保育所を開設するときの労務|保育士の配置基準・処遇改善・シフトの組み方
浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
保育所を開設するときの労務は、保育士の配置基準を満たす人員計画から始まります。配置基準は児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第33条第2項で、乳児おおむね3人に1人、満1歳以上満3歳未満おおむね6人に1人、満3歳以上満4歳未満おおむね15人に1人、満4歳以上おおむね25人に1人(保育所1つにつき最低2人)と定められています。ここに、早番・遅番・延長保育をさばく変形労働時間制のシフト、処遇改善等加算に対応した賃金規程、パート保育士の社会保険の判断が重なります。配置基準が人員計画にどう跳ね返るか、シフトの組み方、賃金規程、社会保険の適用判断、そして設置手続き・物件を誰に振るかを整理します。個別の園が配置基準・加算の要件を満たすかの最終判断は自治体・こども家庭庁が行います。
結論(先に要点):保育所を開設するときの労務は、まず保育士の配置基準を満たす人員計画から始めます。配置基準は児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第33条第2項で、乳児おおむね3人に1人、満1歳以上満3歳未満おおむね6人に1人、満3歳以上満4歳未満おおむね15人に1人、満4歳以上おおむね25人に1人(保育所1つにつき最低2人)と定められています。ここに、早番・遅番・延長保育をさばく変形労働時間制のシフト、処遇改善等加算に対応した賃金規程、パート保育士の社会保険の判断が重なります。この記事では、配置基準が人員計画にどう跳ね返るか、シフトの組み方、処遇改善等加算に対応した賃金規程、社会保険の適用判断、そして設置手続き・物件を誰に振るかを、社会保険労務士の労務管理の視点で整理します。
保育所(認可・小規模認可・企業主導型を含む)を新しく開くと、資格者の確保・シフト・賃金・社会保険の手続きが一気に立ち上がります。このページは、これから園を開く事業者や、既存の園で労務体制を整えたい経営者の方に向けて、労務の入口を順序立てて整理します。個別の園が配置基準を満たすかどうかや、加算の要件を満たすかどうかの最終判断は、認可・確認をする自治体(都道府県・市町村)やこども家庭庁の要綱に照らして確認してください。
保育士の配置基準は労務の人員計画にどう跳ね返るのか?
配置基準は、単に「何人雇うか」ではなく、時間帯ごとに何人を配置し続けられるかという勤務計画の問題です。基準は児童数(年齢区分)で決まります。
| 区分 | 保育士の数(おおむね) |
|---|---|
| 乳児(満1歳未満) | 3人に1人 |
| 満1歳以上満3歳未満 | 6人に1人 |
| 満3歳以上満4歳未満 | 15人に1人(改正前は20人に1人) |
| 満4歳以上 | 25人に1人(改正前は30人に1人) |
このほか、保育所1つにつき保育士は最低2人を下ることはできません(同基準第33条第2項ただし書)。満3歳以上満4歳未満(15人に1人)と満4歳以上(25人に1人)の数字は、令和6年(2024年)4月の改正で見直されたものです。ただし当分の間は従前の基準(満3歳以上満4歳未満は20人に1人、満4歳以上は30人に1人)で運営することも妨げないとする経過措置が設けられています。経過措置の期限や取扱いは今後変わりうるため、適用は自治体・こども家庭庁の最新の案内で確認してください(2026年9月参照)。
労務の側から見ると、配置基準は「開所している全時間帯で満たし続ける」必要があります。早朝から夜まで長く開く園ほど、基準人数×開所時間をカバーする延べ人数が要り、常勤だけでなくパートを組み合わせて回すことになります。何人を常勤何人分と数えるかは常勤換算の考え方が関わるため、障害福祉・介護の常勤換算はどう数えるかの数え方もあわせてご覧ください(考え方は保育でも共通します)。
早番・遅番・延長保育のシフトは変形労働時間でどう組むのか?
保育所は開所時間が1日11時間前後に及び、延長保育を入れるとさらに長くなります。1人の職員が朝から夜まで通しで働くことはできないため、早番・遅番・中番を組み合わせます。ここで使うのが変形労働時間制です。
| 制度 | 根拠 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 1か月単位の変形労働時間制 | 労働基準法第32条の2 | 1か月以内の期間を平均して週40時間以内に収める。就業規則または労使協定で定める |
| 1年単位の変形労働時間制 | 労働基準法第32条の4 | 1年以内の期間を平均して週40時間以内に収める。労使協定と届出が必要。1日10時間・週52時間などの上限がある |
早番・遅番の1日の所定労働時間を8時間より長い日と短い日に振り分けたいときは、変形労働時間制を就業規則・労使協定に定めます。定めがないまま8時間を超えてシフトを組むと、その超過は時間外労働になり割増賃金が必要です。制度の選び方は変形労働時間制とフレックスの選び方で整理しています。延長保育や行事で所定を超えたときの割増、休憩の確保、年次有給休暇の5日取得義務(年5日の有給、取り切れないときどうする)も、シフト表と一体で設計します。
処遇改善等加算に対応した賃金規程はどう作ればよいのか?
