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2026.09.18労務のしくみ

医師の時間外労働、2024年からの上限規制はどう守るのか

浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

2024年(令和6年)4月1日から、病院・診療所の医師の時間外・休日労働にも上限がかかりました。原則は年960時間・月100時間未満(A水準)で、地域医療などの事情がある医療機関は都道府県知事の指定を受けて年1860時間まで認められます(連携B・B・C水準)。上限を緩めるかわりに、面接指導(医療法第108条)と勤務間インターバルという健康確保措置がセットで義務になります。36協定・就業規則・勤務シフトの設計と宿日直許可の申請支援は社会保険労務士、医療機関の開設許可は行政書士の領域で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。

結論(先に要点):2024年(令和6年)4月1日から、病院・診療所に勤める医師の時間外・休日労働にも上限がかかりました。原則は年960時間・月100時間未満(A水準)で、地域医療などの事情がある医療機関は都道府県知事の指定を受けて年1860時間まで認められます(連携B・B・C水準)。上限を緩めるかわりに、面接指導と勤務間インターバルという健康確保措置がセットで義務になります。

医師の時間外労働の管理・36協定・就業規則の整備は社会保険労務士がお引き受けします。宿日直許可の申請先は労働基準監督署で、当事務所が申請を支援します。医療機関の開設許可や施設基準の申請は行政書士の業務で、四葉行政書士事務所が独立した事業体として別々にご契約のうえ承ります。個別の判断は面談のうえ資格者が行います。

医師の時間外労働の上限は、2024年から具体的に何時間になったのか?

一般の労働者は2019年から時間外労働の上限規制が適用されていましたが、医師は5年間の猶予を経て、2024年(令和6年)4月1日から適用が始まりました。根拠は労働基準法第141条(医業に従事する医師の特例)で、具体的な上限時間は同条を受けた厚生労働省令・告示で定められています。

水準年の上限月の上限主な対象
A水準960時間100時間未満(原則)すべての医師の原則
連携B水準通算1860時間100時間未満(原則)複数医療機関で通算して長時間になる医師
B水準1860時間100時間未満(原則)地域医療の確保に必要な業務
C水準1860時間100時間未満(原則)臨床研修医・専攻医の研修、高度技能の育成

月100時間未満の上限は、後述する面接指導を実施した場合には適用されない扱いがあります。上限を超えて働かせると、労働基準法違反として罰則の対象になり得ます。前提となる36協定の締結・届出や労働時間の把握が整っていないと、そもそも上限管理ができません。36協定の考え方は36協定と残業——社労士はどこまで見るのかに整理しています。

A水準・連携B・B・C水準は、どう選ぶのか?

水準は医療機関が自由に名乗れるものではありません。A水準は原則で、指定は要りません。年960時間を超える時間外・休日労働をさせる必要がある場合に、都道府県知事の指定を受けて連携B・B・C水準の医療機関になります。

水準指定される医療機関の種類どんなときに選ぶか
A水準指定なし(原則)年960時間以内で運用できる
連携B水準連携型特定地域医療提供機関大学病院等から派遣され、複数の医療機関の勤務を通算すると長時間になる医師がいる
B水準特定地域医療提供機関救急・在宅・災害医療など地域医療の確保に欠かせない業務がある
C-1水準技能向上集中研修機関臨床研修医・専攻医が研修プログラムで集中的に症例を経験する
C-2水準特定高度技能研修機関高度な技能を計画的に習得させる

指定を受けるには、労働時間短縮計画の作成や、医療機関勤務環境評価センターの評価など、決められた手続を踏む必要があります。連携B・B水準は2035年度末を目標に終了する方向、C水準も将来に向けて縮減する方向とされており、暫定的な特例である点に注意が要ります。個々の医師がどの水準に当たるかの最終的な判断は、指定権者や医療機関の体制によります。

年960時間と年1860時間の線引きは、何で決まるのか?

線引きは「その医師の勤務が、指定を受けた業務に当たるか」で決まります。同じ病院でも、B水準の指定業務に従事する医師は年1860時間まで、それ以外の医師はA水準の年960時間、というように医師ごとに上限が変わります。

連携B水準は考え方が独特です。派遣先それぞれの医療機関では36協定上の上限を年960時間以内に収めつつ、複数の医療機関の労働時間を通算すると年1860時間まで認める、という仕組みです。自院だけを見ていては通算の上限を超えていることに気づけないため、派遣元・派遣先の間で労働時間を把握し合う運用が要ります。

論点確認すること
医師ごとの上限どの業務がどの水準の指定に当たるか、医師単位で整理する
通算(連携B)副業・兼業・派遣先の労働時間を本人の申告等で把握する
労働時間の把握客観的な方法で始業・終業を記録する(自己研鑽との切り分けを含む)
割増賃金時間外・深夜・休日の割増賃金(労働基準法第37条)を正しく計算する

自己研鑽が労働時間に当たるかどうかは、上司の指示の有無などで判断が分かれる論点で、この記事では個別の結論を出しません。

面接指導や勤務間インターバルは、どこまで義務なのか?

