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外国人雇用

農業で特定技能の外国人を雇うとき、労働時間の扱いと労務はどうなる?

多様な人材が働く職場づくりのイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

農業は労働基準法第41条第1号で労働時間・休憩・休日の規定が適用除外ですが、深夜割増(第37条)・年次有給休暇(第39条)・最低賃金は適用されます。適用除外になるのは別表第一第六号(林業を除く)・第七号の農業・畜産・養蚕・水産で、林業はこの除外から外れています。特定技能・育成就労の外国人を農業で雇うときも労務のルールは日本人と同じで、労働条件通知(母語対応・2024年4月改正)、社会保険・雇用保険、労災が適用され、特定技能の報酬は日本人と同等額以上が必要です。適用除外でも安全配慮義務(労働契約法第5条)は残ります。在留資格「特定技能」の申請・支援計画は行政書士(申請取次)または弁護士、源泉徴収や租税条約は税理士の領域で、労働条件・就業規則・社会保険・労災の労務は社会保険労務士が、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。

結論(先に要点):農業は労働基準法第41条第1号で労働時間・休憩・休日の規定が適用除外ですが、深夜割増(第37条)・年次有給休暇(第39条)・最低賃金は適用されます。外国人を雇う場合も労務ルールは同じで、在留資格の手続は行政書士の領域です。

農業・畜産で特定技能や育成就労の外国人を雇うとき、「農業は労働時間のルールが適用されないから自由に働かせてよい」という誤解が、最も事故につながります。適用除外になる範囲とされない範囲の線引きを、外国人雇用の文脈で整理します。

農業は、労働時間・休日のルールが他業種と違うのは本当か?

本当です。農業・畜産・養蚕・水産の事業に従事する人については、労働基準法のうち労働時間・休憩・休日に関する規定が適用されません(労働基準法第41条第1号)。天候や季節、生き物の世話に左右され、1日8時間・週40時間という一律の枠になじまない事業だからです。

ただし「適用されない」のは労働時間・休憩・休日の規定に限られます。深夜割増・年次有給休暇・最低賃金・安全衛生・労災といった他のルールは農業にも適用されます。ここを「すべて自由」と広げて理解すると、割増賃金の未払いや年休の未付与という違反になります。

労基法41条で適用除外になるのは何で、適用されるのは何(深夜・年休・最賃)?

適用除外になるのは、1日・1週の法定労働時間(第32条)、休憩(第34条)、休日(第35条)、そして時間外・休日労働の割増賃金(第36条・第37条のうち時間外と休日の部分)です。逆に、適用されるものは次のとおりです。

項目根拠条文農業での扱い
労働時間・休憩・休日労働基準法第32条・第34条・第35条適用除外(第41条第1号)。1日8時間を超えても時間外割増は発生しない
深夜割増労働基準法第37条第4項適用あり。午後10時〜午前5時の労働には2割5分以上の割増が必要
年次有給休暇労働基準法第39条適用あり。要件を満たせば付与義務・年5日の時季指定義務も生じる
最低賃金最低賃金法適用あり。地域別最低賃金以上を支払う
安全衛生・健康診断労働安全衛生法適用あり。雇入時・定期の健康診断等が必要
労災保険労働者災害補償保険法国籍・在留資格を問わず適用される

第41条第1号が指すのは、労働基準法別表第一の第六号(林業を除く土地の耕作・植物の栽植等)と第七号(動物の飼育・水産動植物の採捕等)の事業です。林業はこの適用除外から外れており、労働時間のルールが適用される点に注意します。

特定技能・育成就労の外国人を農業で雇うときの、在留と労務の接点は?

在留資格「特定技能」の農業分野や、技能実習に代わる育成就労で外国人を受け入れるときも、労務のルールは日本人と同じです。労働条件の明示(労働基準法第15条)、社会保険・雇用保険の加入(要件を満たせば国籍を問わず)、最低賃金、安全衛生、労災はすべて適用されます。特定技能の報酬は日本人が従事する場合と同等額以上でなければなりません。

接点で問題になりやすいのは、「農業は労働時間が適用除外だから」と、外国人に過度な長時間労働をさせてしまうことです。適用除外でも深夜割増・年休・最賃・安全配慮義務は残るため、労働時間の記録自体はきちんと行います。外国人雇用の全体像は外国人雇用の窓口はどこで分ける?、同等以上の報酬と労働条件通知は外国人の同等賃金と労働条件通知で整理しています。

繁忙期の長時間労働は、どこまで許される?(適用除外の限界と安全配慮)

収穫期などの繁忙期に長く働いてもらうこと自体は、労働時間の規定が適用除外である農業では、時間外割増を伴わずに可能です。しかし「無制限」ではありません。使用者には労働者の生命・身体の安全を確保する安全配慮義務(労働契約法第5条)があり、過重労働による健康障害を防ぐ責任は残ります。

また、深夜に及べば深夜割増が必要で、年次有給休暇の付与義務もあります。母語での意思疎通が十分でない外国人ほど、休憩や休日、体調不良の申し出がしにくくなりがちなので、適用除外に甘えず、休息と安全の仕組みを就業規則・労働条件通知に落とし込むのが安全です。

社会保険・労災・労働条件通知(母語対応)は、どう整える?

