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外国人雇用

海外在住者をリモート雇用(中国・台湾)するとき労働・社会保険はどうなるか

多様な人材が働く職場づくりのイメージ
浦松 丈二

浦松 丈二

社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)

中国・台湾に住む人を来日させずリモートで直接雇用する場合、労働基準法は属地主義が原則で海外の勤務地には当然には及びません。健康保険・厚生年金は適用事業所との使用関係で判断し、雇用保険・労災保険は国外で就労する現地採用者には原則として適用されないのが基本の考え方です。来日しないため在留資格は原則不要。準拠法・労使紛争は弁護士、源泉徴収・非居住者課税・恒久的施設の国際税務は税理士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で整理します。

結論(先に要点):中国・台湾などに住む人を、来日させずリモートで直接雇用する場合、労働基準法は属地主義が原則で、海外の勤務地には当然には適用されません。健康保険・厚生年金は適用事業所との使用関係で判断し、雇用保険・労災保険は国外で就労する現地採用者には原則として適用されないのが基本の考え方です。来日しないため在留資格は原則不要です。

この記事は、海外に住む人材を来日させずに直接雇用したい日本企業の人事・経営者に向けて、労働保険・社会保険の適用関係を社会保険労務士の観点から整理するものです。「駐在」「出向」でも「海外出張」でもなく、最初から海外に居住したまま働いてもらう——いわば現地採用型のリモート雇用——という前提で読んでください。個別の適用可否は実態で変わるため、確定していない点は「未検証」として明示します。

海外在住のリモート雇用は駐在・出向と何が違うのか?

同じ「海外で働く」でも、適用関係はその人がどの事業に属し、誰の指揮命令下にあるかで変わります。まず3つの類型を切り分けます。

類型典型例本記事との関係
海外出張国内の事業場に所属したまま一時的に海外へ出る国内の指揮命令が続くため国内制度が及びやすい
海外派遣(駐在・出向)国内の事業主が海外の事業へ労働者として派遣する労災は特別加入で対応。社会保障協定の調整対象
現地採用のリモート雇用海外に住む人を来日させず直接雇う本記事の対象。国外の就労で、特別加入の対象外

海外出張と海外派遣の労災の違いは海外出張と海外派遣は、労災でまったく違うに、駐在のときの二重加入を防ぐ日中社会保障協定は中国駐在・中国人社員の社会保険に、出向で受け入れるときの考え方は台湾から人を雇う・出向で受け入れるときの社会保険にまとめています。本記事は、これらのどれとも違う「来日しないまま直接雇う」場合に絞ります。

労働基準法・最低賃金は海外勤務の社員に適用されるのか?

労働基準法は属地主義が原則です。日本国内の事業で使用される労働者に適用されるのが基本で、海外の勤務地で就労する人に日本の労働基準法・最低賃金法が当然に及ぶわけではありません。したがって、海外に住んで海外で働く人の労働条件は、原則として勤務地(中国・台湾など)の労働法令の適用を軸に考えることになります。

ただし、どの国の労働法が適用されるか、日本法を準拠法として契約に定めた場合にどこまで及ぶかは、国際私法と各国の強行法規に関わる法的判断で、社会保険労務士が確定できる領域ではありません。ここは弁護士の領域として振り分けます。実務上は、「現地の労働法令を基準にしつつ、会社として守る労働条件を雇用契約で明確に書面化する」という設計が出発点になります。

健康保険・厚生年金・雇用保険・労災はどう扱われるのか?

