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2026.08.16相続の手続き(行政書士の実務から)

相続税の申告は必要?基礎控除・10か月の期限と申告要否の考え方

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続税の申告は、相続が発生した方全員に必要なわけではありません。基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を踏まえた申告要否、課税対象財産・非課税財産・債務・葬式費用・みなし相続財産・生前贈与の論点を、税理士へ相談する前に整理します。税額計算や申告要否の最終判断は税理士の領域です。

結論(先に要点):相続税の申告は、相続が発生した方全員に必要なわけではありません。まず確認するのは、特例適用を使わずに算定した正味の遺産額等と、基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の関係です。ただし、遺産総額だけを見て「この金額以下なら必ず申告不要」とは判断できません。課税対象財産、非課税財産、債務・葬式費用、みなし相続財産、一定の生前贈与などを整理する必要があります。小規模宅地等の特例などを利用して税額又は課税価格が下がる場合には、税額が0円でも申告が必要となるケースがあります。この記事は、税理士へ相談する前に相続人が整理しておきたい基本資料・論点をまとめたものです。相続税の申告要否の最終判断、税務上の財産評価、特例適用判断、税額計算、申告書作成・税務代理は税理士の領域です。行政書士は税務判断を行いません。

相続税の申告は全員に必要ではない──まず「申告要否」を確認する

相続税は、亡くなった方の財産を相続した場合に必ず申告しなければならない税金ではありません。相続税には基礎控除があり、特例適用を使わずに算定した正味の遺産額等が基礎控除の範囲内であれば、原則として相続税の申告は不要です。

一方で、申告が不要かどうかは、単純に「預貯金と不動産の合計がいくらか」だけでは決まりません。相続税の計算上は、民法上の遺産とは扱いが異なる財産が課税対象になったり、逆に債務や葬式費用が控除されたりすることがあります。まずは、申告要否を考えるために必要な項目を順に整理します。

基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」

相続税の基礎控除額は、原則として次の式で計算します。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人であれば、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となります。

ただし、遺産総額だけが基礎控除以下だからといって、必ず申告不要になるわけではありません。相続税の申告要否は、遺産の総額そのものではなく、課税対象財産から非課税財産や債務・葬式費用などを差し引いた結果で判断するためです。みなし相続財産や一定の生前贈与なども関係します。

「法定相続人の数」の税法上の扱い

基礎控除の計算に使う法定相続人の数は、民法上の相続人の範囲と基本的には対応します。相続順位や代襲相続の基本は法定相続人と相続分の基本をご覧ください。

ただし、相続税の基礎控除計算では、次の点に注意が必要です。

  • 相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算上は、その放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。
  • 養子については、原則として、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までを法定相続人の数に含める制限があります。

養子や代襲相続が関係する場合、相続放棄者や養子の取扱いが問題になる場合には、個別の判断は税理士にご確認ください。

相続税の対象になる財産

相続税の課税対象となる財産には、一般的に次のようなものがあります。

  • 預貯金
  • 現金
  • 有価証券
  • 土地
  • 建物
  • その他、経済的価値のある財産

さらに、民法上の遺産とは扱いが異なっても、相続税上はみなし相続財産として課税対象となるものがあります。代表的なものが死亡保険金と死亡退職金等です。

  • 死亡保険金:被相続人が保険料の全部又は一部を負担した一定の死亡保険金が、相続税上のみなし相続財産となります。
  • 死亡退職金等:被相続人の死亡により支給され、原則として死亡後3年以内に支給が確定した一定の退職手当金等が、相続税の対象となります。

相続人が取得した場合には、原則としてそれぞれ500万円×法定相続人の数の非課税限度額があります。ただし、相続放棄者本人などには非課税枠が適用されない場合があります。非課税限度額の人数計算では、相続放棄者も放棄がなかったものとして数えます。具体的な取扱いは税理士にご確認ください。

債務・葬式費用はすべて控除できるわけではない

相続税の計算上、死亡時に現に存在し、確実と認められる一定の債務は、相続財産から控除できる場合があります。保証債務は原則として控除対象とは限らないため、借入金があるからといって全て控除できるわけではありません。

一定の葬式費用も控除対象になる場合があります。ただし、国税庁の取扱いでは、墓石・墓地購入費、香典返し、法事費用などは葬式費用に含まれないものがあります。葬儀に関連する費用であっても、全て控除できるわけではありません。

どの債務・葬式費用が控除対象になるかは税務判断です。詳細は税理士にご確認ください。

生前贈与は「暦年課税に係る贈与」で加算対象期間が異なる

一定の生前贈与は、相続税の課税価格へ加算される場合があります。ここでいう加算対象期間の説明は、暦年課税に係る贈与についてのものです。相続時精算課税は別制度です。

2026年時点では、相続開始日によって加算対象期間が異なる経過措置があるため、現在の制度を「一律に7年前まで加算」とまとめることはできません。

相続開始日加算対象期間のおおまかな考え方
2026年12月31日まで原則として相続開始前3年
2027年1月1日〜2030年12月31日2024年1月1日〜相続開始日
2031年1月1日以後原則として相続開始前7年

さらに、2027年1月2日以後の相続では、相続開始前3年より前の加算対象贈与について、総額100万円まで加算対象外となる仕組みがあります。

この記事では詳細な計算は行いません。個別の計算・適用判断は税理士にご確認ください。

相続税が0円でも申告が必要なことがある?

