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2026.08.15手続きの進め方(行政書士の実務から)

電子契約はどこまで使えるか──遠方の方との契約は当日、法務局に出す委任状は紙が多い

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

行政書士への依頼の契約は、電子契約なら来所も郵送も不要で、遠方や海外にお住まいでも当日結べます。一方、登記のオンライン申請に使う委任状は、委任者本人の電子証明書による署名が必要とされ、クラウド型の電子契約サービスでは足りません(法務省・2026年8月15日参照)。遺産分割協議書も相続登記に使う場合は実印・印鑑証明書が実務上必要です。当事務所が利用するAdobeの電子契約と、紙が必要な書類の仕分け方を整理しました。

結論(先に要点):行政書士への依頼の契約は、電子契約なら来所も郵送も不要で、遠方や海外にお住まいでもその日のうちに結べます。一方、法務局へ出す登記の委任状や、印鑑証明書とセットで使う書類には電子契約を使えないことが多く、紙で準備します。

このページは、遠方にお住まいで相続や許認可の手続を依頼したい方に向けて、四葉行政書士事務所(東京都文京区小日向)が「電子でできる契約」と「紙が必要な書類」の線引きを説明するものです。

電子契約とは何ですか?

紙に押印する代わりに、電子ファイルに電子署名をして契約を結ぶ方法です。

電子署名法は、電子署名を「情報が作成者によるものであることを示すためのもの」で、かつ「情報が改変されていないかどうかを確認できるもの」と定義しています(電子署名及び認証業務に関する法律〔平成12年法律第102号〕第2条第1項第1号・第2号)。そのうえで、情報を表すために作成された電磁的記録は、本人による電子署名が行われているときは真正に成立したものと推定される、と定めています(同法第3条)。押印された私文書と同じように扱われる根拠がここにあります。

方式は大きく2つに分かれます。

方式署名の仕組み主な使いどころ
当事者型契約する本人が、自分名義の電子証明書(マイナンバーカード等)で署名する登記など官公署への手続
クラウド型(事業者署名型)メールで届いたリンクから本人が内容を確認して同意し、サービス事業者が署名を付す民間の契約全般

民間の契約で広く使われているのはクラウド型です。当事務所もこの方式を使っています。この違いが、後半の「法務局には使えないことが多い」という話に直結します。

遠方に住んでいても、来所せずに依頼できますか?

できます。電子契約のいちばんの利点は、距離と郵便の日数が消えることです。

紙の契約(郵送)電子契約
来所不要にできるが、署名・返送の手間が残る不要
往復にかかる日数数日〜1週間程度当日
相続人が各地に分散している場合人数分の往復が必要全員に同時送信・各自が署名
海外在住の方国際郵便で数週間かかることも同じく当日

当事務所でも、大阪・奈良・横浜にお住まいの相続人3名の方と、相続手続の委任契約を即日で締結したことがあります。紙の郵送であれば、3名を順に回して1〜2週間はかかっていた段取りです。相続は相続人が全国に散らばっていることが珍しくないため、この差は実務上とても大きく効きます。

どんな書類なら電子契約でできますか?

当事者どうしの契約は、原則として電子契約で結べます。当事務所では、ご依頼時の委任契約(業務委任契約)を電子契約で締結しています。

なお、当事務所とは独立した事業体である四葉不動産株式会社でも、不動産の媒介契約などを電子契約で締結しています。行政書士業務と宅地建物取引業は別の事業体が受任するため、ご契約もそれぞれ別々になります。

法務局などへの委任状には使えますか?

使えないことが多い、が答えです。理由は、提出先ごとに「使える電子証明書の種類」が決められているからです。

不動産登記や商業登記のオンライン申請では、政府認証基盤(GPKI)のブリッジ認証局と相互認証された認証機関が発行する電子証明書が必要とされ、使える認証機関が具体的に列挙されています。商業登記電子証明書、マイナンバーカードの公的個人認証サービス、セコムパスポート for G-ID、AOSign、e-Probatio、TDB電子認証サービス、LGPKI、GPKIなどです(法務省「登記・供託オンライン申請システム」利用可能な電子証明書のページ、2026年8月15日参照)。民間のクラウド型電子契約サービスは、この列挙に含まれていません。

さらに、代理人が申請する場合は代理人と委任者の双方の電子署名が必要とされています(同システムFAQ「電子署名・電子証明書」、2026年8月15日参照)。委任者ご本人がマイナンバーカード等で署名しなければならず、メールのリンクから同意する形式では要件を満たしません。

