特定技能の外国人が転職するとき、社会保険と雇用保険の手続はどう引き継ぎますか?

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
特定技能の外国人が会社を変わると、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険の被保険者資格は前の会社で喪失し、次の会社で取得し直します。保険は在留資格ではなく雇用関係に付くからです(健康保険法第35条・第36条、厚生年金保険法第27条、雇用保険法第7条)。前社は退職日の翌日から社会保険5日以内・雇用保険10日以内に喪失の届出を、次社は入社から同じ期限で取得の届出を出します。転職には改めて在留資格変更許可申請が必要で、受入れ機関の届出も要ります。社会保険・雇用保険の引継ぎと無保険期間を作らない段取りを社会保険労務士の視点で整理し、在留資格変更申請・支援計画は行政書士・登録支援機関、契約打切りの紛争は弁護士に分離受任で振ります。
結論(先に要点):特定技能の外国人が会社を変わると、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険の被保険者資格は、前の会社でいったん喪失し、次の会社で取得し直します。保険は在留資格ではなく雇用関係に付くからです(健康保険法第35条・第36条、厚生年金保険法第27条、雇用保険法第7条)。前の会社は退職日の翌日から社会保険は5日以内・雇用保険は10日以内に喪失の届出を、次の会社は入社から同じ期限で取得の届出を出します。あわせて、転職そのものには改めて在留資格変更許可申請が必要で(出入国在留管理庁の運用。技能実習とは違い自由な転籍ではありません)、受入れ機関の変更の届出も要ります。この記事では、社会保険・雇用保険の資格の得喪と手続の引継ぎ、無保険期間を作らない段取りを社会保険労務士の労務管理の視点で整理し、在留資格変更許可申請や支援計画の作成は行政書士・登録支援機関、契約打切りをめぐる紛争は弁護士へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形で振り分けます。
特定技能1号の外国人は、一定の範囲で転職できます。ただし「届出だけで移れる」わけではなく、入管の手続と社会保険・雇用保険の手続が同時に動きます。手続の順番や期限を取り違えると、保険が切れた無保険期間が生まれたり、在留が不安定になったりします。このページは、特定技能外国人を受け入れる/送り出す中小企業の人事担当の方に向けて、社会保険・雇用保険の引継ぎを中心に整理します。
特定技能の外国人は自由に転職できますか?
技能実習が原則として実習先を自由に変われないのに対し、特定技能1号は本人の意思で転職できます。ただし、転職には改めて在留資格変更許可申請が必要で、届出だけで次の会社に移れるわけではありません。同じ特定産業分野・業務区分の中での転職が最も一般的で、別の分野へ移るときは技能試験・日本語試験などの要件を改めて満たす必要があります。許可が下りる前に新しい会社で就労を始めると資格外活動になり得るため、就労開始日は許可を待って決めます。
技能実習から特定技能1号へ在留資格を変えつつ同じ会社にとどまる場合は、保険の資格喪失・取得は生じません。社内の移行手続の詳細は技能実習から特定技能1号への移行と社会保険で扱っています。会社を変わるときだけ、以下の資格の得喪が発生します。
| 技能実習 | 特定技能1号 | |
|---|---|---|
| 転職・転籍 | 原則として自由にはできない | 本人の意思で可能 |
| 必要な入管手続 | (移行時)在留資格変更許可申請 | 転職のつど在留資格変更許可申請 |
| 社会保険・雇用保険 | 雇用関係に付く | 雇用関係に付く(会社が変われば得喪) |
前の会社・次の会社で、社会保険と雇用保険はどう手続きしますか?
