従業員が亡くなったとき会社は何をする?未払賃金・資格喪失・遺族給付
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
従業員が亡くなったら、会社は社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを期限内に行い、未払賃金や退職金を相続人へ支払い、あわせて遺族が受けられる給付(労災の遺族補償給付・遺族年金など)の案内・手続きを進めます。健康保険・厚生年金保険の資格喪失日は死亡した日の翌日で、届出は5日以内、雇用保険の資格喪失届は10日以内が目安です。未払賃金は相続の対象で、権利者(相続人)から請求があれば7日以内に支払わなければなりません(労働基準法第23条)。いつ何をするか、誰に払うか、資格喪失の手続き、遺族給付、そして社内で整えておくことを整理します。
結論(先に要点):従業員が亡くなったら、会社は社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを期限内に行い、未払賃金や退職金を相続人へ支払い、あわせて遺族が受けられる給付(労災の遺族補償給付・遺族年金など)の案内・手続きを進めます。健康保険・厚生年金保険の資格喪失日は死亡した日の翌日で、届出は5日以内、雇用保険の資格喪失届は10日以内が目安です。未払賃金は相続の対象で、権利者(相続人)から請求があれば7日以内に支払わなければなりません(労働基準法第23条)。この記事では、いつ何をするか、誰に払うか、資格喪失の手続き、遺族給付、そして社内で整えておくことを、社会保険労務士の労務管理の視点で整理します。
従業員の死亡は突然で、遺族対応と手続きが同時に走ります。このページは、従業員が亡くなった中小企業の経営者・人事担当の方に向けて、会社側がすべきことと期限を整理します。
従業員が亡くなったら会社は何をいつまでにするのか?
死亡の連絡を受けたら、遺族への対応と並行して、期限のある手続きを進めます。主なものは次のとおりです。
| すること | 期限の目安 | 提出先 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険の資格喪失届 | 死亡日の翌日(資格喪失日)から5日以内 | 年金事務所(協会けんぽ等) |
| 健康保険証(被保険者証)の返却 | 資格喪失届とあわせて | 年金事務所・健康保険組合 |
| 雇用保険の資格喪失届 | 被保険者でなくなった日の翌日から10日以内 | ハローワーク |
| 未払賃金・金品の支払・返還 | 権利者(相続人)の請求から7日以内 | 相続人へ |
| 労災の遺族(補償)給付の案内・請求協力 | 遺族が請求(時効に注意) | 労働基準監督署 |
社会保険(健保・厚年)の資格喪失日は死亡した日の翌日です。死亡した「当日」ではない点に注意します。労働時間・賃金の一般的な取扱いは退職に伴う金品・年休の実務もあわせてご覧ください。
未払賃金や退職金は誰に払うのか(相続人の確認)?
労働者が亡くなった場合、まだ支払っていない賃金(未払賃金)や退職金は、本人へは払えません。賃金債権は相続の対象となり、相続人が承継します(民法)。労働基準法第23条は、労働者が死亡した場合において、権利者(相続人)の請求があったときは7日以内に賃金を支払い、積立金・保証金・貯蓄金その他労働者の権利に属する金品を返還しなければならないと定めています。違反には罰則(30万円以下の罰金)があります。
| 項目 | 取扱い |
|---|---|
| 未払賃金 | 相続の対象。相続人へ支払う(労働基準法第23条・民法) |
| 退職金 | 就業規則・退職金規程の受給権者の定めに従う。定めがなければ相続の問題として整理 |
| 支払の期限 | 権利者(相続人)の請求から7日以内(労働基準法第23条) |
| 相続人が複数のとき | 誰が・どの割合で受け取るかの確定が要る(遺産分割・法定相続分) |
問題になりやすいのは、相続人が複数いる/連絡が取れないときです。誰にいくら払うかを誤ると二重払いのリスクがあります。相続人の範囲・順位の確定(戸籍の収集など)は相続手続きの領域で、担い手が分かれます。後の節で整理します。
社会保険・雇用保険の資格喪失手続きはどうするのか?
死亡は退職と同じく被保険者資格の喪失事由です。会社が事業主として届け出ます。
| 保険 | 手続き | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 | 被保険者資格喪失届(資格喪失日=死亡日の翌日) | 5日以内 | 年金事務所(協会けんぽ)・健康保険組合 |
| 雇用保険 | 被保険者資格喪失届 | 被保険者でなくなった日の翌日から10日以内 | ハローワーク |
| 健康保険の被扶養者 | 被扶養者だった遺族の国民健康保険等への切替が必要になる場合 | すみやかに | 市区町村ほか |
健康保険証は資格喪失後に使えません。被保険者本人だけでなく、亡くなった従業員に扶養されていた家族がいた場合は、その家族の医療保険の切替(国民健康保険への加入や、他の家族の扶養への異動など)も必要になります。会社は資格喪失届と保険証の返却を確実に行い、遺族には切替の窓口を案内します。
遺族が受け取れる給付(労災の遺族補償・遺族年金)には何があるのか?
