児童発達支援・放課後等デイの人員基準と労務──雇用契約と処遇改善加算の賃金
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
児童発達支援・放課後等デイサービスの人員基準は、単に「何人置くか」ではなく「常勤換算で何人分の勤務時間を満たすか」で見ます。だから労働時間の管理と雇用契約の設計が、指定の維持と直結します。児童指導員又は保育士は、障害児10人までで2人以上、10人を超えると5人ごとに1人を加えた数以上で、うち1人以上は常勤です。処遇改善加算を取るには、賃金改善の計画・実績、キャリアパス要件、職場環境等要件を満たし、それを就業規則・賃金規程に落とし込む必要があります。パート・短時間の職員も一定の要件を満たせば社会保険の加入義務が生じます。指定申請は行政書士、物件は不動産、会計・税務は税理士へ分離受任で振ります。
結論(先に要点):児童発達支援・放課後等デイサービスの人員基準は、単に「何人置くか」ではなく「常勤換算で何人分の勤務時間を満たすか」で見ます。だから労働時間の管理と雇用契約の設計が、指定の維持と直結します。児童指導員又は保育士は、障害児10人までで2人以上、10人を超えると5人ごとに1人を加えた数以上で、そのうち1人以上は常勤でなければなりません。
処遇改善加算(福祉・介護職員等処遇改善加算)を取るには、賃金改善の計画・実績、キャリアパス要件、職場環境等要件を満たし、それを就業規則・賃金規程に落とし込む必要があります。パート・短時間の職員も、一定の要件を満たせば社会保険の加入義務が生じます。
指定申請そのものや加算の届出は行政書士(自治体手続)、物件は不動産、法人の会計・税務は税理士の領域です。当事務所がお引き受けするのは労務・社会保険の支援で、個別の判断は面談のうえ資格者が行います。
児童指導員・保育士の配置基準は、労働時間の管理とどう結びつくのか?
配置基準は「常勤換算方法」で数えます。常勤換算とは、従業者の勤務延べ時間数を、その事業所で常勤の従業者が勤務すべき時間数で割って、常勤何人分かに換算する方法です(基準省令第2条の定義)。つまり、パートを何人雇っているかではなく、勤務時間の合計が常勤何人分になるかで基準を満たすかどうかが決まります。
児童発達支援は基準省令第5条、放課後等デイサービスは第66条が人員基準を定めています。
| 職種 | 配置数 | 根拠(児発/放デイ) |
|---|---|---|
| 児童指導員又は保育士 | 障害児10人まで2人以上。10人を超えて5人(またはその端数)を増すごとに1人追加 | 第5条第1項第1号/第66条第1項第1号 |
| うち常勤 | 1人以上は常勤 | 第5条第6項/第66条第6項 |
| 児童発達支援管理責任者 | 1人以上。うち1人以上は専任かつ常勤 | 第5条第1項第2号・第8項/第66条第1項第2号・第8項 |
| 管理者 | 事業所ごとに専らその職務に従事する者 | 第7条/第67条で準用 |
児童発達支援では、機能訓練を行う場合に機能訓練担当職員を置くなどの定めもあります(第5条第2項)。
労働時間の管理が甘いと、常勤換算の数字が基準を割ってしまい、指定基準を満たさない状態になりかねません。勤務体制の記録(誰が何時間勤務したか)は、労務管理であると同時に、指定を維持するための書類でもあります。
常勤換算を満たすには、雇用契約をどう設計すればよいのか?
まず「常勤」の意味を、雇用契約の所定労働時間で押さえます。常勤とは、その事業所で定めた常勤の従業者が勤務すべき時間数を満たす働き方です。ここが雇用契約書の所定労働時間・所定労働日数と一致していないと、常勤換算の計算が崩れます。
| 設計のポイント | 労務側で決めること |
|---|---|
| 常勤の所定労働時間 | 就業規則で「常勤の従業者が勤務すべき時間数」を明確にする |
| パートの所定労働時間 | 雇用契約書に所定労働時間・日数を明示(労働基準法第15条・施行規則第5条) |
| 常勤換算の計算 | 各人の勤務延べ時間数 ÷ 常勤が勤務すべき時間数 |
| 記録 | 勤務実績(タイムカード等)と勤務予定表を残す |
労働条件の明示は労働基準法第15条第1項の義務で、明示すべき事項は同法施行規則第5条に定められています。書面(または本人が希望した場合の電子交付)での明示が必要な事項があるため、口頭のやりとりだけで済ませないでください。就業規則そのものの整備義務は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で生じます(労働基準法第89条)。就業規則をいつ作るかの全体像は就業規則は何人から義務か。義務でないものは何かに整理しています。
処遇改善加算を受けるには、賃金規程に何を書く必要があるのか?