保育所の賃金は、こども家庭庁の処遇改善等加算と切り離せません。加算を受け取るには、賃金規程・就業規則の整備と、賃金改善が確実に行われることが前提になります。
| 加算 | ねらい | 労務で整えること |
|---|---|---|
| 処遇改善等加算Ⅰ | 職員全体の賃金改善(キャリアパス要件) | 職位・職責・職務内容に応じた勤務条件・賃金体系を就業規則等に明記し、周知する |
| 処遇改善等加算Ⅱ | 技能・経験に応じた処遇改善 | 副主任保育士・職務分野別リーダー等の発令と、それに応じた手当を賃金規程に定める |
| 処遇改善等加算Ⅲ | 収入の底上げ(賃金改善) | 対象職員の賃金を確実に改善し、実績を報告できるよう記録する |
加算は「もらって終わり」ではなく、受け取った額を人件費として職員に配分し、実績報告で確認されます。賃金規程が加算の要件と食い違っていると、実績報告でつまずきます。加算の名称・要件・配分ルールは改定が重なっているため、最新の実施要綱で確認してください(2026年9月参照)。加算の設計思想は業種は違いますが介護職員等処遇改善加算に対応した賃金規程の作り方の考え方も参考になります。個別の加算区分をいくつ取得できるかの最終判断は、自治体・こども家庭庁が要綱に照らして行います。
パート保育士・短時間勤務者の社会保険はどう判断するのか?
保育所は短時間のパート保育士が多く、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に入るかどうかの線引きが実務の要になります。判断の物差しは2つあります。
| 判断の物差し | 内容 |
|---|---|
| 4分の3基準 | 1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が、同じ事業所の通常の労働者の4分の3以上であれば適用される |
| 短時間労働者の適用拡大 | 特定適用事業所(2024年10月から従業員数が常時51人以上)では、週の所定労働時間20時間以上・月額賃金8.8万円以上・学生でない、などの要件を満たすパートも適用される |
まず4分の3基準に当てはまるかを見て、当てはまらなくても、事業所の規模と本人の勤務条件によっては適用拡大の対象になります。園の規模が大きくなるほど、短時間のパートも社会保険に入れる場面が増えます。要件と契約内容の関係は短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかで詳しく整理しています。人を10人以上使う園は就業規則の作成・届出も義務になります(従業員10人で就業規則、何が必要か)。
設置・指定・物件はそれぞれ誰に振り分ければよいのか?
保育所の開設は、労務のほかに、設置・確認の手続きと物件の要件が絡みます。担い手は業務ごとに分かれます。
| すること | 誰の業務か |
|---|---|
| 労働時間・シフトの管理、雇用契約書・就業規則・賃金規程の整備、社会保険・労働保険の手続、給与計算 | 社会保険労務士(当事務所) |
| 認可・認可外の設置手続き、企業主導型の申請など行政に出す書類の作成 | 行政書士 |
| 物件の用途地域・面積の確認、賃貸借・売買 | 宅地建物取引業者 |
| 建築確認・用途変更の設計 | 建築士 |
| 労使間の紛争・解雇をめぐる争い | 弁護士 |
| 会計・税務の申告 | 税理士 |
当事務所は労務管理の情報提供・手続に限ります。設置手続きや企業主導型の申請については四葉行政書士事務所へ、物件の用途地域・面積の確認については四葉不動産へおつなぎすることもできますが、社会保険労務士業務・行政書士業務・宅地建物取引業は、それぞれ独立した事業体が担い、別々にご契約いただく前提です。一括受任はしません。個別の園が配置基準や加算の要件を満たすかどうかの最終的な判断は、認可・確認をする自治体(都道府県・市町村)やこども家庭庁の要綱に照らして行われます。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、保育所の開設・運営について、保育士の配置基準を満たす人員計画づくり、変形労働時間制と延長保育に対応したシフト・就業規則の整備、処遇改善等加算に対応した賃金規程、社会保険・労働保険の適用手続き、給与計算をお受けします。パート保育士の社会保険の適用判断や、実績報告に耐える記録づくりもお手伝いします。ご相談は無料です。 料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。
設置手続き・企業主導型の申請は四葉行政書士事務所(独立した事業体・別々にご契約)へ、物件の用途地域・面積の確認は四葉不動産(独立した事業体・別々にご契約)へ、労使紛争は弁護士へご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 保育士の配置基準は令和6年の改正でどう変わりましたか?
