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外国人雇用

海外で採用した外国人の『入社前』の労務──在留資格認定証明書の交付待ちと渡航遅延

多様な人材が働く職場づくりのイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

海外で採用した外国人は、在留資格認定証明書(CoE)の交付と入国を経てからでないと就労を始められません。雇用契約は、入国・在留資格取得を『始期』や『停止条件・解除条件』にかからせて設計し、就労開始前は原則として賃金支払義務が生じない整理にします。CoEは出入国管理及び難民認定法第7条の2が定める証明書で、申請は受入れ機関の職員その他法務省令で定める者を代理人として行え、申請取次の資格を持つ行政書士が代理できます。採用時には労働条件の明示が必要で、2024年4月1日施行の改正で就業場所・業務の変更の範囲などが明示事項に加わりました(労働基準法第15条、職業安定法第5条の3)。CoEが交付されない・渡航できない場合の内定取消の可否や、入社前研修・待機期間・費用負担の扱いを整理し、在留資格の申請取次は行政書士、内定取消の有効性など個別紛争は弁護士、入国後の住居は不動産の領域として、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく前提で分けます。CoEの標準処理期間は変動するため確定値は示さず、最新は出入国在留管理庁の公表で確認します。

結論(先に要点):海外で採用した外国人は、在留資格認定証明書(CoE)の交付と入国を経てからでないと就労を始められません。雇用契約は、入国・在留資格取得を「始期」や「停止条件・解除条件」にかからせて設計し、就労開始前は原則として賃金支払義務が生じない整理にします。CoEの申請取次は行政書士、入社後の社会保険・労働保険・就業規則は社会保険労務士の担当です。

内定から入社まで、在留資格認定証明書(CoE)の交付はどれくらいかかるか?

海外から外国人を呼び寄せて雇う流れは、国内での採用と順序が違います。まず受入れ機関(雇う会社)が在留資格認定証明書(CoE)の交付を申請し、交付された証明書を本人に送り、本人が現地の日本国大使館・総領事館で査証(ビザ)の発給を受け、来日して上陸許可を受けて、はじめて在留資格をもって働けます。この一連の手続が終わるまで、本人は日本で就労できません。

CoEは、出入国管理及び難民認定法第7条の2が定める証明書です。法務大臣(出入国在留管理庁)が、上陸のための条件に適合している旨をあらかじめ証明するもので、短期滞在で入国しようとする者などは対象外です。同条は、この申請を受入れ機関の職員その他法務省令で定める者を代理人として行えると定めており、申請取次の資格を持つ行政書士が代理人として申請できる根拠にもなっています。

交付までの期間は、申請区分・時期・入国管理の繁閑で変わります。出入国在留管理庁は標準処理期間を公表していますが、確定値として示せる数字ではなく、申請ごとに前後します。入社予定日を設計するときは、本稿では具体的な期間を確定値として示さず、最新の標準処理期間を出入国在留管理庁の公表で確認することをおすすめします。採用計画は、交付が想定より遅れる前提で、余裕をもって組むのが安全です。外国人を雇うときの手続全体の振り分けは外国人を雇うとき、何を誰に頼むかに整理しています。

雇用契約の『始期』はいつに設定すべきか(始期付・解除条件付)?

内定は、一般に、効力の発生を将来にかからせた労働契約(始期付解約権留保付労働契約)と理解されています。海外採用では、この「始期」をいつに置くかが実務の要です。CoEの交付や入国・在留資格の取得という、会社と本人のどちらにも完全には支配できない条件が間に挟まるためです。

設計の考え方は大きく2つを組み合わせます。

要素内容ねらい
始期付(効力の始期)労働契約の効力発生日を、入国・在留資格取得後の特定日に置く入国前は労働契約が本格的に効力を生じない整理にする
停止条件・解除条件「在留資格を取得し適法に就労できること」を条件にするCoEが交付されない・入国できない場合の帰結を契約で定めておく

採用時には、労働条件を書面等で明示する義務があります。労働基準法第15条第1項は、労働契約の締結に際し賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定め、2024年4月1日施行の改正で就業場所・業務の変更の範囲などが明示事項に加わりました。募集の段階では職業安定法第5条の3が労働条件の明示を求めています。海外採用では、始業日(始期)の定め、在留資格取得を前提とする旨、渡航や入社前研修の費用負担の扱いを、明示事項とあわせて書面で残します。労働条件明示の2024年改正の範囲は労働条件明示のルール改正に整理しています。中国・台湾の人材を技術・人文知識・国際業務で採る場合の在留資格と労務の関係は技人国で中国・台湾の人材を採るときの労務と在留もあわせてご確認ください。

交付が遅れて渡航できないとき、賃金や内定取消はどう扱うか?