福祉・介護職員等処遇改善加算は、令和6年(2024年)6月から、従来の3つの加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)を一本化したものです。算定要件は大きく3つあります。
| 要件 | 概要 | 労務側の落とし込み先 |
|---|---|---|
| キャリアパス要件 | 任用要件・賃金体系の整備、研修の機会、昇給の仕組みなど | 就業規則・賃金規程・キャリアパス規程 |
| 月額賃金改善要件 | 加算による賃金改善を月額の賃金で行うこと | 賃金規程・賃金台帳 |
| 職場環境等要件 | 職場環境の改善の取組み | 就業規則・社内規程・記録 |
加算は賃金の原資になりますが、それを実際に賃金へ反映する仕組みを規程に書き、賃金改善の計画と実績を示せなければ算定・維持ができません。就業規則や賃金規程が実態と合っていないと、ここでつまずきます。処遇改善加算の賃金規程の書き方そのものについては、障害者グループホームの例ですが障害者グループホームの夜勤と宿直は、労働時間の扱いが違うも、勤務形態と賃金・労働時間の関係を考える手がかりになります。
なお、加算の区分・加算率や、令和8年度以降の見直し(対象職種の拡大など)の具体的な適用は、事業所ごと・年度ごとに変わります。個別の加算区分の選択や届出の可否は、この記事では結論を出しません。
パート・短時間職員の社会保険は、どこから加入義務が生じるのか?
短時間で働く職員でも、一定の要件を満たせば厚生年金・健康保険の加入義務が生じます。判断の軸は2つあります。
| 判断の軸 | 内容 |
|---|---|
| 4分の3基準 | 1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上なら加入 |
| 短時間労働者の適用拡大 | 特定適用事業所では、週の所定労働時間20時間以上・月額賃金8.8万円以上・2か月を超えて使用される見込み・学生でない、をすべて満たすと加入 |
福祉の現場はパート・登録ヘルパー・短時間勤務が多く、ここの判定を誤ると、加入漏れや保険料の遡及が起きます。適用拡大の対象になる事業所の範囲は段階的に広がってきました。短時間労働者の社会保険の考え方は短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかに、2027年に向けた適用拡大は社会保険の適用拡大は2027年にどうなるかに整理しています。いわゆる「年収の壁」への対応は106万円の壁の撤廃で、事業者は何をするかもあわせてご覧ください。
労務・指定届出・物件・税務は、それぞれ誰に頼めばよいのか?
開業と運営の準備は、担当する事業体が分かれます。
| 論点 | 担当 |
|---|---|
| 雇用契約・就業規則・賃金規程、労働時間管理、社会保険の手続 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 指定申請・加算の届出など自治体への手続 | 行政書士(自治体手続) |
| 事業所となる物件の選定・賃貸借 | 不動産 |
| 法人の会計・税務 | 税理士 |
指定申請や加算の届出は行政書士の業務で、四葉行政書士事務所は当事務所とは独立した事業体です。物件は四葉不動産株式会社が、これも別の事業体として承ります。必要な場合は、お客様に別々にご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
当事務所がお引き受けするのは、人員基準を満たす労務の設計と、その維持です。
- 常勤・パートの所定労働時間を踏まえた雇用契約書の作成
- 常勤換算を意識した勤務体制・シフトの設計と、勤務実績の記録の整備
- 就業規則・賃金規程の整備(処遇改善加算の要件を落とし込む部分を含む)
- パート・短時間職員の社会保険の加入判定と手続
- 労働時間・休憩・時間外労働の管理の設計
次のものは、当事務所では扱いません。
- 指定申請・加算の届出などの自治体手続 → 四葉行政書士事務所が別の事業体として承ります
- 事業所となる物件の選定・賃貸借 → 四葉不動産株式会社が別の事業体として承ります
- 法人の会計・税務、加算による収支の税務上の取扱い → 税理士へおつなぎします
- 事業所の登記に関する手続 → 司法書士へおつなぎします
四葉不動産株式会社、四葉行政書士事務所、四葉社会保険労務士事務所は、それぞれ独立した事業体として業務を受任します。他の専門家をご紹介する場合も、お客様に直接ご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。
ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容とご相談の流れもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. パートだけで人員基準は満たせますか?
