自筆証書遺言と公正証書遺言の違いとは?文京区で作る遺言と行政書士に頼めること
自筆証書遺言と公正証書遺言は、方式・検認の要否・費用が異なります。現行の自筆証書遺言では押印が必須であること、2020年開始の法務局保管制度、2025年の公証実務デジタル化、2026年公布で未施行の押印任意化・保管証書遺言までを文京区の実務に沿って整理しました。
結論(先に要点):遺言には主に自筆証書遺言と公正証書遺言があり、方式・作成者・検認の要否・費用が異なります。現行制度では自筆証書遺言は全文・日付・氏名の自書と押印が必要です。遺言文案・原案の作成は行政書士が扱えますが、公正証書そのものを作成するのは公証人、遺留分・紛争の法的判断は弁護士、税務は税理士、相続登記の代理申請は司法書士と分かれます。2026年6月24日に公布された民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により、自筆証書遺言等の押印要件の任意化や「保管証書遺言」の創設が予定されていますが、2026年8月現在はいずれも未施行です。
遺言がないと、相続はどう進む?
遺言がない場合、原則として相続人全員の遺産分割協議で分け方を決めます。協議がまとまれば遺産分割協議書に残します(遺産分割協議書は自分で作れる?)。
一方、遺言がある場合は、原則として遺言の内容が優先されます。ただし、遺留分の整理や遺言の解釈が必要になる場合もあり、「遺言があれば協議が一切不要」と一概にはいえません。相続人や財産の把握は遺言を作る前にも必要になるため、相続は何から始める?文京区で進める戸籍収集・相続人調査で進め方を整理しています。
遺言の3つの方式(自筆証書・公正証書・秘密証書)
民法の普通方式の遺言は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つです(民法第967条)。
- 自筆証書遺言:遺言者が全文・日付・氏名を自書して押印する方式(民法第968条)。
- 公正証書遺言:公証人が関与して作成する方式(民法第969条)。
- 秘密証書遺言:遺言者が作成して封印し、公証人と証人の前に提出する方式(民法第970条)。
本記事では、実務で中心となる自筆証書遺言と公正証書遺言を詳しく扱います。秘密証書遺言は検認が必要な方式の一つとして短く触れます。
自筆証書遺言とは?──民法の方式と2019年の緩和
自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付、氏名を自書し、これに押印することで作成します(民法第968条第1項)。現行制度では押印が必須です。
2019年1月13日施行の改正で、遺言書に相続財産の目録を添付する場合は、その目録については自書しなくてもよいことになりました(民法第968条第2項)。目録はパソコンなどで作成でき、各ページに署名と押印をします。
自筆証書遺言は費用を抑えやすい一方、方式の不備は遺言の無効につながり得ます。全文自書・日付の記載・押印といった方式を正確に満たすことが重要です。
自筆証書遺言書保管制度(2020年開始)
2020年7月10日から、自筆証書遺言書を法務局(遺言書保管所)で保管する制度が始まりました(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。
この制度では、法務局の遺言書保管官が、保管申請された遺言書について法律で定められた形式への適合を外形的に確認して保管します。これは遺言の内容や法的有効性を保証するものではなく、遺言の内容に関する相談も受け付けていません。
法務局に保管された自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要になります。
死亡後の通知は「指定者通知」と「関係遺言書保管通知」で異なる
死亡後の通知は二つあり、自動的に全相続人へ通知されるわけではありません。
- 指定者通知:遺言者が、死亡後に通知したい者をあらかじめ3名まで指定しておく仕組みです。遺言者の死亡の事実が確認されたときに、指定された者へ遺言書を保管している旨を通知します。
- 関係遺言書保管通知:相続人などの一部が遺言書情報証明書の交付請求や閲覧請求をした場合に、遺言書保管官が他の相続人・受遺者・遺言執行者などへ保管している旨を通知する仕組みです。
「死亡すれば自動的に全相続人へ通知される」という説明は正確ではありません。指定者通知は指定した方のみが対象で、関係遺言書保管通知は誰かの請求がきっかけになります。
公正証書遺言とは?──公証人が関与する方式
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人が方式に従って作成する方式です(民法第969条)。原本は、紙で作成した場合は公証役場に保管され、電磁的記録で作成した場合は日本公証人連合会が運営するシステムで保存されます(次節参照)。
口授ができれば自署が難しい方も利用しやすく、公証人が関与するため方式の不備が生じにくいとされています。
2025年10月1日からの公証実務デジタル化
2025年10月1日、公証人法の一部改正(民事関係手続等のIT化を図る法律)が施行され、公正証書の作成手続がデジタル化されました。
- 法務大臣が指定する公証人が作成する公正証書については、原則として電磁的記録で作成されます。
