特定技能「自動車運送業」分野の外国人を受け入れる——運転免許要件と労務・社会保険

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
特定技能「自動車運送業」は令和6年(2024年)3月29日の閣議決定で加わった分野で、業務区分はトラック・タクシー・バスの3区分です。免許はトラックが第一種・タクシーとバスが第二種、日本語はトラックがN4以上(または国際交流基金日本語基礎テスト)・タクシーとバスがN3以上とされています。受入れ後は運転者として改善基準告示と年960時間の時間外上限がかかり、社会保険・雇用保険・労災は国籍を問わず日本人と同じように適用されます。在留資格・試験は行政書士、運転免許は公安委員会、労務は社会保険労務士と担当が分かれます。
結論(先に要点):特定技能「自動車運送業」は、令和6年(2024年)3月29日の閣議決定で特定技能1号の対象に加わった分野で、業務区分はトラック・タクシー・バスの3区分です。必要な運転免許はトラックが第一種・タクシーとバスが第二種、日本語はトラックが国際交流基金日本語基礎テストまたはN4以上・タクシーとバスがN3以上とされています。受入れ後の労務では、運転者であるため改善基準告示(令和6年4月1日適用)と時間外労働の年960時間の上限の両方がかかり、社会保険・雇用保険・労災は国籍を問わず日本人と同じように適用されます。この記事では、制度の対象と時期、免許・日本語の要件、労働時間の管理、社会保険の加入、そして在留資格・試験・免許・労務を誰が担当するのかを、社会保険労務士の労務管理の視点で整理します。
この記事は、トラック・バス・タクシー事業者で外国人ドライバーの受入れを検討している経営者・労務担当の方に向けています。在留資格「特定技能」の申請や分野別試験、登録支援機関は行政書士の業務、運転免許は公安委員会の所管で、四葉(社会保険労務士)が担うのは受入れ後の改善基準告示・労働時間・社会保険の体制です。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で整理します。
特定技能「自動車運送業」はいつ、どの区分が対象になったの?
自動車運送業は、令和6年(2024年)3月29日の閣議決定で、特定技能1号の対象分野に追加されました(同時に鉄道・林業・木材産業も追加され、全16分野になりました)。制度の運用の基になる分野別運用方針はその後改定され、現行は令和8年(2026年)1月23日閣議決定の方針です(令和6年3月29日の方針は同日に廃止)。令和6年度からの5年間の受入れ見込数は、当初の令和6年3月29日の方針では分野全体で最大2万4,500人でしたが、現行の令和8年1月23日の方針で最大2万2,100人に再設定されています。
業務区分は次の3つで、いずれも「事業用自動車の運転、運転に付随する業務全般」です。
| 区分 | 業務内容 | 必要な運転免許 | 日本語の要件 |
|---|---|---|---|
| トラック | 事業用自動車(トラック)の運転と付随業務 | 第一種運転免許 | 国際交流基金日本語基礎テスト、または日本語能力試験N4以上 |
| タクシー | 事業用自動車(タクシー)の運転と付随業務 | 第二種運転免許 | 日本語能力試験N3以上 |
| バス | 事業用自動車(バス)の運転と付随業務 | 第二種運転免許 | 日本語能力試験N3以上 |
技能は、一般財団法人日本海事協会が実施する「自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック/タクシー/バス)」で確認します。あわせて、受入れ側(特定技能所属機関)は、国土交通省の自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になること、道路運送法上の自動車運送事業を経営していることが求められます。協議会への加入届出の確認には約1か月かかる見込みと案内されているため、採用の段取りは早めに組むのが安全です。
外国人ドライバーに必要な運転免許と日本語の要件は?
運転免許は、上の表のとおりトラックが第一種・タクシーとバスが第二種です。第二種運転免許は、原則として21歳以上で、普通免許等を通算3年以上保有していることが受験の条件です。令和4年(2022年)5月13日施行の受験資格特例教習を修了すれば、年齢19歳以上・経歴1年以上に緩和されますが、この場合は若年運転者期間の制約がかかります。
外国の運転免許を持っている人は、日本の免許への切替(いわゆる外免切替)を公安委員会で行うのが入口になります。運転免許の付与・切替・第二種免許の取得は公安委員会の所管であり、社会保険労務士・行政書士の業務ではありません。切替の知識確認・技能確認の運用は見直しが続いているため、具体的な手続と最新の要件は、受入れ地を管轄する都道府県警察(運転免許センター)で直接確認してください(本記事では細部の確認は留保します)。
日本語は、トラックが国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上、タクシーとバスはN3以上とされています。タクシー・バスは旅客を乗せ、接遇や緊急時の対応が必要なため、トラックより高い水準が求められている形です。
改善基準告示の下で労働時間はどう管理するの?
