警備員の仮眠時間は労働時間か?断続的勤務の労務と割増賃金はどう設計するのか

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
警備員の仮眠時間は、仮眠室での在室や警報・電話への対応が義務づけられ労働からの解放が保障されていなければ、眠っていても労働時間になります(大星ビル管理事件・最高裁第一小法廷平成14年2月28日判決の一般的な整理)。交通誘導の手待ち時間も指揮命令下にあれば労働時間です。監視・断続的労働として労働時間・休憩・休日の規制を外すには労働基準監督署長の許可(労働基準法第41条第3号)が要り、許可を受けても深夜割増(同法第37条第4項)は免除されません。警備業の認定・更新は行政書士(公安委員会手続)、物件は宅地建物取引業者の領域で、独立した事業体として別々にご契約いただきます。
結論(先に要点):警備員の仮眠時間は、仮眠室での在室や警報・電話への対応が義務づけられ、労働からの解放が保障されていなければ、眠っていても労働時間になります(大星ビル管理事件・最高裁第一小法廷平成14年2月28日判決の一般的な整理)。交通誘導の手待ち時間も、使用者の指揮命令下にあれば労働時間です。監視・断続的労働として労働時間・休憩・休日の規制を外すには、労働基準監督署長の許可(労働基準法第41条第3号)が要り、許可を受けても深夜割増(同法第37条第4項)は免除されません。警備業の認定・更新は行政書士(公安委員会手続)、物件は宅地建物取引業者の領域で、独立した事業体として別々にご契約いただきます。
「24時間勤務の仮眠は休憩だと思っていたが、残業代を請求された」「交通誘導で現場待ちをしている間は賃金が要るのか」「守衛の断続的労働で労基署の許可を取れば、残業代を払わなくてよいと聞いた」——施設警備・交通誘導を行う警備会社の経営者・労務担当からよく受ける相談です。このページは、仮眠・手待ちの労働時間性と、断続的労働の許可、割増賃金という社会保険労務士側の労務論点に絞って整理します。警備業の認定・更新そのものは行政書士と公安委員会の領分で、この記事は労務に絞ります。
仮眠時間は、働いていなくても労働時間になるのですか?
仮眠中に実際の作業をしていなくても、仮眠室での在室が求められ、警報が鳴れば対応する、電話を受ける、といった義務が課されていて、労働から離れることが保障されていなければ、その仮眠時間は全体として労働時間に当たります。これは、ビル管理会社の泊まり勤務中の仮眠時間(仮眠室での在室・電話対応・警報対応が義務づけられていた)を労働基準法第32条の労働時間と認めた大星ビル管理事件(最高裁第一小法廷平成14年2月28日判決)で示された考え方です。
| 仮眠の置かれ方 | 労働時間性の考え方 |
|---|---|
| 仮眠室での在室が義務・警報や電話に対応する義務がある | 労働からの解放が保障されていない=全体として労働時間 |
| 事業場外に自由に外出でき、呼び出しもない完全な休憩 | 労働から離れることが保障されている=休憩時間 |
| 名目は「仮眠」でも、実際は巡回や監視を続けている | 実作業そのもの=労働時間 |
労務で押さえるのは、「仮眠」「休憩」という名前ではなく、その時間に労働から離れることが保障されているかという実態で決まるという点です。仮眠を労働時間として扱えば、法定労働時間(1日8時間・週40時間、同法第32条)を超える部分には割増賃金が必要になります。夜勤と宿直の違いはグループホームの夜勤と宿直はどう違うかに整理しています。
交通誘導の手待ち時間は、労働時間に入りますか?
交通誘導や施設警備で、作業の指示や来客・通行を待っている「手待ち時間」は、休憩時間とは違います。手待ち時間は、使用者の指揮命令下から離れることが保障されておらず、必要があればすぐ対応する態勢に置かれている時間だからです。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」でも、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、手待ち時間はこれに含まれると整理されています。
| 時間の種類 | 労働時間か | 考え方 |
|---|---|---|
| 休憩時間 | ならない | 労働から離れることが権利として保障された時間(労働基準法第34条) |
| 手待ち時間 | なる | 作業や指示を待つなど、使用者の指揮命令下から離れられない時間 |
現場への移動や現場での待機を「休憩」と扱っていると、未払賃金の問題になりやすいところです。オンコール・待機の手当と労働時間の考え方は訪問看護のオンコール手当は労働時間かにも関連する整理があります。
断続的労働として労働時間規制を外すには、何の許可が要りますか?
