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2026.08.29相続の手続き(行政書士の実務から)

遺言執行者は誰にする?職務と選任の仕組みをわかりやすく──指定・家裁選任・解任と誰に振るか

浦松 丈二

浦松 丈二

行政書士・宅地建物取引士(四葉行政書士事務所/四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

遺言執行者は遺言の内容を実現する人で、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持ちます(民法第1012条第1項)。遺言での指定(民法第1006条第1項)と家庭裁判所による選任(民法第1010条)、就職後の相続人への通知(民法第1007条第2項)、動かないときの解任・辞任(民法第1019条)、特定財産承継遺言での対抗要件具備や預貯金の払戻し(民法第1014条)、自筆証書遺言の検認(民法第1004条)を整理し、相続登記は司法書士、相続税は税理士、争いは弁護士へ分離受任で振る分担を示しました。

結論(先に要点):遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人で、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を持ちます(民法第1012条第1項)。執行者は遺言で指定するか、指定を第三者に委託でき(民法第1006条第1項)、遺言に定めがない・いなくなったときは家庭裁判所が利害関係人の請求で選任します(民法第1010条)。行政書士や信頼できる第三者を執行者にすることもできますが、相続登記の申請は司法書士、相続税申告は税理士、相続人間の争いは弁護士と、独占業務は分けて振ります。本記事は、遺言執行者の職務・権限・指定と選任の仕組みを行政書士の視点で整理する一般的な情報提供であり、誰を執行者にすべきかの最終判断や紛争性のある助言はしません。

遺言執行者は何をする人で、どんな権限がある?

遺言執行者は、遺言者の死後に、遺言に書かれた内容を実現する役割を担う人です。民法第1012条第1項は、遺言執行者が「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定めています。

条文権限・義務の要旨
民法第1012条第1項相続財産の管理その他、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務
民法第1012条第2項遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる
民法第1007条第2項任務を開始したときは、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならない(2019年7月1日施行の改正で明文化)
民法第1015条権限の範囲内で遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接に効力を生じる
民法第1013条第1項・第2項遺言執行者があるとき、相続人は遺言の執行を妨げる行為ができず、違反した行為は無効(ただし善意の第三者に対抗できない)

つまり、執行者が就任すると、遺贈の履行や名義変更などは執行者が中心となって進め、相続人が勝手に処分することは制限されます。四葉行政書士事務所では、行政書士業務の範囲で、遺言書の作成支援や、行政書士が執行者に就任した場合の事務を支援します。

執行者は遺言で指定する?家庭裁判所で選ぶ?

遺言執行者の決め方は、大きく2通りあります。

決め方根拠内容
遺言で指定する民法第1006条第1項遺言者が遺言で1人または数人の執行者を指定する。指定を第三者に委託することもできる
家庭裁判所が選任する民法第1010条遺言執行者がないとき、またはなくなったときに、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任する

遺言で指定された人は、就職を承諾するかを選べます。承諾したときは直ちに任務を行わなければなりません(民法第1007条第1項)。遺言に執行者の定めがない場合や、指定された人が辞退・死亡した場合は、家庭裁判所へ選任を申し立てます。この選任の申立ては家事事件手続法(別表第一の審判事件)の手続によります。なお、未成年者と破産者は遺言執行者になることができません(民法第1009条)。

行政書士や信頼できる第三者を執行者にできる?

執行者は相続人の一人でも、相続人以外の第三者でも構いません。行政書士などの専門職や、信頼できる知人を指定することもできます。相続人どうしの利害が対立しそうな場合や、おひとりさまで頼める親族がいない場合は、中立的な第三者を執行者にしておくと手続が進めやすくなります。

執行者の報酬は、遺言で定めることができます。定めがない場合は、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情を考慮して報酬を定めることができます(民法第1018条)。

遺言そのものの作り分け(自筆証書遺言か公正証書遺言か)は、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いで整理しています。公正証書遺言で執行者を指定しておくと、検認が不要なうえ、就任後の手続に入りやすくなります。四葉行政書士事務所は、行政書士業務の範囲で遺言書の作成を支援し、ご希望に応じて執行者への就任も承ります。ただし、誰を執行者にすべきかの最終判断は、ご本人が行うことです。

執行者がいるのに動かないときはどうする?

