メインコンテンツにスキップ
2026.08.16相続の手続き(行政書士の実務から)

相続財産の調査と財産目録の作り方──何を・どう調べる?行政書士に頼めること

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続財産にはプラスとマイナスがあります。遺産分割・相続放棄・相続税の前提として、財産と債務の全体像を整理することが重要です。所有不動産記録証明制度、預貯金・借金の調べ方、財産目録の作り方と行政書士に頼める範囲を文京区の実務に沿って整理しました。

結論(先に要点):相続財産には「プラス」と「マイナス」があり、遺産分割・相続放棄・相続税の前提として、被相続人の財産・債務の全体像を整理することが重要です。本稿でいう「財産目録」は、相続税申告用の明細書ではなく、遺産分割等に入る前の財産・債務を整理する一覧表です。行政書士は財産・債務の調査整理と財産目録の作成を担当しますが、税務評価・不動産鑑定評価・売却査定・媒介、相続税、相続登記はそれぞれ税理士・不動産鑑定士・宅地建物取引業者・司法書士などの領域と分かれます。

相続財産には「プラス」と「マイナス」がある

相続財産は、プラスの財産だけではありません。

  • プラスの財産:不動産、預貯金、有価証券、自動車など
  • マイナスの財産:借入金、未払いのもの、保証債務など

どちらか一方だけを見ても、相続財産の全体像は分かりません。財産と債務の両方を確認して、はじめて遺産分割の検討や相続放棄の判断の材料になります。

本稿でいう「財産目録」とは?──相続税申告の明細書との違い

本稿でいう「財産目録」は、遺産分割等に入る前に被相続人の財産・債務を整理するための一覧表です。

相続税申告で使用する国税庁所定の財産・債務の明細書とは目的が異なります。相続税の申告・税務評価は税理士の領域であり、本稿では「相続手続を進めるための財産・債務の整理」を扱います。

財産調査はなぜ必要?

財産の全体像が分からないと、次のことが進められません。

  • 遺産分割協議で何を分けるかを決めること
  • 相続放棄を検討するかどうかを判断すること
  • 相続税申告の前提を整えること

相続人調査(戸籍収集)と並行して進めます。相続人調査の基本は相続は何から始める?文京区で進める戸籍収集・相続人調査と行政書士に頼めることをご覧ください。相続人と財産を整理した後の手続は、法定相続情報一覧図とは?戸籍一式の代わりに利用できる制度と申出のしかた遺産分割協議書は自分で作れる?で扱っています。

所有不動産記録証明制度(2026年2月2日開始)で被相続人名義の不動産を一覧調査

2026年2月2日から、法務局の**「所有不動産記録証明制度」**が始まりました(法務省)。相続人が、被相続人名義で登記されている所有不動産を一覧的に調査できる制度です。

  • 全国の法務局等から請求できます。
  • 書面・郵送・オンラインによる請求方法があります。

ただし、この証明書には次の限界がある点に注意が必要です。

  • 氏名・住所等を検索条件とします。
  • 旧住所等との不一致により、抽出されない場合があります。
  • 所有権の登記がされていない不動産は対象外です。
  • 非コンピュータ化登記簿は抽出されません。
  • 検索の網羅性には限界があります。

したがって、「この証明書を取れば全不動産が100%判明する」とはいえません。 あくまで登記されている不動産を一覧的に把握するための手がかりとして利用します。

不動産調査で使う書類の役割(証明書・納税通知書・評価証明書・名寄帳)

不動産調査では、次の書類を役割に応じて使い分けます。

  • 所有不動産記録証明書:被相続人名義の所有不動産を一覧的に調べるための証明書
  • 登記事項証明書:個別の不動産について、所在地・地番・持分・権利関係を確認するための書類
  • 固定資産税納税通知書:課税されている不動産の手がかりになる書類
  • 固定資産評価証明書:固定資産税評価額が記載された証明書
  • 名寄帳:所有する不動産を課税情報ベースで一覧にしたもの

なお、固定資産税・名寄帳は一般的には市町村等が扱いますが、東京23区では東京都が固定資産税を扱い、土地・家屋名寄帳は都税事務所が扱います。

預貯金・金融商品の調べ方

預貯金・金融商品は、通帳、キャッシュカード、残高証明書、証券口座の取引報告書などを手がかりに、金融機関・口座・残高を整理します。

口座の凍結や残高証明書の取得は、金融機関ごとの手続に従います。金融機関への照会・残高証明の取得は、相続人からの委任と各金融機関の取扱いによるものであり、行政書士に当然の照会権があるわけではありません。

借金(負債)の調べ方──信用情報機関の相続人向け開示も

借金(負債)は、契約書、郵便物、通帳の入出金履歴などを手がかりに確認します。

さらに、JICC、CIC、全国銀行個人信用情報センターなどの信用情報機関には、死亡した本人について法定相続人向けの信用情報開示手続があります。各機関の定める手続に従って開示を申し込みます。

ただし、一つの機関の信用情報開示で、全ての債務・保証債務が判明するわけではありません。 JICC、CIC、全国銀行個人信用情報センターは、登録対象・開示方法・代理手続がそれぞれ異なります。例えば全国銀行個人信用情報センターは、金融機関が死亡を確認すると登録情報が削除され、開示に掲載されない場合があると案内しています。信用情報は調査の手がかりの一つとして位置づけます。

財産の「整理」と「評価」は別もの

財産の「整理」と「評価」は異なります。

行政書士は、固定資産評価証明書、残高証明書など資料に記載された金額を財産目録へ整理することはできます。

一方、次の評価は担当する専門家が異なります。

  • 相続税申告のための税務評価 → 税理士
  • 不動産鑑定評価 → 不動産鑑定士
  • 不動産の売却査定・媒介 → 宅地建物取引業者

ただし、「行政書士は一切評価額を扱えない」というわけではありません。 資料に記載された金額の整理・一覧化までは行政書士が行えます。

後から財産や借金が見つかったら?