書類ごとに整理すると次のようになります。

書類クラウド型の電子契約で足りるか
行政書士への委任契約足りる
不動産の媒介契約(宅地建物取引業者との契約)足りる
登記のオンライン申請に添付する委任状足りない。委任者本人の電子証明書による署名が必要
遺産分割協議書(相続登記に使う場合)足りない。実印の押印と印鑑証明書が求められるのが実務
許認可の申請書・委任状役所・手続ごとに扱いが分かれる。押印と紙の運用が残る窓口も多い

「契約は電子で早く、役所に出す書類は紙で確実に」という使い分けになります。どちらになるかは案件ごとに違うため、当事務所ではご依頼の最初にこの仕分けをしてご案内します。

四葉行政書士事務所ではどうしていますか?

当事務所はAdobeの電子契約サービス(Adobe Acrobat Sign)を利用しています。ご依頼が決まったら委任契約書をメールでお送りし、お手元のスマートフォンやパソコンから署名いただければ、その日から業務に着手できます。ご来所も、印鑑も、返送も要りません。

一方、官公署に提出する委任状や、印鑑証明書とセットで使う書類は、最初から紙で準備し、郵送のやり取りを見込んでスケジュールを組みます。海外にお住まいで印鑑証明書が取れない相続人がいる場合は、サイン証明などの代替手続と組み合わせます(詳しくは姉妹コラム「台湾在住の相続人と印鑑証明・遺産分割協議書」をご覧ください)。

準備に時間がかかるのは、たいてい電子でできない側の書類です。だからこそ、契約だけでも当日結んで、紙の書類の準備をすぐ始められることに意味があります。

誰に相談すればよいですか?

相続や許認可の書類作成と手続は、四葉行政書士事務所にご相談ください。ご相談は無料です。相続の書類作成は相続・遺言・信託サービス、ご依頼の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。

登記の申請は司法書士、相続税など税務は税理士、争いのあるものは弁護士の業務です。それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内しており、当事務所は紹介料を受け取りません。不動産の売却・賃貸・管理は、当事務所とは独立した事業体である四葉不動産株式会社が、別のご契約でお受けします。

よくある質問

Q. 電子契約は法的に紙の契約と同じ効力がありますか?
A. 電子署名法により、本人による電子署名が行われた電磁的記録は、真正に成立したものと推定されます(電子署名及び認証業務に関する法律第3条)。当事者どうしの契約であれば、押印された紙の契約書と同様に扱われます。

Q. 海外在住でも電子契約を結べますか?
A. 結べます。メールでリンクをお送りし、お手元の端末から署名いただく方式のため、国内・海外を問わずご利用いただけます。時差がある場合も、お互いの都合の良い時間に手続きいただけます。

Q. 相続登記の委任状も電子契約で作れますか?
A. 作れません。登記のオンライン申請では、委任者ご本人がマイナンバーカード等の電子証明書で署名する必要があり、クラウド型の電子契約サービスでは要件を満たさないためです。登記の委任状は紙で準備し、司法書士におつなぎします。

Q. 電子契約と紙の書類が混在する場合、進め方が複雑になりませんか?
A. ご依頼の最初に、どの書類が電子で足り、どの書類を紙で準備するかを仕分けてご案内します。契約自体は電子で当日結び、並行して紙の書類の準備を進めることで、全体の期間を短縮できます。

この記事の出典(一次情報)

  • 電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項第1号・第2号、第3条。平成13年4月1日施行。現行版は令和7年6月1日施行(最終改正=令和4年法律第68号)。e-Gov法令検索
  • 法務省「登記・供託オンライン申請システム」利用可能な電子証明書(2026年8月15日参照)
  • 法務省「登記・供託オンライン申請システム」FAQ 電子署名・電子証明書(2026年8月15日参照)

※制度・運用は改定されることがあります。着手前に必ず最新の情報をご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の書類が電子で足りるかどうかの判断を保証するものではありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——行政書士(登録番号 第25087022号)・宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)。四葉行政書士事務所 代表/四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。相続・許認可の書類作成と手続を担当し、登記は司法書士、税務は税理士、紛争性のある案件は弁護士へ、それぞれ直接ご依頼いただく形でおつなぎします(紹介料等の授受はありません)。

姉妹コラム「台湾在住の相続人と印鑑証明・遺産分割協議書」もあわせてご覧ください。相続の手続き全体は相続・遺言・信託サービスにまとめています。

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