2025年10月新設『教育訓練休暇給付金』とは——無給で学び直す従業員への給付と事業主の手続

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
教育訓練休暇給付金は、在職中の雇用保険の一般被保険者が学び直し(リスキリング)のために無給の休暇を取った場合に、基本手当に相当する額を受け取れる制度です。2025年(令和7年)10月1日に創設されました(令和6年法律第26号第2条による雇用保険法改正)。支給日数は算定基礎期間に応じ90日・120日・150日のいずれかで、前提となる無給の教育訓練休暇は就業規則・労使協定への整備が必要です。個別の支給可否・支給額はハローワークが判断します。
結論(先に要点):教育訓練休暇給付金は、在職中の雇用保険の一般被保険者が、学び直し(リスキリング)のために無給の休暇を取った場合に、基本手当に相当する額を受け取れる制度です。2025年(令和7年)10月1日に創設されました(令和6年法律第26号第2条による雇用保険法改正)。支給日数は算定基礎期間に応じ90日・120日・150日のいずれかで、個別の支給可否はハローワークが判断します。この記事は制度の枠組みの紹介にとどまります。
この記事は、従業員のリスキリングを無給の休暇で認めたい中小企業の経営者・人事担当に向けて、2025年10月に新設された教育訓練休暇給付金の枠組みと、事業主が就業規則・手続で準備することを整理します。個別の支給可否・支給額はハローワークが判断する事項で、この記事は制度の案内にとどまります。2025年の雇用保険改正のうち、離職後の給付制限緩和や教育訓練給付の引上げは2025年の雇用保険改正、自己都合退職の給付制限と教育訓練給付はどう変わったかに整理しています。
教育訓練休暇給付金とは何か、いつ新設されたのか?
教育訓練休暇給付金は、在職中の一般被保険者が、教育訓練を受けるために無給の休暇を取得したときに、基本手当(失業給付)に相当する額を支給する制度です。離職せずに学び直しをする人の生活費を支える点に特徴があります。根拠は雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)第2条による雇用保険法の改正で、2025年(令和7年)10月1日に施行されました。詳細は雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令で定められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創設 | 2025年(令和7年)10月1日 |
| 根拠 | 令和6年法律第26号第2条による雇用保険法の改正 |
| 対象 | 在職中の雇用保険の一般被保険者(離職していない人) |
| 前提となる休暇 | 無給の教育訓練休暇(在職のまま取得) |
| 給付の性格 | 基本手当に相当する額(離職時の失業給付と同じ考え方) |
従来、雇用保険の教育訓練関係の給付といえば、受講費用の一部を補助する教育訓練給付金(雇用保険法第60条の2)が中心でした。教育訓練休暇給付金はこれとは別の給付で、「受講費用」ではなく「休暇を取っている間の生活費」を支える点が異なります。両方を混同しないよう、相談を受ける際は区別して案内する必要があります。
どんな休暇・どんな従業員が対象になるのか?
対象になるには、休暇そのものの要件と、従業員本人の被保険者期間の要件の両方を満たす必要があります。公表されている要件は次のとおりです(厚生労働省の案内、2026年10月参照。細部は最新情報でご確認ください)。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 従業員の資格 | 在職中の雇用保険の一般被保険者であること |
| 被保険者期間 | 休暇開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上、かつ算定基礎期間が5年以上 |
| 休暇の性格 | 労働協約または就業規則に基づき、従業員が自発的に取得する無給の休暇 |
| 休暇の日数 | 30日以上 |
| 事業主の関与 | 事業主が休暇の取得を承認していること、期間中に解雇の予定がないこと |
| 収入 | 休暇期間中に賃金等の収入を得ていないこと |
ポイントは、この休暇が「無給」であることと、「従業員が自発的に取得する」ものであることです。会社が業務命令で研修を受けさせる(賃金が出る)場合は、ここでいう教育訓練休暇には当たりません。あくまで従業員本人が学び直しのために自ら無給の休暇を取り、その間の生活費を雇用保険が支える、という構図です。被保険者期間の要件は離職期間がある場合の通算ルールなどで細かく分かれるため、個別の該当性はハローワークにご確認ください。
給付額と支給の期間はどう決まるのか?
