納税管理人に資格は要るのか、会社でもなれるのか —— 出国の日までに出す届出書
納税管理人に資格の定めはありません。国内に住所か居所があり、事務の処理につき便宜を有する者なら、個人でも法人でもなれます(国税通則法第117条第1項/国税庁タックスアンサーNo.1923)。届出は出国の日まで。所得税法は「出国」を「納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しなくなること」と定義しているため、届け出ておけば税法上の「出国」に当たらず、譲渡所得の申告は翌年2月16日から3月15日までの通常の期限で足ります。届け出ないと、その年の申告を出国の時までに済ませることになり、さらに税務署が配偶者や親族、取引先を納税管理人に指定できる仕組み(特定納税管理人)まで用意されています。法人でもなれる制度ですが、四葉不動産はこの役をお受けせず、税理士におつなぎしています。その理由と、かかる費用の目安まで書きました。文京区小日向・茗荷谷駅徒歩5分。
納税管理人に資格は要りません。国内に住所か居所があり、事務の処理につき便宜を有する者なら、個人でも法人でもなれます(国税通則法第117条第1項)。届出は出国の日まで。出しておけば税法上の「出国」に当たらず、申告は翌年の通常期限で足ります。
このページは、まだ日本にいる方が、出国の日までに納税管理人を届け出るための解説です。誰に頼むかの選択肢を並べて比べたい方、売らずに貸す・持ち続ける場合の納税管理人と家賃の源泉徴収は海外に住んだまま、日本の家をどうするかへ。すでに海外にお住まいで売却を検討する場合は海外オーナーのための日本不動産売却ガイドへ。出国前の売却そのものの流れは出国前の不動産売却の特集にまとめています。
最終更新:2026年9月1日
納税管理人とは、何をする人なのか?
日本の税務署とやりとりするための、国内の窓口です。 国税通則法第117条第1項は、個人である納税者が国内に住所および居所を有しない、または有しないこととなる場合で、納税申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要があるときは、納税管理人を定めなければならないと定めています。
「有しないこととなる場合」——つまりまだ日本にいるうちから対象になります。出国してから考える制度ではありません。
処理する事務の範囲は、国税庁の通達が4つに区分しています(国税通則法基本通達 第117条関係2)。
| # | 事務の内容 |
|---|---|
| (1) | 国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の作成および提出 |
| (2) | 税務署長等が納税者に対して発する書類の受領、および納税者へのその書類の送付 |
| (3) | 納税者が税務署長等に対して提出する書類の受領、および税務署長等へのその書類の提出 |
| (4) | 国税の納付および還付金等の受領 |
同じ通達には、**「納税管理人は、上記(1)から(4)までに掲げる事項の一部のみを処理することはできない」**という注が付いています(特定納税管理人による場合を除く)。引き受ける側は、この4つをまとめて引き受ける前提で立てなければなりません。「書類の受け取りだけ」という引き受け方はできない、ということです。この注が、後述する「四葉不動産がこの役をお受けしない理由」につながります。
なお、届出をした後も、確定申告書そのものの提出先は、非居住者の納税地を所轄する税務署長です。税務署が発送する書類の宛先が納税管理人に変わる、というのが届出の効果です(国税庁タックスアンサー No.1923)。
資格は要るのか?
要りません。 条文が求めているのは資格ではなく、次の2つだけです(国税通則法第117条第1項)。
| 要件 | 条文の言い方 |
|---|---|
| 国内にいること | この法律の施行地に住所または居所を有する者 |
| その事務を処理できる立場にあること | 当該事項の処理につき便宜を有するもの |
税理士でなくても、弁護士でなくても、宅地建物取引士でなくてもなれます。国税庁も「納税管理人は法人でも個人でも構いません」と明記しています(タックスアンサー No.1923)。
ただし通達は、できるだけ納税者の納税地を所轄する税務署の管轄区域内に住所等を有する者のうちから選任させるものとしています(同通達 第117条関係3)。文京区の物件なら、文京区・近隣に拠点がある者のほうが実務が回りやすい、という趣旨です。
会社(法人)でもなれるのか?——では、四葉不動産はなぜ受けないのか?
