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2026.08.01相続

台湾在住の相続人がいる遺産分割協議書──台湾は「印鑑証明」が取れる国です

浦松 丈二

浦松 丈二

四葉行政書士事務所 代表行政書士(登録番号 第25087022号)・宅地建物取引士(東京)第293544号。元毎日新聞中国総局長(記者歴34年)として台湾に駐在。繁体字対応。社会保険労務士試験合格(2026年9月開業予定)

プロフィール(士業ドットコム)↗

相続人の一人が台湾に住んでいるとき、遺産分割協議書はどう整えるか。鍵は「台湾には印鑑登録制度がある」という事実です。台湾籍の相続人は戸政事務所の印鑑証明書が使え、東京法務局管内では平成27年3月24日以降、3段階認証なし・訳文添付で登記に使える運用となりました(管轄により取扱差あり)。一方、台湾在住の日本人は日本台湾交流協会での署名証明ルートになります。二つのルートの使い分けと段取りを、台湾駐在経験のある文京区の行政書士が整理しました。繁体字対応。

相続人の一人が台湾に住んでいる——このとき遺産分割協議書の実務を左右するのは、「台湾には印鑑登録制度がある」という事実です。台湾籍の方は戸政事務所発行の印鑑証明書が使え、東京法務局管内では2015年(平成27年)3月24日以降、従来の3段階認証なしに訳文の添付だけで登記に使える運用になっています(管轄により取扱いが異なる場合があります)。台湾在住の日本人は、日本台湾交流協会での署名証明ルートです。

この記事は、日本で相続手続きを進めるご家族・相続人の方に向けたものです。台湾の戸籍・除戸謄本の取り寄せは台湾の除戸謄本はどこで取るかを、協議書そのものの書き方は遺産分割協議書は自分で作れるかを、台湾がからむ相続の全体像は台湾越境相続のご案内をご覧ください。

なぜ「台湾在住の相続人」で手続きが止まるのでしょうか?

遺産分割協議書は、相続人全員の実印の押印と印鑑証明書を添えるのが日本の実務の標準です。ところが印鑑証明書は、日本に住民登録がないと取得できません。

海外在住の相続人がいる場合の一般的な代替は、現地の日本大使館・領事館で取得する署名証明(サイン証明)です。領事の面前で協議書に署名し、署名が本人のものであることを証明してもらう——このため、協議書の原本を海外へ送り、本人が公館へ出向くという往復が発生します。

ここで台湾には、他の国・地域にはほとんどない特徴があります。

台湾の「印鑑証明書」とは何でしょうか?

台湾には、日本と同じような印鑑登録制度があります。世界的には印鑑登録制度のない国・地域が大多数であり、これは珍しい仕組みです。

台湾籍の方は、住所地の戸政事務所(戸籍・住民登録を扱う役所)で印鑑を登録し、印鑑証明書の発行を受けられます。そしてこの台湾の印鑑証明書は、日本の不動産登記手続きで、遺産分割協議書に押印した印鑑についての印鑑証明書として使用できる扱いがされています。

つまり、相続人が台湾籍であれば——署名証明の往復をせずに、日本の相続人と同じように「実印を押して印鑑証明書を添える」形で協議書を整えられる可能性があるのです。

昔は大変だった——3段階認証と、2015年の運用変更

ただし、この扱いには経緯があります。

日本は台湾と国交がないため、台湾の公文書は他の国の公文書と同じようには扱えないとされてきました。かつての実務では、台湾の戸籍謄本や印鑑証明書を日本の登記で使うには、次の3段階の認証が必要でした。

段階認証する機関
1台湾の地方法院(裁判所)の公証人による認証
2台湾外交部による認証
3台北駐日経済文化代表処による奥書

台湾の戸籍・除戸謄本は相続関係を証明するだけで20枚を超えることも珍しくなく、この全部に3回の認証をかける費用と時間は相当なものでした。

これが変わったのが2015年(平成27年)3月24日です。東京法務局管内では、台湾の戸政事務所が発行する戸籍謄本・除籍謄本・印鑑証明書について、3段階の認証がなくても、訳文を添付すれば原則として登記申請が受理される運用になりました。

ただし、重要な注意があります。 これは東京法務局管内の取扱変更であり、全国で統一的に変更されたものではありません。大阪・福岡・神奈川・札幌など多くの管轄で同様の扱いが広がっているとされる一方、従来どおり3段階認証を求められた例の報告もあります。登記を申請する法務局の管轄で、事前に確認するのが安全です。

相続人のパターン別に、ルートを整理します

「台湾在住の相続人」といっても、国籍によってルートが変わります。

相続人のパターン使う書類取得場所
台湾籍・台湾在住台湾の印鑑証明書+訳文台湾の戸政事務所
日本国籍・台湾在住署名証明(サイン証明)。あわせて在留証明が必要になる場合も日本台湾交流協会 台北事務所・高雄事務所(領事業務を担う窓口)
台湾籍・日本在住(住民登録あり)日本の市区町村の印鑑証明書住所地の市区町村

2番目のパターンに注意してください。台湾には日本の大使館・領事館がない代わりに、公益財団法人日本台湾交流協会の台北・高雄事務所が署名証明・在留証明などの証明業務を行っています。台湾在住の日本人相続人は、ここで協議書への署名証明を受けるのが標準的なルートです。

もうひとつの選択肢として、台湾の公証人による宣誓供述書(署名や住所に関する認証)を使う方法もあります。どの構成で進めるかは、提出先(法務局・金融機関)が何を受け入れるかによって決まります。

段取りは、どの順番で進めればよいでしょうか?

