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労働時間

学習塾・予備校講師のコマ給は要注意。授業外労働の労働時間管理

壁の掛け時計と升目だけのシフト表を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

学習塾・予備校のコマ給では、授業準備・採点・保護者対応・研修などの授業外労働が賃金・残業から漏れやすい点を、労働時間性の考え方で整理します。固定残業代の要件と労働者性の判断も説明します。

結論(先に要点):学習塾・予備校のコマ給は授業時間にだけ賃金を払う設計になりがちで、授業準備・採点・保護者対応・研修などが使用者の指揮命令下にあれば、それも労働時間として賃金・割増の対象です。コマ給に残業代を含めるには判別と差額清算が要り、業務委託でも実態で労働者と判断されることがあります。

制度・一次資料の確認日:2026年10月12日。

講師にコマ単位で給与を払っている学習塾・予備校の事業者・教室長向けに、授業外労働の労働時間性を、労働基準法と裁判例・行政の基準で整理します。個別の未払い請求や労働者性の最終的な事実認定には立ち入らず、考え方と設計を示します。

コマ給だけだと何が未払いになりやすいですか?

コマ給は、1コマ(授業)あたりの単価で支払う方式です。授業そのものには報いますが、授業の前後や授業日以外に発生する労働が賃金計算から漏れやすい弱点があります。

業務コマ給だけだと典型的な問題
授業準備・教材作成対象外になりがち最低賃金割れ・未払い
テストの採点・添削対象外になりがち同上
保護者面談・電話対応対象外になりがち時間外割増の未払い
研修・会議・引継ぎ対象外になりがち同上

賃金は全額を支払う義務があり(労働基準法第24条)、法定労働時間を超えれば割増賃金が必要です(同法第37条)。これらの労働を無給の前提にしていると、1か月の総労働時間で割ると最低賃金を下回る、あるいは時間外割増が未払いになる、という形で表面化します。

授業準備・採点・保護者対応は労働時間に入りますか?

厚生労働省の2017年1月20日策定ガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、契約や就業規則の定め方だけでなく客観的な実態で決まると説明しています(取得本文1〜2頁、2026年10月12日参照)。指示された準備・後始末、離脱の自由が保障されない手待ち、義務づけられた研修・指示による学習も挙げています。従来稿が挙げた最高裁判決本文は今回未取得のため、判旨の確認済み根拠とは扱いません。

したがって、塾が指示・義務づけた準備や採点、所定の様式での報告、参加必須の研修・会議は、場所が自宅でも労働時間になり得ます。逆に、本人が任意に行う自己研鑽で義務づけがないものは直ちには労働時間になりません。線引きは、指示の有無・成果物の義務づけ・時間や場所の拘束で判断します。厚生労働省の労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(2017年1月20日策定・2026年10月12日参照)は、使用者が始業・終業時刻を確認し記録する責務を示しています。

固定残業代(コマ給に含める)で足りない場合はどうなりますか?

コマ給に一定の残業代を含める設計(固定残業代)は可能ですが、有効と認められるには条件があります。通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分が判別できること、そして固定分を超えた時間外労働には差額を清算することが必要です。

「コマ給に残業代込み」とだけ定め、何時間分の時間外に当たるかが分からない、超過しても精算しない、という運用は、固定残業代として認められず、別途割増賃金の支払いを求められることがあります。固定残業代の要件と差額清算は固定残業代が適法になる要件で確認してください。

講師は「業務委託」にできますか?

契約書を「業務委託」としても、働き方の実態が労働者であれば、労働基準法・最低賃金法が適用されます。労働者かどうかは、昭和60年の労働基準法研究会報告が示す「使用従属性」を中心に、仕事の依頼を断る自由があるか、時間・場所が拘束されるか、指揮監督を受けるか、報酬が労務の対償か、代わりの人を立てられるか、などの実態で総合判断します。

着眼点労働者と評価されやすい
依頼の諾否コマの割り当てを断りにくい
指揮監督指導方法・時間割・報告が指定される
時間的・場所的拘束校舎で決まった時間に勤務
代替性本人以外が代講できない
報酬の性質時間や成果でなく労務の提供に対応

名称が業務委託でも、これらから労働者と判断されれば、最低賃金・割増賃金・労働保険の問題が生じます。業務委託として適正に発注する場合でも、取引条件の明示などのルールがあります(フリーランス法で発注側が確認すること)。労働者か否かの最終的な事実認定は、労働基準監督署や裁判所が行います。

トラブルを防ぐため賃金規程と記録をどう整えますか?

