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2026.08.31投資・事業用不動産

中国語圏の買主が日本の売買契約で誤解しやすい条項(手付・ローン特約・契約不適合)は?

浦松 丈二

浦松 丈二

代表取締役・宅地建物取引士(四葉不動産株式会社)

プロフィール(士業ドットコム)↗

中国語圏の買主が日本の売買契約でつまずきやすいのは、①手付が中国の「定金」と役割が違うこと(民法第557条=解約手付)②ローン特約で契約が無条件に白紙へ戻る仕組み③契約不適合責任を「知った時から1年以内の通知」で行使する期間(民法第566条)、の3つです。東京都文京区の宅地建物取引士兼行政書士が、中国の商習慣との違いをふまえ、契約書と重要事項説明書のどの条項を先に読むかを条文から整理します。

結論(先に要点):中国語圏の買主が日本の売買契約でつまずきやすいのは、①手付が中国の「定金」と役割が違うこと②ローン特約(融資利用の特約)で契約が無条件に白紙へ戻る仕組み③契約不適合責任を「知った時から1年以内に通知」で行使する期間、の3つです。いずれも契約書と重要事項説明書で条項を先に読めば防げます。

中国本土・台湾・香港で日本の不動産購入を支援する現地の専門家と、その顧客である買主に向けて、日本の売買契約書の3つの条項——手付、ローン特約、契約不適合責任——を、中国の商習慣との違いをふまえて読み解きます。当社は日本側の媒介・情報提供を担い、条項の有効性判断や紛争は弁護士、所有権移転登記は司法書士、税務と納税管理人は税理士へ、それぞれ分けてご案内します。

手付金は中国の「定金」と同じですか、手付解除はいつまでできますか?

同じではありません。日本の手付は原則「解約手付」で、契約を任意に解除するための代償です。

日本の売買契約で買主が売主に交付する手付は、民法(明治29年法律第89号)第557条第1項により、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約を解除できるとされています。2020年(令和2年)4月1日施行の改正で、判例をふまえ「償還」が「現実に提供して」と明文化されました。ここが中国の「定金」と決定的に違う点です。中国の定金は債務不履行への担保としての性格が強く、違約があれば没収または倍返しになりますが、日本の解約手付は違約がなくても、履行の着手前なら手付を捨てて(または倍返しして)抜けられるという、任意解除の仕組みです。

論点日本の手付(解約手付)中国の定金(一般的な理解)
主な性格任意解除の代償債務不履行の担保
買主が抜けるとき手付を放棄(履行の着手前まで)違約があれば没収
売主が抜けるとき倍額を現実に提供(同前)違約があれば倍返し
期限相手方が履行に着手するまで契約の履行・違約の有無による

なお、売主が宅地建物取引業者(不動産会社)の場合は、宅地建物取引業法第39条により手付は代金の10分の2(20%)までに制限され、名目を問わず解約手付として扱われます。「履行の着手」がいつかは事案で判断が分かれるため、有効性の最終判断は弁護士の領域です。売買契約書の読み方は、賃貸借について書いた「賃貸借契約書、どこを読めばいいか」と同じ姿勢で、条項ごとに確かめます。

ローン特約(融資利用の特約)で契約が白紙に戻るのはどんなときですか?

買主が予定した住宅ローン等の融資が、特約で定めた期日までに承認されなかったときです。無条件で解除でき、手付も戻ります。

ローン特約(融資利用の特約)は、買主が金融機関の融資を前提に購入する場合に置く条項です。国土交通省が示す標準的な売買契約書式にも記載例があり、特約で定めた融資が承認されなかったとき、買主は違約金や手付の放棄なしに契約を解除でき、受け取った手付は買主へ返還されるのが通常です。契約を「白紙に戻す」と言われるのはこの効果です。

確認する項目見るポイント
融資利用の特約の有無現金購入ではローン特約を置かないのが通常。融資前提なら必ず入れる
融資額・金融機関・承認の期日特約で特定した条件で承認が下りなかったときに効く。期日を過ぎると使えない
解除の効果手付の返還、違約金の不発生。ここが契約書と一致しているか
停止条件型か解除条件型かどちらの構成かで、期日到来時の手続き(解除の意思表示の要否)が変わる

期日を1日でも過ぎると特約が使えなくなるため、融資の申込みと審査の日程を、特約の期日から逆算します。非居住者は日本での融資が受けにくく、現金購入になる場合はローン特約自体を置かないことも多い。この見極めが資金計画の出発点です。

契約不適合責任は引渡し後どこまで、いつまで主張できますか?

