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2026.09.12雇用保険

雇用保険の適用拡大(週10時間以上)2028年10月|対象者と実務の備え

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

雇用保険の被保険者になる週所定労働時間の要件が、20時間以上から10時間以上へ下がります。施行は2028年(令和10年)10月1日で、根拠は雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)です。2027年10月の社会保険(厚生年金・健康保険)の適用拡大とは別制度で、雇用保険には企業規模要件がない点が最大の違いです。週10時間の数え方、保険料の変化、いまから準備すべきことを、社会保険の適用拡大2027との違いを整理しながら解説します。

結論(先に要点):雇用保険の被保険者になる「1週間の所定労働時間」の要件が、いまの20時間以上から10時間以上へ下がります。施行は2028年(令和10年)10月1日です。根拠は雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号、2024年5月17日公布)で、雇用保険法第6条の適用除外を「週10時間未満」に改めるものです。

これは2027年10月の社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大とは別の制度です。よく混同されますが、雇用保険には社会保険の適用拡大のような「企業規模要件(従業員◯人以上)」がありません。雇用保険は労働者を雇うほぼすべての事業に適用され、被保険者になるかどうかは主に「週の所定労働時間」と「31日以上の雇用見込み」で決まります。したがって、いま週10〜20時間で働くパート・アルバイトを雇う会社は、規模の大小にかかわらず2028年10月から新たな手続が生じます。厚生労働省は、この改正で新たに被保険者となる人が最大で約500万人増えると見込んでいます。

この記事は、短時間のパート・アルバイトを多く雇う中小事業者と労務担当者に向けて、雇用保険の適用拡大の対象・時期、社会保険の適用拡大2027との違い、週10時間の数え方、保険料の変化、いまから準備すべきことを整理します。

雇用保険の適用拡大は、いつ・誰が対象になるのか?

雇用保険の被保険者になる要件は、現在「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上引き続き雇用されることが見込まれる」ことです。改正後は、この所定労働時間の要件が10時間以上に下がります。

項目現在2028年10月1日以降
1週間の所定労働時間の要件20時間以上10時間以上
雇用見込み31日以上31日以上(変更なし)
昼間学生原則適用除外原則適用除外(変更なし)
根拠条文雇用保険法第6条第1号(適用除外=週20時間未満)同号を「週10時間未満」に改正

つまり、いま「週20時間未満だから雇用保険は関係ない」としていた会社でも、2028年10月からは、週10時間以上・31日以上の雇用見込みがあるパート・アルバイトが新たに被保険者になります。学生(昼間学生)が原則として適用除外である点は変わりません。

対象が広がることは、働く人にとっては、育児休業給付・介護休業給付・教育訓練給付・基本手当(失業給付)などの対象になり得るという利点があります。これまで週20時間未満のために給付の対象外だった人が、育児・介護と仕事を両立しながら給付を受けられる場面が増えます。

社会保険の適用拡大2027と、何が違うのか?

「適用拡大」という言葉は、社会保険(厚生年金保険・健康保険)でも雇用保険でも使われるため混同されがちですが、根拠法も施行時期も要件も別の制度です。

雇用保険の適用拡大社会保険の適用拡大
対象の保険雇用保険厚生年金保険・健康保険
施行時期2028年10月1日2027年10月(段階的に縮小・撤廃)
週の所定労働時間20時間以上→10時間以上20時間以上(4分の3未満の短時間労働者)
企業規模要件なしあり(被保険者数36人以上→段階的に縮小)
主な根拠令和6年法律第26号/雇用保険法第6条短時間労働者への健保・厚年の適用拡大

最大の違いは企業規模要件の有無です。社会保険の適用拡大は「厚生年金保険の被保険者数が一定人数以上の会社」に限って短時間労働者を対象にしますが、雇用保険にはこの規模要件がありません。労働者を雇う事業は原則として雇用保険の適用事業ですから、規模の小さい会社でも、週10時間以上・31日以上の見込みの人がいれば2028年10月から手続が必要になります。

社会保険の適用拡大2027の詳細は、社会保険の適用拡大、2027年10月から36人以上へ。パート・アルバイトの加入要件と会社の準備をご覧ください。短時間労働者の社会保険の加入判定の基礎は、短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかをご覧ください。

「週10時間」の所定労働時間は、どう数えるのか?

被保険者になるかどうかの判定は、実際に働いた時間(実労働時間)ではなく、雇用契約や就業規則などで定めた所定労働時間で行うのが原則です。これは現在の「週20時間」の判定と同じ考え方です。

  • 所定労働時間が決まっている場合:雇用契約書・労働条件通知書に書かれた1週間の所定労働時間で判定します。
  • 1か月・1年単位で所定が定められている場合:1週間あたりに換算して判定します(月単位なら12分の52で割り戻すなど、現行の取扱いに沿って換算します)。
  • 所定労働時間が明確でない・変動する場合:実際の労働時間の実績などから判断されることがあります。詳細な取扱いは施行に向けて厚生労働省から示される予定です。

したがって、シフトで週によって時間が変わる人も、「所定」がどう定められているかを雇用契約書・就業規則・シフト表と突き合わせて確認する必要があります。所定労働時間の定め方そのものが判定に直結するため、労働条件の明示と契約書の整備が重要になります。労働条件明示のルールは、外国人にも必要な労働条件明示。2024年から何が変わったか求人票と実際の労働条件がずれてはいけないも参考になります。

新たに被保険者になると、保険料はどう変わるのか?