守衛・門番のように、実作業が少なく手待ち時間が多い監視・断続的労働については、使用者が労働基準監督署長の許可を受ければ、労働時間・休憩・休日に関する規定(労働基準法第4章)の適用が除外されます(同法第41条第3号)。許可は、様式第14号による申請書を所轄労働基準監督署長に提出して受けます(労働基準法施行規則第34条)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 労働基準法第41条第3号(監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの) |
| 許可を受けると外れる規制 | 労働時間(第32条)・休憩(第34条)・休日(第35条)・時間外や休日の割増賃金(第37条のうち時間外・休日分) |
| 許可権者・手続 | 所轄労働基準監督署長。様式第14号の申請書(労働基準法施行規則第34条) |
| 許可の対象になりにくい例 | 実作業が多い・頻繁に対応が必要など、手待ち時間が少ない勤務 |
交通誘導のように実作業や判断が続く警備は、監視・断続的労働の許可の対象になりにくく、許可を受けられる業務かどうかは勤務の実態で判断されます。どの勤務が許可の対象になるかの具体的な当てはめは労働基準監督署の審査によるため、ここでは個別の結論を出しません(未検証)。宿直・日直の許可基準は医療・介護の宿日直許可の基準に別途整理しています。
許可を受けても、深夜の割増賃金は要りますか?
要ります。労働基準法第41条は深夜業の規定の適用までは排除していないため、監視・断続的労働の許可を受けていても、午後10時から午前5時までの深夜の時間帯に働かせた分には深夜割増賃金を支払う必要があります(行政解釈=昭和23年10月14日基発第1506号)。24時間交替勤務を前提に賃金が定められている場合でも、この深夜割増の支払義務は免除されません。
| 勤務 | 時間外割増 | 休日割増 | 深夜割増 |
|---|---|---|---|
| 通常の警備員 | 必要(第37条第1項) | 必要(第37条第1項) | 必要(第37条第4項) |
| 断続的労働の許可を受けた警備員 | 外れる(第41条第3号) | 外れる(第41条第3号) | 必要(第41条は深夜業を除外しない) |
許可を取れば人件費がすべて下がるという理解は誤りで、深夜割増は残ります。管理監督者でも深夜割増が必要なのと同じ考え方で、名ばかりの扱いと割増賃金の関係は名ばかり管理職と深夜割増に整理しています。
深夜・長時間の勤務で、割増賃金はどう計算しますか?
許可を受けていない通常の警備勤務では、法定労働時間を超える時間外、法定休日の労働、深夜の時間帯の労働について、それぞれ割増賃金を計算します。重なるときは率を足します(例:深夜の時間外は2割5分+2割5分=5割以上)。
| 区分 | 根拠 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 労働基準法第37条第1項 | 2割5分以上 |
| 1か月60時間を超える時間外労働 | 同項(2023年〈令和5年〉4月1日から中小企業にも適用) | 5割以上 |
| 法定休日労働 | 第37条第1項 | 3割5分以上 |
| 深夜労働(午後10時〜午前5時) | 第37条第4項 | 2割5分以上 |
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
長時間勤務が続く警備では、時間外労働の上限規制(労働基準法第36条)と36協定の締結・届出が前提になります。36協定で認められる残業の範囲は36協定は残業をどこまで認められるかに、勤務の偏りを平準化する変形労働時間制の選び方は変形労働時間制とフレックスの選び方に、夜勤を含む施設の勤務設計は有料老人ホームの人員配置と夜勤の労務にまとめています。就業規則の整備義務は就業規則は何人から義務かをご覧ください。
警備業の認定・更新は誰に相談すればよいですか?
警備業そのものを始める・続けるための認定や更新は、公安委員会への手続で、行政書士の領域です。労務の設計とは担い手が分かれます。
| 手続 | 担当 |
|---|---|
| 警備業の認定・更新の申請(公安委員会手続)・欠格事由や研修の整理 | 行政書士(四葉行政書士事務所。当事務所とは独立した事業体) |
| 仮眠・手待ちの労働時間性・断続的労働の許可・割増賃金・就業規則・労働時間管理 | 社会保険労務士(四葉社会保険労務士事務所) |
| 事業所・待機場所となる物件の確認 | 宅地建物取引業者 |
| 税務 | 税理士 |
四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として労務を受任し、行政書士(四葉行政書士事務所)や宅地建物取引業者など別の専門家が必要な場合は、お客様に直接ご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
当事務所がお引き受けするのは、警備会社が仮眠・手待ちの実態に合った賃金と勤務を組み立て、割増賃金の未払いを生まないための労務の設計です。
- 仮眠・手待ち時間の実態確認と、労働時間として扱うべき範囲の整理
- 監視・断続的労働の許可(労働基準法第41条第3号)を取るべき勤務かどうかの検討と、許可を受けても残る深夜割増の反映
- 時間外・休日・深夜の割増賃金の計算方法と固定残業代の設計、36協定の締結・届出
- 隊員の勤務の偏りに合わせた変形労働時間制の設計
- 就業規則・賃金規程・労働条件明示・労働時間管理の整備
警備業の認定・更新は行政書士、事業所の物件は宅地建物取引業者、税務は税理士の領域です。四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として業務を受任し、別の専門家が必要な場合は、お客様に直接ご契約いただく形をご案内します。紹介料はありません。
ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容とご相談の流れもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 仮眠時間は必ず労働時間になりますか?
