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2026.09.29離日・売却

いつから「非居住者」になるのか? —— 契約日・引渡日・出国日、どれで決まるのか

浦松 丈二

浦松 丈二

四葉不動産株式会社代表取締役・宅建士・行政書士

Profile (samurai.co.jp) ↗

非居住者かどうかの判定は、出国日でも契約日でもありません。土地の譲渡対価は通常「引渡しがあった日」が支払をすべき日となるため、その日に売主が居住者か非居住者かで源泉徴収の要否が決まります(国税庁 質疑応答事例/所得税基本通達36-12)。国税庁は、代金の支払時点では帰国して居住者に戻っていた事例でも、引渡しが非居住者期間中であったとして源泉徴収が必要と答えています。つまり「契約だけ出国前に済ませる」では足りません。引渡しまで終える必要があります。あわせて、居住者・非居住者の定義(所得税法第2条第1項第3号・第4号)、生活の本拠としての住所、国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合の住所の推定(所得税法施行令第15条)を整理します。文京区小日向・茗荷谷駅徒歩5分。

引渡しの日です。源泉徴収10.21%の要否は、代金を支払った日でも契約日でもなく、原則として引渡しの日に売主が非居住者かどうかで決まります(国税庁 質疑応答事例、所得税基本通達36-12)。契約だけ先に済ませても、意味は薄いということです。

このページは、判定の時点だけを扱います。源泉徴収10.21%の税率・納付者・例外そのものは海外オーナーのための日本不動産売却ガイドに、出国前の売却の進め方は出国前の不動産売却の特集にまとめています。

最終更新:2026年9月29日

そもそも「非居住者」とは、誰のことか?

所得税法は、個人を居住者と非居住者に分けています。

区分定義
居住者国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人(所得税法第2条第1項第3号)
非居住者居住者以外の個人(同項第4号)

ここでいう「住所」は、住民票のことではありません。各人の生活の本拠をいい、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断されます。「居所」は、生活の本拠という程度には至らないものの、その人が現実に居住している場所です(国税庁 タックスアンサー No.2012)。

**住民票を抜いたから非居住者、ではありません。**逆に、住民票を残したまま非居住者と判定されることもあります。

出国した日から、非居住者になるのか?

**出国日そのものが基準ではありません。**ただし、出国の事情によっては推定が働きます。

国外に居住することとなった個人が次のいずれかに該当する場合、その者は国内に住所を有しない者と推定されます(国税庁「別紙 住所の推定」/所得税法施行令第15条、所得税基本通達3-2)。

#推定が働く場合
(1)その者が国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
(2)その者が外国の国籍を有し、または外国の法令によりその外国に永住する許可を受けており、かつ、国内において生計を一にする配偶者その他の親族を有しないこと、その他、国内における職業および資産の有無等の状況に照らし、再び国内に帰り、主として国内に居住するものと推測するに足りる事実がないこと

※ 上記により国内に住所を有しないと推定される人と生計を一にする配偶者その他その人の扶養する親族が国外に居住する場合には、これらの人も国内に住所を有しない者と推定されます。

**(1)が実務上いちばん多く当たります。**1年以上の予定で海外の勤務先へ移る、母国の会社に戻る、といった場合です。逆に、期間が1年未満の予定であれば、この推定は働きません。

**推定は推定です。**反対の事実があれば覆ります。だからこそ、次の「いつの時点で見るのか」が効いてきます。

では、いつの時点で判定されるのか?

土地・建物の譲渡対価については、原則として「引渡しがあった日」です。

国税庁の質疑応答事例(令和7年8月1日現在の法令・通達等)が、この点を正面から扱っています。

土地の譲渡対価については、通常土地の引渡しがあった日が支払をすべき日(譲渡人から見た場合は収入すべき日)となりますので(所得税基本通達36-12)、土地の引渡しがあった日においてその譲渡対価の支払を受ける者が居住者であるか非居住者であるかによって源泉徴収の有無を判定することになります。

そして、示されている事例が示唆的です。

事例の流れ
5月内国法人A社が、非居住者Bから国内の土地を購入
7月引渡し(このときBは非居住者)
8月Bが帰国し、居住者になる
9月A社が購入代金をBに支払う(このときBは居住者)

結論は「源泉徴収が必要」です。 支払の時点でBが居住者に戻っていても、引渡しの時点で非居住者だったからです。

**逆向きにも効きます。**引渡しの日に居住者であれば、その後に出国しても、この源泉徴収は生じません。特集で「出国5営業日前までの決済」を目標に逆算しているのは、このためです。

「契約は出国前、決済は出国後」だと、どうなるのか?

契約日は、判定の基準になりません。

出国が迫っているとき、「とりあえず契約だけ先に結んでおこう」と考える方がいます。気持ちはわかりますが、源泉徴収の判定には効きません。

進め方引渡しの日の立場源泉徴収
契約・引渡しとも出国前居住者なし
契約は出国前、引渡しは出国後非居住者あり(10.21%)
契約・引渡しとも出国後非居住者あり(10.21%)

契約を先に済ませることが無意味だという話ではありません。買主を確保し、条件を固定する意味はあります。ただし「税金の面では出国前に済ませた」ことにはならない、ということです。

(源泉徴収には例外があります。売買代金が1億円以下で、買主が個人かつ自己または親族の居住用に取得する場合です。詳しくは海外オーナーのための日本不動産売却ガイドへ。)

確定申告の年分も、引渡しの日で決まるのか?

