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2026.09.08外国人雇用

台湾・中国の親会社から出向してくる外国人の社会保険と労働保険

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

台湾・中国の親会社から企業内転勤・出向で来日した外国人は、日本の適用事業所に使用される限り、国籍を問わず日本の健康保険・厚生年金保険に加入するのが原則です(健康保険法・厚生年金保険法)。ただし中国から来る出向者は、日中社会保障協定(2019年9月1日発効)により、5年以内の一時的な派遣であれば年金保険料の二重払いを避けられます(協定の対象は年金のみで、医療保険・労災保険は対象外)。台湾との間には社会保障協定がないため、この免除の仕組みは使えません。出向者が日本の社会保険に入るかの判断、本国払いと日本払いの給与の扱い、適用証明書による二重加入の回避、労災・雇用保険の適用範囲、そして在留資格・給与課税を誰に振るかを整理します。個別の適用の最終判断は年金事務所・労働基準監督署・ハローワークが行います。

結論(先に要点):台湾・中国の親会社から企業内転勤・出向で来日した外国人は、日本の適用事業所に使用される限り、国籍を問わず日本の健康保険・厚生年金保険に加入するのが原則です(健康保険法・厚生年金保険法)。ただし中国から来る出向者は、日中社会保障協定(2019年9月1日発効)により、5年以内の一時的な派遣であれば年金保険料の二重払いを避けられます(協定の対象は年金のみで、医療保険・労災保険は対象外)。台湾との間には社会保障協定がないため、この免除の仕組みは使えません。この記事では、出向者が日本の社会保険に入るかの判断、本国払い給与と日本払い給与の扱い、適用証明書による二重加入の回避、労災・雇用保険の適用範囲、そして在留資格・給与課税を誰に振るかを、社会保険労務士の視点で整理します。

台湾・中国等の親会社から出向者を受け入れる日本法人の人事の方、および現地で日本側の受け入れを支援する人事・会計の専門家の方に向けて、社会保険・労働保険の適用の考え方を順に整理します。個別の出向者について適用の有無を確定するには、使用関係や報酬の実態に基づく事実認定が必要になるため、最終的には年金事務所・労働基準監督署・ハローワークに確認してください。

企業内転勤で来日した出向者は日本の社会保険に入るのか?

日本の健康保険・厚生年金保険は、適用事業所に「使用される」人に適用されます。国籍や在留資格の種類は要件ではありません。判断の中心は、日本の受け入れ法人との間に使用関係があるかです。

出向の形社会保険(健康保険・厚生年金)の考え方
在籍出向(本国の会社に籍を残しつつ日本法人の指揮命令下で働く)日本法人との使用関係と報酬の支払があれば、日本で適用されるのが原則
移籍出向(本国の会社との雇用関係を終了し日本法人に移る)日本法人に雇用されるため、日本で適用される
出張・短期の役務提供にとどまる場合使用関係の実態により、適用されないこともある。事実認定による

企業内転勤(入管法別表第一の二の在留資格「企業内転勤」)で来ても、それ自体が社会保険の適用を決めるわけではありません。決め手は在留資格ではなく、日本の適用事業所に使用されているという実態です。外国人雇用の入口の整理は外国人雇用の窓口、誰に何を頼むかもあわせてご覧ください。

本国払いの給与と日本払いの給与で保険料はどう計算するのか?

出向者は、日本法人から受ける給与のほかに、本国の親会社から本国で給与を受け続けることがあります(いわゆる留守宅手当・本国給与)。ここで問題になるのが、標準報酬月額をどの報酬で決めるかです。

報酬の区分標準報酬月額への算入の考え方
日本の適用事業所から支払われる給与労働の対償として受ける報酬として、標準報酬月額の基礎になる
本国の親会社から本国で支払われる給与日本の使用関係に基づく労働の対償といえるかで扱いが分かれ、事実認定による
実費弁償的な手当(住居・帰国旅費等の一部)報酬に当たるかを個別に判断する

標準報酬月額は「労働の対償として受けるすべてのもの」を基礎にしますが、本国払い分を含めるかどうかは、日本の使用関係に基づく報酬といえるかという実態判断になります。本国給与が大きい出向者ほど金額への影響が大きいので、確定させる前に年金事務所に確認するのが安全です。数字だけで判断せず、出向契約書・給与の支払実態とそろえて整理します。

日中社会保障協定の適用証明で二重加入は避けられるのか?