上限を緩めるかわりに、医療法に基づく追加的健康確保措置がセットになります。中心は面接指導と勤務間インターバルの2つです。

面接指導は、1か月の時間外・休日労働が100時間以上になることが見込まれる医師に対し、100時間に達する前に医師が行うもので、医療法第108条により医療機関の管理者に義務づけられています。これはA水準の医療機関を含め、すべての医療機関に共通する義務です。

勤務間インターバルと連続勤務時間制限・代償休息は、特定労務管理対象機関(連携B・B・C水準の指定を受けた医療機関)では義務、A水準では努力義務です。

措置内容A水準連携B・B・C水準
面接指導月100時間以上見込みの医師に、達する前に実施義務義務
連続勤務時間制限始業から28時間まで(宿日直許可の当直明けを除く)努力義務義務
勤務間インターバル(通常の日勤・宿日直許可のない宿日直)始業から24時間以内に9時間の連続した休息努力義務義務
勤務間インターバル(宿日直許可のある宿日直)始業から46時間以内に18時間の連続した休息努力義務義務
代償休息インターバル等を確保できなかった場合に、翌月末までに付与努力義務義務

面接指導の結果、必要と認められれば、就業上の措置(勤務停止など)を講じることになります。医療機関の労務では、この健康確保措置を就業規則や勤務シフトにどう落とし込むかが実務の中心になります。夜勤・宿直を含むシフトと労働時間の考え方はクリニック開業の労務——宿日直・看護師の社会保険にも整理しています。

宿日直許可と上限規制は、どう組み合わせて運用するのか?(振り先の整理)

宿日直許可は、上限規制とセットで考える論点です。労働基準監督署の宿日直許可を受けた時間は、原則として労働時間としては扱われず、上限の時間数にも算入されません。逆に許可がなければ、宿直の時間はまるごと労働時間になり、上限をすぐに超えてしまいます。宿日直許可の基準そのものは医療・介護の宿日直許可の基準に整理しています。この記事は宿日直許可ではなく、時間外労働の年間上限(A・B・C水準)と健康確保措置に絞っています。

ご自身のケースについて相談したい方へ

社会保険・給与・労務について、状況をお聞かせください。

担当は次のように分かれます。

論点担当
36協定・就業規則・勤務シフト・労働時間の把握・割増賃金の設計社会保険労務士(当事務所)
宿日直許可の申請(提出先は労働基準監督署)社会保険労務士が申請を支援
水準の指定に必要な労働時間短縮計画の作成支援社会保険労務士
医療機関の開設許可・施設基準など医療法上の申請行政書士
医業経営に関する税務税理士

医療機関の開設許可や施設基準の申請は行政書士の業務で、四葉行政書士事務所が独立した事業体として承り、必要な場合はお客様に別々にご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。

四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?

当事務所がお引き受けするのは、医師の時間外労働の上限規制に対応するための労務の設計です。

  • 36協定(特別条項を含む)の作成・届出と、水準に応じた上限管理の設計
  • 就業規則・賃金規程の整備と、面接指導・勤務間インターバル・代償休息の運用ルールづくり
  • 労働時間の把握の仕組み(自己研鑽・宿日直との切り分けを含む)の設計
  • 宿日直許可の申請の支援
  • 時間外・深夜・休日の割増賃金の計算の設計

次のものは、当事務所では扱いません。

  • 医療機関の開設許可・施設基準など医療法上の申請 → 四葉行政書士事務所が別の事業体として承ります
  • 個々の医師がどの水準に当たるかの最終判断、指定の可否 → 指定権者(都道府県)が判断します
  • 医業経営に関する税務 → 税理士へおつなぎします

四葉社会保険労務士事務所と四葉行政書士事務所は、それぞれ独立した事業体として業務を受任します。別の専門家が必要な場合も、お客様に直接ご契約いただく形をご案内し、当事務所は紹介料を受け取りません。

