無人・24時間セルフ店舗の巡回スタッフの「待機・手待ち時間」は労働時間になりますか?

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
コインランドリーや無人販売所の巡回・清掃スタッフの「待機」や「手待ち時間」は、会社の指揮命令下に置かれていれば労働時間です。労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、就業規則や契約の定めではなく実態で客観的に決まる、というのが最高裁の立場です(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決)。店舗間の移動を業務として命じていれば移動時間も労働時間に入り、呼び出しに備える待機も原則として労働時間に当たります。深夜(22時〜翌5時)に見回りや呼び出し対応をさせれば2割5分以上の深夜割増が必要です(労働基準法第37条第4項)。複数店舗を掛け持ちさせるときは、事業場を異にしても労働時間を通算します(同第38条第1項)。手待ち時間や指揮命令下の移動を労働時間に数えないと、実際の時給が地域別最低賃金を下回ることがあります。巡回・待機の労働時間性、手待ちと休憩の区別、深夜割増、複数店舗の通算、最低賃金を社会保険労務士の視点で整理し、防犯設備は専門業者、店舗の用途・建築は不動産・建築士、紛争は弁護士へ分離受任で振ります。
結論(先に要点):コインランドリーや無人販売所の巡回・清掃スタッフの「待機」や「手待ち時間」は、会社の指揮命令下に置かれていれば労働時間です。労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、就業規則や契約の定めではなく実態で客観的に決まる、というのが最高裁の立場です(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決)。店舗間の移動を業務として命じていれば移動時間も労働時間に入り、呼び出しに備える待機も原則として労働時間に当たります。複数店舗を掛け持ちさせるときは、事業場を異にしても労働時間を通算します(労働基準法第38条第1項)。この記事では、巡回・待機の労働時間性、手待ちと休憩の区別、深夜の割増、複数店舗の通算、最低賃金のつまずきを社会保険労務士の労務管理の視点で整理し、防犯設備は専門業者へ、店舗の用途・建築は不動産・建築士へ、紛争の代理は弁護士へ分離受任で振り分けます。
コインランドリー・無人販売所・セルフ型店舗は、スタッフが常駐しない代わりに、清掃と補充のために複数店舗を巡回し、深夜に見回りや呼び出し対応をする運用が多くなります。このページは、無人・セルフ店舗を複数運営し巡回・清掃スタッフを使う経営者の方に向けて、待機時間の労働時間性・深夜業・最低賃金・複数店舗の通算を、社会保険労務士の労務管理の視点で示します。
巡回や清掃の「移動・待機」は、労働時間に入りますか?
労働時間かどうかは、その時間に労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかで客観的に決まります。最高裁は、労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、就業規則や労働契約の定めによって決まるものではないとしています(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決)。
これを巡回・清掃にあてはめると、会社が指定する順路で店舗を回るよう命じている場合の店舗間の移動時間は、業務の遂行として指揮命令下にあり労働時間に入ります(自宅と最初の店舗との間の通常の通勤は含みません)。店舗に着いてから次の作業や連絡を待つ待機も、持ち場を離れられず呼び出しに備えている限り労働時間です。巡回スタッフを業務委託にしている場合でも、実態が雇用なら労働者として扱われる点は外注と雇用の境目のとおりです。
| 時間 | 労働時間か |
|---|---|
| 指定順路での店舗間の移動 | 労働時間(業務の移動) |
| 自宅と最初の店舗の通勤 | 労働時間でない |
| 次の作業・連絡を待つ待機 | 原則労働時間(手待ち時間) |
| 完全に解放された休憩 | 労働時間でない |
手待ち時間と休憩時間は、何で区別されますか?
休憩時間は、労働から離れることが保障された時間です。使用者は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩を、労働時間の途中に与えなければならず、休憩は原則として自由に利用させなければなりません(労働基準法第34条)。
これに対して、電話や来客、トラブルの呼び出しに備えて持ち場で待つ時間は、たとえ実際の作業が発生していなくても労働から解放されていない手待ち時間であり、労働時間に当たります。「休憩」と名付けていても、呼び出しがあれば対応する義務を課していれば、それは休憩ではありません。無人店舗の深夜帯で待機・仮眠を組む設計の論点は、警備業の仮眠・断続的労働でも扱っています。手待ちか休憩かの切り分けは、拘束の実態に即して資格者が行います。
深夜の見回り・呼び出し対応に、割増賃金はどうかかりますか?
深夜(22時〜翌5時)に労働させた場合は、2割5分以上の深夜割増賃金が必要です(労働基準法第37条第4項)。見回りや呼び出し対応が労働時間に当たる以上、その時間が深夜帯なら深夜割増の対象です。待機中に仮眠を認めていても、呼び出しに備える義務があって労働から解放されていなければ、その仮眠時間も労働時間として深夜割増の対象になり得ます。
さらに、1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超える部分には2割5分以上(1か月60時間を超える部分は5割以上。中小企業にも2023年〈令和5年〉4月1日から適用)、法定休日の労働には3割5分以上の割増が重なります(同第37条第1項)。深夜の呼び出しが多い運用では、割増が重複して発生する前提で賃金規程を組みます。
| 区分 | 割増率 |
|---|---|
| 深夜労働(22時〜翌5時) | 2割5分以上 |
| 時間外労働 | 2割5分以上 |
| 月60時間超の時間外 | 5割以上 |
| 法定休日労働 | 3割5分以上 |
複数店舗を掛け持ちさせるとき、労働時間はどう通算しますか?
