  • 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条

この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、労働・社会保険の適用、賃金設計、最低賃金の減額特例許可の申請、就業規則・雇用契約の整備、給与計算・勤怠管理体制についてご相談いただけます。障害福祉サービス事業者の指定申請は行政書士の業務、事業所の物件は宅地建物取引業者、利用者の労働者性をめぐる法的判断・紛争は弁護士の業務、税務は税理士の業務です。社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の事案で利用者が労働者に当たるか、減額特例が認められるかの最終判断は、労働基準監督署・都道府県労働局が行います。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。利用者の労働者性や減額特例の可否など個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・都道府県労働局・自治体など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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