メインコンテンツにスキップ
業種別の労務管理

タクシー運転者の2024年改善基準告示と隔日勤務の労務|拘束時間と割増

壁の掛け時計と升目だけのシフト表を描いた水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

タクシー運転者の労働時間は、労働基準法に加えて改善基準告示(令和4年12月23日改正・令和6年4月1日適用)で管理します。隔日勤務(2暦日を1勤務とする働き方)の拘束時間は2暦日22時間以内(2回を平均して1回21時間以内)・1か月262時間以内(労使協定で年6か月まで270時間)、休息期間は継続24時間以上を基本とし22時間を下回りません。日勤勤務は1か月288時間・1日13時間(最大15時間)・休息継続11時間を基本です。歩合給(出来高払制)でも時間外・深夜の割増賃金は必要で、割増単価は歩合給総額を総労働時間数で割って計算します(労働基準法施行規則第19条第1項第6号)。累進歩合制度は通達で廃止が指導されています。2024年の変更点、隔日勤務の計算、歩合給の割増、車庫待ち・仮眠の扱い、就業規則・36協定の整え方、そして誰に何を頼むかを整理します。

結論(先に要点):タクシー運転者の労働時間は、労働基準法に加えて改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)で管理します。令和4年(2022年)12月23日改正・令和6年(2024年)4月1日適用の現行基準では、隔日勤務(2暦日を1勤務とする働き方)の拘束時間は2暦日22時間以内(2回を平均して1回21時間以内)・1か月262時間以内(労使協定で年6か月まで270時間)、休息期間は勤務終了後、継続24時間以上を基本とし継続22時間を下回らないと定められています。歩合給でも時間外・深夜の割増賃金は必要です。この記事では、2024年に何が変わったか、隔日勤務の計算、歩合給の割増、車庫待ちの扱い、就業規則・36協定の整え方を、社会保険労務士の労務管理の視点で整理します。

タクシーは、昼夜をまたぐ長い拘束と、売上に連動する歩合給という2つの特徴があり、ほかの業種の労務管理がそのままでは当てはまりません。このページは、タクシー事業者と配車・運行管理の労務担当の方に向けて、改善基準告示の2024年改正、隔日勤務の拘束時間・休息期間、歩合給でも必要な割増賃金、車庫待ち・仮眠の扱い、そして就業規則・36協定のどこを整えるかを整理します。

タクシー運転者の「改善基準告示」2024年版は、何が変わりましたか?

改善基準告示は、始業から終業までの「拘束時間」(労働時間+休憩・手待ち時間)と、勤務と勤務の間の「休息期間」に上限・下限を定める厚生労働大臣の告示です。令和4年(2022年)12月23日に改正され、令和6年(2024年)4月1日から適用されています。あわせて、自動車運転の業務にも同じ令和6年4月1日から時間外労働の上限規制(特別条項でも年960時間以内。労働基準法附則第140条)が適用されました。「上限規制」と「改善基準告示」は別の物差しで、両方を同時に満たす必要があります。

タクシー(ハイヤー・タクシー)運転者には、1日ごとに勤務する「日勤勤務」と、2暦日(おおむね2日分)を1勤務として隔日で働く「隔日勤務」の2つの働き方があり、拘束時間の基準が別に定められています。日勤勤務の主な変更点は次のとおりです。

項目改正前(〜2024年3月31日)現行(2024年4月1日〜)
1か月の拘束時間(日勤)299時間288時間
1日の拘束時間(日勤)13時間(最大16時間)13時間を原則・最大15時間(14時間超は1週間に3回以内が目安)
休息期間(日勤)継続8時間以上継続11時間以上を基本・継続9時間を下回らない

同じく2024年問題でトラック運送がどう変わったかは運送業の2024年問題と改善基準告示で扱っています。業態ごとに拘束時間の数値が違う点にご注意ください。

隔日勤務(2暦日)の拘束時間・休息期間は、どう計算しますか?

隔日勤務は、2暦日(2日分)を1回の勤務にまとめ、翌日を明け番として休む働き方です。拘束時間は「1日」ではなく「2暦日」と「1か月」で見ます。現行の基準は次のとおりです。

項目原則例外・上限
2暦日の拘束時間22時間以内かつ、2回の隔日勤務を平均して1回当たり21時間以内
1か月の拘束時間262時間以内地域的事情その他特別の事情があり労使協定があるとき、1年のうち6か月まで270時間
休息期間勤務終了後、継続24時間以上を基本継続22時間を下回らない

たとえば、ある2暦日の勤務が21時間30分だった場合、単独では22時間以内に収まっていますが、隣り合う2回の平均が21時間を超えてはいけないため、もう一方の勤務を20時間30分以下に抑える必要があります。1勤務ごとに「22時間以内」を満たすだけでは足りず、連続する2回の平均まで見る点が、計算を誤りやすいところです。

改善基準告示は労働基準法そのものではなく告示ですが、違反すると労働基準監督署の是正指導の対象になり、運輸行政の処分(事業者への行政処分)にもつながります。「協定さえ結べば青天井」ではない点が、時間外労働の上限規制との違いです。

歩合給(累進歩合は禁止)でも、残業代は必要ですか?