引き渡された不動産が契約の内容に適合しないとき、買主は追完・代金減額・損害賠償・解除を求められます。ただし種類・品質の不適合は「知った時から1年以内の通知」が要ります。

2020年施行の改正民法は、旧「瑕疵担保責任」を契約不適合責任に改めました。売主が種類・品質・数量・権利に関して契約の内容に適合しない目的物を引き渡したとき、買主は民法第562条(履行の追完請求)、第563条(代金減額請求)、第564条(第415条の損害賠償・第541条・第542条の解除)に基づいて対応を求められます。

ただし期間の制約があります。民法第566条は、種類または品質の不適合について、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ通知しないと、これらの権利を失うとしています(売主が引渡し時に不適合を知り、または重大な過失で知らなかった場合を除く)。数量・権利の不適合には、この566条の期間制限はかかりません。

論点内容
買主が求められること追完(補修・代替)、代金減額、損害賠償、契約解除
種類・品質の不適合の期間不適合を知った時から1年以内に通知(民法第566条)
特約売主が宅建業者なら、通知期間を「引渡しから2年以上」とする特約以外の買主に不利な特約は無効(宅建業法第40条)
個人間売買契約不適合責任を免責・限定する特約が置かれることが多い。契約書で範囲を確認

中古住宅では、契約不適合責任をどこまで負うかを特約で調整するのが実務です。売主が個人か宅建業者かで、置ける特約の範囲が変わります。条項の有効性の最終判断は弁護士の領域です。重要事項説明書のどこを読むかは中国語圏の買主に日本の収益物件を紹介する前に読む重要事項説明の要点に、現地の専門家と組んで進める形は現地プロと組んで日本の不動産を扱うにまとめています。

重要事項説明と売買契約書で、非居住者の買主が特に確認すべき点はどこですか?

重要事項説明(宅建業法第35条)で物件の負担・制限を、契約書面(第37条)で手付・ローン特約・契約不適合の3条項を確かめます。非居住者は、これに登記・税務・外為法の確認が重なります。

宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第35条は、契約成立までの間に宅地建物取引士が書面を交付して重要事項を説明することを求め、第37条は契約成立後に交付する書面(契約書面)の記載事項を定めています。非居住の買主が加えて確認するのは次の点です。

論点何を確認するか担当
手付・ローン特約・契約不適合第37条書面と契約書の条項が説明どおりか宅地建物取引業者(説明)・弁護士(有効性判断)
所有権移転登記名義変更の登記、必要書類(署名証明・宣誓供述書等)司法書士
税務・納税管理人取得・保有・譲渡に伴う課税、納税管理人の届出税理士
外為法上の報告非居住者による本邦不動産取得が報告対象になるか(目的・態様で分かれる)行政書士・専門家

日本に住所のない買主は、登記の添付書類(印鑑証明に代わる署名証明など)や決済の段取りが居住者と異なります。契約条項の有効性そのものの判断や、紛争になったときの対応は弁護士の業務で、当社は行いません。当社は日本側の物件調査・重要事項説明・媒介・契約を担い、繁体字・簡体字での資料提供に対応します。投資・事業用不動産の全体像は投資・事業用不動産のご相談にまとめています。

契約条項の有効性や紛争、登記・税務は、それぞれ誰に相談すればよいですか?

日本側の物件調査・重要事項説明・媒介・契約が当社の役割で、それ以外は分けます。

日本側の物件の調査、重要事項説明、価格と条件の調整、媒介と売買契約は、四葉不動産株式会社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)が承ります。重要事項説明は、当社の宅地建物取引士が第35条にもとづいて行います。現地(中国本土・台湾・香港)の専門家と当社は、それぞれ独立した事業体です。役割の重なる部分は、どちらが何を担うかを契約の前に明確にし、別々にご契約いただきます。

契約条項の有効性の判断や紛争は弁護士、所有権移転登記は司法書士、取得・保有・譲渡の税務と納税管理人の届出は税理士、外為法上の報告は行政書士・専門家へ、それぞれ直接ご依頼いただく形をご案内します。当社は、紹介料・送客手数料を受け取ることも支払うこともありません。相談は無料です。