- 電磁的記録で作成された公正証書の原本は、日本公証人連合会が運営するシステムで保存されます。
- 手続には電子サイン・電子署名が用いられます。
- 一定の要件を満たせば、ウェブ会議(リモート方式)での作成も可能になります。
遺言は本人の意思確認がとりわけ重要なため、遺言のリモート利用が認められるかどうかは公証人が慎重に判断します。
2026年公布の遺言制度改正(押印任意化・保管証書遺言)
2026年6月24日、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が公布されました。この中で、遺言制度について次の見直しが予定されています。
- 押印要件の任意化:自筆証書遺言等について、押印を必須としない方式に緩和する改正です。
- 保管証書遺言の創設:電子データ等を利用して作成し、署名またはこれに代わる措置をとり、遺言書保管官の前で全文を口述し、法務局で保管するなどの法定方式を満たす、新たな普通方式の遺言です(民法第968条の2)。
施行日は、押印の任意化等が公布の日から1年以内、システム改修を要する保管証書遺言の創設等が公布の日から3年以内の政令で定める日とされています。2026年8月現在はいずれも未施行であり、現行の自筆証書遺言では引き続き押印が必要です。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
| 比較項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 方式のポイント | 全文・日付・氏名を自書し押印(財産目録は自書不要) | 証人2人以上の立会い、公証人への口授 |
| 作成者 | 遺言者本人 | 公証人(遺言者は口授) |
| 証人 | 不要 | 2人以上必要 |
| 検認 | 原則必要(法務局保管分は不要) | 不要 |
| 原本の保管 | 自宅保管または法務局保管 | 公証役場/電磁的記録は日本公証人連合会のシステムで保存 |
| 主な費用 | 保管制度を利用する場合は保管手数料等 | 公証人手数料(目的の価額による)+戸籍等の実費 |
どちらが向いているかは、本人の状況・財産・希望する確実性・費用などを踏まえて検討します。ここで一方的に「どちらが有利」と断定はしません。
検認が必要なのはどれ?自筆証書遺言と家庭裁判所の検認
検認とは、家庭裁判所が遺言書の形状・日付・署名などを確認して、偽造・変造を防ぐ手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません(民法第1004条)。
- 自筆証書遺言(自宅保管):検認が必要
- 秘密証書遺言:検認が必要
- 法務局保管の自筆証書遺言:検認不要
- 公正証書遺言:検認不要
遺言はいつでも撤回・変更できる?
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回できます(民法第1022条)。
また、前の遺言が後の遺言と抵触するときは、抵触する部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条)。複数の遺言書がある場合、日付と内容の前後関係を確認することが重要です。
遺留分を侵害する遺言は無効になる?
遺言で遺留分を侵害する内容が定められていたとしても、直ちに遺言全体が無効になるわけではありません。一般的には、遺留分を侵害された相続人が遺留分侵害額を請求する問題(民法第1042条・第1046条)になり得ると整理されます。
遺留分の有無・金額や、具体的な遺言内容が遺留分に与える影響については、事案ごとの法的判断になるため、ここでは個別の判断はしません。遺留分や紛争性のある事案は弁護士の領域です。
行政書士に頼める範囲と、頼めないこと
遺言の文案・原案の作成などは、行政書士が業として作成できる「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成に含まれます(行政書士法第1条の3)。相続人の把握や財産の整理、遺言の構成・文書化までを行政書士が行えます。
一方、次のことは担当する専門家が異なります。
- 公正証書遺言の証書そのものの作成:公証人
- 遺留分・紛争など法的判断:弁護士
- 税務(相続税等):税理士
- 相続登記の代理申請:司法書士
- 相続した不動産の売却・管理:宅地建物取引業者(四葉不動産)
いずれも独立した契約で、当事務所は紹介料を受け取りません。相続した不動産の売却・管理は、四葉行政書士事務所とは別事業体の四葉不動産株式会社が別契約で対応します(相続不動産の完全ガイド(四葉不動産))。
文京区で遺言を作る流れ
四葉行政書士事務所(文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分)では、相続人・財産の整理から遺言の文案・原案作成、公正証書遺言にする場合の公証役場との連絡・準備までを段階に分けてご案内します。ご相談は無料です。受任の流れは受任の流れ、料金は報酬額表、相続・遺言業務の全体像は相続・遺言・信託サービスをご覧ください。
なお、外国籍の相続人や海外在住の方が関係する遺言・相続は、戸籍や書類の範囲が変わるため、その論点は今後の記事で扱います。
よくある質問
Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがよいですか?