社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険は、在留資格ではなく会社との雇用関係に付きます。したがって会社が変われば、前の会社でいったん被保険者資格を失い、次の会社で取得し直します。手続と期限は国籍や在留資格で変わりません。日本人の中途入社・退職と同じ流れです。
| 手続 | 誰が・どこへ | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 資格喪失届(前社) | 事業主→年金事務所(健保組合) | 退職日の翌日から5日以内 | 健康保険法第36条・厚生年金保険法第27条 |
| 健康保険・厚生年金保険 資格取得届(次社) | 事業主→年金事務所(健保組合) | 入社日から5日以内 | 健康保険法第35条・厚生年金保険法第27条 |
| 雇用保険 被保険者資格喪失届(前社) | 事業主→ハローワーク | 被保険者でなくなった日の翌日から10日以内 | 雇用保険法第7条 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届(次社) | 事業主→ハローワーク | 被保険者となった月の翌月10日まで | 雇用保険法第7条 |
資格喪失日は、退職日そのものではなく退職日の翌日です(健康保険法第36条)。前の会社は退職時に雇用保険の離職票と、健康保険の資格喪失を確認できる書類(健康保険・厚生年金保険 資格喪失確認通知書など)を本人に渡し、次の会社が取得手続に使えるようにしておくと引継ぎが滑らかです。特定技能1号の報酬は日本人と同等以上でなければならず、転職を機に賃金が上がると、次の会社で標準報酬月額の随時改定(月額変更届)が必要になることがあります。
在留資格の変更と雇用契約は、誰が整えますか?
在留資格変更許可申請とその書類作成・申請取次は、本人または申請取次の行政書士・登録支援機関の業務です。社会保険労務士は在留資格の申請取次を行えません。特定技能では、次の受入れ機関が1号特定技能外国人支援計画を作成し、支援を自社で行うか登録支援機関へ委託します。これらは行政書士・登録支援機関の領域で、社会保険労務士業務とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。
一方、雇用契約そのものの労働条件(労働時間・賃金・休日・社会保険の適用)と、就業規則・賃金規程の整備は社会保険労務士が担います。受入れ機関の支援体制(自社支援か委託か)の労務面は特定技能外国人の自社支援体制と労務で、在留期限と雇用契約期間のかみ合わせは在留期限と雇用契約期間で扱っています。なお、受入れ機関には、雇用契約の変更・終了などがあったときに出入国在留管理庁へ届け出る義務があります(随時届出。原則としてその事由が生じた日から14日以内)。この届出は行政書士・登録支援機関または本人が行う入管手続で、社会保険・雇用保険の資格の得喪とは別の手続です。
手続の抜け漏れ(無保険期間)はどう防ぎますか?
一番起きやすいのが、退職日と入社日の間が空いて無保険・無年金の期間が生まれることです。前の会社の退職日の翌日に次の会社へ入社できれば空白は生じませんが、在留資格変更許可を待つ間などで間が空くと、その期間は本人が市区町村で国民健康保険・国民年金に加入する必要があります。健康保険が切れたまま受診すると、医療費がいったん全額自己負担になります。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
無保険期間を作らないための順序は次のとおりです。第一に、在留資格変更許可が下りる見込みと就労開始日をそろえる。第二に、前の会社は退職時に資格喪失の届出と離職票・資格喪失確認通知書の交付を遅らせない。第三に、次の会社は入社日に取得届を出し、健康保険証(マイナ保険証の資格情報)を早く使える状態にする。第四に、空白が避けられないときは、その期間の国民健康保険・国民年金の切替を本人に案内する。手続の抜け漏れは、本人の生活だけでなく、在留期間の更新時の審査(公的義務の履行状況)にも響きます。
| 起きやすい抜け漏れ | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 退職日と入社日の間が空く | 無保険・無年金期間が生じる | 国民健康保険・国民年金へ切替を案内/入社日を調整 |
| 前社の喪失届が遅れる | 次社の取得手続が滞る | 退職時に喪失確認通知書・離職票を交付 |
| 賃金が上がったのに放置 | 標準報酬月額が実態とずれる | 次社で随時改定(月額変更届) |
| 就労開始が許可前 | 資格外活動のおそれ | 変更許可を待って就労開始 |
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、特定技能外国人の転職に伴う労務について、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の資格喪失と取得の手続、無保険期間を作らない段取りの設計、賃金が変わった場合の随時改定(月額変更届)、就業規則・賃金規程の整備、雇用契約の労働条件の確認をお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。
在留資格変更許可申請とその申請取次、1号特定技能外国人支援計画の作成、受入れ機関の届出は行政書士・登録支援機関(社会保険労務士は在留申請の取次を行えません)、契約の打切りや労働条件をめぐる個別の紛争の代理は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 特定技能の外国人は、届出だけで次の会社に移れますか?