必要です。歩合給(出来高払制)であっても、法定労働時間を超えた時間外労働、休日労働、深夜労働には割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条)。タクシーは深夜帯の乗務が多く、深夜割増(22時から翌5時まで25%以上)が日常的に発生します。

歩合給の割増単価は、固定給とは計算方法が一部異なります。出来高払制その他の請負制については、その賃金算定期間に支払われた歩合給の総額を、その期間の総労働時間数で割った額を1時間当たりの金額とし、これに割増率を掛けて計算します(労働基準法施行規則第19条第1項第6号)。固定給と歩合給を併用しているときは、それぞれの部分を別々に計算して合算します。

区分時間外休日深夜
割増率25%以上(月60時間超は50%以上)35%以上25%以上

また、累進歩合制度(歩合給が売上高などに応じて累進的に(段階的に跳ね上がる形で)増える賃金制度)は、長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあるとして、厚生労働省が通達で廃止を指導しています(平成元年基発第93号)。同通達は、歩合給制をとる場合でも、固定給と歩合給を合わせて通常の賃金のおおむね6割以上を保障する保障給を定めるよう求めています。なお、歩合給にも最低賃金法が適用され、1時間当たりに換算した額が最低賃金を下回らないようにする必要があります(最低賃金法第4条)。

休憩・仮眠(車庫待ち等)の時間は、どう扱いますか?

改善基準告示の拘束時間には、労働時間だけでなく、休憩時間や客待ち・手待ちの時間も含まれます。使用者の指揮命令下にあるかどうかで、休憩(労働時間でない)か手待ち(労働時間)かが分かれ、実態で判断されます。

「車庫待ち等の自動車運転者」(顧客の需要に応じて車庫などで待機する就労形態)には、一定の要件のもとで拘束時間を延長できる特例があります。隔日勤務の車庫待ちでは、①夜間に4時間以上の仮眠時間を与え、②2暦日の拘束時間の上限(22時間)を超える回数が1か月7回以内であることの両方を満たす場合に限り、1か月の拘束時間は262時間(または労使協定による270時間)に10時間を加えた時間まで、2暦日の拘束時間は24時間まで延長できます。日勤の車庫待ちでは、労使協定により1か月の拘束時間を300時間まで延長できます。

事故・故障・災害など予期し得ない事象で遅延が生じた場合は、客観的な記録が認められるときに限り、1日または2暦日の拘束時間の規制の適用上、その対応に要した時間を除くことができます。ただし、その時間を含めると最大拘束時間を超える場合は、勤務終了後に(1日の勤務なら継続11時間以上、2暦日の勤務なら継続24時間以上の)休息期間を確保する必要があります。いずれも、仮眠や待機の実態をデジタコや日報で記録することが出発点になります。

就業規則と36協定は、どう整えればよいですか?

上限規制と改善基準告示の両方を満たすには、書面の作り込みが要ります。整えどころは次のとおりです。

ご自身のケースについて相談したい方へ

社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。

すること見直すポイント
36協定(特別条項)時間外労働を年960時間以内で設計し、特別条項の回数(年6回まで)・理由・手続を明記する
就業規則・賃金規程日勤/隔日勤務の拘束時間・休息期間、歩合給の計算方法、保障給、割増賃金の算定を明記し整合させる
変形労働時間制隔日勤務は1か月単位の変形労働時間制(労働基準法第32条の2)で設計するのが一般的。所定労働時間と休日の置き方を規程に落とす
拘束時間・労働時間の記録デジタコ・日報と勤怠を突き合わせ、2暦日22時間・1か月262時間・休息24時間のラインを日々管理する
過半数代表者の選出管理監督者でない者を適正な手続で選び、記録を残す(労働基準法施行規則第6条の2)

就業規則は常時10人以上の労働者を使う事業場に作成・届出の義務があります(労働基準法第89条)。何人から義務かは就業規則は何人から義務か、36協定と残業の上限の基本は36協定と残業の上限もあわせてご覧ください。

誰に、何を頼めばよいですか?