ご相談は無料です。費用は報酬額表に、サービス内容ご相談の流れもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 医師の時間外労働は、2024年から何時間までになったのですか?
A. 原則は年960時間・月100時間未満で、これをA水準と呼びます。地域医療の確保に必要な業務や研修などの事情があり、都道府県知事の指定を受けた医療機関では、連携B・B・C水準として年1860時間まで認められます。根拠は労働基準法第141条と、これを受けた厚生労働省令・告示です。上限を超えて働かせると労働基準法違反として罰則の対象になり得ます。個々の医師がどの水準に当たるかは、業務の内容と医療機関の指定によります。

Q. すべての病院がB水準やC水準になれるのですか?
A. なれません。A水準が原則で、年960時間を超える時間外・休日労働をさせる必要がある医療機関だけが、労働時間短縮計画の作成や医療機関勤務環境評価センターの評価などの手続を経て、都道府県知事から連携B・B・C水準の指定を受けます。連携B・B水準は2035年度末を目標に終了する方向、C水準も縮減の方向とされる暫定的な特例です。指定の可否は指定権者が判断します。

Q. 面接指導や勤務間インターバルは、どの病院でも義務ですか?
A. 面接指導は、月100時間以上の時間外・休日労働が見込まれる医師に対し、A水準を含むすべての医療機関で義務です(医療法第108条)。一方、連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル(通常の日勤等は始業から24時間以内に9時間、宿日直許可のある宿日直は始業から46時間以内に18時間の連続した休息)・代償休息は、連携B・B・C水準の医療機関では義務、A水準では努力義務です。

Q. 宿日直許可があると、上限規制の時間はどうなりますか?
A. 労働基準監督署の宿日直許可を受けた時間は、原則として労働時間として扱われず、時間外労働の上限の時間数にも算入されません。逆に許可がなければ、宿直の時間はまるごと労働時間となり、上限を超えやすくなります。宿日直許可の申請先は労働基準監督署で、当事務所が申請を支援します。許可の基準の詳細は宿日直許可の記事に整理しています。

この記事の根拠

  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第141条 ── 医業に従事する医師の時間外・休日労働の特例。上限の具体的な時間数は同条を受けた厚生労働省令・告示で定める。2024年(令和6年)4月1日施行
  • 同法 第37条 ── 時間外・休日・深夜労働の割増賃金
  • 医師の時間外・休日労働の上限(A水準=年960時間/連携B・B・C水準=年1860時間、いずれも月100時間未満が原則)、水準の区分と都道府県知事による指定(特定地域医療提供機関=B、連携型特定地域医療提供機関=連携B、技能向上集中研修機関=C-1、特定高度技能研修機関=C-2)、連携B・B水準の2035年度末を目標とする終了とC水準の縮減の方向 ── 厚生労働省「医師の働き方改革」の資料・Q&A(2026年9月18日参照)
  • 医療法(昭和23年法律第205号)第108条 ── 面接指導。月の時間外・休日労働が100時間以上となることが見込まれる医師に、達する前に実施することを医療機関の管理者に義務づけ(A水準を含むすべての医療機関に共通)
  • 追加的健康確保措置(連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル=通常の日勤及び宿日直許可のない宿日直は始業から24時間以内に9時間、宿日直許可のある宿日直は始業から46時間以内に18時間の連続した休息、代償休息=翌月末までに付与)が特定労務管理対象機関(連携B・B・C水準)で義務、A水準で努力義務であること ── 厚生労働省の医師の働き方改革に関する資料・事務連絡(2026年9月18日参照)
  • 宿日直許可を受けた時間の労働時間・上限規制上の取扱い ── 宿日直許可基準(昭和22年基発第17号ほか)および厚生労働省の医師の時間外労働に関するQ&A(2026年9月18日参照)
  • 自己研鑽が労働時間に当たるかの判断、個々の医師がどの水準に当たるか、水準の指定の可否は、事案の事情・指定権者の判断によります。本記事では結論を出していません(未検証
  • 医療法の追加的健康確保措置のうち休息時間の確保に関する具体的な条番号は、面接指導(第108条以下)に続く規定・省令・指針で定められており、最新の条文・指針での確認を前提とします(未検証

本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。四葉社会保険労務士事務所では、36協定(特別条項を含む)の作成・届出、水準に応じた上限管理の設計、就業規則・賃金規程の整備、面接指導・勤務間インターバル・代償休息の運用ルールづくり、労働時間の把握の仕組みの設計、宿日直許可の申請の支援、割増賃金の計算の設計についてご相談いただけます。医療機関の開設許可・施設基準など医療法上の申請は四葉行政書士事務所が別の事業体として承り、それぞれ別々にご契約いただきます。医業経営に関する税務は税理士へおつなぎします。別の専門家が必要な場合は、それぞれ別契約となり、紹介料はありません。よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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