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2026.09.01手続と期限

社長が急に亡くなった、会社の給与と社会保険はどう動く?──労務側の初動

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

社長(代表取締役)が急に亡くなっても、会社という法人はなくなりません。従業員を雇っているのは法人で、給与を払い、源泉徴収し、社会保険料を納める義務も法人に残ります。だから最初に止めてはいけないのは従業員の給与計算と社会保険・労働保険です。亡くなった代表者の資格喪失届(死亡日の翌日・5日以内)、代表者変更の各種変更届、後継者への役員報酬の付け替え(会社法第361条)と、相続・登記・税務への橋渡しを、労務の初動として整理します。

結論(先に要点):社長(代表取締役)が急に亡くなっても、会社という法人はなくなりません。従業員を雇っているのは法人で、給与を払い、源泉徴収し、社会保険料を納める義務も法人に残ります。だから、まず止めてはいけないのは従業員の給与計算と社会保険・労働保険です。ここを止めると、生活と信用に直に響きます。

一方で、亡くなった代表者本人については、社会保険の資格喪失届と、後継の代表者への切り替えが要ります。会社の労務を回しながら、相続・登記・税務の手続きへどう橋渡しするかを、労務の初動として整理します。

登記・相続税・遺産分割・紛争は、それぞれ別の資格者の領域です。個別の判断は面談のうえ資格者が行います。

社長が亡くなったとき、労務で最初に止めてはいけない手続きは何か?

代表者が亡くなっても、事業主は会社(法人)のままです。従業員との雇用契約も、社会保険・労働保険の適用事業所であることも続きます。まず動かし続けるものを押さえます。

続けるものなぜ止めないか
従業員の給与計算・支払雇用契約の当事者は法人。代表者が代わっても支払義務は残る
源泉徴収・住民税の特別徴収源泉徴収義務者は法人。徴収と納付は続く
従業員の社会保険・労働保険適用事業所は法人。保険料の納付義務も法人に残る
労働時間・安全衛生の管理現場の指揮命令は続く。労務管理を空白にしない

代表者が1人しかいない会社では、口座の権限や決裁が一時的に詰まることがあります。そこで給与を止めてしまうと、賃金の全額払い(労働基準法第24条)や支払期日に触れかねません。誰が当面の意思決定と支払をするかを、後継の代表者の決定と並行して早く決めることが要点です。

代表者本人の社会保険・給与はどう処理するのか?

亡くなった代表者本人は、役員であっても健康保険・厚生年金保険の被保険者です。死亡した日の翌日に資格を喪失し、会社は被保険者資格喪失届を出します。

手続き内容・期限提出先
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届資格喪失日=死亡した日の翌日。事実発生から5日以内年金事務所(健康保険組合があれば組合にも)
健康保険証・資格確認書の回収資格喪失届に添えて返却同上
死亡日までの役員報酬未払分は相続財産になり得る。税務上の扱いは税理士へ──

死亡日までに確定していた役員報酬の未払分や、死亡後に支給が決まる死亡退職金・弔慰金は、相続税・所得税の課税関係が絡みます。ここは税理士の領域で、労務の側では「いくらまで払っていたか」「規程・株主総会の決議はどうなっていたか」を整理してお渡しする役回りです。なお役員は原則として労災保険の給付を受けられません。役員と労災の関係は社長には労災が出ない。そして1人だと特別加入もできないに整理しています。

従業員の給与・社会保険は、誰の名義で払い続けるのか?

払い続ける主体は、あくまで会社(法人)です。代表者が交代しても、事業所そのものが変わるわけではないので、従業員一人ひとりの資格を取り直す必要はありません。会社としての「代表者が変わった」という変更届を出します。

手続き内容・期限提出先
健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届代表者変更。5日以内年金事務所
雇用保険 事業主事業所各種変更届代表者変更。変更のあった日の翌日から10日以内ハローワーク
労働保険 名称、所在地等変更届代表者等の変更を届け出る場合労働基準監督署等

これらは「会社の登録情報の書き換え」であって、従業員の保険関係はそのまま続きます。労働保険の保険関係は法人を主体に成立しているため、代表者が代わっても消滅しません。設立時にどの届出をいつ出すかの全体像は会社をつくったら、いつまでに何を出すのかにまとめています。

役員報酬を止める・後継者に付け替えるとき何が要るのか?

亡くなった代表者の役員報酬は、当然に止まります。後継の代表者に役員報酬を設定・変更するには、手続きの根拠が要ります。取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めます(会社法第361条)。

場面必要なこと
亡くなった代表者の報酬停止支給は死亡で終了。死亡日までの未払は相続・税務の対象
後継代表者の選定取締役会設置会社なら取締役会、そうでなければ株主総会等の決議
後継代表者の役員報酬設定定款になければ株主総会の決議(会社法第361条)
従業員が役員に上がる場合使用人兼務役員か否かで社会保険・雇用保険の扱いが変わる

役員報酬の額が変われば、その役員の標準報酬月額の手続き(資格取得・随時改定など)も連動します。後継者が従業員から役員に上がる場合は、雇用保険の被保険者資格を失うかどうかなど、労務の判断が要ります。ここは会社を存続させるM&A・事業承継の局面とも重なる論点で、会社を売る・引き継ぐとき、従業員はどうなるかもあわせてご覧ください。

相続・登記・税務の手続きと、労務の手続きはどう分担するのか?

