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労務のしくみ

選択的週休3日制を入れるには、就業規則と賃金・社会保険をどう整えるのか

付箋のはさまった就業規則の冊子を開いた机上の水彩イラスト
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

選択的週休3日制は、希望する社員が週休3日を選べるようにする制度で、休日を1日増やす分だけ就業規則・賃金・社会保険を同時に組み替えます。総労働時間を変えずに休日を増やす型では1日の所定労働時間が8時間を超えるため、変形労働時間制(労働基準法第32条の2・第32条の4)で設計します。休日・労働時間・賃金は就業規則の絶対的必要記載事項なので就業規則の変更(同法第89条)が要り、所定労働日数や賃金が減ると社会保険の標準報酬月額の随時改定(健康保険法第43条・厚生年金保険法第23条)に影響することがあります。導入に絡む助成金や税は扱わず、就業規則・労使協定の整備を社会保険労務士が独立した事業体として受任します。

結論(先に要点):選択的週休3日制は、希望する社員が週休3日を選べるようにする制度で、休日を1日増やす分だけ、就業規則・賃金・社会保険を同時に組み替える必要があります。総労働時間を変えずに休日を増やす型では、1日の所定労働時間が8時間を超えるため、変形労働時間制(労働基準法第32条の2・第32条の4)で設計します。休日・労働時間・賃金は就業規則の絶対的必要記載事項なので、就業規則の変更(同法第89条)が要ります。所定労働日数や賃金が減ると、社会保険の標準報酬月額の随時改定(健康保険法第43条・厚生年金保険法第23条)に影響することがあります。導入に絡む助成金や税は扱わず、就業規則・労使協定の整備を社会保険労務士が独立した事業体として受任します。

「週休3日にしたいが、給料や残業代はどうなるのか」「希望者だけ週休3日にしたら、不利益変更で揉めないか」「所定労働日数が減ると社会保険はどう変わるのか」——週休3日制の導入を検討する中小企業の経営者・人事労務担当からよく受ける相談です。このページは、週休3日という所定休日の増加を、就業規則・賃金・社会保険でどう設計するかに絞って整理します。

選択的週休3日制とは、休みを増やすだけの制度なのですか?

選択的週休3日制は、すべての社員を一律に週休3日にするのではなく、希望する社員が週休3日を選べるようにする制度です。休日を1日増やすだけに見えて、増えた休日の分を労働時間と賃金のどちらで調整するかによって、設計がまったく変わります。

型所定労働時間賃金主な論点
総労働時間維持型1日の所定を延ばして総時間を維持(例:1日10時間×週4日)維持1日8時間超=変形労働時間制が前提
給与減額型所定労働日数・総時間を減らす労働時間に応じて減額不利益変更・社会保険の等級
給与維持型総時間を減らす維持原資の確保・評価制度

どの型を選ぶかで、就業規則の直し方も、割増賃金や社会保険への効き方も変わります。まず「休日を増やした分を、労働時間で吸収するのか、賃金を下げるのか、賃金を維持するのか」を決めるのが出発点です。

総労働時間を変えないなら、1日の所定労働時間はどうなりますか?

総労働時間を変えずに休日を1日増やすと、同じ総時間を少ない日数に割り振るため、1日の所定労働時間が長くなります。たとえば週40時間を週4日に割り振ると1日10時間になり、法定労働時間の1日8時間(労働基準法第32条)を超えます。この超過をそのまま時間外労働にしないために、変形労働時間制で「あらかじめ1日10時間と定める」設計をします。

制度根拠定め方向く場面
1か月単位の変形労働時間制労働基準法第32条の2就業規則又は労使協定で定める月の中で勤務日と休日の配分を変えたいとき
1年単位の変形労働時間制労働基準法第32条の4労使協定を締結し労働基準監督署へ届出繁閑に合わせて1年を通して配分したいとき

変形労働時間制を使わずに1日10時間勤務とすると、8時間を超える2時間は時間外労働になり、割増賃金(労働基準法第37条)が発生します。制度の選び方は変形労働時間制とフレックスの選び方に、残業の上限は36協定は残業をどこまで認められるかにまとめています。どの単位の変形制が自社に合うかは、週休3日を選ぶ社員の割合と業務の繁閑で変わります。

就業規則と労使協定は、どこをどう変えますか?

