運送業の2024年問題と改善基準告示|トラック運転者の拘束時間の上限
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
運送業の「2024年問題」とは、令和6年(2024年)4月1日から自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、改善基準告示(拘束時間・休息期間の基準)が改正されて効き始めたことを指します。トラック運転者は、時間外労働が特別条項でも年960時間以内(労働基準法附則第140条)、拘束時間は1年3,300時間・1か月284時間・1日13時間(最大15時間)、休息期間は継続11時間以上を基本とし9時間を下回らないというラインで管理します。上限規制と改善基準告示という2つの物差し、36協定・就業規則の直しどころ、そして誰に何を頼むかを整理します。
結論(先に要点):運送業の「2024年問題」とは、令和6年(2024年)4月1日から、自動車運転の業務にも時間外労働の上限規制が適用され、あわせて改善基準告示(拘束時間・休息期間の基準)が改正されて実際に効き始めたことを指します。トラック運転者は、時間外労働が特別条項でも年960時間以内(労働基準法附則第140条)、拘束時間は1年3,300時間・1か月284時間・1日13時間(最大15時間)、休息期間は継続11時間以上を基本とし9時間を下回らないというラインで管理する必要があります。この記事では、何が変わったのか、拘束時間の上限、36協定の直しどころ、そして誰に何を頼むかを整理します。
「うちは運送業だから残業規制は関係ない」という時代は終わりました。このページは、トラック運送事業者と運行管理者の方に向けて、2024年問題の中身、改善基準告示の拘束時間・休息期間、時間外労働の上限規制、そして就業規則・36協定のどこを直すかを、社会保険労務士の労務管理の視点で整理します。
運送業の2024年問題とは、何が変わったことを指すのか?
2024年問題とは、次の2つが令和6年(2024年)4月1日から同時に効き始めたことをまとめた呼び方です。
- 時間外労働の上限規制の適用。自動車運転の業務は、働き方改革関連法の施行時に5年間の猶予が置かれていましたが、その猶予が2024年3月末で終わりました。
- 改善基準告示の改正の適用。「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が令和4年(2022年)12月23日に改正され、令和6年(2024年)4月1日から適用されています。拘束時間の上限が縮まり、休息期間が長くなりました。
つまり「上限規制」と「改善基準告示」は別の物差しで、両方を同時に満たさなければなりません。片方だけ守っても足りません。運転者以外の労働時間の一般ルールは36協定と残業の上限もあわせてご覧ください。
改善基準告示の拘束時間と休息期間は、どこまで許されるのか?
改善基準告示は、始業から終業までの「拘束時間」(労働時間+休憩・手待ち時間)と、勤務と勤務の間の「休息期間」に上限・下限を定めています。トラック運転者の主な基準は次のとおりです。
| 項目 | 原則 | 例外・上限 |
|---|---|---|
| 1年の拘束時間 | 3,300時間 | 労使協定により、年6か月まで3,400時間 |
| 1か月の拘束時間 | 284時間 | 労使協定により、年6か月まで310時間(284時間超は連続3か月まで/月の時間外・休日労働が100時間未満となるよう努める) |
| 1日の拘束時間 | 13時間 | 最大15時間(長距離貨物運送は、1週2回まで16時間) |
| 休息期間 | 勤務終了後、継続11時間以上を基本 | 継続9時間を下回らない |
| 連続運転時間 | 4時間以内 | やむを得ない場合は最大30分まで延長可 |
改善基準告示は労働基準法そのものではなく厚生労働大臣の告示ですが、違反すれば労働基準監督署の是正指導の対象になり、運輸行政の処分(車両停止など)にもつながります。「協定さえ結べば青天井」ではないという点が、上限規制との大きな違いです。
時間外労働の上限規制は、運送業にどう適用されたのか?
自動車運転の業務にも、令和6年4月1日から時間外労働の上限規制が適用されます。ただし、一般の業種とは適用のされ方が一部違います。
| 区分 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 原則(限度時間) | 1か月45時間・1年360時間 | 労働基準法第36条第4項 |
| 特別条項の年間上限 | 年960時間以内 | 労働基準法附則第140条第1項(第36条第5項の「720時間」を「960時間」と読み替え) |
| 単月・複数月の規制 | 単月100時間未満・複数月平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)の規制は適用されない(当分の間) | 労働基準法附則第140条第1項(第36条第6項第2号・第3号の不適用) |
| 月45時間超の回数 | 月45時間を超えられるのは年6回まで | 労働基準法第36条第5項 |
一般の業種の上限は年720時間ですが、自動車運転の業務は当分の間、年960時間とされています。また、一般の業種にある「単月100時間未満・複数月平均80時間以内」の規制は運転者には適用されません。ただし960時間はあくまで特別条項の上限で、原則は月45時間・年360時間である点は変わりません。将来的に一般則へ近づける方向で見直しが予定されている点も、制度設計の前提にしておく必要があります。
36協定と就業規則は、どこを直せばよいのか?
