特定技能「建設」の受入れ労務—月給制の義務と建設キャリアアップシステム(CCUS)

浦松 丈二
社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士(四葉社会保険労務士事務所/四葉行政書士事務所)
特定技能「建設」で外国人を受け入れるときは、他分野の共通基準に加えて建設分野だけの上乗せ措置があります。中心は三つで、報酬を安定的に支払う「月給制」(1か月単位で安定した報酬。季節や工程で仕事量が変動し日給だと収入が不安定になりやすいためです)、受入企業と外国人本人の双方を建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録すること(事業者登録と技能者登録)、在留諸申請の前に国土交通大臣から「建設特定技能受入計画」の認定を受けることです。報酬は同等の技能を持つ日本人と同等額以上で、技能の習熟に応じて昇給させることも求められます(入管法第2条の5、特定技能基準省令)。賃金の同等性・月給制の設計、36協定や社会保険・労働保険の加入を社会保険労務士の視点で整理し、建設特定技能受入計画の認定申請や在留資格の申請取次、建設業許可は行政書士・登録支援機関、契約打切りなどの紛争は弁護士へ、独立した事業体として別々にご契約いただく形で振り分けます。
結論(先に要点):特定技能「建設」で外国人を受け入れるときは、他分野の共通基準に加えて建設分野だけの上乗せ措置があります。中心は三つで、第一に報酬を安定的に支払う「月給制」(日給や時給の積み上げではなく、1か月単位で安定した報酬を支払う扱い。建設分野は季節や工程で仕事量が変動し、日給だと収入が不安定になりやすいためです)、第二に受入企業と外国人本人の双方を建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録すること(事業者登録と技能者登録)、第三に在留諸申請の前に国土交通大臣から「建設特定技能受入計画」の認定を受けることです。報酬は同等の技能を持つ日本人と同等額以上で、技能の習熟に応じて昇給させることも求められます(特定技能雇用契約の基準。出入国管理及び難民認定法第2条の5、特定技能基準省令)。この記事では、賃金の同等性・月給制の設計、36協定や社会保険・労働保険の加入といった労務を社会保険労務士の視点で整理し、建設特定技能受入計画の認定申請や在留資格の申請取次、建設業許可は行政書士・登録支援機関、契約打切りなどの個別紛争は弁護士へ、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形で振り分けます。
特定技能「建設」は、介護や外食などの他分野と比べて要件が一段多く、手続の順番も独特です。賃金の払い方(月給制)や受入人数の上限など、労務の設計に直結する基準が建設分野固有のルールに書かれているため、物件や許認可だけでなく「どう雇い、いくら・どう払うか」を先に固める必要があります。このページは、建設業で特定技能外国人の受入れを検討する事業者の人事・管理担当の方に向けて、労務を中心に整理します。
特定技能「建設」で外国人を受け入れるとき、他分野と何が違いますか?
共通の基準(技能試験・日本語試験の合格、特定技能雇用契約の締結、支援計画の作成など)は他分野と同じですが、建設分野には独自の上乗せ措置があります。おおまかには次のとおりです。
| 項目 | 建設分野固有の扱い |
|---|---|
| 報酬の払い方 | 月給制(1か月単位で安定的に支払う)。日給・時給の積み上げだけで変動させる扱いは認められにくい |
| 受入計画 | 在留諸申請の前に国土交通大臣の「建設特定技能受入計画」の認定が必要 |
| CCUS | 受入企業の事業者登録と外国人本人の技能者登録が必須 |
| 業界団体 | 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への加入(直接会員または正会員団体の所属会員)が必要 |
| 受入人数 | 1号特定技能外国人の数は、受入企業の常勤の職員(技能者)の総数以下 |
| 建設業許可 | 建設業法第3条第1項の許可を受けていること |
介護分野の特定技能労務は介護の特定技能外国人の労務と社会保険で扱っています。建設分野は、そこにない「月給制」「受入計画の認定」「CCUS登録」「受入人数の上限」が加わる点が最も大きな違いです。
「月給制」の義務と報酬の同等性はどう確認しますか?
