中国・台湾企業が日本で人を雇うと、会社の社会保険料はいくらかかるか
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
中国・台湾の企業が日本で従業員を雇うと、会社には健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険・労災保険の保険料と、全額会社負担の子ども・子育て拠出金がかかります。健康保険・厚生年金・介護・雇用保険は原則労使折半で、会社負担はおおむね報酬額の15〜16%程度になることが多いです。加入義務のラインと外国人従業員の入社手続を整理します。会社設立は司法書士、在留資格は行政書士、税務は税理士、物件は宅地建物取引業者の領域で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。
結論(先に要点):中国・台湾の企業が日本で従業員を雇うと、会社には健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の保険料と、全額会社負担の子ども・子育て拠出金がかかります。健康保険・厚生年金・介護保険・雇用保険は原則として労使折半(労災と拠出金は全額会社負担)で、会社負担はおおむね報酬額の15〜16%程度になることが多いです(料率は年度・都道府県・業種で変わります)。この記事は加入義務のラインと入社手続を社会保険労務士の観点から整理します。
日本に進出して現地スタッフを雇うとき、給与そのものだけでなく、会社が上乗せで負担する社会保険・労働保険のコストを見込んでおく必要があります。中国・台湾企業の人事・経営層と、その現地の会計・人事アドバイザーに向けて、日本で人を雇うと会社にいくらかかるのかの全体像を示します。具体的な料率は毎年度改定されるため、金額は最新の一次情報で確認してください。
日本で人を雇うと、会社にかかる社会保険料には何があるのか?
日本の会社(法人)が従業員を雇うと、会社は次の保険の保険料を負担します。健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険は労働者と会社が分け合い、労災保険と子ども・子育て拠出金は会社が全額負担します。
| 保険・拠出金 | 主な対象 | 負担 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 病気・けが・出産などの医療 | 労使折半 |
| 介護保険 | 40歳以上65歳未満の被保険者 | 労使折半 |
| 厚生年金保険 | 老齢・障害・遺族の年金 | 労使折半 |
| 雇用保険 | 失業給付・育児休業給付など | 労使で分担(会社が多め) |
| 労災保険 | 業務・通勤による災害 | 全額会社負担 |
| 子ども・子育て拠出金 | 児童手当等の財源 | 全額会社負担 |
健康保険・厚生年金・介護保険は日本年金機構(または健康保険組合)へ、雇用保険・労災保険は労働保険としてまとめて国へ納めます。会社を設立した直後に何をいつ届け出るかは会社をつくったら、いつまでに何を出すのかに整理しています。
労使折半の料率と会社の負担はどのくらいか?
主な料率は次のとおりです(令和8年度=2026年度。健康保険と労災保険の率は都道府県・業種で変わるため、正確な値は協会けんぽ・厚生労働省で確認してください)。
| 保険・拠出金 | 料率(合計) | 会社負担の目安 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険 | 18.3%(平成29年9月以降固定) | 労使折半で会社9.15% |
| 健康保険 | 都道府県別(協会けんぽ・全国でおおむね10%前後) | 労使折半 |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62%(協会けんぽ・令和8年度) | 労使折半で会社0.81% |
| 雇用保険(一般の事業) | 1.35%(令和8年度) | 会社0.85%(本人0.5%) |
| 労災保険 | 業種別 | 全額会社負担 |
| 子ども・子育て拠出金 | 0.36%(令和8年度) | 全額会社負担(厚生年金の標準報酬に乗じる) |
これらを合わせると、会社負担は報酬額のおおむね15〜16%程度になることが多く、支払う給与に上乗せで発生します(40歳以上は介護保険の分だけ増えます)。保険料は毎月の給与だけでなく賞与にもかかります。料率は年度ごとに改定されるため、人件費の試算には最新の料率表を使ってください。厚生年金の料率が18.3%で固定されている点と労使折半の考え方は、短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかでも前提にしています。
社会保険への加入義務は、どのラインから生じるのか?
法人は、社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金保険)の強制適用事業所になります。日本に子会社や支店(登記した法人)を作れば、その時点で適用事業所です。従業員個々の加入義務は、次のラインで判断します。
- 社会保険(健康保険・厚生年金):正社員のほか、1週の所定労働時間と1月の所定労働日数がいずれも通常の労働者の4分の3以上のパート等は被保険者。被保険者が51人以上の特定適用事業所では、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上などの短時間労働者にも適用が広がります。
- 雇用保険:1週の所定労働時間が20時間以上(2028年10月からは10時間以上)で、31日以上の雇用見込みがある人。昼間学生は原則対象外です。
- 労災保険:労働者を1人でも使用する事業に強制適用され、国籍・在留資格・労働時間を問わず労働者に適用されます。
外国人であっても、この判定は日本人とまったく同じです。国籍で加入の有無が変わることはありません。4分の3基準の具体的な数え方は短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかを、外国人を1人雇うときに動く手続の全体像は外国人を1人雇うと、窓口はいくつ必要かをご覧ください。
外国人従業員の入社で必要な資格取得の手続は何か?
外国人を雇い入れたときは、日本人と同じ社会保険・雇用保険の手続に加えて、外国人特有の届出が1つ増えます。
| 手続 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 日本年金機構(年金事務所) | 事実の発生から5日以内 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | ハローワーク | 資格取得の事実があった月の翌月10日まで |
| 外国人雇用状況の届出 | ハローワーク | 雇用保険の被保険者は資格取得届が兼用。それ以外は翌月末日まで |
外国人雇用状況の届出は、雇い入れ・離職のたびに必要で(労働施策総合推進法第28条第1項)、届け出ないと30万円以下の罰金の対象になります。在留資格・在留期間・国籍などを届け出ます。詳しくは外国人を雇ったら、ハローワークに届け出るを参照してください。中国から駐在で受け入れる場合の社会保障協定(二重加入の調整)は中国駐在・中国人社員の社会保険に、台湾のように協定がない場合は台湾から人を雇う・出向で受け入れるときの社会保険にまとめています。
ご自身のケースについて相談したい方へ
社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。
会社設立・在留資格・税務は、誰にどう分けて頼むのか?
