2025年の雇用保険改正で、自己都合退職の給付制限と教育訓練給付はどう変わりましたか?

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
2025年(令和7年)4月1日以降に自己都合で離職した人は、基本手当の給付制限が原則2か月から1か月に短縮されました(5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合離職して受給資格決定を受けている場合は3か月)。あわせて、離職の前後に自ら教育訓練を受けた場合は給付制限が課されない扱いが設けられ、これは令和6年改正法(令和6年法律第26号)による雇用保険法第33条の改正に基づきます。教育訓練給付(雇用保険法第60条の2)は令和6年10月から、専門実践が資格取得・就職で70%・賃金5%以上上昇で最大80%、特定一般が最大50%に引き上げられ、一般は20%のままです。個別の給付可否・教育訓練の該当性はハローワーク、解雇・退職の適法性が争点になったときは弁護士(独立した事業体・別々にご契約)が判断します。
結論(先に要点):2025年(令和7年)4月1日以降に自己都合で離職した人は、基本手当(失業給付)の給付制限が原則2か月から1か月に短くなりました。あわせて、離職の前後に自ら教育訓練を受けた(受けている)場合は給付制限が課されない扱いが設けられ、これは令和6年改正法(令和6年法律第26号)による雇用保険法第33条の改正に基づきます。教育訓練給付の給付率も、令和6年10月から専門実践は最大80%、特定一般は最大50%に引き上げられています。
この記事は、退職・転職の相談を受ける中小企業の労務担当と、離職票を扱う実務者に向けて、2025年前後に施行された給付側の見直しを整理します。手続や給付の可否はハローワーク・有資格者が判断する事項で、この記事は制度の枠組みの紹介にとどまります。給付の対象が拡大する入口の話は雇用保険の適用拡大、週10時間以上へ。2028年10月から誰が対象かに整理しています。
2025年の雇用保険改正で、自己都合退職の給付制限期間はどう短くなったのか?
自己都合で退職すると、基本手当は待期の満了後すぐには出ず、一定期間支給されません。これが給付制限で、雇用保険法第33条第1項に基づくものです。従来、正当な理由のない自己都合離職には原則2か月の給付制限が運用されていましたが、2025年(令和7年)4月1日以降に離職した人については、原則1か月に短縮されました。
| 離職日 | 自己都合離職の給付制限(原則) |
|---|---|
| 2025年3月31日以前 | 原則2か月 |
| 2025年4月1日以降 | 原則1か月 |
ただし、退職日からさかのぼって5年間に2回以上、正当な理由がなく自己都合で離職して受給資格決定を受けている場合は、給付制限が3か月になります(ハローワークの案内、2026年9月参照)。短縮されたのは、繰り返しでない通常の自己都合離職の場合です。会社側は、退職者が「いつから基本手当を受け取れるか」を早合点しないよう、離職日と過去の離職歴で扱いが変わる点を伝えておくと、後の行き違いを防げます。
なお、給付制限は基本手当の支給開始が遅れるという話であり、支給される日数(所定給付日数)そのものを増減させるものではありません。自己都合か会社都合かで所定給付日数が変わるのは別の論点で、それは離職理由の区分の問題です。
自ら教育訓練を受けると給付制限がさらに変わるのは、どういう仕組みか?
2025年4月からのもう一つの見直しが、教育訓練を受けた場合の給付制限の扱いです。令和6年改正法(令和6年法律第26号)による雇用保険法第33条の改正で、離職の前後に自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練(リ・スキリング)を受けた場合には、自己都合離職でも給付制限が課されない扱いが設けられました(2025年4月以降)。
- 対象になり得る場面:離職期間中に教育訓練を受けている、または離職日前1年以内に自ら教育訓練を受けたといった場合が想定されています。
- 考え方:早期の再就職につながる学び直しを後押しするため、給付制限で基本手当の受給を遅らせない扱いにするものです。
- 確認先:どの教育訓練が該当するか、いつの受講が対象になるかは、離職者ごとの事情に照らしてハローワークが判断します。
したがって、退職を控えた従業員から相談を受けたとき、労務担当が「教育訓練を受ければ必ず給付制限がなくなる」と断言するのは危険です。該当性はハローワークの判断事項なので、制度としてそういう仕組みがあることを案内し、具体的な可否は本人がハローワークに確認する、という線の引き方が安全です。
教育訓練給付(一般・特定一般・専門実践)の給付率は、どこまで引き上げられたのか?