次の順で整えると、未払いのリスクを下げられます。

ご自身のケースについて相談したい方へ

社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。

  1. 講師の業務を棚卸しし、授業・準備・採点・面談・研修・会議のどれが指揮命令下の労働かを仕分ける。
  2. コマ給の単価が、授業外労働を含めた総労働時間で最低賃金を下回らないか試算する。
  3. 固定残業代を使うなら、通常賃金と割増部分を判別できるよう賃金規程に明記し、超過分の差額清算を定める。
  4. 始業・終業時刻や授業外労働の時間を記録する方法を決め、ガイドラインに沿って把握する。
  5. 業務委託とする講師は、働き方の実態が労働者に当たらないかを確認し、該当するなら労働契約へ切り替える。

賃金規程や就業規則の整備は就業規則は何人から義務かも参照してください。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

当事務所では、コマ給と授業外労働を踏まえた賃金規程・固定残業代の設計、労働時間の記録方法、就業規則の整備についてご相談を承ります。ご相談は無料です。費用は報酬額表、一般的なご質問はよくあるご質問に掲載しています。

未払い賃金の請求など個別の紛争は弁護士が、講師が業務委託か労働者かの最終的な事実認定は労働基準監督署が扱う事項です。外部の専門家とはそれぞれ独立した事業体として別々にご契約いただき、直接請求・直接お支払いいただきます。当事務所は紹介料・キックバックを扱いません。具体的な設計や判断は、面談のうえ資格者が行います。

よくある質問

Q. コマ給に「残業代込み」と書けば割増は払わなくてよいですか?
A. 不十分です。固定残業代が有効とされるには、通常の労働時間の賃金と割増部分が判別でき、固定分を超えた時間外には差額を清算することが必要です。何時間分かが不明で超過も精算しない運用は認められず、別途割増を求められることがあります。

Q. 自宅での授業準備や採点も労働時間ですか?
A. 塾が指示・義務づけた準備や採点で、使用者の指揮命令下にあるといえるものは、場所が自宅でも労働時間になり得ます。任意の自己研鑽で義務づけがないものは直ちには労働時間になりません。指示や成果物の義務づけ、時間・場所の拘束で判断します。

Q. 講師を業務委託にすれば労働法は関係ありませんか?
A. 契約名称ではなく働き方の実態で判断されます。依頼を断りにくい、時間・場所が拘束される、指揮監督を受ける、代講を立てられない、などから労働者と評価されれば、最低賃金・割増賃金・労働保険が適用されます。最終的な事実認定は労働基準監督署や裁判所が行います。

Q. コマ給でも最低賃金は問題になりますか?
A. なります。授業外労働を含めた総労働時間でコマ給を割った時間額が、地域別最低賃金を下回ってはいけません。準備や採点が多い講師ほど下回りやすいため、総労働時間での試算が必要です。

この記事の根拠

本文更新・追加資料取得日:2026年10月12日。厚生労働省の法令本文・工時把握ガイドラインで実取得した範囲を確認しています。e-Gov現行統合条文との全件照合、最終改正番号・全施行履歴、関連判決本文と労働基準法研究会報告本文、個別の制度・労働者性・固定残業代の有効性は未検証です。取得不能を誤りの確定とせず、公開は資格者確認待ちとして保留します。

  • 労働基準法第32条(労働時間)・第34条(休憩)・第37条(割増賃金)・第24条(賃金の全額払い)(e-Gov法令検索)。
  • 従来稿が参照した三菱重工業長崎造船所事件(最判平成12年3月9日):判決本文未取得、判旨未照合(未検証)。工時の説明は上記の取得済み厚生労働省ガイドラインの範囲です。
  • 労働者性の判断:労働基準法研究会報告(昭和60年12月19日)。使用従属性を中心に、諾否の自由・指揮監督・拘束性・報酬の労務対償性・代替性などで総合判断する枠組み。 報告本文未取得・未照合(未検証)。
  • 厚生労働省労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(2017年1月20日策定・2026年10月12日参照):始業・終業時刻の確認と記録の責務。
  • 社会保険労務士法第2条:相談・指導等の業務の根拠。各法令の現行統合条文・最終改正日の全件照合、個別の労働者性の結論は本記事の確認範囲に含みません。
  • 厚生労働省・労働基準法の法令本文(2026-10-12取得、第119条の拘禁刑等を確認)

本記事は一般的な情報提供です。個々の契約や賃金の設計は、最新の一次資料と事業場の実情に照らし、面談のうえ資格者が判断します。必要に応じ所轄労働基準監督署・労働局へ照会します。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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