休日・労働時間・賃金は、いずれも就業規則の絶対的必要記載事項です(労働基準法第89条第1号・第2号)。選択的週休3日制を入れるときは、就業規則にこの制度の対象者・所定休日・所定労働時間・賃金の取扱いを定めます。常時10人以上の労働者がいる事業場では、就業規則を作成・変更して労働基準監督署へ届け出る義務があり(同条)、作成・変更の際は過半数代表の意見を聴きます(同法第90条)。

変える書類根拠内容
就業規則労働基準法第89条週休3日の対象者・所定休日・1日の所定労働時間・賃金の取扱いを規定。10人以上は労基署へ届出
労使協定(変形労働時間制)第32条の2/第32条の41か月単位は就業規則でも可。1年単位は労使協定+届出が必要
意見書第90条就業規則の変更に過半数代表の意見を聴く

厚生労働省の「モデル就業規則」にも休日・労働時間・変形労働時間制の規定例があり、設計の出発点になります。就業規則がそもそも何人から義務かは就業規則は何人から義務かに、休みを柔軟にする別の手段である時間単位年休は時間単位年休の導入と労使協定に整理しています。

所定労働日数が減ると、割増や社会保険の等級に影響しますか?

影響することがあります。賃金が時給・日給で決まっている場合や、月給でも所定労働日数の減少に合わせて賃金を下げる場合、固定的賃金が変動します。固定的賃金の変動があった月から継続した3か月の報酬の平均と、従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じると、社会保険の標準報酬月額が随時改定されます(健康保険法第43条・厚生年金保険法第23条)。標準報酬が下がると、将来の年金額や傷病手当金などの給付も下がります。

項目影響
随時改定(月額変更届)固定的賃金の変動+3か月平均で2等級以上の差=4か月目から標準報酬月額を改定
被保険者資格所定労働時間・日数が通常の労働者の4分の3未満になると、資格喪失の可能性(短時間労働者の適用拡大の要件に該当すれば加入は継続)
割増賃金1日の所定を延ばす型では、変形労働時間制を正しく設計しないと時間外割増が発生

標準報酬月額の随時改定の考え方は標準報酬月額の随時改定はどんなときに、4分の3基準と短時間労働者の扱いは短時間労働者の社会保険と4分の3基準に、適用拡大の流れは社会保険の適用拡大はどこまで進むかにまとめています。週休3日の日を副業に充てる社員が出る場合の労働時間通算の考え方は副業・兼業の労務管理に整理しています。実際にどの社員が何等級下がるかは、賃金の決め方と3か月の報酬実績で変わるため、ここでは個別の結論を出しません(未検証)。

ご自身のケースについて相談したい方へ

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希望者だけ週休3日にする場合、不利益変更になりませんか?

週休3日で賃金が下がる型は、賃金という労働条件を下げることになるため、不利益変更の問題になりえます。ただし「希望者が自分で選ぶ」選択的な制度として、本人の同意に基づいて適用するなら、不利益変更の争いは生じにくくなります。労働契約法は、労働者の合意なく就業規則で労働条件を不利益に変更することはできないとし(第9条)、就業規則の変更による労働条件の変更には変更の合理性を求めています(第10条)。

場面考え方
希望者が自分で週休3日(賃金減)を選ぶ本人の同意に基づく=不利益変更の争いは生じにくい
制度自体を就業規則に追加する変更の内容が合理的であることが必要(労働契約法第10条)
一律に全員を週休3日(賃金減)にする労働者の合意なく下げられない(同法第9条)。合理性の検討が必要

選択的に設計すること自体が、不利益変更のリスクを下げる要になります。もっとも、制度の対象者の線引きや、同意の取り方が適切かといった最終的な法的判断は個別の事情で分かれるため、ここでは個別の結論を出しません(未検証)。無期転換後の社員を含めた労働条件の整え方は無期転換ルールの実務もあわせてご覧ください。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

当事務所がお引き受けするのは、選択的週休3日制を就業規則・賃金・社会保険の面から安全に設計することです。

  • 総労働時間維持型・給与減額型・給与維持型のどれで設計するかの整理
  • 1日の所定が8時間を超える型での変形労働時間制(1か月単位・1年単位)の設計と、就業規則・労使協定・届出の整備
  • 就業規則の変更(対象者・所定休日・所定労働時間・賃金の取扱い)と過半数代表の意見聴取の進め方
  • 所定労働日数・賃金の変動に伴う社会保険の随時改定・被保険者資格の確認
  • 希望者が選ぶ形での同意の取り方と、不利益変更のリスクを下げる設計