A. 満3歳以上満4歳未満が20人に1人から15人に1人へ、満4歳以上が30人に1人から25人に1人へ見直されました(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第33条第2項)。ただし当分の間は従前の基準で運営することも妨げないとする経過措置があります。経過措置の期限や取扱いは変わりうるため、適用は自治体・こども家庭庁の最新の案内で確認してください(2026年9月参照)。
Q. 早番・遅番のシフトを組むのに、変形労働時間制は必ず要りますか?
A. 1日8時間・週40時間の枠に収まる範囲でシフトを組むだけなら、変形労働時間制がなくても組めます。ただし、日によって所定労働時間を8時間より長くしたり短くしたりして開所時間をカバーしたい場合は、1か月単位(労働基準法第32条の2)または1年単位(同第32条の4)の変形労働時間制を就業規則・労使協定に定める必要があります。定めがないまま8時間を超えると時間外労働になります。
Q. 処遇改善等加算をもらうには、賃金規程をどう整えればよいですか?
A. 加算Ⅰはキャリアパス要件として職位・職責・職務内容に応じた勤務条件・賃金体系を就業規則等に明記すること、加算Ⅱは副主任保育士等の発令とそれに応じた手当を定めること、加算Ⅲは対象職員の賃金を確実に改善することが前提です。受け取った額を人件費として配分し、実績報告できるよう記録します。要件は改定が重なっているため、最新の実施要綱で確認してください(2026年9月参照)。
Q. 短時間のパート保育士は社会保険に入れなければなりませんか?
A. まず4分の3基準(週の所定労働時間・月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上)に当てはまれば適用されます。当てはまらなくても、従業員が常時51人以上の特定適用事業所では、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・学生でないなどの要件で適用拡大の対象になります。園の規模と本人の勤務条件で判断が変わります。
この記事の根拠
- 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第33条第2項(保育士の配置基準=乳児おおむね3人に1人、満1歳以上満3歳未満おおむね6人に1人、満3歳以上満4歳未満おおむね15人に1人、満4歳以上おおむね25人に1人、保育所1つにつき最低2人)/e-Gov法令検索により条文を確認(2026年9月参照)
- 満3歳以上満4歳未満(20人→15人)・満4歳以上(30人→25人)の配置基準の見直し(令和6年4月)と、当分の間は従前の基準でも運営できるとする経過措置は、こども家庭庁の保育所運営に関する通知・案内により確認(2026年9月参照)。経過措置の期限・取扱いは改定されうる
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条の2(1か月単位の変形労働時間制)・第32条の4(1年単位の変形労働時間制)/e-Gov法令検索により条文を確認(2026年9月参照)
- 処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲの区分・要件・賃金改善の考え方は、こども家庭庁の処遇改善等加算に関する実施要綱・案内により確認(2026年9月参照)。名称・要件・配分ルールは改定されうる
- 短時間労働者の社会保険適用(4分の3基準、特定適用事業所=2024年10月から常時51人以上、週20時間以上・月額賃金8.8万円以上・学生でない等の要件)は、健康保険法・厚生年金保険法および日本年金機構の案内により確認(2026年9月参照)
この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。労働時間・シフトの管理、雇用契約書・就業規則・賃金規程の整備、社会保険・労働保険の手続、給与計算は社会保険労務士の業務です。認可・認可外の設置手続きや企業主導型の申請は行政書士の業務、物件の用途地域・面積の確認は宅地建物取引業者の業務、建築確認・用途変更は建築士の業務、労使紛争は弁護士の業務、会計・税務の申告は税理士の業務です。社会保険労務士業務・行政書士業務・宅地建物取引業は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の園が配置基準・加算の要件を満たすかどうかの最終判断は、認可・確認をする自治体(都道府県・市町村)やこども家庭庁の要綱に照らして行われます。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
「働き方」から、整理しませんか。
四葉社会保険労務士事務所(文京区小日向・東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分)が、労務の現状整理からお手伝いします。
LINEは代表・浦松丈二に直接つながります。24時間受付・順次お返事します。
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅 徒歩5分|火・水 10:00〜19:00/月・木・金・土・日 18:00〜19:00