A. どちらが向いているかは、本人の状況・財産の内容・希望する確実性・費用などを踏まえて検討します。自筆証書遺言は費用を抑えやすい一方、方式の不備による無効リスクがあります。公正証書遺言は公証人が関与するため方式の不備が生じにくいとされていますが、公証人手数料等の費用がかかります。ここで個別に「こちらが有利」と断定はしません。
Q. 自筆証書遺言の財産目録は自書しなくてよいのですか?
A. 2019年1月13日施行の改正により、遺言書に財産の目録を添付する場合は、その目録については自書しなくてもよいことになりました(民法第968条第2項)。目録はパソコンなどで作成でき、各ページに署名・押印します。本文の全文・日付・氏名の自書と押印は引き続き必要です。
Q. 公正証書遺言の費用はいくらですか?
A. 公証人手数料令に基づき、目的の価額に応じた手数料(例:50万円以下3,000円、50万円を超え100万円以下5,000円、100万円を超え200万円以下7,000円、200万円を超え500万円以下13,000円など)に、遺言の目的価額が1億円以下の場合は13,000円が加算されます。料金は改正され得るため、最新額は日本公証人連合会・公証役場でご確認ください。
Q. 遺言は何度でも書き直せますか?
A. 遺言者は、いつでも遺言の方式に従って遺言の全部または一部を撤回できます(民法第1022条)。前の遺言と後の遺言が抵触するときは、抵触する部分について後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条)。
この記事の出典(一次情報)
- 民法第967条〜第970条(普通方式の遺言/自筆証書・公正証書・秘密証書)
- 民法第968条第1項・第2項(自筆証書遺言の方式・財産目録の自書不要。第2項は平成31年1月13日施行)
- 民法第968条の2(保管証書遺言・令和8年法律第45号により新設予定、未施行)
- 民法第1004条(遺言書の検認)
- 民法第1022条・第1023条(遺言の撤回)
- 民法第1042条・第1046条(遺留分・遺留分侵害額の請求)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律(自筆証書遺言書保管制度・令和2年7月10日施行)
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」(指定者通知・関係遺言書保管通知・方式の外形的確認)
- 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号・令和8年6月24日公布。押印の任意化等は公布から1年以内、保管証書遺言の創設等は公布から3年以内の政令指定日に施行予定・未施行)
- 公証人法(民事関係手続等のIT化を図る法律による改正・2025年10月1日施行)
- 日本公証人連合会「公正証書遺言」「公証実務のデジタル化」「公証人手数料」
- 公証人手数料令
- 行政書士法第1条の3(業務範囲:権利義務又は事実証明に関する書類の作成)
本記事は一般的な情報提供であり、個別の遺言の可否・方式・効果・遺留分への影響を保証するものではありません。個別の判断は、面談のうえ資格者が行います。公正証書遺言の作成は公証人、遺留分・紛争は弁護士、税務は税理士、相続登記の代理申請は司法書士、不動産は宅地建物取引業者が、それぞれ独立した事業体として別契約で対応します。当事務所は紹介料を受け取りません。執筆は浦松 丈二(行政書士・宅地建物取引士)です。
まずは、状況を整理するところから。
四葉行政書士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、要件の整理から書類作成・申請までお手伝いします。
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