就労を始める前の段階では、原則として賃金支払義務は生じません。労働契約の効力発生日(始期)を入国・在留資格取得後に置いていれば、入国前に賃金を支払う義務は通常ありません。ただし、これは契約の定め方次第であり、始期や条件の書き方があいまいだと、いつから賃金が発生するかで争いになり得ます。

CoEが交付されない、または交付されても入国できないときの扱いは、内定取消として整理するか、停止条件・解除条件の不成就として整理するかで意味が変わります。内定取消は解雇に準じて扱われ、客観的に合理的で社会通念上相当と認められる理由が必要とされています。これに対し、「在留資格を取得し適法に就労できること」を条件として契約に組み込んでおけば、条件が成就しなかった場合として整理できる余地があります。どちらの構成が妥当か、個別の事案でその取消・不成就が有効と認められるかは、契約内容と経緯に照らした法的判断になり、社会保険労務士ではなく弁護士の領域です。相談先の分け方は社員を辞めてもらうとき、社労士と弁護士のどちらに頼むのかを、国内の留学生の新卒入社日と在留資格変更の扱いは留学生の新卒入社日と在留資格変更をご覧ください。個別の内定取消の可否の判断そのものは内定取消はできるかに整理しています。

渡航遅延は、本人の責めによらない事情で起こることが多い論点です。遅延時の待機の扱い・費用負担・入社予定日の再設定を、トラブルになる前に契約と社内規程で定めておくのが実務です。

入社前研修や待機期間の労務・費用負担はどうするか?

入社前に研修を行う場合、その研修が業務性を帯びる(参加が事実上強制され、会社の指揮命令下で行われる)なら、労働時間として賃金の対象になり得ます。入国前のオンライン研修でも同じ考え方です。任意参加の自己学習と、義務づけられた研修とでは扱いが分かれるため、どちらなのかを募集・契約の段階で明確にします。

費用負担も設計事項です。

項目検討の視点
渡航費(航空券等)会社負担か本人負担か、負担する場合の条件(早期離職時の取扱いを含む)を契約で明示
入社前研修業務性があれば労働時間=賃金。任意か義務かを明確にする
待機期間入国までの待機を有給の労務とするか、始期前として賃金対象外とするかを契約で定める
住居入国後の住まいの確保は不動産の領域。寮を用意する場合は寄宿舎規則や賃金控除の労使協定の要否を確認

ご自身のケースについて相談したい方へ

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早期離職時に渡航費等の返還を求める取り決めは、労働基準法が禁じる賠償予定(第16条)に当たらない形にする必要があり、設計には注意が要ります。費用負担の取り決めは、本人が内容を十分に理解したうえで合意していることが前提です。

在留手続と入社後の労務は誰に振るか?

役割を最初に切り分けておくと、入社前後の手続が滞りません。

担当内容
行政書士(申請取次)在留資格認定証明書(CoE)の交付申請の取次、在留資格の該当性の整理。社会保険労務士は在留資格の申請取次ができないため、ここは行政書士に振る
社会保険労務士雇用契約の始期・条件の設計、労働条件明示、入社後の社会保険・労働保険の資格取得、就業規則・賃金規程の整備
弁護士内定取消の有効性など個別の法的紛争
税理士所得税・租税条約の取扱い
不動産入国後の住居の確保

在留資格の申請取次は行政書士の業務で、社会保険労務士の業務とは独立した事業体として、それぞれ別々にご契約いただきます。入社後の社会保険・雇用保険は、国籍を問わず被保険者の要件を満たせば加入します。入社後の外国人雇用の全体像は外国人を雇うとき、何を誰に頼むかに整理しています。

