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2026.08.16相続の手続き(行政書士の実務から)

不要な土地を相続したらどうする?相続土地国庫帰属制度と相続放棄の違い

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続土地国庫帰属制度は、相続等で取得した一定の土地を要件を満たしたうえで国庫へ帰属させる制度です。一方、相続放棄はその相続について初めから相続人でなかったものとされる制度です。申請できる人、引き取れない土地、費用、相続登記・売却との違い、行政書士に頼める範囲を文京区の実務に沿って整理しました。

結論(先に要点):相続した土地が不要な場合、まず確認したいのが「相続土地国庫帰属制度」です。これは相続等で取得した一定の土地を、要件を満たしたうえで国庫へ帰属させる制度です。一方、相続放棄は「その土地だけ」を放棄する制度ではなく、その相続について初めから相続人でなかったものとして扱われる制度です。この2つは目的も効果も異なります。本記事は、不要な土地の扱いを検討する方が、国庫帰属と相続放棄の違い、申請できる人、引き取れない土地、費用、手続の流れを整理するためのものです。個別の申請可否は法務局の審査であり、当事務所が承認や成功を保証するものではありません。

「この土地だけ相続放棄」はできない

相続放棄は、特定の財産だけを選択して放棄する制度ではありません。相続放棄をすると、その相続について初めから相続人でなかったものとして扱われます

一方、共同相続人間の遺産分割協議によって「土地はA、預金はB」のように財産ごとの取得者を定めることはできます。これは相続放棄とは別の話です。

相続放棄の基本的な考え方、3か月の熟慮期間、効果は相続放棄・限定承認を検討する前に知っておきたいことをご覧ください。

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」に基づき、相続又は相続人に対する遺贈により土地の所有権を取得した者が、一定の要件を満たした土地について国庫へ帰属させる制度です。

制度開始は2023年4月27日です。制度開始前の相続で取得した土地も対象です。数十年前の相続だから対象外、ということではありません。

誰が申請できるか

国庫帰属を申請できるのは、相続又は相続人に対する遺贈により、土地所有権の全部又は一部を取得した者です。

共有地は、共有者全員で共同申請する必要があります。一人でも同意しない共有者がいる場合、その共有状態のままでは承認申請できません。

売買等で持分を取得した共有者がいても、相続等で持分を取得した共有者が含まれ、共有者全員が共同申請する場合には、制度を利用できる場合があります。

相続登記との関係

相続登記未了であっても、申請土地を相続又は相続人への遺贈で取得したことを戸籍事項証明書等で証明できれば、国庫帰属の申請は可能です。

ただし、登記名義人から被相続人への所有権移転自体が未登記など、現在の申請者が相続等によって取得したことを確認できないケースでは、申請できない場合があります。例えば、登記名義人から被相続人への売買が未登記のまま、その後被相続人が死亡したケースです。

また、申請を取り下げた場合、却下・不承認となった場合は、申請者が引き続き土地所有者であり、別途相続登記義務への対応が必要です。

国庫帰属制度と相続登記義務は別制度です。「国庫帰属を申請したから、相続登記の期限を考えなくてよい」とはなりません。相続登記の義務・期限は相続登記はどう進める?をご覧ください。

引き取れない土地の類型

国庫帰属が認められない土地は、大きく2つに分けて整理されます。

A 却下事由となる土地

  • 建物がある土地
  • 担保権、使用収益権等が設定されている土地
  • 他人の使用が予定されている土地
  • 一定の土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 所有権の存否、帰属、範囲に争いがある土地

B 不承認事由となる土地

  • 一定の崖があり、管理負担が大きい土地
  • 管理処分を妨げる地上物がある土地
  • 除去が必要な地下埋設物等がある土地
  • 争訟を経なければ管理処分できない土地
  • その他、通常の管理に過分な費用・労力を要する土地

「崖があれば全部不可」「雑草があれば全部不可」というわけではありません。最終的な判断は法務局の審査によります。

境界はどこまで確認する?

国庫帰属には、境界が明らかである必要があります。ただし、「必ず確定測量が必要」「必ず境界確認書が必要」というわけではありません。法務省は、一律に測量・境界確認書の提出まで求めるものではありません。

申請者が認識する境界を現地・図面上で表示し、隣地所有者との境界認識に相違・争いがないことが重要です。筆界等が不明確な場合は、土地家屋調査士へ確認してください。

国庫帰属の費用

国庫帰属には、審査手数料と、承認後の負担金がかかります。

費用内容
審査手数料土地1筆につき14,000円
負担金承認後に納付。20万円が基本だが、土地の種目・面積によって20万円を超える場合がある

審査手数料は、申請を取り下げた場合や、却下・不承認となった場合でも、原則として返還されません。

国庫へ帰属する時点

承認通知を受け取っただけでは、土地の所有権は国へ移りません。

負担金の通知が到達した日の翌日から30日以内に負担金を納付します。負担金を納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。