支給される1日あたりの額は、離職したときに受け取る基本手当と同じ考え方で計算されます。支給される日数(所定給付日数)は、算定基礎期間(雇用保険の加入期間)に応じて決まります。
| 算定基礎期間 | 支給日数 |
|---|---|
| 5年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
- 1日あたりの額:離職時の基本手当と同じく、原則として休暇開始前6か月の賃金をもとにした賃金日額に給付率(おおむね45〜80%)を乗じて計算します。賃金日額・基本手当日額には年齢区分ごとの上限があり、具体的な金額は年度・年齢で変わるため、受給前に厚生労働省・ハローワークの最新情報でご確認ください(2026年10月参照)。
- 支給の期間:給付を受けられる期間は原則として最長1年です。妊娠・出産・育児などで休暇を中断した場合は、一定の範囲で期間を延長できる扱いが設けられています。
- 基準となる日:支給日数のもとになる算定基礎期間は、休暇開始日の前日時点で判断されます。
支給日数が基本手当の所定給付日数(一般の離職者)と同じ区分になっている点は、制度の性格を示しています。離職して失業給付を受ける代わりに、在職のまま学び直しをする人にも同等の生活費保障を及ぼす、という考え方です。具体的な支給額・支給日数のシミュレーションは厚生労働省のサイトで示されているため、相談では「おおよその枠組み」を案内し、確定額はハローワークで確認する線引きが安全です。
事業主は就業規則や手続で何を準備するのか?
教育訓練休暇給付金は従業員本人が受け取る給付ですが、その前提となる無給の教育訓練休暇は会社の制度です。したがって、事業主側で整えるべき準備があります。
- 就業規則・労使協定への明記:教育訓練休暇(無給)の制度を労働協約または就業規則に定めます。対象者・取得日数・申請手続・無給であることなどを明確にしておきます。
- 賃金に関する証明:従業員がハローワークに申請する際、賃金月額に関する証明(離職票に準じた賃金の証明)など、会社が作成・提出する書類があります。
- 解雇予定がないことの確認:休暇期間中に解雇の予定がないことが要件に含まれるため、事業主としてその点を確認・証明する必要があります。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
就業規則に教育訓練休暇の定めがないまま従業員が「学び直したい」と申し出ても、給付の前提が整いません。制度を導入する会社は、先に就業規則の整備を済ませておくことが実務上のポイントです。就業規則の作成・変更は社会保険労務士がご支援できる領域です。なお、休暇を無給とするか有給とするか、取得日数をどう設計するかは会社の制度設計の問題であり、給付の要件(無給・30日以上)と整合させて決める必要があります。
申請・就業規則・訓練選定は誰が担うのか?
教育訓練休暇給付金に関わる作業は、担い手が分かれます。
| 論点 | 誰が担うか |
|---|---|
| 就業規則・労使協定の教育訓練休暇制度の整備、賃金証明など事業主側の手続の支援、給付金の支給申請の代行 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 給付金の支給申請の受理、個別の支給可否・支給額・支給日数の判断 | ハローワーク(本人・事業主が確認) |
| どの教育訓練を、どの教育機関で受けるかの選定 | 従業員本人と教育機関 |
給付金の支給申請はハローワークに対して行うもので、社会保険労務士が事業主に代わって手続を代行できます。一方、個別の支給の可否や金額、何日分支給されるかの判断はハローワークが行います。どの講座を受けるか(受講先の選定)は従業員本人が教育機関と決める事柄です。就業規則の整備や申請の支援は社会保険労務士がご支援できますが、個別の支給可否はハローワークの判断事項である点を、相談の入口で明確にしておくと行き違いを防げます。この記事は制度の枠組みの紹介にとどまり、個別の支給の可否や金額を判断するものではありません。