指定された執行者が就職を承諾しない、または就任後に任務を怠って手続が進まないことがあります。この場合、民法は次の道を用意しています。

場面対応根拠
就職の承諾・不承諾がはっきりしない相続人その他の利害関係人が、相当の期間を定めて承諾するかどうかの確答を催告できる(期間内に確答がなければ承諾とみなす)民法第1008条
任務を怠る・その他正当な事由がある利害関係人が、家庭裁判所に執行者の解任を請求できる民法第1019条第1項
執行者側の事情でやむを得ない執行者は正当な事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て辞任できる民法第1019条第2項

執行者が復任(第三者に任務を行わせること)をすることは、原則として自己の責任で認められます(民法第1016条第1項。ただし遺言に別段の定めがあればそれに従う)。手続が滞ったときは、まず催告や家庭裁判所への申立てを検討します。相続人間に争いがある場合の対応は、弁護士の領域です。

登記・解約・税務は執行者が全部やる?誰に振る?

執行者の権限は広いものの、他の資格者の独占業務まで執行者が代理して行えるわけではありません。役割は次のように分かれます。

  • 遺言書の作成支援、執行者への就任、相続人・受遺者への通知や財産目録の交付 → 四葉行政書士事務所(行政書士)
  • 不動産の名義変更(相続登記・遺贈による所有権移転登記)の申請 → 司法書士
  • 相続税の申告・納税 → 税理士
  • 相続人間に争いがある場合の交渉・調停・訴訟 → 弁護士

特定の財産を特定の相続人に承継させる「特定財産承継遺言」があるときは、執行者はその相続人が対抗要件を備えるために必要な行為をすることができ(民法第1014条第2項)、預貯金については払戻しの請求や契約の解約の申入れもできます(同条第3項)。もっとも、登記申請そのものは司法書士の業務です。

自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していないもの)は、開封・執行の前に家庭裁判所の検認が必要です(民法第1004条第1項)。公正証書遺言と保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が不要です(同条第2項)。検認の手続は遺言書が見つかったらで解説しています。

相続手続の全体像は相続業務のサービス、受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表をご覧ください。相続した不動産の売却など不動産の相談は、別事業体の四葉不動産株式会社が相続不動産の窓口で対応します。四葉行政書士事務所と四葉不動産株式会社は別事業体で、各分野はそれぞれの資格者と独立した事業体として別々にご契約いただく前提です。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 遺言執行者は必ず立てないといけませんか?
A. すべての遺言に必須ではありません。ただし、認知や廃除など執行者でなければできない事項がある遺言や、相続人が多い・対立しそうな場合は、指定しておくと手続が進めやすくなります。遺言に定めがなくても、必要が生じれば家庭裁判所に選任を申し立てられます(民法第1010条)。

Q. 行政書士を遺言執行者にできますか?
A. できます。執行者は相続人でも第三者でもよく、行政書士などの専門職を指定することも可能です。ただし、相続登記の申請は司法書士、相続税申告は税理士、争いのある事案は弁護士と、独占業務は分けて振ります。当事務所は行政書士業務の範囲で執行の事務を担い、独立した事業体として各資格者と別々にご契約いただく前提で、紹介料を受け取りません。

Q. 執行者が指定されていた人が就任を断ったらどうなりますか?
A. 相続人などの利害関係人は、相当の期間を定めて就職を承諾するか催告でき、期間内に確答がなければ承諾したものとみなされます(民法第1008条)。断られて執行者が不在になった場合は、家庭裁判所に選任を申し立てます(民法第1010条)。手続の申立ては家事事件手続法によります。

Q. 執行者は不動産の名義変更まで自分でできますか?
A. 執行者は遺言の執行に必要な行為をする権利義務を持ちますが(民法第1012条第1項)、不動産の相続登記・移転登記の申請は司法書士の業務です。特定財産承継遺言では対抗要件を備える行為や預貯金の払戻し・解約はできます(民法第1014条第2項・第3項)が、登記申請の代理は司法書士へ振ります。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号)第1004条・第1006条・第1007条・第1008条・第1009条・第1010条・第1012条・第1013条・第1014条・第1015条・第1016条・第1018条・第1019条(参照日 2026-08-29)
  • 法務省「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(相続法の改正)」(遺言執行者の権限の明確化・就職時の通知、2019年7月1日施行)(参照日 2026-08-29)
  • 裁判所「遺言執行者の選任」(家事事件手続法別表第一の審判事件の説明)(参照日 2026-08-29)
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」(検認が不要となる場合の説明。民法第1004条との関係)(参照日 2026-08-29)

本記事は一般的な情報提供であり、誰を遺言執行者にすべきかの最終判断や、紛争性のある個別の助言をするものではありません。遺言の効力や執行の可否は個別の事情によります。不動産の名義変更(相続登記・遺贈による移転登記)は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人間の争いは弁護士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約のうえ対応します。相続した不動産の売却の相談は別事業体の四葉不動産株式会社が担当し、当事務所は紹介料を受け取りません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。

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