代表者の死亡では、労務・登記・相続・税務が同時に動きます。担当する事業体・資格者が分かれます。

論点担当
代表者の資格喪失届、代表者変更の各種変更届、従業員の給与・社会保険・労働保険の継続、役員報酬変更に伴う社会保険手続社会保険労務士(当事務所)
株式・事業用資産の相続、遺産分割協議書・相続関係説明図の作成行政書士
代表取締役の変更登記、株式の名義書換に関する登記司法書士
相続税の申告、準確定申告、役員報酬・退職金の税務税理士
相続人間で方針が割れて紛争になった場合弁護士

代表取締役の変更は、会社法上、原則として2週間以内に登記します(会社法第915条)。この登記は司法書士の業務です。株式・事業用資産の相続と遺産分割協議書の作成は行政書士の業務で、四葉行政書士事務所は当事務所とは独立した事業体です。相続税・準確定申告は税理士、紛争になった場合は弁護士へおつなぎします。必要な場合は、お客様に別々にご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。会社を「たたむ」ときの届出との違いは会社をたたむとき、社会保険と労働保険はどうするかに整理しています。

ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容ご相談の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 社長が亡くなったら、従業員の給与や社会保険は止まりますか?
A. 止まりません。従業員を雇っているのは会社(法人)で、給与の支払義務も、源泉徴収も、社会保険・労働保険の保険料の納付も、法人に残ります。代表者が代わっても事業主は法人のままなので、従業員の資格を取り直す必要もありません。むしろ止めると賃金の全額払い(労働基準法第24条)や支払期日に触れかねません。誰が当面の支払・決裁をするかを早く決めることが要点です。

Q. 亡くなった社長本人の社会保険は、いつまでに何をしますか?
A. 代表者本人は役員でも健康保険・厚生年金保険の被保険者です。死亡した日の翌日に資格を喪失し、会社は被保険者資格喪失届を、事実発生から5日以内に年金事務所(健康保険組合があれば組合にも)へ提出します。保険証・資格確認書は届出に添えて返却します。死亡日までの未払報酬や死亡退職金・弔慰金の税務は税理士の領域です。

Q. 後継の社長の役員報酬は、勝手に決めてよいですか?
A. 取締役の報酬は、定款に定めがなければ株主総会の決議で定めます(会社法第361条)。後継代表者の選定や報酬の設定には、取締役会や株主総会等の決議という根拠が要ります。従業員が役員に上がる場合は、使用人兼務役員か否かで社会保険・雇用保険の扱いが変わるため、労務の判断もあわせて必要です。

Q. 相続や登記も、社労士に一緒に頼めますか?
A. 労務・社会保険の手続きは当事務所(社会保険労務士)が承ります。株式・事業用資産の相続と遺産分割協議書の作成は行政書士、代表取締役の変更登記や株式の名義書換は司法書士、相続税・準確定申告は税理士、相続人間の紛争は弁護士の領域です。四葉行政書士事務所は当事務所とは独立した事業体で、それぞれ別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。

この記事の根拠

  • 健康保険法・厚生年金保険法(被保険者の資格喪失)── 被保険者が死亡したときは、その死亡した日の翌日に資格を喪失する。会社は健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を、事実発生から5日以内に年金事務所(健康保険組合があればあわせて組合)へ提出する。日本年金機構「従業員が退職、死亡したとき」で確認(2026年8月25日参照)
  • 代表者変更の届出 ── 健康保険・厚生年金保険 事業所関係変更(訂正)届(年金事務所・5日以内)、雇用保険 事業主事業所各種変更届(ハローワーク・変更のあった日の翌日から10日以内)、労働保険 名称、所在地等変更届。代表者が代わっても事業主(法人)は変わらず、従業員の保険関係は継続する。日本年金機構・ハローワークの案内で確認(2026年8月25日参照)
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第24条 ── 賃金の全額払い等の原則。会社の意思決定が詰まっても、従業員の賃金の支払は止めない前提の根拠
  • 会社法(平成17年法律第86号)第361条 ── 取締役の報酬等は、定款に定めがなければ株主総会の決議で定める。後継代表者の役員報酬設定の手続きの根拠
  • 会社法第915条 ── 会社の登記事項に変更が生じたときは、原則として2週間以内に変更の登記をする。代表取締役の変更登記の期限(登記そのものは司法書士の業務)。会社法915条・361条の内容は複数の公開解説で確認(2026年8月25日参照)
  • 所得税法(昭和40年法律第33号)第125条 ── 年の中途で死亡した場合の確定申告(準確定申告)。相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、被相続人のその年1月1日から死亡の日までの所得を申告する。国税庁・税理士事務所の解説で確認(2026年8月25日参照)
  • 役員報酬の未払分・死亡退職金・弔慰金の課税(相続税・所得税)の具体的な取扱いは、事案ごとに異なり税理士の領域です。本記事では扱っていません(未検証
  • 健康保険組合独自の様式・提出先、業種や自治体ごとの実務上の運用は、当該組合・機関の定めによります。本記事では扱っていません(未検証

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、代表者の資格喪失届、代表者変更に伴う各種変更届、従業員の給与計算と社会保険・労働保険の継続、役員報酬の変更に伴う社会保険手続についてご相談いただけます。株式・事業用資産の相続と遺産分割協議書の作成は四葉行政書士事務所が別の事業体として承り、それぞれ別々にご契約いただきます。代表取締役の変更登記・株式の名義書換は司法書士へ、相続税・準確定申告は税理士へ、相続人間の紛争は弁護士へおつなぎします。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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