後から判明した「財産」と「借金」は、取り扱いが異なります。

後から判明した財産
遺産分割協議書に、後から判明した財産の取扱いについての条項を設けることはあります。ただし、これを「セオリー」と断定するものではありません。判明した財産の内容や条項の内容によっては、追加の協議が必要になる場合もあります。行政書士は、具体的な分け方を提案しません。

後から判明した借金
相続債務は、原則として法定相続分に応じて当然に分割され、原則として遺産分割の対象ではありません。相続人間で特定の人が負担すると合意しても、その合意を当然に債権者へ主張できるわけではありません。具体的な対応は弁護士等へご確認ください。

詳しくは遺産分割協議書は自分で作れる?必要書類・書き方のポイントと行政書士に頼めることをご覧ください。

相続放棄を検討している場合の注意(財産・債務調査が判断材料)

財産・債務の調査結果は、相続放棄を検討する際の判断材料になります。相続放棄には3か月の熟慮期間があり、財産調査が3か月以内に終わらない場合は、熟慮期間の伸長を含め早期に専門家へ確認してください。

相続放棄の法的判断・紛争対応は弁護士、家庭裁判所への提出書類の作成は司法書士または弁護士の領域です。行政書士は「放棄すべき」という判断はしません。

行政書士に頼めること・頼めないこと

日本行政書士会連合会は、相続手続について**「その前提となる諸々の調査」や「相続財産の調査」**を行政書士業務として案内しています。これを踏まえ、行政書士は財産・債務の調査整理と財産目録の作成を担当します。

ただし、金融機関等での残高証明の取得・照会については、相続人からの委任と各金融機関の取扱いに従います。行政書士に当然の照会権があるわけではありません。

行政書士が行わないのは、相続税の申告・税務評価、不動産鑑定評価、相続登記の代理申請、不動産の売却査定・媒介です。それぞれ税理士・不動産鑑定士・司法書士・宅地建物取引業者の領域であり、いずれも独立した契約で、当事務所は紹介料を受け取りません。

文京区で相続財産調査を進める流れ

四葉行政書士事務所(文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分)では、財産・債務の範囲確認、調査の進め方、財産目録の作成までを段階的に案内します。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続業務の全体像は相続・遺言・信託サービスをご覧ください。

文京区内の土地・家屋の評価証明・名寄帳等は、文京都税事務所で確認できます。

相続した不動産の売却・管理は相続不動産の完全ガイド(四葉不動産)をご覧ください。四葉不動産株式会社は四葉行政書士事務所とは別事業体・別契約で対応します。

よくある質問

Q. 財産目録は自分で作れますか?
A. 財産・債務の資料を集めて一覧にできれば作成できます。ただし、不動産の登記情報や残高証明、信用情報などを複数の窓口から集めて照合する作業は手間がかかります。行政書士は財産・債務の調査整理と財産目録の作成をお手伝いします。

Q. 所有不動産記録証明書を取れば、不動産が全部分かりますか?
A. 全部が分かるとは限りません。氏名・住所等を検索条件とするため旧住所との不一致で抽出されない場合があり、所有権登記がない不動産や非コンピュータ化登記簿は対象外です。網羅性には限界があるため、他の書類とあわせて確認します。

Q. 借金はどう調べればよいですか?
A. 契約書・郵便物・通帳などを手がかりにするほか、JICC、CIC、全国銀行個人信用情報センターなどの法定相続人向け信用情報開示手続を利用できます。ただし信用情報で全ての債務が判明するとは限りません。

Q. 後から財産や借金が見つかったらどうなりますか?
A. 財産と借金では取り扱いが異なります。後から判明した財産は遺産分割協議の対象になり得ますが、相続債務は原則として法定相続分に応じて当然に分割され、遺産分割の対象ではありません。詳しくは遺産分割協議書の記事をご覧ください。

この記事の出典(一次情報)

  • 法務省「所有不動産記録証明制度」(令和8年2月2日施行)
  • 法務局「登記事項証明書」
  • 総務省・東京都・市区町村「固定資産税」「固定資産評価証明書」「名寄帳」(東京23区は東京都・都税事務所)
  • 国税庁「相続税の申告」(相続財産・債務の明細)
  • JICC・CIC・全国銀行個人信用情報センター(死亡した本人に関する法定相続人向け信用情報開示手続)
  • 日本行政書士会連合会(相続手続と行政書士業務)
  • 行政書士法第1条の3(業務範囲:権利義務又は事実証明に関する書類の作成)

本記事は一般的な情報提供であり、個別の相続財産の範囲・評価・債務の有無、相続放棄の可否、税務・登記上の効果を保証するものではありません。相続税の申告・税務評価は税理士、不動産鑑定評価は不動産鑑定士、相続登記の代理申請は司法書士、相続放棄の法的判断・紛争対応は弁護士、家庭裁判所への提出書類の作成は司法書士または弁護士、不動産の売却査定・媒介は宅地建物取引業者が、それぞれ独立した事業体として別契約で対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

四葉行政書士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、要件の整理から書類作成・申請までお手伝いします。

LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。

東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00