A. 常勤換算の数字を満たせば、パートの組み合わせで基準を満たすこと自体は可能です。ただし、児童指導員又は保育士は1人以上を常勤とすること、児童発達支援管理責任者は1人以上を専任かつ常勤とすることが求められます(基準省令第5条・第66条)。常勤を置かずにパートだけで回そうとすると、この常勤要件で基準を満たせません。
Q. 常勤換算は、どうやって計算しますか?
A. 従業者の勤務延べ時間数を、その事業所で常勤の従業者が勤務すべき時間数で割って、常勤何人分かに換算します(基準省令第2条の定義)。たとえば常勤が週40時間の事業所で、週20時間のパートが2人いれば、20+20=40時間で常勤1人分です。就業規則で「常勤が勤務すべき時間数」を明確にしておくことが、計算の前提になります。
Q. 処遇改善加算のために、賃金規程は必ず要りますか?
A. 加算の要件(キャリアパス要件・月額賃金改善要件・職場環境等要件)を満たしていることを示すには、賃金体系や昇給の仕組み、賃金改善の内容を規程として整えておくことが実務上必要になります。加算による賃金改善を実際に賃金へ反映する仕組みが規程になければ、算定・維持が難しくなります。具体的な加算区分の選択や届出の可否は個別の事情によるため、この記事では結論を出しません。
Q. 職員が10人未満でも、就業規則は要りますか?
A. 労働基準法第89条の作成・届出義務は、常時10人以上の労働者を使用する事業場で生じます。10人未満なら、この義務そのものはありません。ただし処遇改善加算の要件を満たすうえで賃金体系や昇給の仕組みを規程として整えることは、人数にかかわらず実務上必要になる場面が多くあります。義務としての就業規則と、加算のために整える規程は、目的が別だと考えてください。
この記事の根拠
- 児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)第2条 ── 「常勤換算方法」の定義(従業者の勤務延べ時間数を、当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、常勤の従業者の員数に換算する方法)
- 同基準省令 第5条(児童発達支援)── 第1項第1号=児童指導員又は保育士の数(障害児10人まで2以上、10を超えて5又はその端数を増すごとに1を加えた数以上)、第6項=うち1人以上は常勤、第1項第2号・第8項=児童発達支援管理責任者を1以上(うち1以上は専任かつ常勤)、第2項=機能訓練担当職員等
- 同基準省令 第66条(放課後等デイサービス)── 児童発達支援と同様の人員基準。第6項=うち1人以上は常勤、第8項=児童発達支援管理責任者のうち1以上は専任かつ常勤
- 同基準省令 第7条(第67条で準用)── 事業所ごとに専らその職務に従事する管理者を置く
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項・同法施行規則第5条 ── 労働条件の明示(明示すべき事項と書面等による明示)
- 同法第89条 ── 常時10人以上の労働者を使用する使用者の就業規則の作成・届出義務
- 福祉・介護職員等処遇改善加算 ── 令和6年(2024年)6月から、従来の福祉・介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算を一本化。算定要件は①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件、③職場環境等要件(2026年8月22日に厚生労働省の資料で確認)
- 短時間労働者の社会保険 ── 4分の3基準(1週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上で加入)、および特定適用事業所における週20時間以上・月額8.8万円以上・2か月超見込み・非学生の要件(厚生年金保険法・健康保険法。2026年8月22日に確認)
- 基準省令は現在こども家庭庁の所管です(令和5年4月に厚生労働省から移管)。省令の名称・番号は平成24年厚生労働省令第15号のままです
- 加算の区分・加算率、令和8年度以降の対象職種の拡大など、個別の事業所・年度ごとの具体的な適用は本記事では扱っていません(未検証)
- 自治体ごとの上乗せ基準(人員配置の加算・地域独自の運用)は、当該自治体の条例・要綱によります。本記事では扱っていません(未検証)
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、常勤・パートの所定労働時間を踏まえた雇用契約書の作成、常勤換算を意識した勤務体制の設計と勤務実績の記録の整備、就業規則・賃金規程の整備、パート・短時間職員の社会保険の加入判定と手続、労働時間・休憩・時間外労働の管理の設計についてご相談いただけます。指定申請・加算の届出などの自治体手続は四葉行政書士事務所が別の事業体として、事業所となる物件の選定・賃貸借は四葉不動産株式会社が別の事業体として承り、それぞれ別々にご契約いただきます。法人の会計・税務は税理士へ、登記は司法書士へおつなぎします。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「人」のことから、整理しませんか。
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