採用した外国人ドライバーも、運転者であることに変わりはありません。したがって労働時間は、労働基準法に加えて**改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準。令和4年12月23日改正・令和6年4月1日適用)で管理します。あわせて、自動車運転の業務には同じ令和6年4月1日から時間外労働の上限規制(特別条項でも年960時間以内。労働基準法附則第140条第1項)**が適用されています。「上限規制」と「改善基準告示」は別の物差しで、両方を同時に満たす必要があります。これがいわゆる「2024年問題」です。
改善基準告示の数値はトラック・バス・タクシーで別建てです。拘束時間・休息期間・連続運転時間の要点は、区分ごとに次の記事で詳しく扱っています。
| 区分 | 詳しい記事 |
|---|---|
| トラック | 運送業の2024年問題と改善基準告示 |
| タクシー | タクシー運転者の2024年改善基準告示と隔日勤務の労務 |
| バス | バス運転者の2024年改善基準告示 |
外国人であっても、労働条件は日本人と同等以上でなければなりません(特定技能の運用要領の基準)。労働条件の明示は、本人が理解できる方法で行うことが求められます。外国人の労働条件明示は外国人の労働条件明示(2024年の改正と母国語)、同等額以上の報酬の立証は外国人の同等賃金の立証と労働条件通知で整理しています。
社会保険・雇用保険の加入はどうなるの?
特定技能は直接雇用(労働者派遣ではない)で受け入れる分野です。外国人ドライバーは労働者として雇用されるため、社会保険・労働保険は国籍を問わず日本人と同じ基準で適用されます。主な扱いは次のとおりです。
| 保険 | 扱い | 根拠・目安 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 | 適用事業所では国籍を問わず被保険者(強制適用) | 常用的に使用される者。報酬に応じて保険料を労使折半 |
| 雇用保険 | 週の所定労働時間20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで被保険者 | 外国人も対象。資格取得時に在留資格等を届け出る |
| 労災保険 | すべての労働者が対象(手続は事業主) | 国籍・在留資格を問わない |
社会保険の加入は、在留資格の更新・管理の面でも重要です。保険料を払わずに帰国する人の年金は、要件を満たせば脱退一時金として一部が戻る仕組みがあります。帰国時の年金の扱いは外国人社員が帰国するときの年金(脱退一時金)もあわせてご覧ください。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
なお、特定技能1号には受入れ側による**生活・就労の支援(支援計画)**の実施義務があり、これを登録支援機関に委託することもできます。この支援体制の整備と在留資格の手続は、労務管理とは別の枠組みです(特定技能の自社支援体制と労務で扱っています)。
在留資格・試験・免許・労務は誰が担当するの?
外国人ドライバーの受入れは、労務だけで完結しません。業務ごとに担い手が分かれます。
| すること | 誰の業務か |
|---|---|
| 就業規則・賃金規程・36協定の作成、改善基準告示に沿った労働時間・拘束時間の管理体制の整備、社会保険・雇用保険の手続、割増賃金の計算 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 在留資格「特定技能」の申請取次、分野別試験や協議会加入に関する助言、登録支援機関としての支援 | 行政書士 |
| 運転免許(第二種免許の取得・外国免許からの切替) | 公安委員会(都道府県警察) |
| 一般貨物・一般旅客自動車運送事業の許可や運行管理など運輸行政の手続 | 地方運輸局(運輸支局) |
| 労使紛争・未払い賃金の請求・訴訟 | 弁護士 |
| 源泉徴収・年末調整など税務の判断 | 税理士 |
当事務所は労務管理の情報提供・手続に限ります。在留資格の申請や登録支援機関の業務については、四葉行政書士事務所へおつなぎすることもできますが、社会保険労務士業務と行政書士業務はそれぞれ独立した事業体が担い、別々にご契約いただく前提です。一括受任はしません。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、外国人ドライバーを受け入れる運送事業者の就業規則・賃金規程の改善基準告示への対応、1か月単位の変形労働時間制の設計、36協定(特別条項)の設計・届出、社会保険・雇用保険の資格取得手続、割増賃金の計算、拘束時間・運転時間の管理体制の整備をお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表をご覧ください。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
在留資格の申請や登録支援機関の支援が必要な場合は四葉行政書士事務所へ、運転免許は公安委員会へ、すでに紛争になっている場合は弁護士へ、それぞれおつなぎ・ご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 特定技能「自動車運送業」では、どんな運転免許が必要ですか?