雇用保険料は、社会保険料のような労使折半ではなく、事業主の負担割合が大きいのが特徴です。料率は年度ごとに定められます。参考として、令和7年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の一般の事業の雇用保険料率は次のとおりです。

区分(一般の事業・令和7年度)労働者負担事業主負担合計
雇用保険料率5.5/1000(0.55%)9/1000(0.9%)14.5/1000(1.45%)

※農林水産・清酒製造の事業、建設の事業は料率が異なります。料率は毎年度見直されるため、実際の計算では当該年度の最新料率を必ず確認してください。

ご自身のケースについて相談したい方へ

社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。

新たに被保険者になる人が増えれば、その人の賃金に料率を乗じた分だけ、労働者・事業主の双方に保険料が生じます。給与計算では、雇用保険の資格取得届の提出、賃金からの保険料控除、年度更新(労働保険の概算・確定保険料の申告)への反映が必要です。労働保険の年度更新の実務は、労働保険の年度更新。概算保険料と確定保険料の考え方をご覧ください。

なお、この改正では、基本手当(失業給付)の算定に用いる賃金日額の下限額を1,230円とする調整も設けられています。週10時間程度の短時間で働く人の賃金水準に対応するための措置です(金額は今後の改定で変わり得ます)。

事業者は、今から何を準備すべきか?

施行は2028年10月ですが、対象者の把握と体制づくりには時間がかかります。次の流れで進めるのが実務的です。

  1. 対象になり得る人を洗い出す:現在、週10時間以上20時間未満で働くパート・アルバイトが何人いるかを、雇用契約書・就業規則・シフト表・勤怠記録から確認します。
  2. 所定労働時間の定め方を点検する:所定労働時間が契約書・就業規則で明確に定められているか、シフト制で「所定」がどう扱われるかを整理します。
  3. 給与計算・勤怠システムの対応を確認する:新たな被保険者の資格取得・保険料控除にシステムが対応するかを、施行前に確認します。
  4. 本人への説明を準備する:加入により保険料の控除が生じる一方、育児・介護・教育訓練などの給付の対象になり得ることを説明できるようにします。

就業規則や労働条件の整備は、就業規則は何人から義務か。義務でないものは何かをご覧ください。給与計算を委託するか内製するかの判断は、給与計算を社会保険労務士に頼むと、いくらかかるのか給与計算をfreeeで内製したい。社会保険労務士には何を頼めばいいのかをご覧ください。

四葉社会保険労務士事務所では、雇用保険・労働保険の加入要件の整理、資格取得等の届出、年度更新、就業規則・労働条件の整備、給与計算・勤怠管理体制についてご相談いただけます。労働保険関係の申請書作成・提出代行・事務代理等は、社会保険労務士法(社労士法)第2条の業務として整理されます。ご相談は無料で、費用は報酬額表にまとめています。税務は税理士の領域です。

よくある質問

Q. 雇用保険の適用拡大は、いつから始まりますか?
A. 2028年(令和10年)10月1日からです。根拠は雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号、2024年5月17日公布)で、被保険者になる1週間の所定労働時間の要件が20時間以上から10時間以上に下がります。

Q. 社会保険の適用拡大2027と同じものですか?
A. いいえ、別制度です。2027年10月の適用拡大は厚生年金保険・健康保険で、企業規模要件があります。雇用保険の適用拡大は2028年10月で、企業規模要件がなく、労働者を雇うほぼすべての事業が対象です。混同しないよう、対象の保険・施行時期・要件を分けて確認してください。

Q. うちは小さい会社ですが、対象になりますか?
A. 雇用保険には企業規模要件がありません。労働者を雇う事業は原則として雇用保険の適用事業ですから、規模の大小にかかわらず、週10時間以上・31日以上の雇用見込みがあるパート・アルバイトがいれば、2028年10月から新たに被保険者になります。

Q. 週10時間は、実際に働いた時間で数えるのですか?
A. 原則は、実労働時間ではなく、雇用契約や就業規則で定めた所定労働時間で判定します。シフト制などで所定が明確でない場合の取扱いは、施行に向けて厚生労働省から示される予定です。契約書・就業規則で所定労働時間をどう定めているかの点検が重要です。

この記事の根拠

  • 雇用保険の適用拡大:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号、2024年〔令和6年〕5月17日公布)。1週間の所定労働時間が10時間未満である者を雇用保険法の適用除外とする改正で、被保険者となる週所定労働時間の要件が20時間以上から10時間以上に引き下げられる。施行日は2028年(令和10年)10月1日
  • 雇用保険法第6条(適用除外):1週間の所定労働時間が20時間未満である者を適用除外とする現行規定を、改正により「10時間未満」に改める(e-Gov法令検索。施行日・最終改正は都度ご確認ください)
  • 賃金日額の下限:改正法により、基本手当の算定に用いる賃金日額の下限額を1,230円とする調整が設けられる(厚生労働省・改正法の内容。金額は今後の改定で変わり得ます)
  • 新たに被保険者となる人数の見込み:最大約500万人(厚生労働省の改正内容の案内、2026-09参照)
  • 昼間学生の適用除外・31日以上の雇用見込み:雇用保険の被保険者要件(厚生労働省・ハローワークの案内)
  • 雇用保険料率(令和7年度・一般の事業):労働者負担5.5/1000、事業主負担9/1000、合計14.5/1000。農林水産・清酒製造、建設の事業は別料率。料率は年度ごとに見直し(厚生労働省「令和7年度の雇用保険料率」2026-09参照)
  • 社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大との違い:社会保険の適用拡大は企業規模要件があり2027年10月から段階的に実施される別制度(日本年金機構・厚生労働省の資料)
  • 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条

この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、雇用保険・労働保険の加入要件の整理、資格取得等の届出、年度更新、就業規則・労働条件の整備、給与計算・勤怠管理体制についてご相談いただけます。税務は税理士の領域です。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。制度の適用や個別の加入判定は、最新の一次情報(厚生労働省・ハローワークなど)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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