期限内に納付しなければ承認は失効します。再度国庫帰属を希望する場合は、最初から申請し直す必要があります。

申請の一般的な流れ

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 必要に応じて法務局へ事前相談する(推奨)
  2. 対象土地・境界・権利関係を確認する
  3. 申請書・添付資料を準備する
  4. 土地所在地を管轄する法務局・地方法務局本局へ申請する
  5. 書面審査
  6. 必要に応じて実地調査
  7. 承認又は不承認
  8. 承認の場合、負担金通知
  9. 30日以内に負担金を納付
  10. 納付時に国庫帰属

事前相談は予約制です。実際の承認申請先は、土地所在地を管轄する都道府県の法務局・地方法務局の本局です。土地が遠方の場合、相談については近くの法務局・地方法務局本局でも可能です。

「申請すれば必ず引き取ってもらえる」わけではありません。

行政書士に頼めること・頼めないこと

相続土地国庫帰属制度は、法定代理人の場合を除き、任意の第三者へ申請手続全部を代理させる制度ではありません。申請者本人が申請主体です。

ただし、申請書・添付書類を業として作成代行できる資格者は、弁護士、司法書士、行政書士です。四葉行政書士事務所では、行政書士業務の範囲で、申請者本人名義の申請書・添付書類作成、戸籍等の資料収集・整理を扱います。

「行政書士が国庫帰属を承認する」「必ず通る」「行政書士が土地所有者に代わって申請主体になる」ということはありません。「代理申請」とは表現しません。

専門家の担当はこう分かれる

  • 相続土地国庫帰属申請書等の作成 → 行政書士・司法書士・弁護士
  • 相続登記代理 → 司法書士又は弁護士
  • 土地の筆界に関する調査・測量、表示に関する登記、建物滅失登記等 → 土地家屋調査士
  • 所有権の範囲等について争いがある場合の個別法的判断・紛争対応 → 弁護士
  • 税務 → 税理士
  • 売却査定・媒介 → 四葉不動産株式会社

四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体・別契約で対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。

売却との違い

国庫帰属制度は、国が土地を買い取る制度ではありません。審査手数料と、承認後の負担金を申請者側が負担します。土地を売却できるかどうかの検討とは別です。

相続した土地の売却・管理は相続不動産の完全ガイド(四葉不動産)をご覧ください。四葉不動産株式会社は四葉行政書士事務所とは別事業体・別契約で対応します。

文京区で不要な土地の扱いを検討する流れ

四葉行政書士事務所(文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分)では、不要な土地の整理に必要な戸籍収集、相続人調査、財産調査、財産目録の作成、国庫帰属申請書類の作成を段階的に案内します。

財産調査は相続財産の調査と財産目録、期限は相続手続きの期限まとめをご覧ください。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続業務の全体像は相続・遺言・信託サービスをご覧ください。

よくある質問

Q. 土地だけ相続放棄できますか?
A. 相続放棄は、その相続について初めから相続人でなかったものとして扱われる制度です。特定の土地だけを選択して放棄する制度ではありません。土地と預金の取得者を分けたい場合は、遺産分割協議の対象となります。

Q. 建物付きの土地も国庫帰属できますか?
A. 建物が存在する土地は国庫帰属の申請ができません。未登記建物でも、実体として建物が存在すれば申請できません。小規模な物置等が法令上の「建物」に該当するかは個別判断となる場合があります。

Q. 相続登記前でも国庫帰属を申請できますか?
A. 相続登記未了でも、申請土地を相続又は相続人への遺贈で取得したことを戸籍事項証明書等で証明できれば申請可能です。ただし、登記名義人から被相続人への移転が未登記など、取得を確認できない場合は申請できない場合があります。相続登記義務は別制度です。

Q. 共有地を自分1人だけで国庫帰属できますか?
A. 共有地は共有者全員で共同申請する必要があります。一人でも同意しない共有者がいる場合、その共有状態のままでは承認申請できません。

Q. 国庫帰属にはいくらかかりますか?
A. 審査手数料は土地1筆につき14,000円です。承認後は別途負担金がかかり、20万円が基本ですが、土地の種目・面積によって20万円を超える場合があります。審査手数料は原則返還されません。

Q. 申請すれば必ず国が引き取ってくれますか?
A. 必ず引き取ってもらえるわけではありません。却下事由・不承認事由に該当する場合や、審査の結果によっては承認されません。最終判断は法務局の審査です。

Q. 昔相続した土地も対象ですか?
A. 制度開始の2023年4月27日以前に相続した土地も対象です。数十年前の相続だから対象外、ということではありません。ただし、個別の要件は確認が必要です。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」
  • e-Gov「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度Q&A」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」
  • 法務省「引き取ることができない土地の要件」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
  • 法務省「相続土地国庫帰属制度における専門家の活用等について」

本記事は一般的な情報提供であり、個別の国庫帰属申請の可否、土地の該当性、費用、所有権帰属の時期、相続登記義務を保証するものではありません。国庫帰属申請の最終的な承認・不承認は法務局の審査です。相続登記代理は司法書士又は弁護士、土地の筆界に関する調査・測量、表示に関する登記、建物滅失登記等は土地家屋調査士、所有権の範囲等について争いがある場合の個別法的判断・紛争対応は弁護士、税務は税理士、不動産の売却査定・媒介は四葉不動産株式会社が、それぞれ独立した事業体として別契約で対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

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