死亡の原因によって、遺族が受けられる給付が変わります。会社は請求できる給付を遺族に案内し、証明や記入に協力します。
| 給付 | 対象 | 根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 遺族補償給付(遺族補償年金・一時金) | 業務上の事由による死亡(業務災害) | 労働者災害補償保険法第16条ほか/労働基準監督署 |
| 遺族給付 | 通勤による死亡(通勤災害) | 労働者災害補償保険法/労働基準監督署 |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金の被保険者等が死亡したとき | 厚生年金保険法第58条/年金事務所 |
| 遺族基礎年金 | 一定の要件を満たす子のある配偶者・子など | 国民年金法/年金事務所・市区町村 |
| 埋葬料・葬祭料 等 | 健康保険・労災それぞれの制度 | 協会けんぽ・労働基準監督署 |
業務上・通勤による死亡かどうかの認定は労働基準監督署が行い、遺族年金の受給資格・順位の判断は**年金事務所(日本年金機構)**が行います。労災の給付には請求の時効があるため、遺族への案内は早めが安全です。会社は「請求権者は誰か」「業務上か否か」を最終判断するのではなく、必要な証明・記入に協力する立場です。
トラブルを避けるための社内手続きの整え方は?
いざというときに迷わないよう、平時から次を整えておくと安全です。
| すること | ねらい |
|---|---|
| 退職金規程に受給権者の定めを置く | 誰に払うかを明確にし、相続をめぐる争いを避ける |
| 緊急連絡先・家族構成の把握 | 遺族への連絡と扶養家族の切替をすみやかに行う |
| 資格喪失・給付案内の手順書 | 5日・10日などの期限を取りこぼさない |
| 未払賃金の支払先の確認手順 | 相続人の確定前に安易に払わない(二重払いの防止) |
相続人が複数いる、遺言がある、相続人間で争いがある——といった場面では、会社だけで判断せず、担い手を分けて進めます。次の節で整理します。
誰に、何を頼めばよいのか?
従業員の死亡に伴う手続きは、労務だけで完結しません。業務ごとに担い手が分かれます。
| すること | 誰の業務か |
|---|---|
| 社会保険・雇用保険の資格喪失、労災の遺族給付・遺族年金の手続き、就業規則・退職金規程の整備 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 相続人の範囲・順位の確定、戸籍の収集、遺産分割協議書の作成などの相続手続 | 行政書士(または司法書士・弁護士の業務範囲に応じて) |
| 相続人間の紛争、未払賃金・退職金の支払をめぐる争い | 弁護士 |
| 相続登記(不動産の名義変更) | 司法書士 |
| 相続税・準確定申告の税務 | 税理士 |
| 業務上・通勤災害の認定 | 労働基準監督署 |
当事務所は労務管理の情報提供・手続に限ります。相続人の確定や遺産分割にかかわる書類は四葉行政書士事務所へおつなぎすることもできますが、社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体が担い、別々にご契約いただく前提です。一括受任はしません。相続人間に争いがある場合や、支払をめぐって対立がある場合は、弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、従業員が亡くなったときの社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、労災の遺族(補償)給付や遺族年金の請求サポート、未払賃金の取扱いの整理、退職金規程・就業規則の見直しをお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表をご覧ください。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
経営者ご本人が亡くなった場合の手続きは社長が亡くなったときの給与・社会保険に整理しています。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 未払いの給料は、遺族の誰に払えばよいですか?
A. 未払賃金は相続の対象で、相続人が承継します。相続人が1人なら本人へ、複数いれば法定相続分や遺産分割に従って支払います。権利者(相続人)から請求があれば7日以内に支払う必要があります(労働基準法第23条)。誰が相続人かを確定させないまま払うと二重払いのリスクがあるため、相続人の確認を先に行うことをおすすめします。
Q. 社会保険の資格喪失日は、亡くなった日ですか、その翌日ですか?
A. 健康保険・厚生年金保険の資格喪失日は、死亡した日の翌日です。届出(被保険者資格喪失届)は5日以内が目安です。雇用保険の資格喪失届は、被保険者でなくなった日の翌日から10日以内が目安です。
Q. 遺族はどんな給付を受けられますか?
A. 死亡の原因によります。業務上の死亡なら労災の遺族補償給付、通勤による死亡なら労災の遺族給付、そのほか要件を満たせば遺族厚生年金・遺族基礎年金などがあります。業務上・通勤かの認定は労働基準監督署、年金の受給資格は年金事務所が判断します。請求には時効があるため早めの案内が安全です。
Q. 相続人の確定や遺産分割も一緒にお願いできますか?
A. 労務の手続きは社会保険労務士、相続人の確定や遺産分割にかかわる書類は行政書士(または司法書士・弁護士の業務範囲に応じて)、相続人間の紛争は弁護士の業務です。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、四葉行政書士事務所へおつなぎすることはできます。まとめて一括で受任する形はとっていません。
この記事の根拠
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第23条(労働者の死亡・退職の場合、権利者の請求から7日以内に賃金の支払・金品の返還/違反は罰則)
- 民法(明治29年法律第89号)(賃金債権の相続・相続人への弁済)
- 健康保険法(大正11年法律第70号)・厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)(被保険者資格の喪失・資格喪失届。資格喪失日は死亡の翌日)
- 雇用保険法(昭和49年法律第116号)(被保険者資格の喪失・資格喪失届)
- 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第16条ほか(業務災害による遺族補償給付・通勤災害による遺族給付)
- 厚生年金保険法第58条(遺族厚生年金の支給要件)
- 資格喪失届の期限(健保・厚年5日以内/雇用保険は被保険者でなくなった日の翌日から10日以内)は日本年金機構・ハローワークの案内により確認(2026年9月参照)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。社会保険・雇用保険の資格喪失、労災の遺族給付・遺族年金の手続き、就業規則・退職金規程の整備は社会保険労務士の業務です。相続人の範囲・順位の確定や遺産分割にかかわる書類は行政書士(または司法書士・弁護士の業務範囲に応じて)の業務、相続人間の紛争は弁護士の業務、相続登記は司法書士の業務、相続税・準確定申告は税理士の業務です。社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「人」のことから、整理しませんか。
四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。
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