タクシー事業の労務対応は、労務だけで完結しません。業務ごとに担い手が分かれます。

すること誰の業務か
就業規則・賃金規程・36協定の作成、拘束時間・労働時間の管理体制の整備、歩合給・割増賃金の計算社会保険労務士(当事務所)
一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)の許可申請、事業計画変更などの許認可書類行政書士
運賃・運行・運行管理者など運輸行政の許可・認可の判断地方運輸局(運輸支局)
未払い割増賃金の請求、労使紛争、労働審判・訴訟弁護士
割増賃金・歩合給の源泉徴収や年末調整の税務判断税理士

当事務所は労務管理の情報提供・手続に限ります。タクシー事業の許可や事業計画変更については、四葉行政書士事務所へおつなぎすることもできますが、社会保険労務士業務と行政書士業務はそれぞれ独立した事業体が担い、別々にご契約いただく前提です。一括受任はしません。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、タクシー事業の就業規則・賃金規程の改善基準告示への対応、隔日勤務を前提とした1か月単位の変形労働時間制の設計、36協定(特別条項)の設計・届出、歩合給・保障給と割増賃金の計算、拘束時間・労働時間の管理体制の整備をお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表をご覧ください。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

すでに未払い割増賃金の請求や紛争になっている場合は、弁護士へ直接ご依頼いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 2暦日の拘束時間が22時間以内なら、それだけで大丈夫ですか?
A. 足りません。2暦日の拘束時間は「22時間以内」であることに加えて、「2回の隔日勤務を平均して1回当たり21時間以内」も満たす必要があります。1勤務ごとに22時間以内でも、連続する2回の平均が21時間を超えれば改善基準告示違反です。あわせて1か月の拘束時間(原則262時間、労使協定で年6か月まで270時間)と、休息期間(継続24時間以上を基本・22時間を下回らない)も満たす必要があります。

Q. 歩合給だけで給与を決めていれば、残業代は払わなくてよいですか?
A. いいえ。歩合給(出来高払制)でも、時間外・休日・深夜の割増賃金は必要です(労働基準法第37条)。歩合給の割増単価は、その賃金算定期間の歩合給総額をその期間の総労働時間数で割って求めます(労働基準法施行規則第19条第1項第6号)。また、売上に応じて段階的に跳ね上がる累進歩合制度は、厚生労働省が通達で廃止を指導しています。

Q. 車庫待ちや客待ちの時間は、拘束時間に入りますか?
A. 入ります。改善基準告示の拘束時間は、労働時間だけでなく休憩時間や手待ち時間も含む、始業から終業までの時間です。車庫待ち等の自動車運転者には、夜間に4時間以上の仮眠を与えるなどの要件を満たす場合に拘束時間を延長できる特例がありますが、要件と回数(隔日勤務は2暦日22時間超が1か月7回以内)が定められています。待機・仮眠の実態を記録で把握することが出発点です。

Q. タクシー事業の許可も一緒にお願いできますか?
A. 労務管理は社会保険労務士、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)の許可や事業計画変更の書類は行政書士の業務です。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で、四葉行政書士事務所へおつなぎすることはできます。まとめて一括で受任する形はとっていません。

この記事の根拠

  • 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示。平成元年労働省告示第7号、令和4年12月23日厚生労働省告示第367号により改正、令和6年4月1日適用)。ハイヤー・タクシー運転者の拘束時間・休息期間。日勤勤務(1か月288時間、1日13時間・最大15時間、休息継続11時間を基本・9時間を下回らない)、隔日勤務(2暦日22時間・2回平均21時間、1か月262時間・労使協定で年6か月まで270時間、休息継続24時間を基本・22時間を下回らない)、車庫待ち等の特例、予期し得ない事象の取扱い
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条、第34条(休憩)、第37条(割増賃金=時間外25%以上・月60時間超50%以上・休日35%以上・深夜25%以上)、第89条(就業規則の作成・届出)、附則第140条第1項(自動車の運転の業務への時間外労働の上限規制の適用=特別条項でも年960時間)
  • 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第19条第1項第6号(出来高払制その他の請負制の割増賃金の算定)、第6条の2(過半数代表者の要件)
  • 累進歩合制度の廃止と保障給の指導(平成元年基発第93号)。最低賃金法(昭和34年法律第137号)第4条(歩合給への最低賃金の適用)
  • 道路運送法(昭和26年法律第183号)第4条(一般乗用旅客自動車運送事業の許可)
  • 拘束時間・休息期間・車庫待ち等の特例・予期し得ない事象の数値は、厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」タクシー運転者のページ、および改正改善基準告示の新旧対照により確認(2026年10月参照)

この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。就業規則・賃金規程・36協定の作成、拘束時間・労働時間の管理体制の整備、歩合給・割増賃金の計算は社会保険労務士の業務です。一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー)の許可申請や事業計画変更の書類は行政書士の業務、未払い割増賃金の請求・紛争は弁護士の業務、源泉徴収・年末調整の税務判断は税理士の業務です。社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

「働き方」から、整理しませんか。

四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。

LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。

東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00