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2026.09.20社会保険

外国人経営者や役員は日本の社会保険にどこまで入るのか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

「経営・管理」の在留資格で日本の法人を設立した経営者本人は、報酬を受ければ健康保険・厚生年金の被保険者になります。役員は原則として労災・雇用保険の対象外ですが、使用人兼務役員だと扱いが変わります。社会保険の加入・納付は在留期間の更新でも見られます。代表者本人を軸に、健康保険法・厚生年金保険法・労災保険法・雇用保険法と入管ガイドラインから整理します。

結論(先に要点):「経営・管理」の在留資格で日本の法人を設立した経営者本人は、報酬を受ければ健康保険・厚生年金保険の被保険者になります。役員は原則として労災・雇用保険の対象外ですが、使用人兼務役員だと扱いが変わります。社会保険の加入・納付は在留期間の更新でも見られます。

中国・台湾の企業が日本に法人を設立し、代表者が「経営・管理」の在留資格で来日する——このとき見落とされやすいのが、経営者本人や役員が日本の社会保険にどこまで入るのかという点です。「役員だから労働保険は関係ない」と考えていると、あとで在留更新のときに困ります。中国・台湾の経営者と、その顧問となる現地の会計・人事の専門家に向けて、役員本人を軸に整理します。

経営・管理の在留資格の経営者は、社会保険に入らなければならないのか?

入ります。日本の法人は、代表者1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です(健康保険法第3条第3項・厚生年金保険法第6条)。日本に子会社や支店(登記した法人)を作れば、その時点で適用事業所になります。

立場健康保険・厚生年金
報酬を受ける常勤の代表取締役・役員被保険者(役員報酬から標準報酬月額を決定)
無報酬の役員報酬がないため被保険者にならない
非常勤役員勤務実態・報酬の有無などで個別に判断

「経営・管理」で来日した経営者本人も、法人から役員報酬を受けていれば被保険者です。国籍や在留資格で加入の有無が変わることはありません。日本人の役員とまったく同じ判定です。会社を設立した直後に何をいつ届け出るかは会社をつくったら、いつまでに何を出すのかに、雇う従業員側の保険料の全体像は中国・台湾企業が日本で雇うと、会社にいくらかかるのかにまとめています。

役員は労働保険(雇用・労災)の対象になるのか?

原則として対象外です。労働保険は「労働者」を守る制度で、役員は労働者ではないためです。

保険役員本人の扱い
労災保険原則対象外。労働者を使用していれば中小事業主等の特別加入の道がある
雇用保険原則被保険者でない(役員報酬のみの経営者は失業給付を受けられない)

労災保険は労働者を1人でも使用する事業に強制適用されますが、その給付は労働者に対するものです。代表者や役員本人は、施術・作業中にけがをしても労災の給付を受けられません。備えるには、労働者を雇っていることを前提に、労働保険事務組合を通じて中小事業主等の特別加入をする方法があります。加入の順序と規模要件は社長には労災が出ない。そして1人だと特別加入もできないを参照してください。雇用保険も、役員は原則として被保険者ではありません(雇用保険法第4条・第6条)。

使用人兼務役員だと、扱いはどう変わるのか?

取締役でありながら、部長・支店長など使用人としての職務を持ち、その分の賃金を受けている人を使用人兼務役員といいます。このとき、労働者としての性格がある部分について、扱いが変わります。

  • 雇用保険:使用人としての労働者性が認められれば、その部分について被保険者になれます。手続では、ハローワークに**「兼務役員雇用実態証明書」**と、登記事項証明書・定款・取締役会議事録・賃金台帳・組織図などを提出し、職業安定所が労働者性を判断します。
  • 労災保険:労働者としての賃金部分は労災の対象になり得ます。役員報酬部分は対象外です。
  • 健康保険・厚生年金:役員報酬と使用人給与を合算した額から標準報酬月額を決めます。

ただし、代表取締役は使用人兼務役員になれません。会社を指揮する立場で、指揮監督を受ける使用人の性格を併せ持たないと整理されるためです。「経営・管理」の在留資格で来日する代表者本人は、雇用保険・労災の対象にはなりにくく、社会保険(健保・厚年)で加入するのが基本になります。

社会保険への未加入は、在留資格の更新に響くのか?

響き得ます。社会保険への加入・納付は事業主の法的義務であると同時に、在留期間の更新の審査でも見られる要素です。出入国在留管理庁の「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」は、届出・納税などの公的義務の履行を考慮すると示しており、「経営・管理」では事業の適正性・安定性の観点から、労働・社会保険の加入や納付の状況が確認されます。近年は申請の窓口で健康保険への加入を確認する運用も行われています。

未加入や保険料の滞納があると、更新審査で消極的な要素と判断され、更新が認められなかったり在留期間が短くなったりする例があるとされます。ただし許否は入管が個別に判断するもので、当事務所が保証・断定できるものではありません。「経営・管理」の基準は改正が続いているため、更新の要件は申請前に必ず出入国在留管理庁の最新の公表資料と、担当する行政書士に確認してください。社会保険料の負担の全体像は中国・台湾企業が日本で雇うと、会社にいくらかかるのかを、台湾のように社会保障協定がない国からの受け入れは台湾から人を雇う・出向で受け入れるときの社会保険を参照してください。

ご自身のケースについて相談したい方へ

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在留資格・会社設立・税務は、誰に相談すればよいのか?