台湾がからむ遺産分割は、書類の往復に時間がかかります。順番を間違えると、取り直しが発生します。

  • 1. 相続人と国籍・居住地の確定:台湾の戸籍・除戸謄本の取り寄せから始めます(取り寄せの3つの方法)。台湾民法の相続順位は日本と異なる点があり、誰が相続人かの確認自体に台湾書類が要ります
  • 2. 提出先への事前確認:登記の管轄法務局・預貯金のある金融機関に、台湾の印鑑証明書+訳文で足りるか、認証を求めるかを確認します
  • 3. 協議内容の合意:ここは国内の相続と同じです。合意ができてから書類を動かします
  • 4. 協議書の作成と署名・押印の設計:誰がどのルートで証明を取るかに合わせて、協議書の通数・書式(署名欄か押印欄か)を設計します
  • 5. 訳文の作成:台湾の書類には日本語訳の添付が必要です
  • 6. 登記・解約等の手続き:登記申請の代理は司法書士の業務です

行政書士がお手伝いできるのは、1・3・4・5——相続人調査、協議書の作成、書類・訳文の整備までです。登記申請の代理は司法書士相続税の申告は税理士相続人間に争いがある場合は弁護士の業務であり、それぞれ連携する専門家におつなぎします。

誰に相談すればよいのでしょうか?

相談したいこと窓口
相続人調査、遺産分割協議書の作成、台湾書類の取り寄せ・訳文行政書士(四葉行政書士事務所)
相続登記の申請代理、法務局への照会司法書士
相続税・台湾側の税税理士
相続人間に争いがある場合弁護士
相続した不動産の売却・管理・活用宅地建物取引業者(四葉不動産株式会社/別契約)

四葉行政書士事務所は文京区小日向で、台湾がからむ相続の書類作成を扱っています。代表の浦松は元毎日新聞中国総局長として台湾に駐在し、繁体字での対応が可能です。台湾側のご親族との連絡文書も、翻訳会社を挟まずに進められます。

相続した不動産の売却・管理は、関連事業の四葉不動産株式会社が別契約で担当します(台湾側のご家族向けには繁体字の解説があります)。四葉不動産株式会社・四葉行政書士事務所・四葉社会保険労務士事務所(2026年9月開業予定)は、それぞれ独立した事業体として業務を受任し、当事務所が紹介料を受け取ることはありません。

よくある質問

Q. 台湾の相続人に印鑑証明を取ってもらえば、来日は不要ですか。

協議書と印鑑証明書+訳文の郵送で完結できる場合が多いといえます。ただし提出先(法務局の管轄・金融機関)によって求める書類が異なるため、事前確認をしてから書類を動かすのが確実です。

Q. 台湾の印鑑証明書に有効期限はありますか。

日本の登記実務では、遺産分割協議書に添付する印鑑証明書に作成期限の制限はないとされる一方、金融機関は発行後3か月以内や6か月以内を求めることが一般的です。使う場面ごとに確認してください。

Q. 訳文は誰が作ってもよいのですか。

登記実務では翻訳者を特定の資格者に限る扱いはされていませんが、翻訳者の記名を求められるのが一般的です。当事務所では書類の取り寄せから訳文の作成までまとめて承ります(翻訳は行政書士の独占業務ではありません)。

Q. 台湾に相続人がいることを、どの段階で専門家に伝えるべきですか。

最初にお伝えください。台湾書類の取り寄せには時間がかかり、相続登記には3年の申請義務(2024年4月1日施行)もあります。段取り全体が変わるため、早いほど選択肢が残ります。

この記事の根拠

  • 台湾の戸政事務所が発行する戸籍謄本・除籍謄本・印鑑証明書の登記実務上の取扱い——東京法務局管内では2015年(平成27年)3月24日以降、3段階認証(台湾地方法院公証人・台湾外交部・台北駐日経済文化代表処)なしで、訳文添付により原則受理する運用。全国統一の変更ではなく、管轄により従来どおりの認証を求められた例の報告もある(司法書士法人グリーンウイング「台湾の戸籍謄本・印鑑証明書」ほか登記実務の解説による)
  • 公益財団法人日本台湾交流協会・証明事務——台北事務所・高雄事務所で署名証明・在留証明等の証明業務を実施
  • 不動産登記法第76条の2第1項(2024年4月1日施行)——相続登記の申請義務(原則3年以内)
  • 台湾の相続順位・応継分など台湾民法の内容は台湾の除戸謄本はどこで取るかで整理しています

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断を行うものではありません。台湾書類の受否は提出先(法務局の管轄・金融機関)により異なります。必ず事前にご確認ください。登記申請の代理は司法書士、税務は税理士、紛争性のある案件は弁護士の業務です。