なれます。 国税庁が「法人でも個人でも構いません」と明示しているとおりです(タックスアンサー No.1923、令和7年4月1日現在法令等)。
法人に頼めば、個人に頼んだときの弱点は消えます。
| 論点 | 個人(親族・知人)に頼む | 法人に頼む |
|---|---|---|
| 引受人の死亡・後見開始 | 納税管理人の権限が消滅します(民法第111条・第653条/同通達 第117条関係4) | 個人の生死に左右されません |
| 転居・連絡不通 | 税務署からの書類が届かなくなります | 事業所の所在地で受け取り続けます |
| 期限の管理 | ご親族の負担になります | 業務として管理します |
そのうえで申し上げます。四葉不動産株式会社は、納税管理人をお受けしていません。
理由は、事務範囲にあります。先に見たとおり、納税管理人の事務には**(1) 税務書類の作成および提出が含まれ、通達はその一部だけを処理することはできない**としています。一方、税務書類の作成は税理士の業務です(税理士法第2条第1項第2号、第52条)。
この2つを重ねると、税理士でない当社が納税管理人を引き受ける形には、整理しきれない部分が残ります。 整理しきれないまま「お引き受けします」とは申し上げない——それが当社の立場です。納税管理人には、税理士におつなぎします。
お読みの方への実務的な注意。「納税管理人も引き受けます」という案内を見かけたら、税務書類の作成まで含むのかどうかを、分けて確認してください。 含むのであれば、税理士がどのように関与するのかもあわせて聞いておくと安全です。
いつまでに、どこへ出すのか?
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類名 | 所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書 |
| 提出時期 | 納税管理人を定めたとき、または出国の日までに |
| 提出先 | 納税地を所轄する税務署長 |
| 提出方法 | e-Taxソフトで作成・送信。書面での持参・送付も可 |
| 添付書類 | e-Taxで提出する場合、本人確認書類の提示・写しの添付は不要。書面でマイナンバーを記載して提出する場合は本人確認書類の提示または写しの添付が必要 |
| 手続根拠 | 国税通則法第117条 |
| 税務署への手数料 | かかりません |
(国税庁「A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」)
順番があります。 納税管理人の届出 → 転出届 → 出国。転出届を先に出して住民票を抜くと、届出書に書く納税地の確認に手間が増えます。売却の決済日が決まったら、決済日と出国日の間に届出を挟む形で逆算してください。
届け出ないと、何が起きるのか?
3つ起きます。順に重くなります。
① その年の申告を、出国の時までに済ませることになる
所得税法は「出国」を、国税通則法第117条第2項の届出をしないで国内に住所および居所を有しなくなることと定義しています(所得税法第2条第1項第42号)。裏を返せば、届出をすれば税法上の「出国」に当たりません。
この定義が効くのが次の2条です。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 所得税法第127条第1項 | 居住者が年の中途において出国をする場合、その年1月1日から出国の時までの所得について確定申告を要するときは、その出国の時までに申告書を提出しなければならない |
| 所得税法第126条第1項 | 前年分の確定申告書を提出すべき居住者が、翌年1月1日から提出期限までの間に出国をする場合は、その出国の時までに申告書を提出しなければならない |
不動産を売って出国する方に、これがそのまま当たります。届出をしていれば、譲渡所得の確定申告は翌年2月16日から3月15日までの通常の期限で足ります。届出をしていなければ、出国の時までに申告と納税を終える必要が生じます。決済の直後に出国する日程では、まず間に合いません。
② 税務署から、書面で届出を求められる
届出をしなかった場合、納税地を所轄する国税局長または税務署長は、納税管理人に処理させる必要があると認められる事項(特定事項)を明示して、60日を超えない範囲内で指定する日までに届出をすべきことを、書面で求めることができます(国税通則法第117条第3項)。
③ 税務署が、あなたの親族や取引先を納税管理人に指定できる
ここが、あまり知られていないところです。指定日までに届出がないと、税務署長等は、国内に住所または居所があって特定事項の処理につき便宜を有する者(国内便宜者)に対し、納税管理人となることを書面で求めることができます(同条第4項)。そして応じない場合でも、次の者を特定納税管理人として指定できます(同条第5項)。
| 納税者が個人の場合、指定されうる者 |
|---|
| 生計を一にする配偶者その他の親族で成年に達した者 |
| 課税標準等または税額等の計算の基礎となるべき事実について、契約により密接な関係を有する者 |
| 電子情報処理組織を使用して行われる取引その他の取引を、継続的または反復して行う場を提供する事業者 |
令和3年度税制改正で加わり、令和4年1月1日以後に適用されています。
つまり、届出をせずに出国すると、日本に残るご家族や、取引のあった相手に、あなたの税務の窓口が回っていく可能性があります。1枚の届出書を出しておくことの意味は、ここにあります。
いくらかかるのか?
