Skip to main content
2026.08.16相続の手続き(行政書士の実務から)

相続した農地は農業委員会へ届出が要る──農地法3条の3の手続きと必要書類

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

Profile (samurai.co.jp) ↗

農地を相続したら、通常の相続手続とは別に、農業委員会への届出(農地法第3条の3)が必要です。相続・遺産分割・包括遺贈などで農地の権利を取得した人が、知った時点からおおむね10か月以内に届け出ます。期限・書類・怠った場合の過料、相続登記(不動産登記法第76条の2)・相続税・売却との順番と分離受任の分担を整理しました。

結論(先に要点):農地を相続で取得したら、通常の相続手続とは別に、農業委員会への届出が必要です。根拠は農地法第3条の3で、相続・遺産分割・包括遺贈などにより農地の権利を取得した人は、権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内に、その農地がある市町村の農業委員会へ届け出ます。この届出は、農地の売買や貸借に必要な農地法第3条の許可とは違い、許可を要しない権利取得を農業委員会が把握するためのもので、届出をしても権利取得の効力を発生させるものではありません。本記事は、農地を相続した方が、この届出の期限・書類・怠った場合の不利益と、相続登記・相続税・売却との順番を整理するためのものです。個別の該当性は農業委員会の確認によります。

農地を相続したら、なぜ農業委員会への届出が別に要るのか?

農地の売買・贈与・貸借など、当事者の意思で権利を移す場合は、農地法第3条(権利移動の許可)や第5条(転用目的の権利移動の許可)にもとづき農業委員会等の許可が必要です。

これに対し、相続・遺産分割・包括遺贈・時効取得などは、当事者の意思による移転ではないため、農地法第3条の許可は要りません。しかし許可が要らないと、農業委員会が農地の権利者の変動を把握できません。そこで農地法第3条の3は、こうした許可を要しない権利取得をした人に、農業委員会への届出を義務づけています。届出のあった農地について、農業委員会が利用の意向を確認し、貸し借りのあっせん等につなげる仕組みです。

なお、届出が必要なのは対象が農地・採草放牧地の場合です。農地かどうかは、登記の地目ではなく現況で判断されます。宅地であれば相続不動産の完全ガイド(四葉不動産)で扱う通常の宅地の相続として進みます。

届出はいつまでに、どんな書類でするのか?

届出の期限・書類は次のとおりです。様式は市町村の農業委員会ごとに用意されています。

項目内容
届出義務者相続・遺産分割・包括遺贈・時効等により農地の権利を取得した人
期限権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内
届出先その農地がある市町村の農業委員会
主な書類農地法第3条の3第1項の届出書、権利取得を確認できる書面(登記事項証明書・遺産分割協議書等)など

書類の名称・部数・添付資料は農業委員会ごとに異なります。相続人が複数でも、農地を取得した人がそれぞれ届け出るのが基本です。四葉行政書士事務所では、行政書士業務の範囲で、届出書の作成、添付書類の整理、農業委員会窓口への確認を支援します。届出の受理・農地への該当性の判断は農業委員会が行います。

届出を怠ると、どんな不利益があるのか?

届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、農地法上、10万円以下の過料に処せられることがあります。過料は前科のつく刑事罰ではありませんが、行政上の秩序罰として科されうるものです。

また、届出をしないままだと、農業委員会が権利者を把握できず、農地の貸借のあっせんや周辺の利用調整の対象から外れることがあります。届出は権利取得の効力とは無関係ですが、放置すると後述の相続登記・相続税・売却の各手続でも整理が遅れます。期限はおおむね10か月と、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)と近いため、あわせて管理すると漏れが起きにくくなります。

相続登記・相続税・売却は、この届出とどう順番が絡むのか?

農業委員会への届出は、他の相続手続に代わるものではありません。次の手続は別々に必要です。

  • 相続登記:不動産登記法第76条の2により、相続で不動産(農地を含む)を取得した相続人は、取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(2024年4月1日施行)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になり得ます。登記申請の代理は司法書士又は弁護士の業務です。流れは相続登記はどう進める?をご覧ください。
  • 相続税:農地には評価や納税猶予の特例など固有の論点があり、税額計算や申告要否の判断は税理士の領域です。期限の全体像は相続手続きの期限まとめをご覧ください。
  • 売却・貸借:農地のまま売る・貸すには農地法第3条の許可、宅地等へ転用して売るには第4条・第5条の許可・届出が別に必要で、相手探しと媒介は不動産の役割です。

農業委員会への届出(第3条の3)は「相続で取得したことの届出」、相続登記は「登記名義の変更」、農地法第3条・第5条の許可は「これから売買・貸借・転用するための許可」で、目的がそれぞれ異なります。どれか一つで足りるものではありません。

農地のまま持ち続ける・手放すときは、次に何を検討するのか?