A. 業務区分で異なります。トラックは第一種運転免許、タクシーとバスは第二種運転免許が必要です。第二種免許は原則21歳以上・経歴3年以上で、受験資格特例教習を修了すれば19歳以上・経歴1年以上に緩和されます。免許の取得・外国免許からの切替は公安委員会(都道府県警察)の所管で、社会保険労務士・行政書士の業務ではありません。
Q. 外国人ドライバーも日本人と同じように社会保険に入りますか?
A. 入ります。特定技能は直接雇用で、外国人も労働者として雇用されるため、健康保険・厚生年金保険は適用事業所で国籍を問わず被保険者になり、雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みで被保険者になります。労災保険はすべての労働者が対象です。報酬も日本人と同等以上でなければなりません。
Q. 日本語の要件は区分によって違うのですか?
A. 違います。トラックは国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上、タクシーとバスはN3以上とされています。タクシー・バスは旅客を乗せ接遇や緊急時の対応が必要なため、トラックより高い水準が求められています。
Q. 在留資格の申請から労務まで、まとめてお願いできますか?
A. 労働時間・社会保険・就業規則の整備は社会保険労務士、在留資格「特定技能」の申請や登録支援機関の支援は行政書士の業務です。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、四葉行政書士事務所へおつなぎすることはできます。運転免許は公安委員会の所管です。まとめて一括で受任する形はとっていません。
この記事の根拠
- 「自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(分野別運用方針。令和6年3月29日閣議決定、令和8年1月23日閣議決定により改定)。自動車運送業など4分野を特定技能1号の対象に追加した令和6年3月29日の閣議決定、および受入れ見込数(令和6年度からの5年間で、当初の令和6年3月29日の方針では分野全体で最大2万4,500人、現行の令和8年1月23日の方針で最大2万2,100人に再設定)は、分野別運用方針および国土交通省「自動車運送業における特定技能制度」のページにより確認(2026年10月参照。国土交通省・出入国在留管理庁の分野別案内ページには改定前の2万4,500人の記載が残る場合がある)
- 業務区分(トラック・タクシー・バス)、必要な運転免許(トラック=第一種、タクシー・バス=第二種)、日本語試験の要件(トラック=国際交流基金日本語基礎テストまたはN4以上、タクシー・バス=N3以上)、技能試験「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」(一般財団法人日本海事協会実施)は、出入国在留管理庁「特定技能『自動車運送業』」のページ(2025年7月15日現在)により確認(2026年10月参照)
- 道路交通法(昭和35年法律第105号)に基づく第二種運転免許の受験資格(原則21歳以上・経歴3年以上、令和4年5月13日施行の受験資格特例教習を修了した場合は19歳以上・経歴1年以上)は、警視庁・都道府県警察の運転免許の案内により確認(2026年10月参照)。外国免許からの切替の具体的な手続・要件は見直しが続いており、本記事では細部の確認を留保(未検証)
- 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示。平成元年労働省告示第7号、令和4年12月23日厚生労働省告示第367号により改正、令和6年4月1日適用)。労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)、第36条(時間外・休日労働の協定)、第37条(割増賃金)、第89条(就業規則の作成・届出)、附則第140条第1項(自動車の運転の業務への時間外労働の上限規制の適用=特別条項でも年960時間)
- 社会保険・雇用保険・労災保険の適用が国籍を問わないこと、特定技能外国人の報酬が日本人と同等額以上であることは、健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法および特定技能の運用要領の基準による。保険料率・具体的な加入要件は、書く直前の制度を日本年金機構・ハローワークの案内で確認のうえ適用(2026年10月参照)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。就業規則・賃金規程・36協定の作成、改善基準告示に沿った労働時間の管理体制の整備、社会保険・雇用保険の手続、割増賃金の計算は社会保険労務士の業務です。在留資格「特定技能」の申請や登録支援機関の業務は行政書士の業務、運転免許の取得・外国免許からの切替は公安委員会の所管、運送事業の許可や運行管理は地方運輸局の業務、未払い賃金の請求・紛争は弁護士の業務、源泉徴収・年末調整の税務判断は税理士の業務です。社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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