日本に進出して人を雇うまでには、担当する資格が分かれます。それぞれ別の契約になります。
| やること | 主な担当 |
|---|---|
| 労働・社会保険の適用、資格取得・喪失の届出、雇用契約・就業規則の整備、給与計算 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 会社設立の登記申請 | 司法書士 |
| 会社設立後の法人設立届・源泉徴収・給与の税務 | 税理士 |
| 在留資格(経営・管理、技術・人文知識・国際業務など)の申請・取次 | 行政書士 |
| 事業所・社宅となる物件探し | 宅地建物取引業者 |
在留資格の申請・取次は四葉行政書士事務所、事業所や社宅の物件は四葉不動産へおつなぎすることもできますが、四葉行政書士事務所・四葉不動産は当事務所とは独立した事業体で、社会保険労務士業務・行政書士業務・宅地建物取引業務は別々にご契約いただきます(一括受任はしません)。当事務所は紹介料を受け取りません。社宅を用意する場合の現物給与の扱いは社宅を貸すと、社会保険料が上がることがあるを参照してください。
四葉社会保険労務士事務所では、日本での社会保険・労働保険の適用の整理、資格取得・喪失の届出、給与計算、雇用契約・就業規則の整備についてご相談いただけます。ご相談は無料で、費用は報酬額表にまとめています。
よくある質問
Q. 日本に子会社を作って社長1人だけのとき、社会保険には入りますか?
A. 入ります。法人は代表者1人でも健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所になり、報酬を受ける代表者は被保険者になります。従業員を雇えば労働保険(労災・雇用保険)も必要です。労災保険は労働者を1人でも使用する事業に強制適用されます。
Q. 会社が負担する保険料は、給与のどのくらいですか?
A. 健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険の会社負担分と、全額会社負担の労災保険・子ども・子育て拠出金を合わせると、おおむね報酬額の15〜16%程度になることが多いです。健康保険料率は都道府県別、労災保険料率は業種別で、40歳以上は介護保険の分が加わります。正確な率は年度ごとに改定されるため最新の料率表で確認してください。
Q. 外国人を雇うと、日本人より手続は増えますか?
A. 社会保険・雇用保険の加入判定と手続は日本人と同じです。ただし雇い入れ・離職のたびに「外国人雇用状況の届出」がハローワークへ必要で(労働施策総合推進法第28条第1項)、届け出ないと30万円以下の罰金の対象になります。雇用保険の被保険者は資格取得届が兼用になります。
Q. 中国から駐在で送る社員も、日本の社会保険に入りますか?
A. 日本の適用事業所で常時使用される限り、国籍を問わず原則として日本の被保険者になります。ただし日中社会保障協定により、5年以内の一時派遣なら適用証明書で日本の年金加入を免れる仕組みがあります(対象は年金のみ)。台湾には協定がないため、この仕組みは使えません。詳しくは各記事をご覧ください。
この記事の根拠
- 厚生年金保険料率:18.3%(平成29年〔2017年〕9月以降固定)、労使折半で会社・本人各9.15%(厚生年金保険法/日本年金機構)
- 健康保険料率:協会けんぽは都道府県ごとに設定され、労使折半。全国でおおむね10%前後(健康保険法/全国健康保険協会。2026年9月15日参照)
- 介護保険料率:協会けんぽ 令和8年度 1.62%、労使折半で会社・本人各0.81%(40歳以上65歳未満の被保険者。全国健康保険協会。2026年9月15日参照)
- 雇用保険料率:令和8年度(2026年度)一般の事業は合計13.5/1000(1.35%)、うち会社負担8.5/1000・本人負担5/1000(厚生労働省。2026年9月15日参照)
- 労災保険料率:業種別に定められ、全額事業主負担(労働者災害補償保険法/労働保険の保険料の徴収等に関する法律)
- 子ども・子育て拠出金率:令和8年度 0.36%(1,000分の3.6)、全額事業主負担で厚生年金の標準報酬月額・標準賞与額に乗じる(子ども・子育て支援法/日本年金機構。2026年9月15日参照)
- 加入義務:法人は代表者1人でも社会保険の強制適用事業所。パート等は所定労働時間・日数が通常の労働者の4分の3以上で原則加入、特定適用事業所(被保険者51人以上)では週20時間以上等の短時間労働者にも適用拡大。雇用保険は週20時間以上・31日以上の雇用見込み(2028年10月から10時間以上)。労災は労働者を使用する事業に強制適用(健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法・労働者災害補償保険法)
- 外国人雇用状況の届出:雇い入れ・離職のときにハローワークへ。届出をしないと30万円以下の罰金(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第28条第1項)
- 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条
この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、日本での労働・社会保険の適用、資格取得・喪失の届出、給与計算、雇用契約・就業規則の整備についてご相談いただけます。会社設立の登記は司法書士の業務、設立後の税務は税理士の業務、在留資格の申請・取次は行政書士の業務、物件の仲介は宅地建物取引業者の業務です。社会保険労務士業務・行政書士業務・宅地建物取引業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の事案で保険料や加入義務がどうなるかの最終判断は、年金事務所・日本年金機構・労働局が行います。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。保険料の額や加入義務など個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・日本年金機構・全国健康保険協会など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「働き方」から、整理しませんか。
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