届出を終えた後の選択肢は、大きく「持ち続ける」「貸す」「売る」「手放す」に分かれます。

  • 持ち続ける・自ら耕作する:固定資産税や管理の負担が続きます。
  • 貸す・売る:農地のままなら農地法第3条の許可が前提です。買い手・借り手探しと媒介は不動産が担います。
  • 転用して活用・売却する:市街化区域内は農業委員会への届出、市街化調整区域等は都道府県知事等の許可(農地法第4条・第5条)と、区域で扱いが変わります。
  • 国庫へ帰属させる:一定の要件を満たす土地は相続土地国庫帰属制度の対象になり得ます。詳しくは不要な土地を相続したらどうする?をご覧ください。

どの道でも、まずは第3条の3の届出と相続登記で名義と権利者を確定させることが出発点です。相続の承認・放棄を検討している場合は、熟慮期間との関係もあるため相続放棄・限定承認を検討する前に知っておきたいことをあわせてご確認ください。

届出・登記・税務・紛争・売買は、それぞれ誰に頼めばよいのか?

農地の相続は複数の専門分野が交わります。担当は次のように分かれます。

  • 農地法第3条の3の届出書の作成・提出支援、農地転用(第4条・第5条)の許可・届出書類の作成 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 相続登記(名義変更)の申請代理 → 司法書士又は弁護士
  • 相続税・農地の評価・納税猶予 → 税理士
  • 遺産分割でもめている場合の交渉・調停・審判 → 弁護士
  • 農地・転用後の土地の売買・貸借の相手探しと媒介 → 四葉不動産株式会社

四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体です。当社は届出・農地転用書類の作成支援のみを独立した事業体として担い、登記・税務・紛争・売買は、それぞれの資格者と別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。相続業務の全体像は相続・遺言・信託サービス、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。

よくある質問

Q. 農地を相続したら農業委員会の許可が要りますか?
A. 相続による取得には農地法第3条の許可は不要です。代わりに、農地法第3条の3にもとづく届出が必要で、権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内に、その農地がある市町村の農業委員会へ届け出ます。許可と届出は別の手続です。

Q. 届出をしないとどうなりますか?
A. 届出をしなかったり虚偽の届出をした場合、農地法上、10万円以下の過料に処せられることがあります。過料は刑事罰ではありませんが、行政上の秩序罰として科されうるものです。届出は権利取得の効力とは無関係ですが、放置すると農地の利用調整の対象から外れることがあります。

Q. 相続登記をすれば農業委員会への届出は不要ですか?
A. いいえ。相続登記は不動産登記法第76条の2にもとづく登記名義の変更で、取得を知った日から3年以内が期限です。農業委員会への届出(第3条の3)は農地の権利者変動を把握するための別の手続で、どちらも必要です。

Q. 農地を相続したものの耕作する予定がありません。どうすればよいですか?
A. まず第3条の3の届出と相続登記で権利者を確定させます。その後、農地のまま貸す・売る(農地法第3条の許可が前提)、転用して活用・売却する(第4条・第5条)、一定要件を満たせば相続土地国庫帰属制度を検討する、といった選択肢があります。相手探しと媒介は不動産、許可・届出書類は行政書士と、それぞれ別事業体として別々にご契約いただきます。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「農地法」(昭和27年法律第229号)第3条、第3条の3、第4条、第5条(参照日 2026-08-23)
  • e-Gov法令検索「不動産登記法」(平成16年法律第123号)第76条の2(相続等による所有権の移転の登記の申請、2024年4月1日施行)(参照日 2026-08-23)
  • 農林水産省「農地の売買・貸借・転用について」(相続等による農地取得の届出の解説を含む)(参照日 2026-08-23)
  • 各市町村農業委員会(酒田市・上越市ほか)「農地法第3条の3の届出」案内・様式(参照日 2026-08-23)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の届出の要否、農地への該当性、期限、過料の適用を保証するものではありません。届出の受理・農地への該当性の判断は農業委員会が行います。市町村ごとの様式・添付書類・受付要領は当該農業委員会の公式ページで確認してください。相続登記(名義変更)の申請代理は司法書士又は弁護士、相続税・農地の評価・納税猶予は税理士、遺産分割でもめている場合の交渉・調停・審判は弁護士、農地・転用後の土地の売買・貸借の媒介は四葉不動産株式会社が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

Let's start by sorting out your situation.

Yotsuba Gyoseishoshi Office (Kohinata, Bunkyo-ku; a 5-minute walk from Myogadani Station on the Tokyo Metro Marunouchi Line) supports you from organizing the requirements through document preparation and application.

LINE connects you directly to our representative, Joji Uramatsu. Messages are accepted 24/7 and answered in order.

5 min walk from Myogadani Sta. (Tokyo Metro Marunouchi Line)|Tue & Wed 10:00–19:00 / Mon, Thu–Sun 18:00–19:00