制度ごとに判断の軸が違います。来日しない現地採用型という前提での基本的な整理は次のとおりです。

制度基本の考え方(来日しないリモート雇用)
健康保険・厚生年金保険適用事業所に「使用される」かで判断。被用者保険に国内居住要件はないが、来日しない現地採用で使用関係が認められるかは個別性が高く、年金事務所への確認事項(未検証)
雇用保険国外で就労する現地採用者は原則として被保険者とならない。国内の事業場に所属し指揮命令を受ける海外出張とは異なる
労災保険国外の事業での就労は国内労災の対象外。海外派遣者の特別加入は「国内の事業主から海外の事業へ派遣される人」が対象で、現地採用者は対象外

ここで重要なのは、海外派遣者の労災特別加入制度に入れば国外の就労でも補償を受けられますが、その対象は日本国内の事業主から海外の事業へ労働者として派遣される人であって、現地採用者や海外出張者は含まれないという点です。来日しないリモート雇用は現地採用に近く、特別加入でカバーできないことが多いため、万一の業務上の傷病に対する補償を会社としてどう手当てするか(民間の保険など)を別に検討する必要があります。

健康保険・厚生年金については、被用者保険に国内居住要件はありませんが、来日せず海外で働く人を「日本の適用事業所に使用される被保険者」と扱えるかは、使用関係の実態で判断され一律ではありません。健康保険の現物給付(海外で受けた療養の扱い)とも関わります。被保険者資格の有無は年金事務所・日本年金機構が実態に即して判断する事項で、本記事では確定した結論を書きません(未検証)。

なお、社会保障協定は主に一国から他国への「派遣」に伴う年金保険料の二重負担を調整する仕組みです。日本と中国の協定は2019年9月1日に発効し、対象は公的年金のみで加入期間の通算規定はありません。日本と台湾の間には社会保障協定がありません。いずれも「派遣」を前提とした調整の仕組みであり、来日しない現地採用のリモート雇用に協定の適用証明がそのまま使える場面は限られます。

労働時間・割増・就業規則の管理はどう設計するのか?

日本の労働基準法が当然には及ばない前提でも、会社として管理すべき事項は残ります。現地法令を基準にしつつ、次を雇用契約・社内規程で明確にしておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

  • 準拠法と適用される労働法令を書面で明確にする:どの国の労働法を基準にするか、労働時間・休日・割増賃金・時間外の上限をどう扱うかを契約に明記します。最終的な準拠法の効力は弁護士の判断領域です。
  • 労働時間の把握方法を決める:時差のある国の在宅勤務では、勤務時間帯・連絡がつく時間・中抜けの扱いをあらかじめ定めます。日本国内のテレワークの労働時間管理の考え方はテレワーク・在宅勤務の労働時間と費用が参考になります。
  • 賃金の支払方法・通貨・課税の扱いを整理する:どの通貨でいつ支払うか、源泉徴収の要否(非居住者課税)は税理士と確認します。
  • 就業規則の適用範囲を確認する:日本の就業規則をそのまま海外在住者に適用できるとは限りません。適用範囲と現地法令との優先関係を整理します。

ご自身のケースについて相談したい方へ

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これらは「どの国の法律が最終的に優先するか」という法的判断とセットになります。その判断は弁護士に振り分け、社会保険労務士は日本側で管理可能な労務設計(契約書面・勤怠の把握方法・社内規程の整備)を担います。

税務・契約の準拠法は誰に振り分けるのか?

来日しない海外在住者の直接雇用は、関わる専門家が分かれます。それぞれ独立した事業体として、別々にご契約いただく前提です。

やること主な担当
日本側の労務設計、雇用契約書面・社内規程の整備、日本で適用され得る社会保険の適用整理社会保険労務士(当事務所)
源泉徴収・非居住者課税・恒久的施設(PE)の国際税務税理士
準拠法・適用される労働法令の法的判断、労使紛争弁護士
中国・台湾側の労働法令・社会保険・税の適用現地の専門家・当局

来日せず海外で働く人は、日本に在留しないため在留資格(就労ビザ)は原則として不要です。入管法は日本に上陸・在留する外国人を対象とするためです。もし将来的に来日して働く段階になれば、在留資格の該当性・申請取次は行政書士の業務となり、社会保険労務士業務とは別の契約になります。

四葉社会保険労務士事務所では、日本側で管理できる労務設計、雇用契約・社内規程の整備、日本の社会保険の適用の整理についてご相談いただけます。ご相談は無料で、費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