総額を先にお示しします。 当社は納税管理人をお受けしないので、以下の税理士報酬は当社の収入になりません。だからこそ、目安を隠さずに書きます。
| 費目 | 誰に払うか | 目安 |
|---|---|---|
| 納税管理人への就任 | 税理士 | 年 5万〜6万円(税別)程度。確定申告とセットで16万5,000円(税込)〜という料金体系の事務所もあります |
| 納税管理人の選任・解任届出書の作成 | 税理士 | 1万円(税別)程度。就任料に含む事務所もあります |
| 譲渡所得の確定申告 | 税理士 | 譲渡収入の0.7〜1%程度を目安とする事務所と、一律5万円(税別)程度の事務所があります。物件の数、3,000万円特別控除や取得費の検討の要否で変わります |
| 所有権移転登記 | 司法書士 | 物件と登記の内容によります |
| 売却の媒介 | 四葉不動産株式会社 | 宅地建物取引業法の上限内(成約価格×3%+6万円+消費税) |
| ご相談・買取業者への打診・札のご報告 | 四葉不動産株式会社 | 無料 |
| 税理士・司法書士へのおつなぎ | 四葉不動産株式会社 | 無料。当社が紹介料を受け取ることはありません |
税理士報酬の目安は、2026年8月時点で各事務所が公開している料金表をもとにしたものです。実際の金額は事務所と案件によって異なりますので、ご契約前に必ずお見積りをお取りください。**とくに譲渡所得の申告は、一律料金の事務所と譲渡収入に比例する事務所とで、大きく開きます。**先に確認しておくと、決済後に驚かずに済みます。
四葉不動産は、この手続きで何をするのか?
役割を分けて書きます。
| 誰が | 何を |
|---|---|
| 四葉不動産株式会社 | 売却の媒介。出国日から逆算した段取り。決済日と届出の順番の調整。税理士・司法書士へのおつなぎ。日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)での連絡 |
| 税理士(ご本人と直接契約) | 納税管理人への就任。選任・解任届出書の作成と提出。譲渡所得の計算、確定申告、納付 |
| 司法書士(ご本人と直接契約) | 所有権移転登記の申請 |
それぞれ独立した事業体・独立した契約です。 税理士・司法書士・弁護士とは、ご本人が直接ご契約いただく形をご案内し、当社が紹介料を受け取ることはありません。
時系列にすると、こうなります。
| 段階 | 誰が | やること |
|---|---|---|
| 相談〜査定 | 四葉不動産 | 出国日から逆算して、決済日と届出日を置く |
| 決済日の前 | ご本人・税理士 | 税理士とご契約。選任届出書を作成し、出国の日までに税務署へ提出 |
| 決済日 | 四葉不動産・司法書士 | 着金確認のうえ同日に登記を申請 |
| 決済日 | ご本人・税理士 | 納税資金の置き場所を決めておく |
| 出国後 | 税理士 | 税務署からの書類を受領し、ご本人へ連絡 |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 税理士 | 譲渡所得の確定申告と納付。源泉徴収された分があればここで精算 |
| 帰国したとき | ご本人・税理士 | 解任届出書を提出 |
納税資金は、出国前に置き場所を決めてください。 出国してから「納税資金を送ってください」となると、海外送金には日数がかかり、為替でも目減りします。納付期限に間に合わなければ延滞税が生じます。決済の場で、税理士と決めておくのが確実です。
帰国したら、どうするのか?
帰国して居住者に戻るときは、解任の届出が必要です。 選任のときと同じ「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を、納税地を所轄する税務署長に提出します(国税庁タックスアンサー No.1923)。
納税管理人を変更する場合は、届出書が2通になります。すでに届け出ている納税管理人を解任する届出書と、新たな納税管理人を選任する届出書です(同)。「上書きで1通」ではありません。
お受けできないのは、どんな場合か?