上限規制と改善基準告示の両方を満たすには、書面のつくり込みが要ります。直しどころは次のとおりです。
| すること | 見直すポイント |
|---|---|
| 36協定(特別条項) | 年間の時間外労働を960時間以内で設計し、特別条項の回数(年6回まで)・理由・手続を明記する |
| 就業規則・賃金規程 | 拘束時間・休息期間の考え方を反映し、割増賃金の計算(時間外25%以上・休日35%以上・深夜25%以上)と整合させる |
| 労働時間・拘束時間の記録 | デジタコ等の記録と勤怠を突き合わせ、1日15時間・1か月284時間・休息9時間のラインを日々管理する運用にする |
| 過半数代表者の選出 | 管理監督者でない者を適正な手続で選び、記録を残す(労働基準法施行規則第6条の2) |
割増賃金は運転者にも当然に発生します。拘束時間が長い業種ほど、手待ち時間の扱いや歩合給と固定給の切り分けで未払いが生じやすいため、上限の管理と割増賃金の計算はセットで整える必要があります。就業規則を何人から備えるかは就業規則は何人から義務かをご覧ください。
誰に、何を頼めばよいのか?
運送業の2024年対応は、労務だけで完結しません。業務ごとに担い手が分かれます。
| すること | 誰の業務か |
|---|---|
| 36協定・就業規則・賃金規程の作成、拘束時間・労働時間の管理体制の整備、割増賃金の計算 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 一般貨物自動車運送事業の許可申請、事業計画変更の認可・届出などの許認可書類 | 行政書士 |
| 運行・車両・運送約款など運輸行政の許可判断 | 運輸支局(地方運輸局) |
| 未払い残業代の請求、労使紛争、労働審判・訴訟 | 弁護士 |
| 割増賃金の源泉徴収・年末調整の税務判断 | 税理士 |
当事務所は労務管理の情報提供・手続に限ります。運送業の許可や事業計画変更については、四葉行政書士事務所へおつなぎすることもできますが、社会保険労務士業務と行政書士業務はそれぞれ独立した事業体が担い、別々にご契約いただく前提です。一括受任はしません。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、運送業の36協定(特別条項)の設計・届出、就業規則・賃金規程の改善基準告示への対応、拘束時間・労働時間の管理体制の整備、割増賃金の計算をお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表をご覧ください。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
すでに未払い残業代の請求や紛争になっている場合は、弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 年960時間を守っていれば、改善基準告示は気にしなくてよいですか?
A. いいえ。時間外労働の上限規制(年960時間)と改善基準告示(拘束時間・休息期間)は別の物差しで、両方を同時に満たす必要があります。年960時間の範囲内でも、1日の拘束時間が15時間を超えたり、休息期間が9時間を下回れば改善基準告示違反です。
Q. 改善基準告示に違反すると、どうなりますか?
A. 改善基準告示は労働基準法そのものではありませんが、違反すると労働基準監督署の是正指導の対象になり、悪質・重大な場合は運輸行政の処分(車両の使用停止など)につながることがあります。労務と運輸の両面でリスクがある点にご注意ください。
Q. 手待ち時間は拘束時間に入りますか?
A. 入ります。改善基準告示の拘束時間は、労働時間だけでなく休憩時間や荷待ち等の手待ち時間も含む、始業から終業までの時間です。荷待ちが長い現場では、拘束時間が想定より膨らみやすいため、記録で実態を把握することが出発点になります。
Q. 運送業の許可も一緒にお願いできますか?
A. 労務管理は社会保険労務士、運送業の許可や事業計画変更の書類は行政書士の業務です。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、四葉行政書士事務所へおつなぎすることはできます。まとめて一括で受任する形はとっていません。
この記事の根拠
- 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示。平成元年労働省告示第7号、令和4年12月23日厚生労働省告示第367号により改正、令和6年4月1日適用)。トラック運転者の拘束時間(1年3,300時間・1か月284時間・1日13時間、労使協定で年3,400時間・月310時間・最大15時間、長距離は週2回16時間)、休息期間(継続11時間以上を基本・9時間を下回らない)、連続運転時間(4時間以内)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条、第36条第4項・第5項・第6項(第2号・第3号)、第37条、附則第140条第1項(自動車の運転の業務への時間外労働の上限規制の適用/年960時間・単月100時間未満等の不適用)
- 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第6条の2(過半数代表者の要件)
- 自動車運転の業務への上限規制の適用開始日は令和6年(2024年)4月1日(厚生労働省・国土交通省の公表資料により確認、2026年9月参照)
- 拘束時間・休息期間の数値は、厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」トラック運転者の改善基準告示のページにより確認(2026年9月参照)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。36協定・就業規則・賃金規程の作成、拘束時間・労働時間の管理体制の整備、割増賃金の計算は社会保険労務士の業務です。一般貨物自動車運送事業の許可申請や事業計画変更の書類は行政書士の業務、未払い残業代の請求・紛争は弁護士の業務、割増賃金の源泉徴収・年末調整の税務判断は税理士の業務です。社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「人」のことから、整理しませんか。
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