在職中・離職後の学び直しを支える教育訓練給付は、雇用保険法第60条の2の給付です。令和6年改正法により、令和6年(2024年)10月1日から給付率が引き上げられました。
| 区分 | 従来 | 令和6年10月1日以降 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 受講費用の20% | 20%(変更なし) |
| 特定一般教育訓練 | 40% | 40%+(資格取得等をし、修了後1年以内に被保険者として就職等)で10%=最大50% |
| 専門実践教育訓練 | 最大70% | 50%+(資格取得等・就職)で20%=70%、さらに賃金が5%以上上昇で10%=最大80% |
引き上げは「追加給付」の形で行われます。専門実践では、受講中に50%が6か月ごとに支給され、資格取得等をして就職すると合計70%まで、さらに修了後に賃金が5%以上上がると合計80%までになります。特定一般も、資格取得等と就職の要件を満たすと50%になります。一般教育訓練は20%のまま据え置かれています。金額の上限や対象講座、支給要件の細部は年度・講座で異なるため、受講前に厚生労働省・ハローワークの最新情報で確認します(2026年9月参照)。
さらに、令和7年(2025年)10月1日からは、教育訓練休暇給付金が創設されました(令和6年法律第26号第2条)。在職中の一般被保険者が、教育訓練のための(無給の)休暇を取得した場合に給付を受けられる制度です。会社としては、休暇制度の設計や就業規則との関係で関わる場面が出てきます。
会社は離職票の離職理由をどう記載し、従業員とどう認識をそろえるのか?
給付制限も所定給付日数も、出発点は離職理由の区分です。会社は、雇用保険被保険者資格喪失届とともに離職証明書を作成し、離職理由を記載します。ここでの記載が、本人が受け取る離職票の離職理由の欄に反映されます。
- 事実に基づいて区分する:自己都合か、会社都合(事業主の都合)か、契約期間満了かなどを、実際の経緯に沿って記載します。都合のよい区分に寄せると、後でハローワークの確認で覆り、本人の給付にも影響します。
- 本人の異議の余地を残す:離職理由は、事業主が記載した内容に対して離職者本人が異議を申し立てられる仕組みがあります。認識をそろえておくと、確認の手戻りが減ります。
- 記録を残す:退職届・面談記録・就業規則との関係など、区分の根拠になる資料を残します。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
離職理由の判定そのものは、最終的にはハローワークが行います。会社は、事実を正確に記載し、本人と認識をそろえることが役割です。給与計算・離職手続を社会保険労務士に委託するか内製するかの判断は給与計算を社会保険労務士に頼むと、いくらかかるのかも参考になります。
退職の相談を受けたとき、労務担当は何を案内し、何を有資格者に委ねるのか?
退職・転職の相談で、労務担当がどこまで案内し、どこから先を有資格者に委ねるかの線引きは、次のように整理できます。
| 論点 | 誰が担うか |
|---|---|
| 雇用保険の資格喪失・離職証明書の作成、給付制限や教育訓練給付の制度の案内、就業規則の整備 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 個別の給付の可否・受給時期・教育訓練の該当性の判断 | ハローワーク(本人が確認) |
| 解雇・退職勧奨の適法性、雇止めの有効性など、退職が紛争になったときの判断・交渉・訴訟 | 弁護士 |
制度の仕組みを案内し、離職手続を正確に進めることは社会保険労務士がご支援できます。一方、「その退職は本当に自己都合か」「解雇が有効か」といった適法性が争点になる場面は弁護士の領域で、当事務所とは独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。解雇をめぐる相談を社労士と弁護士のどちらに持ち込むかの整理は解雇の相談は、社会保険労務士と弁護士のどちらかにまとめています。この記事は制度の枠組みの紹介にとどまり、個別の給付可否や退職の適法性を判断するものではありません。