よくある質問

Q. 海外採用で、入国前の待機期間中も賃金を払う必要がありますか?
A. 原則として、労働契約の効力発生日(始期)を入国・在留資格取得後に置いていれば、入国前の待機期間について賃金を支払う義務は通常生じません。ただし、これは契約の定め方次第です。始期や条件があいまいだと、いつから賃金が発生するかで争いになり得ます。入国前の待機を有給で扱うか、始期前として賃金対象外とするかを、雇用契約書や内定通知で明確に定めておくことをおすすめします。

Q. 在留資格認定証明書(CoE)が交付されなかった場合、内定を取り消せますか?
A. 「在留資格を取得し適法に就労できること」を契約の条件として組み込んでおけば、条件が成就しなかった場合として整理できる余地があります。一方、条件を定めずに内定取消として処理する場合は、解雇に準じて客観的に合理的で社会通念上相当な理由が必要とされます。どちらの構成が妥当か、個別の事案でその処理が有効と認められるかは契約内容と経緯による法的判断で、社会保険労務士ではなく弁護士の領域です。採用の段階で契約の条件を整えておくことが、後の紛争を防ぎます。

Q. 入国前にオンラインで入社前研修をしてもらうのは、労働時間になりますか?
A. その研修が業務性を帯びる場合、すなわち参加が事実上強制され会社の指揮命令下で行われる場合は、労働時間として賃金の対象になり得ます。任意参加の自己学習であれば扱いが異なります。入国前・就労開始前であっても、会社が義務づけて行わせる研修は賃金が発生し得るため、任意か義務かを募集・契約の段階で明確にし、労働条件として明示しておくことが必要です。

Q. 在留資格認定証明書の申請は、社会保険労務士に頼めますか?
A. 在留資格の申請取次は行政書士(申請取次の資格を持つ者)の業務で、社会保険労務士は行えません。出入国管理及び難民認定法第7条の2は、受入れ機関の職員その他法務省令で定める者を代理人として申請できると定めており、申請取次行政書士がこれにあたります。社会保険労務士は、雇用契約の設計や入社後の社会保険・労働保険、就業規則の整備を担当します。両者は独立した事業体として、それぞれ別々にご契約いただきます。

この記事の根拠

  • 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第7条の2第1項 ── 法務大臣は、本邦に上陸しようとする外国人(短期滞在等を除く)から申請があったときは、上陸のための条件に適合している旨の証明書(在留資格認定証明書)を交付することができる。第2項 ── 当該申請は、当該外国人を受け入れようとする機関の職員その他の法務省令で定める者を代理人として行うことができる
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項 ── 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。2024年4月1日施行の改正により、就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲などが明示事項に追加(労働基準法施行規則第5条)
  • 同法第16条 ── 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない
  • 職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3 ── 公共職業安定所、職業紹介事業者、求人者等は、求職者・労働者になろうとする者に対し、従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない
  • 内定の法的性質(始期付解約権留保付労働契約)は判例によって形成された理解であり、個別の内定取消の有効性は契約内容と経緯による法的判断(弁護士の領域)
  • 在留資格認定証明書の交付までの標準処理期間は、申請区分・時期で変動するため確定値を示さない。最新の標準処理期間は出入国在留管理庁の公表で確認する(2026年11月1日時点でこの点を確認)
  • 条文は e-Gov法令検索で2026年11月1日に確認。CoEが交付されない場合の取消・条件不成就の構成の当否、入社前研修の業務性、費用返還の取り決めの有効性は、個別の契約と事案ごとに確認が必要

この記事は、個別の該当性を判断するものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、海外で採用した外国人の雇用契約の始期・条件の設計、労働条件の明示、入社前研修・待機期間・費用負担の社内規程への落とし込み、入国・入社後の社会保険・労働保険の資格取得についてご相談いただけます。在留資格認定証明書(CoE)の申請取次は行政書士の業務で、社会保険労務士の業務とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。内定取消の有効性など個別の法的紛争は弁護士、所得税・租税条約は税理士、入国後の住居は不動産の領域で、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。ご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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