社会保障協定は、同じ人が2つの国の社会保険に二重に加入して保険料を払う状態を避けるための取り決めです。中国と台湾では、使える仕組みがまったく違います。

出向元協定二重加入の回避
中国日中社会保障協定(2019年9月1日発効)5年以内の一時派遣なら、中国の年金制度に加入したまま日本の厚生年金保険の適用を免除できる。適用証明書で証明する。対象は年金のみで、医療保険・労災保険は対象外
台湾なし社会保障協定がないため、この免除の仕組みは使えない。日本の要件を満たせば日本の社会保険に加入する

中国から来る出向者について、派遣期間が5年以内の見込みなら、中国の実施機関が発行する適用証明書を用意することで、日本の厚生年金保険への加入を免除できます。ただし協定の対象は年金だけなので、健康保険(医療保険)は協定では免除されず、日本で加入するのが原則です。派遣が5年を超える見込みになった場合の延長の取扱いは、両国の実施機関の判断によります。発効国や対象制度は国ごとに異なるため、最新の一覧は日本年金機構の社会保障協定のページで確認してください(2026年9月参照)。日本から中国へ駐在させる逆方向の整理は中国駐在の社会保障協定と二重加入にあります。台湾からの出向者は協定がないため、日本の社会保険の要件(短い時間で雇うと、社会保険はどうなるかの4分の3基準など)に沿って判断します。

出向者に労災・雇用保険はどこまで適用されるのか?

労働保険(労災保険・雇用保険)は、社会保険(健康保険・厚生年金)とは別の物差しで判断します。協定の対象外である点にも注意が要ります。

制度出向者への適用の考え方
労災保険国籍・在留資格を問わず、日本国内の事業で働く労働者に適用される。出向者は、指揮命令を受けて実際に労働する出向先の事業で適用されるのが原則
雇用保険生計の主たる賃金を受ける雇用関係について被保険者になる。日本払い給与が主か本国払いが主かで判断が分かれる

労災保険は、社会保障協定があってもなくても関係なく、日本の事業で働く以上は適用されます。中国から来た出向者でも、協定は年金の話なので労災には影響しません。国内で被災した外国人が帰国したあとの補償は外国人労働者が労災に遭い帰国したらで整理しています。雇用保険は、出向でどちらの賃金が主たる生計のもとかによって被保険者資格の判断が分かれるため、日本払い・本国払いの内訳を明らかにしてハローワークに確認します。個別の適用の有無は労働基準監督署・ハローワークが判断します。

在留資格の申請と給与課税はそれぞれ誰に相談すればよいのか?

出向者の受け入れは、労務のほかに在留資格と税務が絡みます。担い手は業務ごとに分かれます。

すること誰の業務か
社会保険・労働保険の適用手続、標準報酬の届出、雇用契約・就業規則の整備、給与計算、適用証明書に関する労務の整理社会保険労務士(当事務所)
在留資格「企業内転勤」等の申請・変更(申請取次)行政書士
給与課税・租税条約・短期滞在者免税の判定、納税管理人の届出税理士(納税管理人の届出先は税務署)
労使間の紛争弁護士

当事務所は労務・社会保険の情報提供・手続に限ります。在留資格の申請・変更(申請取次)については四葉行政書士事務所へおつなぎすることもできますが、社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体が担い、別々にご契約いただく前提です。一括受任はしません。給与課税・租税条約・納税管理人は税理士(届出先は税務署)へご案内します。個別の出向者について社会保険・労働保険の適用が成り立つかどうかの最終判断は、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークが行います。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、台湾・中国等の親会社から出向者を受け入れる日本法人について、社会保険・労働保険の適用手続き、標準報酬月額の整理、日中社会保障協定の適用証明にかかわる労務の段取り、雇用契約・就業規則の整備、給与計算をお受けします。本国払い給与と日本払い給与の内訳を整理し、年金事務所・ハローワークへの確認をお手伝いします。ご相談は無料です。 料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。