よくある質問
Q. 教育訓練休暇給付金は、どんなときに受け取れる給付ですか?
A. 在職中の雇用保険の一般被保険者が、学び直し(リスキリング)のために無給の教育訓練休暇を取得した場合に、基本手当に相当する額を受け取れる給付です。2025年(令和7年)10月1日に創設されました。受講費用を補助する教育訓練給付金とは別の制度で、こちらは休暇中の生活費を支えるものです。個別の支給可否はハローワークが判断します。
Q. 誰でも対象になりますか?
A. 在職中の一般被保険者で、休暇開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上あり、かつ算定基礎期間が5年以上あることが要件とされています。加えて、労働協約・就業規則に基づく自発的な無給の休暇で、30日以上であること、事業主の承認があり解雇予定がないことなどが求められます。細かな該当性は離職期間の有無などで分かれるため、ハローワークにご確認ください。
Q. 給付額と支給日数はどのくらいですか?
A. 1日あたりの額は離職時の基本手当と同じ考え方で計算され、原則として休暇開始前6か月の賃金をもとにした賃金日額に給付率(おおむね45〜80%)を乗じます。支給日数は算定基礎期間に応じて、5年以上10年未満は90日、10年以上20年未満は120日、20年以上は150日です。賃金日額には年齢区分の上限があり、金額は年度・年齢で変わるため、受給前にハローワークの最新情報でご確認ください。
Q. 会社は何を準備すればよいですか?
A. 前提となる無給の教育訓練休暇を労働協約または就業規則に定め、対象者・取得日数・無給であることなどを明確にしておきます。従業員が申請する際には、賃金月額に関する証明など会社が作成・提出する書類があり、休暇期間中に解雇予定がないことの確認も必要です。就業規則の整備や申請の支援は社会保険労務士がご支援できます。
この記事の根拠
- 創設の根拠:雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)第2条による雇用保険法(昭和49年法律第116号)の改正。教育訓練休暇給付金は2025年(令和7年)10月1日施行(e-Gov法令検索。施行日・最終改正は都度ご確認ください)
- 詳細の定め:雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令(厚生労働省の案内、2026年10月参照)
- 対象者・休暇の要件:在職中の一般被保険者で、休暇開始前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上かつ算定基礎期間が5年以上。労働協約・就業規則に基づく自発的な無給の教育訓練休暇(30日以上)で、事業主の承認があり解雇予定がないこと等(厚生労働省の案内、2026年10月参照。離職期間がある場合の通算など細部は最新情報で確認)
- 支給日数:算定基礎期間に応じ、5年以上10年未満は90日、10年以上20年未満は120日、20年以上は150日(休暇開始日の前日時点の算定基礎期間で判断。厚生労働省・ハローワークの案内、2026年10月参照)
- 支給額・支給期間:離職時の基本手当と同じ計算方法(原則として休暇開始前6か月の賃金をもとにした賃金日額に給付率おおむね45〜80%を乗じる。賃金日額には年齢区分の上限)。給付を受けられる期間は原則最長1年(妊娠・出産等での中断時は延長の扱いあり。金額の細部は年度・年齢で異なるため受給前に最新情報で確認)
- 教育訓練給付金との区別:受講費用を補助する教育訓練給付金は雇用保険法第60条の2の別制度
- 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条
この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、教育訓練休暇制度の就業規則・労使協定への整備、賃金証明など事業主側の手続の支援、給付金の支給申請の代行についてご相談いただけます。個別の支給可否・支給額・支給日数の判断はハローワークが、どの教育訓練を受けるかの選定は従業員本人と教育機関が担います。費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。特定の従業員が教育訓練休暇給付金の対象になるか、支給額・支給日数がいくらになるかといった個別の判断は、事情によって分かれます。制度の適用や個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・ハローワーク・e-Gov等)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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