ここは少し違います。選択の余地があります。

譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期について、所得税基本通達36-12は次のように定めています。

原則資産の引渡しがあった日
例外納税者の選択により、その資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときは、これを認める

つまり、**申告上どちらの年分に入れるかは、一定の範囲で選べます。**年をまたぐ売却では、これが所有期間(5年)の判定や特例の適用に影響することがあります。

一方、源泉徴収の要否の判定は、前の見出しのとおり引渡しの日です。

この二重構造が、混乱のもとです。「申告は契約日の年分を選んだのだから、源泉徴収も契約日で見るはずだ」とはなりません。**申告の年分と、源泉徴収の判定時点は、別の話です。**年をまたぐ売却や、契約と引渡しが離れている売却では、**必ず税理士に確認してください。**個別の判断は税理士が行います。

出国日と決済日は、どう並べればいいのか?

順番だけ、整理しておきます。

いつやること
1決済日を先に決める買主・金融機関・司法書士の都合が集まる日を押さえる
2決済日=引渡日を確認する通常は同日ですが、引渡しを別日にする特約がある場合は要注意です
3引渡日より後に出国日を置くここが本コラムの結論です
4引渡し後、出国前に納税管理人の届出納税管理人に資格は要るのか、会社でもなれるのか
5転出届納税管理人の届出より後に
6出国

2行目に注意してください。「決済は今日、鍵の引渡しは来週」という組み方をすると、引渡日が出国後になることがあります。契約書の条項で確認します。

日程が動かせず、引渡しが出国後になる場合は、**源泉徴収がある前提で手取りを計算し直します。**差し引かれた分は、翌年の確定申告で精算します(納めすぎであれば還付されます)。「損をする」わけではありませんが、手元に入る金額とタイミングが変わります。

判定が微妙なときは、どうするのか?

次のような場合は、自己判断せず、決済の前に税理士へご相談ください。

状況なぜ微妙か
出国の予定期間が1年前後住所の推定(1年以上の職業)が働くかどうかの境目
家族が日本に残る生計を一にする親族の居住状況が判断要素になる
引渡しと代金支払が別の日判定時点がずれる
年をまたぐ売却申告年分の選択と所有期間(5年)の判定が絡む
日本と相手国の両方で居住者になりそう租税条約による判定が必要になることがあります

**当社ができるのは、日程を組むところまでです。**決済日と引渡日を確認し、出国日との前後を設計し、税理士におつなぎします。税額の計算と申告書の作成、居住者・非居住者の最終的な判断は税理士が行います。当社が紹介料を受け取ることはありません。

この記事の根拠

内容根拠
居住者の定義(国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人)・非居住者の定義所得税法(昭和40年法律第33号)第2条第1項第3号・第4号
「住所」=各人の生活の本拠。住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実により判断。「居所」の意義国税庁 タックスアンサー No.2012「居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」(令和7年4月1日現在法令等)/所得税基本通達2-1
国内に住所を有しない者と推定する場合(国外において継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること ほか)国税庁 タックスアンサー No.2875 別紙「住所の推定」(令和7年4月1日現在法令等)/所得税法施行令第15条、所得税基本通達3-2
土地の譲渡対価の源泉徴収は「引渡しがあった日」に支払を受ける者が居住者か非居住者かで判定すること(代金支払時に居住者に戻っていても、引渡しが非居住者期間中なら源泉徴収が必要)国税庁 質疑応答事例「源泉徴収の対象とされる支払が居住者に対するものか非居住者に対するものかの判定」(令和7年8月1日現在の法令・通達等)/所得税法第161条第1項第5号・第212条第1項、所得税基本通達36-9・36-12・212-5
譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期(原則は引渡しがあった日。納税者の選択により契約の効力発生の日も可)所得税基本通達36-12
非居住者から不動産を購入する際の源泉徴収の税率(10.21%)と、その例外所得税法第161条第1項第5号・第212条第1項/復興財源確保法第28条/所得税法施行令第281条の3/国税庁 タックスアンサー No.2879
納税管理人の選任と届出国税通則法第117条
双方居住者となった場合の租税条約による判定国税庁 タックスアンサー No.2012/日本と各国との租税条約

本ページは一般的な情報提供です。居住者・非居住者の判定は客観的事実によるもので、個別の事情により結論が変わります。個別の税務判断は税理士が行います。 国税庁の質疑応答事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、具体的な取引に適用する場合には異なる課税関係が生ずることがあります。

不動産の媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が、許認可申請書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ別の契約としてお受けします。税務は税理士、登記は司法書士におつなぎし、それぞれご本人と直接ご契約いただきます。当社が紹介料を受け取ることはありません。

この記事の著者 浦松 丈二|四葉不動産株式会社 代表取締役・専任宅地建物取引士。行政書士。元毎日新聞中国総局長(記者歴34年)。中国総局長として中国や台湾、タイに駐在しました。社会保険労務士試験合格(2026年9月開業予定)。

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