建設分野では、報酬を安定的に支払うことが受入計画の認定基準に含まれます。これは、1か月ごとに安定した額を支払う月給制を指し、繁閑や天候で稼働日数が増減しても、その月の報酬が大きく上下しない払い方にするという趣旨です。日給や時給を稼働日数に掛けるだけの設計だと、雨天や工程待ちの月に収入が落ち込み、安定的とはいえないと見られやすくなります。
報酬の水準は、同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上でなければならず、技能の習熟に応じた昇給も求められます(特定技能雇用契約の基準。出入国管理及び難民認定法第2条の5、特定技能基準省令)。賃金規程で等級と昇給の仕組みを明文化し、同種の作業に従事する日本人技能者の賃金と比較できる根拠を残しておくと、受入計画の審査で説明しやすくなります。
| 確認する点 | 内容 | 労務での対応 |
|---|---|---|
| 月給制 | 月単位で安定的に支払う払い方か | 賃金規程・雇用契約書で月額を定める。日給月給のみで変動させない |
| 同等性 | 同等技能の日本人と同等額以上か | 社内の賃金テーブルと比較できる資料を整える |
| 昇給 | 技能の習熟に応じて昇給するか | 等級・評価と昇給の基準を賃金規程に明記 |
| 時間外・休日・深夜 | 割増賃金を適正に支払っているか | 36協定の締結・届出と割増計算(労働基準法第36条・第37条) |
建設業の時間外労働の上限規制は2024年(令和6年)4月から適用されており、36協定と割増賃金の設計は外国人・日本人を問わず必要です。詳しくは建設業の2024年時間外上限と休日の労務をご覧ください。
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録はなぜ必須なのですか?
CCUS(建設キャリアアップシステム)は、技能者の就業履歴や保有資格を業界横断で蓄積する仕組みです。建設分野の特定技能では、受入企業の事業者登録と、受け入れる外国人本人の技能者登録の双方が受入計画の認定基準になっています。技能や就業の履歴を客観的に記録し、処遇(とくに技能習熟に応じた昇給)の根拠を示せるようにするためです。
登録は在留諸申請や受入計画の認定申請の前提になるため、受入れのスケジュールはCCUS登録を起点に組みます。社会保険・労働保険の加入状況もCCUSや受入計画の確認事項と重なるため、適用の届出を先に済ませておくと手続が滑らかです。建設業では一人親方との関係や社会保険の加入指導が論点になりやすく、建設業の社会保険・一人親方の労災特別加入で別に扱っています。
受入計画の認定(国土交通省)と在留資格はどう連動しますか?
建設分野では、在留資格の申請(在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請など)に先立って、国土交通大臣から「建設特定技能受入計画」の認定を受ける必要があります。認定を受けた受入計画は、在留諸申請の添付書類になります。順序を取り違えて先に在留申請を進めても、受入計画の認定がなければ手続が止まります。
認定の主な基準は、建設業許可(建設業法第3条第1項)、CCUSの事業者登録・技能者登録、JACへの加入、同等以上の報酬と月給制、受入人数が常勤職員(技能者)の総数以下であること、受入れ後に国土交通大臣が指定する講習・研修を受講させること、国または適正就労監理機関による巡回指導を受け入れること、などです。これらは建設分野の運用要領と告示(分野別運用方針)に基づきます。
ご自身のケースについて相談したい方へ
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| 段階 | 主な手続 | 担当 |
|---|---|---|
| ① 準備 | 建設業許可・CCUS事業者登録・JAC加入・賃金規程(月給制)整備 | 事業者(労務は社会保険労務士) |
| ② 受入計画 | 建設特定技能受入計画の認定申請(国土交通大臣) | 行政書士・登録支援機関 |
| ③ 在留申請 | 在留資格認定証明書交付申請・変更許可申請(認定された受入計画を添付) | 本人・申請取次の行政書士・登録支援機関 |
| ④ 受入れ後 | 社会保険・労働保険の加入、賃金・労働時間の管理、指定講習・巡回指導 | 事業者(労務は社会保険労務士) |
在留資格の申請・労務・社会保険は誰が担当しますか?
建設特定技能受入計画の認定申請、在留資格の申請取次、1号特定技能外国人支援計画の作成、建設業許可の取得は、本人または申請取次の行政書士・登録支援機関の業務です。社会保険労務士は在留資格の申請取次を行えません。これらは行政書士・登録支援機関の領域で、社会保険労務士業務とは独立した事業体として別々にご契約いただきます。
一方、月給制を含む賃金規程・就業規則の整備、36協定の締結・届出、割増賃金の設計、社会保険(健康保険・厚生年金保険)・労働保険(労災保険・雇用保険)の加入手続、労働条件の明示は社会保険労務士が担います。自社で支援を行う場合の支援体制の労務面は特定技能外国人の自社支援体制と労務で、在留期限と雇用契約期間のかみ合わせは在留期限と雇用契約期間で扱っています。
四葉社会保険労務士事務所は、何ができますか?