在留資格「企業内転勤」等の申請・変更(申請取次)は四葉行政書士事務所(独立した事業体・別々にご契約)へ、給与課税・租税条約・納税管理人は税理士へご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。

よくある質問

Q. 企業内転勤の在留資格なら、日本の社会保険には入らなくてよいのですか?
A. 在留資格の種類は社会保険の適用要件ではありません。日本の適用事業所に使用されている実態があれば、国籍・在留資格を問わず健康保険・厚生年金保険に加入するのが原則です(健康保険法・厚生年金保険法)。中国からの出向者は、日中社会保障協定により5年以内の一時派遣であれば年金部分の適用を免除できますが、健康保険(医療保険)は協定の対象外です。

Q. 中国からの出向者の年金は、日本と中国のどちらに払うのですか?
A. 日中社会保障協定(2019年9月1日発効)により、5年以内の一時派遣であれば、中国の年金制度に加入したまま日本の厚生年金保険の適用を免除できます。中国の実施機関が発行する適用証明書で証明します。協定の対象は年金のみで、医療保険・労災保険は対象外です。5年を超える見込みになった場合の取扱いは両国の実施機関の判断によります。

Q. 台湾の親会社から来た出向者にも、社会保障協定の免除は使えますか?
A. 使えません。日本と台湾の間には社会保障協定がないため、二重加入を避ける免除の仕組みがありません。台湾からの出向者は、日本の適用事業所に使用されていれば、日本の社会保険の要件(4分の3基準など)に沿って加入を判断します。

Q. 本国から支払われる給与も、日本の社会保険料の計算に入れるのですか?
A. 標準報酬月額は労働の対償として受けるすべてのものを基礎にしますが、本国払い給与を含めるかは、日本の使用関係に基づく報酬といえるかという実態判断になります。本国給与が大きい出向者は金額への影響が大きいため、確定させる前に出向契約書・給与の支払実態とそろえて年金事務所に確認することをおすすめします。

この記事の根拠

  • 健康保険法(大正11年法律第70号)・厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)の適用(適用事業所に使用される者・報酬の範囲)/e-Gov法令検索により条文を確認(2026年9月参照)。出向者の適用は使用関係・報酬の実態に基づく事実認定による
  • 社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定(2019年9月1日発効。対象は年金=日本側は国民年金・厚生年金、5年以内の一時派遣は派遣元国のみに加入し適用証明書で証明。医療保険・労災保険は対象外)は、日本年金機構「日・中社会保障協定」の案内により確認(2026年9月参照)。台湾との間に社会保障協定はない
  • 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一の二の在留資格「企業内転勤」/e-Gov法令検索により確認(2026年9月参照)。在留資格それ自体は社会保険の適用要件ではない
  • 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)・雇用保険法(昭和49年法律第116号)の適用範囲(労災は国籍・在留資格を問わず適用、出向者は指揮命令下の出向先で適用が原則。雇用保険は生計の主たる賃金を受ける雇用関係で被保険者)は、e-Gov法令検索および厚生労働省・ハローワークの案内により確認(2026年9月参照)
  • 発効国・対象制度は国により異なるため、最新の一覧は日本年金機構の社会保障協定のページで確認(2026年9月参照)

この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。社会保険・労働保険の適用手続、標準報酬の届出、雇用契約・就業規則の整備、給与計算は社会保険労務士の業務です。在留資格の申請・変更(申請取次)は行政書士の業務、給与課税・租税条約・納税管理人の届出は税理士の業務(届出先は税務署)、労使紛争は弁護士の業務です。社会保険労務士業務と行政書士業務は、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の出向者について社会保険・労働保険の適用が成り立つかどうかの最終判断は、年金事務所・労働基準監督署・ハローワークが行います。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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