よくある質問

Q. 日本の手付は、中国の「定金」と同じように没収・倍返しになりますか?
A. 性格が違います。日本の手付は原則「解約手付」で、民法第557条により、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して、違約がなくても任意に解除できます。中国の定金が債務不履行の担保として機能するのとは仕組みが異なります。売主が宅建業者の場合は手付が代金の20%までに制限されます。個別の適用や「履行の着手」の判断は弁護士にご確認ください。

Q. 融資が下りなかったら、必ず契約を白紙にできますか?
A. ローン特約(融資利用の特約)を契約に置き、特約で定めた融資が期日までに承認されなかった場合に限り、無条件で解除でき手付も戻ります。特約がない現金購入や、期日を過ぎた場合は使えません。特約で特定した金融機関・融資額・期日と、実際の申込み・審査の日程が合っているかを、契約前に確かめてください。

Q. 契約不適合責任は、引渡しから何年でも主張できますか?
A. いいえ。民法第566条により、種類または品質の不適合は、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、追完・代金減額・損害賠償・解除の権利を失います(売主が引渡し時に悪意・重過失の場合を除く)。売主が宅建業者なら、通知期間を引渡しから2年以上とする特約以外の買主に不利な特約は無効です(宅建業法第40条)。個人間売買では免責特約が置かれることが多く、契約書で範囲を確認します。

Q. 非居住者でも重要事項説明を受け、日本の不動産を買えますか?
A. 買えます。宅地建物取引士が第35条にもとづいて説明し、相手方の承諾があれば書面を電磁的方法で交付でき、テレビ会議による説明も一定の要件で認められます。ただし登記の添付書類(署名証明など)、決済、税務(納税管理人の届出)、外為法上の報告は居住者と段取りが異なります。登記は司法書士、税務は税理士、外為法は行政書士・専門家へ、それぞれ直接ご相談ください。

この記事の出典(一次情報)

  • e-Gov法令検索「民法」(明治29年法律第89号。第557条第1項=手付(履行の着手まで買主は放棄・売主は倍額を現実に提供して解除。2020年〈令和2年〉4月1日施行の改正で明文化)、第562条=追完請求、第563条=代金減額請求、第564条=損害賠償・解除、第566条=種類・品質の不適合は買主が知った時から1年以内の通知。2026年8月31日参照
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(昭和27年法律第176号。第35条=重要事項の説明、第37条=契約締結時の書面交付、第39条=手付の額の制限等(自ら売主の場合、代金の10分の2まで・解約手付とみなす)、第40条=担保責任についての特約の制限(引渡しから2年以上とする特約を除き買主に不利な特約は無効)。2026年8月31日参照
  • 国土交通省「不動産取引に関する各種様式・標準媒介契約約款等」(重要事項説明・書面交付の様式・考え方。融資利用の特約(ローン特約)は標準的な売買契約書式に記載例がある。2026年8月31日参照

※手付解除における「履行の着手」の有無、ローン特約の効果、契約不適合責任の特約の有効性は、契約書の文言と個別の事情で変わります。本記事では具体的な条項の有効性を断定していません(個別判断は弁護士の業務であり、【未検証】として扱っています)。
※中国の「定金」の性格は、準拠する法域・契約の内容により異なります。本記事は日本の手付との一般的な違いを示すもので、中国法の解釈を断定するものではありません。
※非居住者の登記添付書類・税務・外為法上の報告の要否は、区分や取得の目的・態様で変わります。本記事では具体的な税額・税率や報告の該当性を断定していません。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の法的判断・税務判断を示すものではありません。契約条項の有効性判断・紛争は弁護士、所有権移転登記は司法書士、税務は税理士、外為法上の報告は行政書士・専門家が行います。
※日本側の物件の調査・重要事項説明・媒介および売買契約は四葉不動産株式会社(宅地建物取引業)が担い、現地の専門家とは、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で進めます。紹介料・送客手数料のやりとりはありません。

この記事の執筆者

浦松 丈二(うらまつ・じょうじ)——宅地建物取引士(東京都知事登録 第293544号)・行政書士(登録番号 第25087022号)。四葉不動産株式会社 代表取締役(宅地建物取引業 東京都知事(1)第113304号)/四葉行政書士事務所 代表。東京都文京区小日向・茗荷谷駅徒歩約5分。繁体字・簡体字での資料提供に対応し、中国語圏の買主と現地の専門家に向けて、売買契約書の条項と条文を対応づけて確認します。詳しい経歴は著者ページをご覧ください。

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