文京区小日向の四葉社会保険労務士事務所は、建設分野で特定技能外国人を受け入れる労務について、月給制を前提とした賃金規程・就業規則の整備、同等性を説明できる賃金テーブルの作成、36協定の締結・届出と割増賃金の設計、社会保険・労働保険の加入手続、労働条件の明示をお受けします。ご相談は無料です。 内容と人数に応じてお見積りし、料金の考え方は報酬額表を、よくいただくご質問はよくあるご質問をご覧ください。
建設特定技能受入計画の認定申請、在留資格の申請取次、支援計画の作成、建設業許可の取得は行政書士・登録支援機関(社会保険労務士は在留申請の取次を行えません)、契約の打切りや労働条件をめぐる個別の紛争の代理は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただく形をご案内します。当事務所は紹介料を受け取りません。
よくある質問
Q. 建設分野の特定技能で「月給制」が求められるのはなぜですか?
A. 建設の仕事は季節や工程、天候で稼働日数が増減しやすく、日給や時給の積み上げだけだと月の収入が大きく上下して不安定になりがちだからです。建設分野では報酬を安定的に支払うこと(1か月単位で安定した月給制)が建設特定技能受入計画の認定基準に含まれます。賃金規程や雇用契約書で月額を定め、日給月給のみで変動させない設計にします。
Q. CCUS(建設キャリアアップシステム)の登録は誰がするのですか?
A. 受入企業が事業者登録を、受け入れる外国人本人が技能者登録を、それぞれ行います。建設分野の特定技能では双方の登録が受入計画の認定基準になっており、在留諸申請や受入計画の認定申請の前提になります。技能・就業の履歴を記録し、技能習熟に応じた昇給の根拠を示すための仕組みです。
Q. 受入計画の認定と在留資格の申請は、どちらが先ですか?
A. 受入計画の認定が先です。建設分野では、在留資格の申請に先立って国土交通大臣から「建設特定技能受入計画」の認定を受け、認定された計画を在留諸申請の添付書類にします。先に在留申請だけを進めても、受入計画の認定がなければ手続が止まります。認定申請と在留資格の申請取次は行政書士・登録支援機関の業務で、社会保険労務士は在留申請の取次を行えません。
Q. 受け入れられる人数に上限はありますか?
A. あります。建設分野では、1号特定技能外国人の数が受入企業の常勤の職員(技能者)の総数を超えてはならないとされています。他分野にはない建設分野固有の人数制限です。実際の数え方は運用要領や審査基準に沿って確認する必要があるため、受入計画の認定申請を担う行政書士・登録支援機関と、労務の社会保険労務士で分担して確認します。
この記事の根拠
- 出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)第2条の5(特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準)(e-Gov法令検索で2026年10月30日に条文確認)
- 特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(特定技能基準省令)=1号特定技能外国人の報酬の額は、同等の技能を有する日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること(2026年10月30日参照)
- 「建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(分野別運用方針・告示)および国土交通省「建設特定技能受入計画」の認定申請に関する運用要領・手引き=報酬を安定的に支払うこと(月給制)、同等以上の報酬と技能習熟に応じた昇給、受入企業と1号特定技能外国人のCCUS(事業者登録・技能者登録)、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への加入、1号特定技能外国人の数が常勤の職員(技能者)の総数以下であること、国土交通大臣指定の講習・研修の受講、巡回指導の受入れ(国土交通省のページで2026年10月30日参照)
- 建設業法(昭和24年法律第100号)第3条第1項(建設業の許可)(e-Gov法令検索で2026年10月30日に条文確認)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第36条(時間外・休日労働に関する協定)・第37条(割増賃金)(e-Gov法令検索で2026年10月30日に条文確認)。建設業の時間外労働の上限規制は2024年(令和6年)4月1日から適用
- 健康保険法(大正11年法律第70号)・厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)・労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)・雇用保険法(昭和49年法律第116号)=社会保険・労働保険の加入義務(2026年10月30日参照)
受入計画の認定基準や受入人数の具体的な算定方法は運用要領の改正で変わり得るため、申請の直前に国土交通省の最新のページで確認してください。この記事は、誰に相談するかまでは決めていません。月給制を含む賃金規程・就業規則、36協定、割増賃金、社会保険・労働保険の加入は社会保険労務士の業務です。建設特定技能受入計画の認定申請、在留資格の申請取次、支援計画の作成、建設業許可の取得は行政書士・登録支援機関(社会保険労務士は在留申請の取次を行えません)、契約の打切りや労働条件をめぐる個別の紛争の代理は弁護士の業務で、それぞれ独立した事業体として別々にご契約いただきます。当事務所は紹介料を受け取りません。四葉社会保険労務士事務所にご相談いただく場合の費用は報酬額表に、よくいただくご質問はよくあるご質問にまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。個別のご事情に応じた判断は、面談のうえ資格者が行います。執筆は浦松丈二(社会保険労務士・行政書士・宅地建物取引士)です。
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