農業でも、法人なら社会保険は強制適用です(個人経営は業種・人数で扱いが変わるため個別に確認します)。労災保険は国籍・在留資格を問わず適用され、雇用保険も被保険者要件を満たせば加入します。労働条件の明示は2024年(令和6年)4月1日から明示事項が追加され(就業場所・業務の変更の範囲など)、外国人には本人が理解できる方法での明示が求められます。

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整えるもの根拠ポイント
労働条件通知書(母語併記)労働基準法第15条第1項・外国人指針2024年4月1日からの追加明示事項を反映。理解できる方法で示す
社会保険・雇用保険の加入健康保険法・厚生年金保険法・雇用保険法法人は強制適用。要件を満たせば国籍を問わず加入
労災保険労働者災害補償保険法国籍・在留資格を問わず適用
就業規則労働基準法第89条常時10人以上なら作成・届出。深夜・年休・安全の扱いを明記

在留手続・労務・税務は、誰が担う?

在留資格「特定技能」の申請・支援計画の作成・届出や、育成就労に伴う入管手続は行政書士(申請取次)の領域で、社会保険労務士は在留申請の取次ができません。給与の源泉徴収や租税条約の適用は税理士の領域です。労働条件・就業規則・社会保険・労災といった労務は社会保険労務士が担います。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただき、当事務所は紹介料を受け取りません。

ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容とご相談の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 農業は残業代を払わなくてよいというのは本当ですか?
A. 時間外・休日労働の割増賃金については本当です。農業は労働時間・休憩・休日の規定が適用除外のため(労働基準法第41条第1号)、1日8時間・週40時間を超えても時間外割増は発生しません。ただし深夜(午後10時〜午前5時)に働かせた場合の深夜割増(第37条第4項)は支払う必要があり、年次有給休暇や最低賃金も適用されます。

Q. 特定技能の外国人なら、日本人より低い賃金で雇えますか?
A. いいえ。特定技能の報酬は、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上でなければなりません。最低賃金法も国籍を問わず適用され、地域別最低賃金を下回る賃金は認められません。賃金の立証資料や労働条件通知書の整備は社会保険労務士がお引き受けします。

Q. 林業も農業と同じで労働時間が適用除外ですか?
A. いいえ。労働基準法第41条第1号は別表第一第六号のうち林業を除いています。したがって林業には労働時間・休憩・休日の規定が適用され、時間外・休日労働には割増賃金が必要です。農業・畜産・養蚕・水産とは扱いが異なります。

Q. 在留資格の申請も社会保険労務士に頼めますか?
A. いいえ。在留資格「特定技能」の申請・変更や支援計画の届出は行政書士(申請取次)または弁護士の領域で、社会保険労務士は在留申請の取次ができません。社会保険労務士がお引き受けするのは、労働条件・就業規則・社会保険・労災といった労務です。行政書士・税理士とはそれぞれ独立した事業体として、お客様から直接ご契約いただきます。

この記事の根拠

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第41条第1号(別表第一第六号〈林業を除く。〉又は第七号に掲げる事業に従事する者については、労働時間・休憩・休日に関する規定〈第4章・第6章・第6章の2のうち該当部分〉を適用しない)・第37条第4項(深夜〈午後10時から午前5時まで〉の割増賃金は2割5分以上。農業にも適用)・第39条(年次有給休暇。農業にも適用)・第15条第1項(労働条件の明示)・第89条(就業規則の作成・届出)
  • 労働基準法別表第一 第六号(土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業)・第七号(動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業)
  • 最低賃金法(昭和34年法律第137号)── 地域別最低賃金は国籍・在留資格を問わず適用される
  • 労働契約法(平成19年法律第128号)第5条(使用者の安全配慮義務)
  • 出入国在留管理庁「特定技能」農業分野の運用要領・分野別運用方針、育成就労(技能実習に代わる制度)の関係法令(2026年10月1日参照)
  • 厚生労働省「外国人労働者に対する労働条件の明示」2024年(令和6年)4月1日施行の労働条件明示事項の追加(就業場所・業務の変更の範囲等。労働基準法施行規則第5条改正)の案内(2026年10月1日参照)
  • 個人経営の農業における社会保険の適用の有無、特定技能・育成就労の個別の運用要件の当てはめは、事案ごとに分かれます。本記事では個別の結論を出していません(未検証)

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ有資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、農業の労働時間・深夜割増・年次有給休暇の整理、外国人の労働条件通知(母語併記)・就業規則・社会保険・労災の整備についてご相談いただけます。在留資格「特定技能」の申請・支援計画は行政書士(申請取次)または弁護士、源泉徴収や租税条約は税理士が担います。それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただき、当事務所は紹介料を受け取りません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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