「税額が0円」と「申告不要」は同じではありません。次の2つを区別する必要があります。

  • 基礎控除の範囲内で、特例を使わなくても課税遺産総額が生じない場合
  • 基礎控除を超えるが、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を利用して税額が0円になる場合

配偶者の税額軽減は、適用によって納税額が0円になる場合でも、申告が必要です。小規模宅地等の特例も、適用を受けるには相続税申告書への記載と一定書類の添付が必要です。

したがって、税額が0円であっても、申告不要とは一概にはいえません。

相続税の申告・納付期限は原則10か月

相続税の申告・納付期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

相続税の申告が必要となるケースでは、遺産分割が終わっていなくても、原則として10か月以内に申告・納付する必要があります。申告期限が当然に延長されるわけではありません。相続手続きの各期限との関係は相続手続きの期限まとめをご覧ください。

遺産分割が終わらない場合と特例の扱い

遺産分割が終わっていない未分割財産については、当初申告時に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を原則適用できない場合があります。

国税庁には、「申告期限後3年以内の分割見込書」などの仕組みがあります。ただし、要件や更正の請求、期限など具体的な税務手続は税理士にご確認ください。

行政書士に頼めること・頼めないこと

行政書士は税務判断を行いません。

行政書士業務として、次のような書類・資料の整理を行います。

  • 戸籍収集
  • 相続人調査
  • 相続関係の整理
  • 財産調査
  • 財産目録の作成
  • 合意済み内容に基づく遺産分割協議書の作成
  • 遺言等の書類業務

税理士へ渡すために、相続人や財産関係の資料を整理することはできます。一方、四葉行政書士事務所では、個別の申告要否、相続税評価、特例適用、税額等について税務相談を行いません。個別の申告要否の判定、「この不動産の相続税評価額は○円」「この特例が使える」「相続税額は○円」といった税務判断は行政書士が行いません。

相続人の調査・戸籍収集は相続は何から始める?、財産調査は相続財産の調査と財産目録、遺産分割協議書は遺産分割協議書は自分で作れる?をご覧ください。

専門家の担当はこう分かれる

相続税・税務評価・申告は税理士、相続登記の代理申請は司法書士、親子関係の争い・遺留分・相続人間の紛争などは弁護士、不動産の査定・媒介は四葉不動産株式会社の領域です。

本人が自ら相続税申告書を作成・提出することは可能です。一方、他人から依頼を受けて行う税務相談、税務書類の作成、税務代理は税理士業務です。

四葉不動産株式会社は四葉行政書士事務所とは別事業体・別契約で対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。

国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」を活用する

国税庁には、相続財産等を入力して、相続税申告のおおよその要否を確認できる「相続税の申告要否判定コーナー」があります。

ただし、このコーナーはおおよその要否を判定するものであり、相続税申告書を作成するものではありません。複雑な案件は税理士にご相談ください。

文京区で相続手続きを進める流れ

四葉行政書士事務所(文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分)では、戸籍収集・相続人調査、財産調査・財産目録、遺産分割協議書、遺言の起案までを段階的に案内します。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続業務の全体像は相続・遺言・信託サービスをご覧ください。

相続した不動産の売却・管理は相続不動産の完全ガイド(四葉不動産)をご覧ください。四葉不動産株式会社は四葉行政書士事務所とは別事業体・別契約で対応します。

よくある質問

Q. 遺産が基礎控除以下なら相続税申告は不要ですか?
A. 基礎控除以下かどうかは、遺産総額だけでなく、課税対象財産、非課税財産、債務・葬式費用、みなし相続財産、一定の生前贈与などを整理して確認します。遺産総額だけが基礎控除以下だからといって、必ず申告不要になるわけではありません。申告要否の最終判断は税理士にご確認ください。

Q. 相続放棄した人も基礎控除の人数に入りますか?
A. 相続税の基礎控除計算では、相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。養子などが関係する場合は取扱いが異なる場合があるため、具体的判定は税理士にご確認ください。

Q. 生命保険金も相続税の対象ですか?
A. 被相続人が保険料の全部又は一部を負担した一定の死亡保険金は、民法上の遺産とは扱いが異なっても、相続税上はみなし相続財産として課税対象となる場合があります。相続人が取得した場合には、原則として「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額があります。個別の取扱いは税理士にご確認ください。

Q. 配偶者だから相続税が0円なら申告しなくてよいですか?
A. 配偶者の税額軽減を適用して納税額が0円になる場合でも、申告が必要です。小規模宅地等の特例も、適用を受けるには相続税申告書への記載と一定書類の添付が必要です。「税額0円=申告不要」とは限りません。

Q. 遺産分割が10か月以内に終わらない場合はどうしますか?
A. 相続税の申告が必要となるケースでは、遺産分割が終わっていなくても、原則として10か月以内に申告・納付する必要があります。未分割財産がある場合の申告方法や特例の扱いは、税理士にご確認ください。

この記事の出典(一次情報)

  • 国税庁「No.4102 相続税がかかる場合」
  • 国税庁「No.4152 相続税の計算」
  • 国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
  • 国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」
  • 国税庁「No.4126 相続財産から控除できる債務」
  • 国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」
  • 国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
  • 国税庁「No.4124 小規模宅地等の特例」
  • 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除」
  • 国税庁「No.4208 相続財産が分割されていないときの申告」
  • 国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」

本記事は一般的な情報提供であり、個別の相続税の申告要否、税務評価、特例適用、税額計算、申告書作成を保証するものではありません。相続税・税務評価・申告は税理士、相続登記の代理申請は司法書士、親子関係の争い・遺留分・相続人間の紛争は弁護士、不動産の査定・媒介は四葉不動産株式会社が、それぞれ独立した事業体として別契約で対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

まずは、状況を整理するところから。

四葉行政書士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、要件の整理から書類作成・申請までお手伝いします。

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