労働時間は、事業場を異にする場合においても通算します(労働基準法第38条第1項)。同じ会社が運営する複数の無人店舗をひとりのスタッフが1日のうちに回る場合、各店舗での作業時間と指揮命令下の移動・待機を合算して、その日の労働時間とします。合算した結果が1日8時間を超えれば、超えた部分に時間外割増が発生します。
したがって、「1店舗ごとに短時間だから残業にならない」という整理は成り立ちません。巡回表や勤怠記録で、どの時間にどの店舗で何をしていたかを客観的に把握し、通算で管理します。別の会社の仕事を掛け持ちする副業の場合の通算の考え方には行政解釈があり、自社分の把握と合わせて設計します。無人・セルフ店舗の労務全般は無人・24時間セルフ店舗の労務でも整理しています。
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最低賃金・労働時間で、無人店舗がつまずきやすい点は?
最低賃金法に基づく地域別最低賃金は、その地域で働くすべての労働者に適用されます。つまずきやすいのは、手待ち時間や指揮命令下の移動を労働時間に数えず、実際に支払う時給を労働時間で割ると最低賃金を下回るケースです。待機や移動を労働時間に含めて計算し、実際に支払われる賃金が地域別最低賃金を下回らないかを確認します(深夜割増は最低賃金とは別に上乗せします)。地域別最低賃金の額は毎年改定されるため、適用額は当該年度の公表値を確認します(2026年10月20日時点で各都道府県労働局・厚生労働省が公表)。
もうひとつは、労働時間の記録が巡回の実態と合っていないことです。無人であっても労働時間の把握義務はなくならず、客観的な記録で管理する必要があります。どこまでを労働時間とするかの最終判断は、実態に即して資格者が行います。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、無人・セルフ店舗の巡回・清掃スタッフについて待機・手待ち時間と休憩の切り分け、移動時間の労働時間性の整理、深夜割増を含む賃金規程の設計、複数店舗の労働時間の通算管理、最低賃金の確認、就業規則・36協定の整備をお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。
防犯・無人営業の設備面は専門業者、店舗の用途地域や建築面は不動産会社・建築士、待機時間や未払い賃金をめぐる個別の紛争の代理は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 無人店舗の巡回で、店舗から店舗への移動時間は労働時間ですか?
A. 会社が指定する順路で回るよう命じている移動は、業務の遂行として指揮命令下にあり労働時間に入ります(三菱重工業長崎造船所事件・最高裁平成12年3月9日判決の考え方)。自宅と最初の店舗との間の通常の通勤は含みません。どこからが指揮命令下かは、拘束の実態に即して確認します。
Q. 「休憩」として与えた深夜の待機時間は、賃金を払わなくてよいですか?
A. 呼び出しやトラブルに備えて持ち場を離れられない時間は、名目が休憩でも労働から解放されておらず手待ち時間として労働時間です。賃金の支払対象になり、深夜(22時〜翌5時)なら2割5分以上の深夜割増も必要です(労働基準法第37条第4項)。自由に利用できる時間でなければ休憩(同第34条)とはいえません。
Q. 1日のうちに複数店舗を回らせると、残業代はどう計算しますか?
A. 労働時間は事業場を異にしても通算します(労働基準法第38条第1項)。同じ会社の複数店舗での作業と指揮命令下の移動・待機を合算し、1日8時間や1週40時間を超えた部分に時間外割増がかかります。店舗ごとに短いから残業にならない、という整理は成り立ちません。
Q. 待機時間が多いと、最低賃金を下回ることがありますか?
A. あります。手待ち時間や指揮命令下の移動を労働時間に数えずに時給を設定すると、労働時間で割った実質の時間額が地域別最低賃金を下回ることがあります。待機・移動を労働時間に含めて計算し、最低賃金を下回らないか確認します。地域別最低賃金の額は毎年改定されるため、当該年度の公表値で確認します。
この記事の根拠
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条(労働時間の原則=1日8時間・1週40時間)、第34条(休憩=6時間超で45分・8時間超で1時間、原則自由利用)、第37条第1項・第4項(時間外・休日・深夜の割増賃金。月60時間超は5割以上)、第38条第1項(事業場を異にする場合の労働時間の通算)(e-Gov法令検索で2026年10月20日に条文確認)
- 最高裁判所平成12年3月9日第一小法廷判決(三菱重工業長崎造船所事件)。労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、就業規則や労働契約の定めではなく客観的に定まるとした。手待ち時間が労働時間に当たるかもこの基準で判断される(2026年10月20日参照)
- 中小企業に対する月60時間超の時間外労働の割増率5割以上は、2023年(令和5年)4月1日から適用(猶予措置の廃止)(2026年10月20日参照)
- 最低賃金法(昭和34年法律第137号)に基づく地域別最低賃金。適用額は毎年改定され、当該年度に各都道府県労働局・厚生労働省が公表する額を確認する(2026年10月20日参照)
- 労働時間を事業場を異にして通算する際、異なる事業主の下での労働を含むかについては行政解釈があり、自社分の把握と合わせて設計する(2026年10月20日参照)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。待機・手待ち時間と休憩の切り分け、移動時間の労働時間性の整理、深夜割増を含む賃金規程の設計、複数店舗の労働時間の通算管理、最低賃金の確認、就業規則・36協定の整備は社会保険労務士の業務です。防犯・無人営業の設備面は専門業者、店舗の用途・建築面は不動産会社・建築士、待機時間や未払い賃金をめぐる個別の紛争の代理は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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