よくある質問
Q. 自己都合で辞めると、基本手当はいつから受け取れますか?
A. 2025年(令和7年)4月1日以降に離職した人は、正当な理由のない自己都合離職でも給付制限が原則2か月から1か月に短縮されました。ただし、5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合離職して受給資格決定を受けている場合は3か月です。実際の受給開始時期は待期や手続の状況にもよるため、個別にはハローワークにご確認ください。
Q. 教育訓練を受ければ、給付制限は必ずなくなりますか?
A. 令和6年改正法により、離職の前後に自ら雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練を受けた場合には給付制限が課されない扱いが2025年4月から設けられました。ただし、どの訓練が該当するか、いつの受講が対象かは離職者ごとの事情に照らしてハローワークが判断します。「受ければ必ず解除される」と断言はできないため、具体的な可否はハローワークにご確認ください。
Q. 教育訓練給付の給付率は、どこまで上がりましたか?
A. 令和6年(2024年)10月1日から、専門実践教育訓練は資格取得等・就職で70%、さらに賃金が5%以上上昇すると最大80%、特定一般教育訓練は資格取得等・就職で最大50%に引き上げられました。一般教育訓練は20%のまま据え置きです。上限額や対象講座、支給要件の細部は受講前に厚生労働省・ハローワークの最新情報でご確認ください。
Q. 会社は離職票の離職理由を、退職者の希望どおりに書いてよいですか?
A. 離職理由は実際の経緯に基づいて区分します。都合のよい区分に寄せると、ハローワークの確認で覆り、本人の給付にも影響します。離職者本人が異議を申し立てられる仕組みもあるため、事実を正確に記載し、本人と認識をそろえておくことが安全です。判定そのものは最終的にハローワークが行います。
この記事の根拠
- 給付制限の根拠:雇用保険法(昭和49年法律第116号)第33条第1項(正当な理由がなく自己の都合により退職した場合等の給付制限)(e-Gov法令検索。施行日・最終改正は都度ご確認ください)
- 給付制限期間の短縮:2025年(令和7年)4月1日以降に離職した自己都合離職者は、給付制限が原則2か月から1か月に短縮。5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合離職して受給資格決定を受けている場合は3か月(厚生労働省・ハローワークの案内、2026年9月参照)
- 教育訓練を受けた場合の給付制限の適用除外:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号、2024年〔令和6年〕5月17日公布)による雇用保険法第33条の改正。離職の前後に自ら雇用の安定・就職の促進に資する教育訓練を受けた場合に給付制限が課されない扱い(2025年4月から。該当性はハローワークが判断)
- 教育訓練給付金:雇用保険法第60条の2。令和6年改正法により令和6年(2024年)10月1日から給付率を引上げ。専門実践教育訓練は資格取得等・就職で70%、賃金が5%以上上昇で最大80%。特定一般教育訓練は資格取得等・就職で最大50%。一般教育訓練は20%(厚生労働省・ハローワークの案内、2026年9月参照。上限額・対象講座・支給要件の細部は年度・講座で異なる)
- 教育訓練休暇給付金の創設:令和6年法律第26号第2条により、令和7年(2025年)10月1日施行。在職中の一般被保険者が教育訓練のための休暇を取得した場合の給付(厚生労働省の案内、2026年9月参照)
- 離職理由の記載・離職者の異議:雇用保険被保険者離職証明書における離職理由の記載と、離職者本人による異議の仕組み(ハローワークの案内)
- 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条
この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、雇用保険の資格喪失・離職証明書の作成、給付制限や教育訓練給付の制度の案内、就業規則・労働条件の整備についてご相談いただけます。個別の給付の可否・受給時期・教育訓練の該当性はハローワークが、解雇・退職勧奨の適法性など紛争性のある判断は弁護士が担い、弁護士は当事務所とは独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。特定の離職に給付制限がどう適用されるか、特定の教育訓練が給付制限の解除に該当するか、特定の退職が自己都合か会社都合かといった個別の判断は、事情によって分かれます。制度の適用や個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・ハローワーク・e-Gov等)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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