日本で法人を作り、経営者として在留するまでには、担当する資格が分かれ、それぞれ別の契約になります。

やること主な担当
労働・社会保険の適用判定、役員・使用人兼務役員の加入手続、給与計算、就業規則の整備社会保険労務士(当事務所)
「経営・管理」など在留資格の申請・取次、会社設立の許認可行政書士
会社設立の登記申請司法書士
法人・個人の税務、役員報酬の税務税理士
労働紛争・株主間の紛争弁護士
事業所・社宅となる物件探し宅地建物取引業者

在留資格の申請・取次は四葉行政書士事務所、事業所や社宅の物件は四葉不動産へおつなぎすることもできますが、四葉行政書士事務所・四葉不動産は当事務所とは独立した事業体で、社会保険労務士業務・行政書士業務・宅地建物取引業務は別々にご契約いただきます(一括受任はしません)。当事務所は紹介料を受け取りません。

四葉社会保険労務士事務所では、役員・使用人兼務役員の社会保険と労働保険の適用判定、加入・喪失の手続、給与計算、就業規則の整備についてご相談いただけます。費用は報酬額表にまとめています。

よくある質問

Q. 「経営・管理」で来日し、社長1人だけの会社です。社会保険には入りますか?
A. 入ります。法人は代表者1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になり、役員報酬を受ける代表者は被保険者です。国籍や在留資格で加入の有無は変わりません。無報酬の役員は報酬がないため被保険者になりませんが、その場合は在留の基盤となる収入や事業の実態が別途問われ得ます。

Q. 役員なので雇用保険には入れないのですか?失業したときの給付はありますか?
A. 役員は原則として雇用保険の被保険者ではないため、失業給付は受けられません。例外は使用人兼務役員で、使用人としての労働者性が認められた部分について被保険者になれます。代表取締役は使用人兼務役員になれないため、雇用保険には入れないのが原則です。

Q. 使用人兼務役員として雇用保険に入るには、何が必要ですか?
A. ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を提出し、登記事項証明書・定款・取締役会議事録・賃金台帳・組織図・就業規則などの資料をもとに、職業安定所が労働者性を判断します。認められれば、使用人としての賃金部分について被保険者になります。判断は実態で行われます。

Q. 社会保険に入っていないと、在留資格の更新で不許可になりますか?
A. 未加入や保険料の滞納は、更新審査で消極的な要素と判断され得ます。入管は公的義務の履行や事業の適正性・安定性を見ており、加入・納付の状況は重要です。ただし許否は入管が個別に判断するもので、断定はできません。更新の要件は改正が続いているため、申請前に最新の公表資料と担当行政書士に確認してください。

この記事の根拠

  • 健康保険法(大正11年法律第70号)第3条第3項:法人の事業所は代表者1人でも強制適用事業所(日本年金機構「適用事業所と被保険者」2026年9月20日参照)
  • 厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第6条・第9条:適用事業所と被保険者の要件。報酬を受ける常勤役員は被保険者
  • 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号):労働者を使用する事業に強制適用。役員・事業主は対象外で、労働保険事務組合を通じた中小事業主等の特別加入の制度がある(厚生労働省「特別加入制度のしおり(中小事業主等用)」2026年9月20日参照)
  • 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第4条・第6条:労働者が被保険者。役員は原則対象外。使用人兼務役員は労働者性が認められた部分について被保険者となり得る(ハローワークに「兼務役員雇用実態証明書」を提出。2026年9月20日参照)
  • 出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」:公的義務(届出・納税等)の履行を考慮する旨。「経営・管理」の在留期間更新では事業の適正性・安定性の観点から労働・社会保険の加入・納付状況が確認される(出入国在留管理庁。2026年9月20日参照)。基準は改正が続くため最新は入管の公表資料で確認
  • 条文はいずれも2026年9月20日時点でe-Gov法令検索および各官庁の公表資料により確認しました。在留資格の要件・審査の運用は変わるため、最新は出入国在留管理庁で確認してください

この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、役員・使用人兼務役員の社会保険・労働保険の適用判定、加入・喪失の手続、給与計算、就業規則の整備についてご相談いただけます。在留資格の申請・取次と会社設立の許認可は行政書士、登記は司法書士、税務は税理士、紛争は弁護士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。在留資格の該当性や更新の許否の最終判断は出入国在留管理庁が、保険料や加入義務の個別判断は年金事務所・日本年金機構・労働局が行います。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。社会保険の加入義務や在留更新への影響など個別の判断は、最新の一次情報と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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