当社の出国前の売却では、次の5つはお受けしていません。無理に進めると、かえってご負担になるためです。
| # | お受けできない場合 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | すでに出国された後 | 本人確認と書類が国をまたぎ、在外公館の署名証明などが必要になります |
| 2 | 出国まで2週間を切っている | 買主の資金手当てと登記の準備が物理的に間に合いません |
| 3 | 首都圏外、または相場が不安定な地域の物件 | 短期間で複数の買取業者に競わせられません |
| 4 | 権利関係が複雑な物件(共有者多数・境界未確定・相続未登記など) | 決済までに整理が終わりません |
| 5 | 住宅ローンが残っている物件 | 完済と抵当権抹消に金融機関側の事務日数(通常2週間〜1か月)が必要です |
該当する場合は、無理な短期売却ではなく、貸す・出国後に売る・持ち続けるという別の道をご一緒に検討します。
この記事の根拠
| 内容 | 根拠 |
|---|---|
| 納税管理人を定める義務・要件(国内に住所または居所があり、事務の処理につき便宜を有する者) | 国税通則法(昭和37年法律第66号)第117条第1項。最終改正 令和4年3月31日 |
| 届出義務・届出先(納税地を所轄する税務署長)・解任も同様 | 同法第117条第2項 |
| 届出をしない場合の届出の求め(60日を超えない範囲内で指定する日まで、書面で) | 同法第117条第3項。令和3年度税制改正、令和4年1月1日以後適用 |
| 国内便宜者に納税管理人となることを求めること | 同法第117条第4項。令和4年1月1日以後適用 |
| 特定納税管理人の指定(配偶者その他の成年の親族/契約により密接な関係を有する者/取引の場を提供する事業者) | 同法第117条第5項。令和4年1月1日以後適用 |
| 納税管理人の事務範囲(4区分)・一部のみの処理はできないこと・納税地の管轄区域内から選任させること・権限の消滅 | 国税通則法基本通達(徴収部関係)第117条関係2・3・4 |
| 納税管理人は法人でも個人でも構わないこと・確定申告書の提出先・変更時は解任と選任の2通 | 国税庁タックスアンサー No.1923「海外勤務と納税管理人の選任又は解任」(令和7年4月1日現在法令等) |
| 届出書の名称・提出時期(納税管理人を定めたとき、または出国の日までに)・提出方法・提出先・手続根拠 | 国税庁「A1-7 所得税・消費税の納税管理人の選任届出又は解任届出手続」 |
| 所得税法上の「出国」=納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しなくなること | 所得税法(昭和40年法律第33号)第2条第1項第42号 |
| 年の中途で出国をする場合の確定申告(出国の時までに) | 所得税法第127条第1項。最終改正 令和4年3月31日 |
| 確定申告書を提出すべき者等が出国をする場合の確定申告(出国の時までに) | 所得税法第126条第1項 |
| 税理士の業務(第1号〜第3号)と、税理士・税理士法人でない者の業務の禁止 | 税理士法(昭和26年法律第237号)第2条第1項第1号・第2号・第3号、第52条 |
| 代理権の消滅事由 | 民法第111条、第653条 |
| 非居住者から不動産を購入する際の源泉徴収(10.21%)と、その例外 | 所得税法第161条第1項第5号・第212条第1項/復興財源確保法第28条/所得税法施行令第281条の3/国税庁タックスアンサー No.2879 |
| 媒介報酬の上限 | 宅地建物取引業法第34条の2・第46条、報酬告示 |
| 税理士報酬の目安 | 2026年8月時点で各税理士事務所が公開している料金表を調査したもの。特定の事務所を推奨するものではありません |
本ページは一般的な情報提供です。個別の税務判断は税理士が行います。 個々のご事情によって適用される規定や結論は変わります。
不動産の媒介は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が、許認可申請書類の作成は四葉行政書士事務所が、それぞれ別の契約としてお受けします。納税管理人・税務は税理士、登記は司法書士、紛争は弁護士におつなぎし、それぞれご本人と直接ご契約いただきます。当社が紹介料を受け取ることはありません。
この記事の著者 浦松 丈二|四葉不動産株式会社 代表取締役・専任宅地建物取引士。行政書士。元毎日新聞中国総局長(記者歴34年)。中国総局長として中国や台湾、タイに駐在しました。社会保険労務士試験合格(2026年9月開業予定)。