A. 必ずではありません。仮眠室での在室が義務づけられ、警報や電話に対応する義務があるなど、労働から離れることが保障されていない場合に、全体として労働時間になります(大星ビル管理事件・最高裁第一小法廷平成14年2月28日判決の一般的な整理)。自由に外出でき呼び出しもない完全な休憩であれば、休憩時間として扱えます。実態がどちらに当たるかは勤務の具体的な取り決めで分かれます。
Q. 交通誘導で現場を待っている時間は休憩ですか?
A. 使用者の指揮命令下から離れることが保障されず、作業や指示を待っている手待ち時間は、休憩ではなく労働時間です。厚生労働省の労働時間適正把握ガイドラインも、手待ち時間を労働時間に含めて整理しています。休憩は、労働から離れることが権利として保障された時間(労働基準法第34条)を指します。
Q. 断続的労働の許可を取れば残業代は一切要らなくなりますか?
A. いいえ。労働基準監督署長の許可(労働基準法第41条第3号)を受けると、労働時間・休憩・休日と、時間外・休日の割増賃金の規制は外れますが、深夜(午後10時〜午前5時)の割増賃金は外れません(行政解釈=昭和23年10月14日基発第1506号)。また、実作業が多く手待ちが少ない勤務は、そもそも許可の対象になりにくいです。
Q. 警備業の認定は社会保険労務士に頼めますか?
A. 警備業の認定・更新は公安委員会への手続で、行政書士の領域です。社会保険労務士がお引き受けするのは、仮眠・手待ちの労働時間性、断続的労働の許可、割増賃金、就業規則・労働時間管理といった労務です。認定は行政書士(四葉行政書士事務所。当事務所とは独立した事業体)に、お客様から直接ご契約いただく形をご案内します。
この記事の根拠
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条(労働時間)・第34条(休憩)・第35条(休日)・第36条(時間外及び休日の労働)・第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金。第1項=時間外2割5分以上・休日3割5分以上、1か月60時間超は5割以上で2023年〈令和5年〉4月1日から中小企業にも適用、第4項=深夜2割5分以上)・第41条第3号(監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたものは労働時間・休憩・休日の規定を適用除外)
- 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第34条 ── 法第41条第3号の許可は様式第14号による申請書を所轄労働基準監督署長に提出して行う
- 大星ビル管理事件(最高裁判所第一小法廷平成14年2月28日判決)── 仮眠室での在室・電話対応・警報対応が義務づけられ、労働からの解放が保障されていない仮眠時間は、実作業に従事していない時間も含め全体として労働基準法第32条の労働時間に当たる(一般的な整理)
- 行政解釈(昭和23年10月14日基発第1506号)── 労働基準法第41条は深夜業の規定の適用を排除していないため、監視・断続的労働の許可を受けた者であっても深夜業の割増賃金を支払わなければならない(一般的な整理)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」── 労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、手待ち時間はこれに含まれる(2026年10月1日参照)
- 監視・断続的労働の許可の当てはめ(どの警備勤務が許可の対象になるか)、仮眠・手待ちが具体的な事案で労働時間に当たるかの最終判断は、労働基準監督署の審査と裁判所の判断によって分かれます。本記事では個別の結論を出していません(未検証)
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、仮眠・手待ち時間の労働時間性の整理、監視・断続的労働の許可の検討と許可後も残る深夜割増の反映、時間外・休日・深夜の割増賃金と固定残業代の設計、36協定の締結・届出、変形労働時間制、就業規則・賃金規程の整備についてご相談いただけます。警備業の認定・更新は行政書士(四葉行政書士事務所)、事業所の物件は宅地建物取引業者、税務は税理士が行います。四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として業務を受任し、別の専門家が必要な場合は、お客様に直接ご契約いただく形をご案内します。紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「働き方」から、整理しませんか。
四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。
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