A. 移れません。特定技能1号は本人の意思で転職できますが、転職のつど在留資格変更許可申請が必要です。許可が下りる前に新しい会社で働き始めると資格外活動になり得るため、就労開始日は許可を待って決めます。申請とその取次は本人または申請取次の行政書士・登録支援機関の業務で、社会保険労務士は在留申請の取次を行えません。
Q. 会社が変わると、社会保険と雇用保険はどうなりますか?
A. 前の会社でいったん被保険者資格を失い、次の会社で取得し直します。保険は在留資格ではなく雇用関係に付くからです(健康保険法第35条・第36条、厚生年金保険法第27条、雇用保険法第7条)。前社は退職日の翌日から社会保険5日以内・雇用保険10日以内に喪失の届出を、次社は入社から同じ期限で取得の届出を出します。
Q. 退職と入社の間が空くと、保険はどうなりますか?
A. その期間は無保険・無年金になるため、本人が市区町村で国民健康保険・国民年金に加入する必要があります。健康保険が切れたまま受診すると医療費がいったん全額自己負担になります。退職日の翌日に入社できるよう日程を調整できれば、空白は生じません。
Q. 転職で賃金が上がりました。何か手続きがいりますか?
A. 特定技能1号の報酬は日本人と同等以上でなければならず、賃金が上がって標準報酬月額が2等級以上変わるなどの要件に当たると、次の会社で随時改定(月額変更届)が必要になることがあります。実際の該当は賃金の内訳と変動幅で変わるため、社会保険労務士が確認します。
この記事の根拠
- 健康保険法(大正11年法律第70号)第35条(資格取得の時期)・第36条(資格喪失の時期=その事業所に使用されなくなった日の翌日に喪失)(e-Gov法令検索で2026年10月27日に条文確認)
- 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第27条(事業主による資格の取得・喪失、標準報酬月額・賞与額に関する届出)(e-Gov法令検索で2026年10月27日に条文確認)
- 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第7条(事業主による被保険者に関する届出)(e-Gov法令検索で2026年10月27日に条文確認)
- 健康保険・厚生年金保険の資格取得届・資格喪失届の提出期限は事実発生から5日以内(日本年金機構の案内。2026年10月27日参照)、雇用保険の資格喪失届は被保険者でなくなった日の翌日から10日以内・資格取得届は被保険者となった月の翌月10日まで(ハローワークの案内。2026年10月27日参照)
- 特定技能1号の外国人の転職には在留資格変更許可申請が必要で、分野内の転職でも審査・許可の対象である(出入国在留管理庁の在留資格変更許可申請の案内。2026年10月27日参照)。受入れ機関による随時届出(雇用契約の変更・終了等)は原則としてその事由が生じた日から14日以内(出入国在留管理庁の特定技能所属機関の届出の案内。2026年10月27日参照)
- 特定技能1号の報酬は日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上でなければならない(特定技能基準省令。2026年10月27日参照)。標準報酬月額が実態と2等級以上変わる場合等は随時改定(健康保険法・厚生年金保険法。月額変更届)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。社会保険・雇用保険の資格の得喪と手続、無保険期間を作らない段取り、随時改定、就業規則・賃金規程の整備は社会保険労務士の業務です。在留資格変更許可申請とその申請取次、支援計画の作成、受入れ機関の届出は行政書士・登録支援機関(社会保険労務士は在留申請の取次を行えません)、契約の打切りや労働条件をめぐる個別の紛争の代理は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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