導入に絡む助成金や税の取扱いはこの記事では扱いません。税務は税理士の領域です。四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として就業規則・労使協定の整備を受任します。

ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容とご相談の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 週休3日にすると残業代はどうなりますか?
A. 総労働時間を変えずに1日の所定労働時間を延ばす型(例:1日10時間×週4日)では、1日8時間を超える部分がそのままでは時間外労働になり、割増賃金(労働基準法第37条)が発生します。これを避けるには、1か月単位(同法第32条の2)又は1年単位(同法第32条の4)の変形労働時間制で、あらかじめ1日の所定労働時間を定める必要があります。変形制を使わない設計では残業代が増えることがあります。

Q. 就業規則はどこを変えればよいですか?
A. 休日・労働時間・賃金は就業規則の絶対的必要記載事項(労働基準法第89条)なので、週休3日の対象者・所定休日・1日の所定労働時間・賃金の取扱いを就業規則に定めます。常時10人以上の事業場は変更して労働基準監督署へ届け出る義務があり、変更の際は過半数代表の意見を聴きます(同法第90条)。1年単位の変形労働時間制を使うなら、労使協定の締結と届出も必要です。

Q. 週休3日で給料が下がると社会保険はどうなりますか?
A. 賃金が下がって固定的賃金が変動し、その月から3か月の報酬の平均が従前の標準報酬月額と2等級以上の差になると、標準報酬月額が随時改定されます(健康保険法第43条・厚生年金保険法第23条)。標準報酬が下がると将来の年金や傷病手当金も下がります。所定労働時間・日数が通常の労働者の4分の3未満になると、被保険者資格に影響することもあります。

Q. 希望者だけ週休3日にすれば不利益変更になりませんか?
A. 希望する社員が自分で選び、本人の同意に基づいて適用する選択的な制度であれば、不利益変更の争いは生じにくくなります。労働契約法は、労働者の合意なく就業規則で不利益に労働条件を変更できないとし(第9条)、就業規則の変更には変更の合理性を求めています(第10条)。一律に全員の賃金を下げる形は、合意や合理性の検討が必要です。

この記事の根拠

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条(労働時間=1週40時間・1日8時間)・第32条の2(1か月単位の変形労働時間制。就業規則その他これに準ずるもの又は労使協定で定める)・第32条の4(1年単位の変形労働時間制。労使協定の締結と行政官庁への届出が必要)・第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)・第89条(就業規則の作成及び届出の義務。常時10人以上の労働者を使用する使用者。休日・労働時間・賃金は絶対的必要記載事項)・第90条(作成・変更の際の過半数代表の意見聴取)
  • 労働契約法(平成19年法律第128号)第9条(労働者の合意なく就業規則の変更により労働条件を不利益に変更できない)・第10条(就業規則の変更による労働条件の変更には変更の合理性が必要)
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第43条・厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第23条 ── 固定的賃金の変動があった月から継続した3か月の報酬の平均と従前の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合の標準報酬月額の随時改定(月額変更届)
  • 厚生労働省「モデル就業規則」── 休日・労働時間・変形労働時間制の規定例(2026年10月1日参照)。厚生労働省「選択的週休3日制」の紹介・導入事例(2026年10月1日参照)
  • どの型で設計すべきか、随時改定で何等級動くか、同意の取り方や不利益変更の合理性といった最終的な法的判断は、賃金の決め方・報酬実績・個別の事情によって分かれます。本記事では個別の結論を出していません(未検証)

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、週休3日の型の選び方、変形労働時間制の設計と就業規則・労使協定・届出の整備、就業規則の変更と過半数代表の意見聴取、所定労働日数・賃金の変動に伴う社会保険の随時改定・被保険者資格の確認、希望者が選ぶ形での同意の取り方についてご相談いただけます。導入に絡む助成金や税の取扱いはこの記事では扱わず、税務は税理士の領域です。四葉社会保険労務士事務所は独立した事業体として業務を受任します。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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