よくある質問

Q. 中国や台湾に住む人を来日させずに雇うと、日本の労働基準法は適用されますか?
A. 労働基準法は属地主義が原則で、海外の勤務地で就労する人に当然には適用されません。基本は勤務地(中国・台湾など)の労働法令を軸に考えます。どの国の法律が最終的に適用されるか、日本法を準拠法に定めた場合の効力は、国際私法に関わる法的判断で弁護士の領域です。

Q. 海外在住のリモート雇用で、日本の雇用保険・労災保険には入れますか?
A. 国外で就労する現地採用者は、雇用保険の被保険者とならないのが原則です。労災保険も国外の事業での就労は国内労災の対象外で、海外派遣者の特別加入も「国内の事業主から海外の事業へ派遣される人」が対象のため、現地採用者は含まれません。万一の補償を会社としてどう手当てするかは別に検討が要ります。

Q. 健康保険・厚生年金には加入させられますか?
A. 被用者保険に国内居住要件はありませんが、来日しない現地採用の人を「日本の適用事業所に使用される被保険者」と扱えるかは使用関係の実態で判断され、一律ではありません。被保険者資格の有無は年金事務所・日本年金機構が実態に即して判断します。この記事では確定した結論を書いていません。

Q. 来日しないので在留資格(就労ビザ)は要りませんか?
A. 日本に在留せず海外で働く限り、在留資格は原則として不要です。入管法は日本に上陸・在留する外国人を対象とするためです。将来来日して働く段階になれば在留資格が必要になり、その申請取次は行政書士の業務です。

この記事の根拠

  • 労働基準法の属地主義:労働基準法は日本国内の事業で使用される労働者への適用が原則で、海外の勤務地で就労する者に当然には及ばない(労働基準法。適用関係は確立した行政解釈による)
  • 雇用保険の適用:日本国内の適用事業に雇用され国内で就労する者が被保険者。国外で就労する現地採用者は原則として被保険者とならない(雇用保険法)
  • 労災保険の適用と海外派遣者の特別加入:国内の事業に属する労働者に適用され、国外の事業での就労は対象外。海外派遣者の特別加入は「日本国内の事業主から海外で行われる事業に労働者として派遣される人」等が対象で、現地採用者・海外出張者は対象外(労働者災害補償保険法)
  • 健康保険・厚生年金保険の適用:適用事業所に使用される者が被保険者。被用者保険に国内居住要件はないが、来日しない現地採用で使用関係が認められるかは個別判断(健康保険法・厚生年金保険法、日本年金機構)
  • 厚生労働省「社会保障協定の締結状況」(発効済24か国。2026年6月2日現在)・日本年金機構「社会保障協定」:日中協定は2019年9月1日発効・対象は公的年金のみ・期間通算の規定なし、台湾は協定相手国に含まれない。2026年10月6日参照。
  • 在留資格:入管法は日本に上陸・在留する外国人を対象とし、来日せず海外で就労する者には原則として在留資格は不要(出入国管理及び難民認定法。在留資格の申請・取次は行政書士の業務)
  • 社会保険労務士の業務:社会保険労務士法第2条

この記事は、誰に相談するかまで決めるものではありません。四葉社会保険労務士事務所では、日本側で管理できる労務設計、雇用契約・社内規程の整備、日本の社会保険の適用の整理についてご相談いただけます。源泉徴収・非居住者課税・恒久的施設の国際税務は税理士の業務、準拠法・適用労働法令の法的判断と労使紛争は弁護士の業務、中国・台湾側の労働法令・社会保険・税の適用は現地の専門家・当局の領域です。これらはそれぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。個別の事案で日本の社会保険が適用されるか、雇用保険・労災の被保険者・補償の対象となるかの最終判断は、年金事務所・日本年金機構・ハローワーク・労働基準監督署が行います。費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。

本記事は一般的な情報提供です。海外在住者の雇用に伴う労働・社会保険の適用など個別の判断は、最新の一次情報(厚生労働省・日本年金機構など)と個別のご事情に照らし、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。

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